かぐや姫テイクアウト(脚本)
〇森の中
私はかぐや一族の末裔。
月からやってきて、竹から生まれた。
〇渋谷のスクランブル交差点
今は都会のオフィスで働いている。
最近、不思議に思うことがあるの。
コロナ禍になって、
かぐや一族を匂わす看板が急に増えた。
この街にかぐや一族は、私だけだと思っていたのに・・・・・・
他の末裔が押し寄せているのかな?
そんな情報は入っていないのに。
気になった私は、職場の先輩に訊いてみる。
かぐや姫「ねえ、先輩? あの看板・・・・・・」
先輩「ああ、テイクアウトね」
先輩「コロナ禍で増えたよね、テイクアウト」
あの看板って、『テイクアウト』って読むのね。
しかし先輩はカッコいい。
ずっと前から気になっていた。
私と一緒に月に行ってくれないかしら?
思い切って私は、自分の正体を匂わしてみる。
もの欲しそうな上目遣いで。
かぐや姫「実は私も・・・・・・」
かぐや姫「『テイクアウト』・・・・・・なんですよ・・・・・・」
先輩「えっ?」
先輩は驚いた顔をする。
そりゃ、そうよね。
かぐや一族がこの街にいるとは思いもしなかった、という表情。
この勢いでもう一押ししなくっちゃ。
かぐや姫「だから、お願いです」
かぐや姫「私と一緒に月に行っていただけませんか?」
先輩「つきにいく?」
先輩「あ、ああ、いいけど・・・・・・」
〇ビリヤード場
その夜、
先輩はビリヤードに連れて行ってくれた。
とてもお洒落なお店だった。
〇街の全景
帰り道、
夜景が綺麗な丘の公園で、先輩は私に尋ねる。
ちょっともじもじしながら。
先輩「ほ、本当にいいの?」
先輩「あの、その、テイクアウト・・・・・・」
かぐや姫「本当ですよ」
かぐや姫「私はTAKEから」
かぐや姫「OUTした身ですから」
先輩「嬉しいよ」
先輩「ずっと君のことが好きだったんだ・・・・・・」
先輩は私のことを抱きしめ、そっとキスしてくれたんだ。
完
「竹からout」は発想の勝利ですね。お互いに両思いなら結果オーライかも。二人で月に行くのは無理でも「蜜月(ハネムーン)」には行けそうですね。
お互い勘違いに気づき微妙な空気になると思ったら…なんて素敵な終わり方。美しい。
壮大な勘違いから始まるすれ違い恋愛、結果良ければ万々歳ですね!"Out"は理解できるのに"Take"は竹として理解するかぐや姫さんの頑なさが好きです。