アンドロイド神父〜カラクリ仕掛けの告解室〜

シュウ

告解①誰ガ為ノ嘘(脚本)

アンドロイド神父〜カラクリ仕掛けの告解室〜

シュウ

今すぐ読む

アンドロイド神父〜カラクリ仕掛けの告解室〜
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇空

〇西洋の街並み

〇雪山の森の中

〇田舎の教会

〇教会の中
ロイド「アン」
アン「神父様」
ロイド「こんな夜更けに礼拝ですか?」
アン「はい」
アン「神はどうして私を独りにしたのでしょう」
アン「私を・・・見捨てられたのでしょうか」
ロイド「神の御心を理解することは叶いません」
アン「神父様でも、ですか?」
ロイド「私の心はカラクリ仕掛け」
ロイド「神にも、ヒトにも、届きません」
アン「そう、ですか」
ロイド「ですが──」
アン「神父様?」

〇空
ロイド「ヒトの行いを真似ることならできます」

〇空

〇教会の控室
アン「おはようございます、神父様」
ロイド「おはようございます、アン」
ロイド「天にまします我らの神よ──」
アン「アーメン」

〇教会の控室
アン「神父様のお料理はやはり絶品です」
ロイド「慈悲深き神に感謝を」
アン「ふふ」
アン「敬虔な信徒であらせられるのですね」
ロイド「カラクリ人形に信仰心とは笑い話にも ならないでしょうか」
アン「いえ、素敵なことです」
アン「ただ」
アン「私は神父様へと感謝を捧げているのですよ」
ロイド「それはなんとも」
ロイド「畏れ多いことです」

〇田舎の教会
ジェシカ「おはよう、アン」
アン「おはようございます、ジェシカ様」
ジェシカ「こちらを、神父様に」
アン「神の恵みに感謝いたします」
ジェシカ「ふふ、神父様のような言い回し」
ジェシカ「『家族は似る』と言うわけね」
アン「畏れ多いことです」
アン「ふふ」

〇教会の中
ジェシカ「おはようごさいます、神父様」
ロイド「おはようございます、ジェシカ」
ジェシカ「天にまします我らの神よ──」

〇教会の控室
アン「神父様」
アン「ジェシカ様が告解室に」
ロイド「承知しました」
アン「それと捧げ物です」
アン「ブイヨンで煮込めば極上の一品が 出来上がるでしょう」
ロイド「有難く頂きましょう」
アン「ジェシカ様に神の祝福があらんことを」

〇教会の中

〇黒
ロイド「神の慈悲を信頼し、貴方の罪を 告白なさってください」
ジェシカ「私は嘘を吐きました」
ジェシカ「取り返しのつかない嘘を──」

〇洋館の玄関ホール
  我が家に給仕型アンドロイドが
  やってきました
  名はメイ
  父が連れてきました
  現代ではアンドロイドを所有する
  ことがステータスになる、と
  我が家は祖父が築き上げた莫大な富が
  ありましたから
  ですが、それは建前でしょう
  本当は祖父のご機嫌取りに違いありません
  2人は跡取りの件で揉めておりましたから
  祖父は目新しいものを好んでおられたので
  大層お喜びになりました

〇豪華な部屋
  メイには独特の愛嬌がありました
  挨拶と称し抱擁を交わすと
  一気に距離を詰め
  数日とかからず我が家に馴染みました
  はじめの頃は私も妹ができたようで
  嬉しかったのです
  ですが──

〇モヤモヤ
  いつしかメイは誰よりも愛されるように
  なっておりました
  実の娘である私よりも──

〇西洋風のバスルーム
  メイは卒なく家事をこなします
  常に微笑を貼り付けて
  父はすっかりメイのとりこで
  事あるごとにメイのもとへ出向くように
  なりました
  お食事の用意の際には何度つまみ食いして
  いたことか
  病的なまでに心酔しておられました
  ですが
  私にはその顔が薄っぺらく感じられるのです
  受け答えのひとつひとつが淡泊で
  ヒトに好まれる文言をなぞっている
  ようにしか聞こえないのです

