100年かけてアイドルを作ったゾンビ

海せん餅

始まり(脚本)

100年かけてアイドルを作ったゾンビ

海せん餅

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〇地下の部屋
ガルシア・王・メフメト「何だこれ」
グエン・カマル「お兄ちゃんが書いた歌詞・・・かな?」

〇開けた交差点
  ゾンビが現れ溢れ

〇宇宙ステーション
  地上を捨て宇宙へ行った奴らや

〇仮想空間
  安楽の世界へ逃げた奴らは

〇荒廃した街
  食べ物は与えてくれても、生きる意味は与えてくれない

〇荒れた倉庫
  身体が死んでも心は死ななかった君は

〇地下の部屋
グエン・カマル「詩なのかな?」
イワノフ・ファタ「かっ勝手に見るなよ!?」
ガルシア・王・メフメト「ははッ悪い悪い」
グエン・カマル「・・・お兄ちゃんこの頃変だから」
グエン・カマル「会うと逃げる様に直ぐどっかに行っちゃうし」
ガルシア・王・メフメト「隠れてコソコソ何かやるのは良いがあんまり家族を心配させるなよ」
イワノフ・ファタ「さっ避けてないし!」
イワノフ・ファタ「だ、大体幼い頃から一緒に生活してきただけで家族じゃない!血だって繋がってない──」
イワノフ・ファタ「他人じゃないか!」
イワノフ・ファタ「もう関わらないでくれ!!」
グエン・カマル「あっ・・・お兄ちゃん・・・」
ガルシア・王・メフメト「・・・世話が焼ける弟だ」

〇薄暗い廊下
イワノフ・ファタ(・・・)

〇地下に続く階段
イワノフ・ファタ「はぁ」
イワノフ・ファタ(これで良いんだ)

〇荒廃した街
イワノフ・ファタ「アイツらの為にも──」

〇廃工場
イワノフ・ファタ(俺の為にも──)

〇荒れた倉庫
イワノフ・ファタ(コイツらの為にも!)
富士・桜「お父さんどうかした?」
イワノフ・ファタ「あっいや何でもない」
イワノフ・ファタ「次やるライブのステージとか曲とか考えてたんだ」
佐藤みやび「本当に人集めてやるのか?と言うか人自体集められる程居るのか?無理に──」
イワノフ・ファタ「だ大丈夫。順調だ順調」
イワノフ・ファタ「歌詞もステージも曲も人も」
(様子が変ですね 様子が変だな)
佐藤みやび「家族と喧嘩でもしたのか?」
イワノフ・ファタ「い妹に頼まれてた音楽の資料を探しに来て近くを通ったから寄っただけで、もう行くよ」
富士・桜「言われた振付を──」
佐藤みやび「何かあったんだな」
佐藤みやび「・・・家族の仲を悪くしてまで私に付き合わなくてもいいんだ」

〇劇場の舞台
イワノフ・ファタ「はぁ、怪しまれたな」
イワノフ・ファタ「アイドルのステージって感じじゃないけど」
イワノフ・ファタ「一応それっぽい事はできるし・・・」
イワノフ・ファタ「まぁ、設備が使えるなんて奇跡──いや、異常な事だけど・・・使えるなら何でも良いか」
イワノフ・ファタ「あとは観客と曲」
イワノフ・ファタ「・・・兄貴と妹の力を借りれれば」
イワノフ・ファタ「観客も曲も、それにもっと良いステージも」
イワノフ・ファタ「でも話したら駆除されて終わりだろうな」

〇荒れた倉庫
富士・桜「心配なので追いかけてきます!」
佐藤みやび「・・・」
佐藤みやび「静かだな。ずっとこうだったのに」

〇ビルの裏
佐藤みやび「こんにちは」
ゾンビ「・・・」
佐藤みやび「おい!」
ゾンビ「・・・」
佐藤みやび「はぁ、分かってた意味ないよな」

〇荒廃したデパ地下
佐藤みやび「最近は銃声を聞かなくなってきたけど 逃げる必要がなくなると暇だ」
佐藤みやび「ん?」
佐藤みやび「壊れてるか・・・」
佐藤みやび「知識も経験もないけど、まぁ直せるか。時間なら苦痛になるぐらいあるし」
佐藤みやび「それに話し相手もほしいし」

〇綺麗な図書館

〇ボロい倉庫の中
佐藤みやび「重い・・・な」

〇綺麗な図書館

〇ボロい倉庫の中

〇綺麗な図書館

〇ボロい倉庫の中

〇荒れた倉庫
富士・桜「人に喜んで貰えると凄く嬉しいんです! だから願い事や欲しい物は何ですか?」
佐藤みやび「・・・また大勢でわいわいしたいなぁ。あと生きがい、生きる意味が欲しい」
富士・桜「アイドルはどうでしょうか! 私がアイドルになります!」
佐藤みやび「アイドル・・・昔の事すぎて殆ど思い出せないな」
佐藤みやび「最後に見たのは私がゾンビになる前だから・・・百年ぐらい前か」
富士・桜「じゃあ調べにいきましょう!」

