始まりの鍵と突然の出会い(脚本)
〇川のある裏庭
私は水の入ったジョウロを手に取り、まだ咲いていない不思議な蓮の花瓶に水を入れる。すると蓮の葉に水が滴った。
莉奈「いつ頃咲くのかな」
私はまだ咲かない蓮を眺めた。
莉奈「この花が咲く頃には⋯」
莉奈は立ち上がって、晴天の空を見つめた。
莉奈「みんなに⋯あの人に、会えるのかな」
〇教室
担任の先生が挨拶の号令をすると、クラスメイトは礼をし、一度座ったあと再び立ち上がった。
挨拶が終わった瞬間教室にざわめきが響く。
凛花「リナ〜!帰ろ!」
ピンク髪の低いツインテールの女の子が髪を揺らしながらこちらに近づいて来る。リナの親友のリンカだ。
莉奈「うん。帰ろっか!」
リナは机の横にかけているリュックサックを軽々と背負い、リンカと歩き始めた。
〇繁華な通り
凛花「ねーねー!二限目の授業の時にさぁ」
莉奈「うん」
こうして二人は他愛もない話をしながら校庭を出た。するとリンカは急に立ち止まった。
凛花「あ、そうだそうだ。あの話覚えてる?」
莉奈「あの話?」
凛花「うん!朝話した素敵な素敵~な話!」
莉奈「ああ!あれね」
リナは両手を合わせて合わせてリンカの顔を見る。
凛花「正直本当だと思う?地図にはない異世界のような国が存在するなんて!」
莉奈「さすがに嘘じゃない?だってアニメとかマンガの話でしょ?そういうのって」
凛花「うんうん。私もそう思ってたんだよね。だけど行ってみたくない!?」
莉奈「・・・行ってみたい!」
凛花「だよね!男女関係なくサラッサラなロングの髪型してて美男美女が多いなんて!行くしかない!」
莉奈「・・・・・・存在しないと思うけどね」
凛花「あはは・・・・・・そうだよね・・・・・・」
残念がっているリンカを見てリナがクスッと笑うとリンカも笑い始める。
凛花「あはは!存在したら行こうね!」
莉奈「あるのかなあ?」
二人は笑いながら道を歩く。
少し歩くとリナ達はチラシを配っている人がいる事に気がついた。
凛花「・・・・・・イケメンがいる」
莉奈「はは・・・・・・確かにイケメン?」
その人は紫のロングの髪でセンター分けをしている美男だった。
凛花「チラシ貰ってみたいな。けど行きにくい!」
莉奈「普通に前を通ればいいんじゃない?」
凛花「あっほんとだ。前を通ればくれるよね」
リンカは当たり前なことを忘れていた。
そしてまた二人は笑い合った。
莉奈「じゃあ貰いに行こうか」
凛花「うん!」
リンカが返事をすると横からその人が突然やってきた。
優風「あの、イベント告知です。良かったら貰ってください」
リンカは目の前にその人がいるのを見て驚いてしまった。
莉奈「ありがとうございます」
リナはちゃんと礼を言ったのに対し、リンカは硬直し、しばらく黙っていた。
凛花「あ、ありがとうございます・・・・・・!」
ようやくリンカがお礼を伝えると、リナ達は歩き出し、チラシ配りの人は去っていった。
凛花「まさかこうやって貰えるとは思わなかった・・・・・・」
莉奈「もしかして私たちが話してるの聞こえたとか?」
凛花「それは恥ずかしい!」
そしてリンカが小さく地面から跳ねた。
莉奈「それにしてもこのイベントなんだか上品だね」
リナはチラシを見つめた。
凛花「ん・・・・・・?ほんとだ。独自ブランドのお茶や紅茶を用意しています、だって」
莉奈「へえ・・・・・・美味しいのかな?」
凛花「紅茶はあまり飲まないから分からないけど、美味しいんじゃないかな?多分!」
リンカも満面の笑みでチラシを見つめる。
莉奈「場所は噴水広場か。近いね」
凛花「みたいだね~。・・・・・・あのさ、これ行こうよ!明日は土曜で学校もないしちょうどいいよ!リナも用事ないんだよね?」
莉奈「私も多分用事ないかな?行こう!」
凛花「うん!」
リナが微笑むとリンカは目を輝かせた。
莉奈「あっ・・・。もう家ついちゃった」
リナは自分の家のドアを見た。
凛花「もう着いちゃったね」
凛花「明日、楽しみにしてる!またね!」
リンカは全力で手を振った。
莉奈「うん、気をつけて帰ってね」
そしてリンカは微笑みながら、自分の帰路へ向かった。
〇女の子の一人部屋
そしてその夜。
リナは寝る準備を早めに終わらせた。
莉奈「明日は...」
リナはそう言いながら、リンカに連絡をした。