〇黒
  いつしかメイの悪い箇所ばかりが
  目につくようになりました
  だから──私はメイに嘘をつきました

〇モヤモヤ
  祖父はアーモンドが好物である、と
  ですが、それは真っ赤な嘘
  祖父はナッツ類がお嫌いでした
  決して口をつけようとしないのです

〇城の会議室
  その日、メイの手料理を一口食べるなり
  祖父はもがき苦しみ
  泡を吹いて倒れました
  メイはアナフィラキシーショックだと
  診断しました
  ナッツアレルギーである、と
  メイは給仕型ですので、医療知識も
  備えているのです
  介抱の際、確かに祖父の口から
  アーモンドの香りがしました
  父はひどく憤慨なされました
  そして──

〇城のゴミ捨て場
  メイをジャンクとして廃棄しました

〇豪華な部屋
  私は恐ろしくなりました
  私は図らずも祖父の命を奪ってしまった
  のです

〇黒
ジェシカ「どうかお赦しを・・・お願いいたします」

〇黒
アン「神父様」
ロイド「アン」
アン「私も微力ながらお力添えいたしましょう」
ロイド「感謝します」

〇黒
ロイド「貴方の罪、果たして『罪』と呼べるもの でしょうか」
ジェシカ「それは一体・・・!?」

〇豪華な部屋
  給仕型アンドロイドは主の体調管理のため
  情報を収集します
  医療機能はそのためのものです
  メイも例外ではありません
  ご家族の方と抱擁を交わしたのはヒトの
  真似事ではなく
  各人の体質を分析していたのでしょう
  アレルギーといった体質の情報を

〇城の会議室
  メイは貴方の嘘を見抜けなかったのでしょう
  貴方の情報が不足していたから
  故に、好物のアーモンドが入った料理を
  お祖父様へとお出しになったのです
  真偽がわからずとも問題ないと
  判断したから
  お祖父様にナッツアレルギーなど
  なかったのです
  言葉のとおり、ナッツ類がお嫌いというだけだったのでしょう

〇黒
ジェシカ「そんな!」
ジェシカ「しかし、お祖父様は──!」
ロイド「アレルギー反応以外で倒れる要因など いくらでもあります」

〇城の会議室
  例えば──毒
  アーモンド臭がしたのであれば
  『青酸カリ』によるものでしょう
  では何故メイは死因をアナフィラキシー
  ショックと偽ったのでしょうか
  医療機能があれば毒物を検出できます
  メイが死因を偽った理由、それは──

〇黒
アン「──庇うためです」
アン「メイはお父様の凶行を隠匿したのです」

〇西洋風のバスルーム
  お父様はつまみ食いを装い──
  お祖父様のお食事に毒を盛ったのです
  理由は定かではありませんが
  恐らく跡取りの件でしょう

〇城の会議室
  お父様はメイ様の犯行に仕立て上げようと
  したのでしょう
  しかし、メイ様はお父様を庇いました
  お父様が毒を盛ったと知りながら

〇黒
ジェシカ「何故・・・何故メイがそのようなことを するのですか?」
アン「身内であれば庇いたくなるのも道理 でしょう」
アン「メイ様は──家族になろうとしたのです」

〇洋館の玄関ホール
  体質の把握にハグなど不要なのです
  手に触れるだけで十分でしょう
  メイ様はご家族の方と距離を縮めようと
  ハグをしたのです
  『家族』になろうと──

〇城の会議室
  メイ様はご家族を守るため嘘を吐いたのです
  しかし
  メイ様は『家族を守る』本当の意味を
  知らなかったのでしょう
  毒物の混入を感知していたのであれば
  お出しにならずに廃棄すべきでした
  お父様の望みを叶えることこそが
  『家族』であると考えたのでしょう
  それがヒトの命を奪う行為であったとしても
  メイ様は寄り添い方を誤ってしまったのです