〇本屋
(アイドル・・・アイドル・・・あっ!あった)
「!」
イワノフ・ファタ「ゾッ、ゾンビ!?」
佐藤みやび(まずい・・・)
富士・桜「こんにちは!私はアイドルを目指していてライブをやるので見に来て下さい!」

〇荒廃した改札前
富士・桜「お父さんどこに行くんですか?」
イワノフ・ファタ「か、観客を探しに」
富士・桜「ついて行って良いですか?」

〇新幹線の座席
イワノフ・ファタ「妹は幼い頃から──」

〇地下の部屋
幼い頃のグエン・カマル「きいてきいて!」

〇豪華な客間
ガルシア・王・メフメト「幼い頃からずっと弾いてるから上手いなァ」
グエン・カマル「どうかな?」
イワノフ・ファタ「いつも通り良かったんじゃない」
グエン・カマル「どこか悪かった?」
イワノフ・ファタ「いや、どこも悪くなかったと思う」
グエン・カマル「お願いがあるんだけど──」
イワノフ・ファタ「新しい楽器とかが欲しいのか?それなら俺が探してくる。暇だし」

〇新幹線の座席
イワノフ・ファタ「楽しそうに演奏するし上手いし聴いてる俺も昔は楽しかった」
イワノフ・ファタ「兄貴はこの地域の地球に残った生身の人間達のリーダーというか代表かな」

〇荒廃した改札前
ガルシア・王・メフメト「どうしてここに居る!?」
イワノフ・ファタ「妹が昔の流行曲を知りたい──」
ガルシア・王・メフメト「台風が来ると言っただろ!」
社会管理システム「この度は地震により損傷した鉄道・食料工場の復旧にご協力頂きありがとうございました」

〇駅のホーム
ガルシア・王・メフメト「ここまで登れば大丈夫だろう」
イワノフ・ファタ「さっきのヤツ帰ったのかよ」
ガルシア・王・メフメト「社会を維持する為の最低限の事しかしてくれないからな・・・」
ガルシア・王・メフメト「チッ外したか」
ガルシア・王・メフメト(逃げ場は・・・ない。やむを得ん!)

〇荒廃した街

〇駅のホーム
ガルシア・王・メフメト「伏せろ!」

〇大きい研究施設
宇宙からの使者「いつもありがとうございます」
ガルシア・王・メフメト「こちらこそありがたいです。ゾンビの研究が進めば予防や治療も可能になるでしょうから」
イワノフ・ファタ「(俺達はゾンビじゃないのにあんな防護服なんか着て)」
ガルシア・王・メフメト「(おい!聞こえるだろ!)」
宇宙からの使者「いえ、私もその通りだと思いますよ。ですがこれを脱ぐと私は帰れなく──」
使者の護衛2「危険です!離れて下さい!」
使者の護衛1「離れて下さい!従わない場合ゾンビと判断し排除します!」
宇宙からの使者「すみません。近づき過ぎました」
宇宙からの使者「この骨がゾンビの物であると確認でき次第、約束の報酬をお届けします」

〇新幹線の座席
イワノフ・ファタ「大きな不安や不満も無い生活だったけど生きる意味や楽しみもなかった」
イワノフ・ファタ「妹の演奏は素晴らしいと思う。でもそれ以外何も無い生活は退屈だった」
イワノフ・ファタ「だから妹の為に昔のアイドルの曲を探している時にお前達に会って興味が湧いたんだ」

〇体育館の舞台
富士・桜「どうですか!?」
イワノフ・ファタ「楽しかったよ」
富士・桜「じゃあ次のライブは一緒に作りましょう!」

〇荒廃したショッピングモールの中
イワノフ・ファタ「ここには色々な物があるからライブに使える物もある筈だ」
佐藤みやび「ショッピングモールか・・・まだゾンビが居ない子供の頃に家族と来た気がするな・・・」
イワノフ・ファタ「壁のカレンダーに書かれてる日付は百年以上前なんだけど・・・」
佐藤みやび「この娘の修理に数十年かかったからな・・・」
イワノフ・ファタ「ずっと独りで・・・」
富士・桜「お母さん!お父さん!あっちに何かありますよ!行きましょう!」
「お、お父さん!? え・・・お母さん?」