莉奈「あっ、既読ついた」
「どうしようか?私がリナの家まで迎えに行こうか?」
莉奈「いいのかな?」
リナは言った言葉をそのまま送信する。
「大丈夫だよ!だってリナの家の前通るし」
莉奈「ありがとう」
リナはそう送信した。
莉奈「よし、あとは聞くことないね」
そしてスマホを静かに机の上に置く。
莉奈「ふぁぁ・・・。疲れた。明日は遊ぶんだし、早めに寝ようかなぁ」
リナは電気を消し、リンカがブレゼントしてくれたアロマをつけて布団の中に入った。
〇女の子の一人部屋
莉奈「うーーん・・・こっちがいいかなぁ」
そして当日、リナが服選びに迷っていると、いきなりドアが勢いよく開いた。
裕途「俺のくまちゃん知らない!?」
莉奈「・・・は?」
突然すぎる出来事に唖然としてしまった。
莉奈「え、えっと・・・くまのぬいぐるみはソファーの裏に落ちてた気がするんだけど・・・」
莉奈「っていうか、ノックぐらいしてよ!!」
裕途「あ、ごめんごめん。焦ってて。あはは・・・」
リナはノックをせずにドアを開けた兄、裕途を怒った。
裕途「・・・探してくる!ありがとう!」
そしてまた勢いよくドアを閉めて出ていった。
莉奈「はあ・・・。嵐のようだったなぁ・・・」
リナは思わず呆れてしまった。
莉奈「ていうか社会人なのに、くまちゃんって・・・」
リナはさらに呆れた。
莉奈「あ!時間ない!服はこれでいいや!!」
時計を見ると約束の時間10分前になっていたことに気づき、リナは急いで支度をした。
〇通学路
そして支度を終え、リナは外へ行った。
莉奈「リンカいるかな・・・?」
莉奈「あっ!」
凛花「あ、リナ!おはよう!」
莉奈「おはよう、リンカ」
挨拶を交わし、リナ達は歩き出した。
凛花「お茶買えるのかなあ?」
莉奈「多分買えると思うよ。こういうイベントは大体売ってるからね」
凛花「だよね!私、もし美味しかったら買おうと思ってるんだ」
莉奈「いいね!私もそうしようかな」
そう会話をしているうちに噴水広場に着いた。
〇噴水広場
そしてリナはふと辺りを見渡した。たくさんの人で賑わっているようだ。
莉奈「人が多いね」
凛花「だね!」
凛花「ええっと、どこで飲めるのかな?」
リンカはひたすらキョロキョロしているが、よく分からなかったようだ。
莉奈「うーん、歩いて探そうか!」
凛花「そうだね・・・ん?」
莉奈「どうしたの?」
凛花「昨日の人いる・・・」
莉奈「昨日の人?」
リナはリンカが見ている方を向くと、昨日チラシを配っていた人が見えた。
莉奈「あっ、ほんとだ。いるね」
そしてリンカの方を向くと、リンカはまた硬直していた。
莉奈「リンカ〜。大丈夫〜?」
凛花「あ、うん大丈夫・・・」
しかしリンカはまだ硬直しているようだ。
莉奈「ははは・・・」
リナが苦笑いをすると誰かの声が聞こえてきた。
聞こえてくる方を向くと、チラシ配りの人がこちらに近づいてきていた。
優風「こんにちは。来てくれてありがとうございます」
優風「こちらが紅茶になります」
莉奈「あ、ありがとうございます」
優風「ではまた」
そしてチラシ配りの男性は去っていった。
凛花「あああ・・・」
リンカは頭を抱えている。
莉奈「リンカ・・・大丈夫?」
するとこちらに気づいたのか、チラシ配りの男性が不思議そうに振り返った。
優風「どうかしました?」
莉奈「いえ、なんでもないです!」
するとリンカは何かを決心したかのような顔になっていた。
莉奈「・・・リンカ?」
凛花「あっあの!聞きたいことがあります!!」
凛花「あの・・・お茶はどこで貰えます・・・?」
少し沈黙が流れたあと、チラシ配りの男性が笑顔で答えた。
優風「向こう側に人が並んでいるでしょう?あの場所ですよ」
凛花「あ、ありがとうございます!」
そしてリンカはペコペコと、何回も頭を下げた。
優風「いえいえ。お役に立てて何よりです」
チラシ配りの男性はそう言いながら戻ってしまった。
凛花「リナ・・・!話せたよ、ついに・・・!」
莉奈「あはは、良かったね!」
リンカは嬉しそうな顔をしている。
凛花「へへへ・・・」
莉奈「・・・嬉しそうだね」
凛花「うん!」
そして二人は座れるベンチを探し、日差しが当たり暖かそうな場所に座った。
莉奈「じゃあ、紅茶を飲んだら買いに行こうか!」
凛花「そうしよ!」
凛花「・・・では、いただきます」