〇黒
ジェシカ「私は・・・私は、なんてことを してしまったのでしょう」
アン「ジェシカ様はメイ様に居場所を 奪われると感じたのでしょう」
アン「それはジェシカ様がご家族のことを 愛しているからこそ」
アン「愛ゆえの嘘だったのです」
ジェシカ「ですが・・・ですが、私の嘘のせいで メイは・・・!」
アン「誰にとっても愛おしい子」
アン「妬む心も生まれましょう」
アン「それでも──愛するのです」
アン「メイ様を」
アン「新たなご家族を」
アン「はじめから不幸だったわけではないはずです」

〇西洋風のバスルーム
  そうです・・・私はメイと過ごす日々が
  とても幸せでした
  とても──

〇黒
ジェシカ「ですが、もう・・・メイはおりません」
ロイド「それが貴方の罪、背負うべき十字架です」
ジェシカ「・・・はい」
ジェシカ「慈悲深き神よ、豊かな憐れみによって 私の罪を赦し、我が心をお清めください」
ロイド「神の御名において、貴方の罪を赦しましょう」
ジェシカ「アーメン」
ロイド「神に立ち返り、罪を赦されしヒトは 幸せです」
ロイド「ご安心ください」
ジェシカ「ありがとう、ございました」

〇田舎の教会

〇雪山の森の中

〇西洋の街並み
ジェシカ「お父様ッ!?」
ジェシカ「まさかッ!?」

〇黒
ジェシカ「まさかッ・・・!」

〇洋館の玄関ホール
ジェシカ「はあ・・・はあ・・・!」
メイ「お帰りなさいませ、お嬢様」
ジェシカ「ただいま──メイ!」

〇空

〇豪華な部屋
アン「くんくん」
ロイド「アーモンド臭でもしましたか?」
アン「いいえ」
ロイド「では何故?」
アン「神父様が憤慨なさるお顔を拝見したかったのです」
アン「毒物など盛るはずがない、と」
アン「『家族』を信じられないのか、と」
ロイド「怒りなど湧きません」
ロイド「あのような告解があれば気にかかるもの」
  アンがロイドへと手のひらを差し出す
  ロイドがその手をそっと包み込む
ロイド「アレルギーの類はないようです」
アン「では、私の好みまでわかりますか?」
ロイド「いいえ」
ロイド「それはヒトの心によるものですから」
アン「ええ」
アン「だからこそ、メイ様はジェシカ様の ご助言を聞き入れたのでしょう」
ロイド「お祖父様のお好みを教えていただいた からでしょうか?」
アン「『ご家族』の好みを教えていただけた からですよ」
アン「好みというのは個人的な嗜好」
アン「それをジェシカ様から教えていただけた とあれば」
アン「『家族』として受け入れられたように 感じられるでしょう」
ロイド「そういうものですか」
アン「はい」
アン「メイ様は喜んでもらいたかったのです」
アン「お祖父様に」
アン「ジェシカ様に」

〇洋館の玄関ホール
  それは──素敵な『ご家族』ですね

コメント

  • ギャグ満載のコメディから本作のようなミステリー風の味わい深い作品まで、多岐にわたる作風を意のままに操る作者さんの手腕にはいつも驚かされます。アンドロイドという今や少しノスタルジックな響きがあるテクノロジーと慈悲深い神父との組み合わせが雰囲気満点でした。どんなにテクノロジーが進歩しても、人間の心のカラクリには永久に謎の部分がありますね。

  • いい意味で裏切られて
    短編ミステリーを読んでいるようでした。
    アンがなぜ真相を知っていたのかが気になります。
    (それとも、優しい嘘だったのか…)

  • やはり世界観が良いです。アンドロイドとヒトの子。人間の葛藤とアンドロイドの想い。家族という関係性。私の中ではこの作品が最も「家族」であり「ヒューマン」です。

コメントをもっと見る(5件)

ページTOPへ