〇大きな公園のステージ
イワノフ・ファタ「出来たぞ!」
佐藤みやび「その怪我・・・どうしたんだ?」
イワノフ・ファタ「ス、ステージの設営とは関係ないからな!」
富士・桜「歌います!」
佐藤みやび「はぁ」
佐藤みやび「ふふっ、何だよその格好。怪我しない様に次は気をつけろよ」

〇荒れた倉庫
イワノフ・ファタ「次はちゃんとしたステージで観客を入れて曲もアイツの為に新しく用意してライブをやる」

〇新幹線の座席
イワノフ・ファタ「お前達に会ってから毎日が楽しかった。だからお前達の為に──」
???「鬱陶しいな!お前にはお前の家族がいるんだろ!もうこれ以上私に関わるな!」
イワノフ・ファタ「え!?き、聞いて、いや、通話機能なんて──」
???「それにお前の兄はゾンビを狩ってるんだろ! 私が──」
イワノフ・ファタ「だ、だから家族との縁を切って──」
???「お前は馬鹿か!!そんな簡単に縁を切るな!!!」
???「私が欲しくて何年も何十年もかけて手に入れたものをそんな軽々しく捨てるな!!!!」
イワノフ・ファタ「俺だって必死になって考えて決めたんだよ!!俺がゾンビと関わってるって知られたら」
イワノフ・ファタ「家族に迷惑がかかるかもしれないし、研究の材料されるかもしれない」
イワノフ・ファタ「でも俺は生きる希望を与えてくれたお前を幸せにしたいんだよ」
???「研究の為に無理矢理、何かをする事はありませんよ。可能であればご協力頂きたいですが」
???「私は先程の話に出てきたゾンビの骨を受け取った者です」
イワノフ・ファタ「こ、今度は何だよ!?」
???「すみません。お兄様から弟を調べてくれと頼まれまして監視カメラの映像や通信記録等を」
???「確認している時に、未知の端末が通信しているのを確認し安全の為にこちらで」
???「制御できる様にしました。どうやらそれはこのアンドロイドの様でして・・・先程からの」
???「お話をご兄妹はご覧になっています。それとこのアンドロイドに記録されたデータを」
???「お渡ししました。貴方様に無断でプライベートを──」
イワノフ・ファタ「なっ、なな、なんだって!!!!!」

〇荒廃した遊園地
  数日後
ガルシア・王・メフメト「まさか痴話喧嘩を見せられるとは思わなかったぞ!ワハハ!」
イワノフ・ファタ「痴話喧嘩じゃねェよ!それに勝手に見たんだろ!!」
グエン・カマル「2回も覗き見ちゃってごめんね。今日は頑張るから!!」

〇コンサートホールの全景
佐藤みやび「本当に使わせて頂いても──」
ガルシア・王・メフメト「いいですよ!このステージも──」

〇大きい研究施設
宇宙からの使者「報酬は娯楽ですね」
ガルシア・王・メフメト「愚弟がこの頃退屈そうにしているので」

〇コンサートホールの全景
イワノフ・ファタ「だから使えたのか」

〇劇場の舞台

〇コンサートホールの全景
佐藤みやび「ちゃんと見つけていたのか」
イワノフ・ファタ「じゅ、順調だと言っただろ」
ガルシア・王・メフメト「でも人はこんなに集められなかったんだろ」
イワノフ・ファタ「それは──」

〇コンサート会場
「みんなー来てくれてありがとう!」

〇コンサートホールの全景
ガルシア・王・メフメト「地球のゾンビなんて宇宙の奴らも電脳世界の奴らも機械の体の奴らも気にしちゃいないさ」

〇コンサート会場
富士・桜「お父さんお母さん見ててくださいね!」
グエン・カマル「こんな大勢の前で演奏するのは初めてですが頑張ります!」

〇コンサート会場
グエン・カマル「はぁはぁ」
「ありがとうございました!」

〇ホールの舞台袖
グエン・カマル「楽しくて嬉しくて」
グエン・カマル「またやりたいです!」
ガルシア・王・メフメト「楽しそうだな」
イワノフ・ファタ「兄貴もだろ」
女性アイドルサイボーグ「素晴らしいライブでした」
男性アイドルサイボーグ「もしよろしければ私達サイボーグの国に来て巡業しませんか」
女性アイドルサイボーグ「この様子だと人気出ると思いますよ」
富士・桜「行きます!家族5人で!」
  おわり

コメント

  • 字数設定がある中、重厚な世界設定とヘビーなテーマがしっかり詰め込まれていて、読み応えがスゴいですね!笑顔にさせてくれるラスト、とっても気持ちがいいです!

  • 生きてさえいればなんでもできると言いますが、死んでからでも信念があればアイドル作れちゃうんですね。人間もゾンビもサイボーグも、本当の敵はお互いではなくて「退屈」なのかもしれませんね。

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