莉奈「いただきます」
挨拶を言い終わると、二人は紅茶を少し飲んだ。
莉奈「ん!香りがいいね」
凛花「プロの人しか作り出せないような味わいだね!」
莉奈「紅茶好きは良さがもっと分かるんだろうなあ・・・」
そして二人は空を見上げる。
凛花「それにしても日差しが気持ちいいね!」
リンカは満面の笑みでリナにそう言った。
莉奈「晴れてよかったね。スマホの天気予報は曇りだったけど」
凛花「そうなの?私は小雨だったなあ」
莉奈「はは!当てにならないね」
二人は笑い合いながら紅茶を味わった。
凛花「暖かいから眠くなってきちゃった・・・」
莉奈「分かる。寝たい・・・」
莉奈「・・・リンカ?」
リナは横を見るが、もう遅かった。
凛花「スー・・・スー・・・」
莉奈「はは、もう寝てるし」
リナは紅茶を飲み終わり、寝ているリンカの隣で景色を楽しんだ。
莉奈「ふぁぁ・・・。眠・・・」
リナは口に手を当ててあくびをした。
莉奈「少し寝ようかな・・・」
莉奈「リンカおやすみ・・・」
そう言いながら、リナも寝てしまった。
しばらくだった時。
その様子に気づいたのか、チラシ配りの男性がこちらに近づき、コップを回収していった。
するとその男性はぽつりと呟いた。
優風「・・・あちらの世界でお会いしましょうね。お二人方」
そう言いながらその男性は去っていった。
〇荒廃した街
莉奈「ん・・・?」
リナは人の声が響く見知らぬ土地に立っていた。
莉奈(・・・へ?あの人達、何してるの?)
リナは目を擦ってその人たちを見つめた。
リナは何回も瞬きをしたが、景色が変わることはなかった。
改めて辺りを見渡した。
するとみんなは怪訝な顔をして剣を持っていた。
少しだった後、とある人の剣が相手に向かって動き出す。
しかし相手の剣がそれをガードしていた。
莉奈「これって・・・戦争?」
リナは思わずしゃがみ込んでしまった。
するとリナの手に力が入る。
莉奈「怖い・・・。私、どうなるの・・・?」
恐怖に脅えていると、リナは一つだけ電気の付いた家を発見した。
考えるより先にリナの足が動き出していた。
莉奈(誰かいる・・・)
リナは耳を澄ませて目を閉じた。
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
「今日こそ決着はつくと思っていたのですが、まだ続いているようです」
「・・・そうみたいだね」
「しかし我らが僅差で勝っているようです」
「・・・それは良かった。負ける訳にはいかないからね」
莉奈(やっぱり、戦争なんだ・・・)
リナは更に怖くなってしまった。
「朝ごはんをお作りしますね」
「・・・今日の分を作り終わったら買いに行った方がいいかもしれません」
「ありがとう。もうちょっと貯めてたら良かったかな・・・。こんなに続くとは思わなくて」
「仕方ありません。私も全く予想出来なかったので」
「・・・ところで、一人で外出する気?」
「はい。このような仕事は私がすべきです」
「分かっているだろうけど、正直一人は危ない」
「僕もついて行くよ」
「いえ!啓夷様の身が危なくなります!」
「ですから私一人で行きます」
「いや、僕も行かせて」
「もし華云が危険な目に合ったらって考えたら気が気じゃないんだ」
「・・・分かりました。啓夷様をお守りしながら行くとします」
「ありがとう」
「僕も一応戦う術はあるから自分の事も守ってね」
「はい、承知しました」
莉奈(ん、もしかしてこの人たち、身分が高い・・・?)
リナは壁に耳をつけた。
「そういえば前にもこんなことあったね」
「ああ、ありましたね」
「国民の間で言い合いが起こって、無くなったと思えば琉紗様がお倒れになってしまいましたよね」
「本当に心配だね。今になっても目が覚めないなんて・・・」
「この戦いはな何かの予兆だったりして・・・」
「また誰かが倒れると負担が大きくなりますね」
「予兆じゃないって信じようかな」
「朝食作ってくれてありがとう。いただきます」
莉奈(本当に大変そう・・・)
リナが再び歩き出そうとした、その時。
「・・・お前は運が悪いな」
莉奈「え・・・?」
後ろを振り返ると剣を片手に持った兵士が、リナを見下していた。
すると剣を上に持ち上げ・・・
莉奈「やめて!!」
続きが気になる作品です!