エピソード1(脚本)
〇幼稚園
ある夕暮れの保育園。
そこには親の迎えを待つ3人の子供がおりました。
神奈(カンナ)「ねえ・・・」
圭太郎(ケイタロウ)「うん?」
神奈(カンナ)「聖書って本見つけてさ」
圭太郎(ケイタロウ)「おん」
神奈(カンナ)「なんかカミって人が人を作ったんだって」
圭太郎(ケイタロウ)「それこないだ言ってた進化論と違わね?」
神奈(カンナ)「うん。ごめん」
圭太郎(ケイタロウ)「それじゃあ猿いらないじゃん!」
織姫(オリヒメ)「なんの話ー?」
「お前にはわからんよ」
織姫(オリヒメ)「えー?」
織姫(オリヒメ)「マナちゃんの車だ!!」
愛菜(マナ)「すいませーん!! 会議が長引いてしまって・・・」
保母さん「いえいえ。みんないい子で待ってましたよ」
織姫(オリヒメ)「まーーーなーーーーちゃぁああん!!」
愛菜(マナ)「コラッ!! 危ないでしょ!」
織姫(オリヒメ)「えっへへー」
保母さん「オリヒメちゃんは本当にお母さんが好きねえ」
織姫(オリヒメ)「”マナちゃん”だよ?」
愛菜(マナ)「それでは帰りますね。ありがとうございました!!」
織姫(オリヒメ)「ケイちゃん! カンちゃん! はやく~!!」
「へいへい」
「せんせい、さようなら」
保母さん「さようならー」
保母さん「・・・やっぱり不思議な三つ子ちゃんねえ」
〇車内
神奈(カンナ)「さっきの続きだけどさ・・・」
圭太郎(ケイタロウ)「おん」
神奈(カンナ)「最初に生まれた人間がアダムさんってひとでさ」
圭太郎(ケイタロウ)「うん」
神奈(カンナ)「男だって」
圭太郎(ケイタロウ)「うん?」
神奈(カンナ)「そんで奥さん貰ってさ。イブさんて人。その人は女」
圭太郎(ケイタロウ)「・・・なんで?」
神奈(カンナ)「その二人から子供が生まれたんだって・・・」
圭太郎(ケイタロウ)「・・・・・・?」
神奈(カンナ)「意味わかんなくない?」
圭太郎(ケイタロウ)「男が子供生めるんか?」
織姫(オリヒメ)「また二人で喋ってる!! なんの話!?」
「・・・・・・」
織姫(オリヒメ)「無視やだああ!!」
愛菜(マナ)「・・・・・・」
愛菜(マナ)「もうすぐ着くわよ」
〇シックな玄関
織姫(オリヒメ)「たっだいまー」
愛菜(マナ)「手洗いとうがい!!」
織姫(オリヒメ)「えっへへー」
愛菜(マナ)「まったく・・・」
圭太郎(ケイタロウ)「ゲームしてていい?」
愛菜(マナ)「夕御飯になったら呼ぶわね」
圭太郎(ケイタロウ)「あーい。カンナもやろ」
神奈(カンナ)「うい」
愛菜(マナ)「・・・・・・」
愛菜(マナ)「まったく・・・なんてところから常識を学んでくるのよ・・・」
〇部屋の前
愛菜(マナ)「帰ったわよー」
???「おかえりなさい」
愛菜(マナ)「・・・仕事中ごめん。ちょっといい?」
???「? どうぞ」
〇書斎
愛菜(マナ)「・・・・・・」
沙夜(サヨ)「どうしました? そんな顔をして」
愛菜(マナ)「それがね・・・子供たちにね?」
沙夜(サヨ)「はい」
愛菜(マナ)「母親しかいない家族がおかしいってバレそうなの・・・」
沙夜(サヨ)「・・・・・・いや、は?」
愛菜(マナ)「だから!! バレそうなの!!」
沙夜(サヨ)「いや・・・そうではなく。むしろ何故今になって? 圭太郎も気にする歳でしょう」
愛菜(マナ)「そりゃあ、私が頑張ってきたんだもん!!」
沙夜(サヨ)「は?」
愛菜(マナ)「『父母の家庭は深い事情があるから、気にしちゃ駄目よ。一般的には母母だから』って!」
愛菜(マナ)「それがまさか旧約聖書引っ張り出してくるなんて・・・」
愛菜(マナ)「こうなったらイブとリリスの絡みを持ち出すしか・・・」
沙夜(サヨ)「愛菜ッ!!」
愛菜(マナ)「何!?」
沙夜(サヨ)「3人の教育係をかって出たのはこの為ですか!?」
愛菜(マナ)「そ、そうよ!」
沙夜(サヨ)「そんな偏った教育が罷り通るはずがないでしょう!!」
愛菜(マナ)「いいじゃないっ!! 子供に変な目で見られたくないんだもん!!」
沙夜(サヨ)「困るのは子供達です!」
愛菜(マナ)「何よ!! いいじゃん!!」
〇高級マンションの一室
「・・・・・・」
織姫(オリヒメ)「あーっ!? ステージ戻らせてよぉ!!」
織姫(オリヒメ)「うう~・・・。びりっけつ・・・」
神奈(カンナ)「ねえ」
圭太郎(ケイタロウ)「うん?」
神奈(カンナ)「うちさあ・・・」
神奈(カンナ)「なんで母親”3人”いるん?」
圭太郎(ケイタロウ)「『3人子供がいるから、3人母親がいるのは当たり前』って母さん(愛菜)が言ってたけど・・・」
神奈(カンナ)「そのわりに父さん呼びもさせてくるじゃん」
圭太郎(ケイタロウ)「うーん・・・」
神奈(カンナ)「そもそも子供一人で生む計算なら、結婚も必要ないわけで・・・」
織姫(オリヒメ)「戸籍上はお父さんが父で、マナちゃんが母だってお母さんが言ってたよ」
織姫(オリヒメ)「あれっ? なんでゲーム消したの?」
圭太郎(ケイタロウ)「オリ」
織姫(オリヒメ)「なあにー?」
圭太郎(ケイタロウ)「知ってること吐けやッ!!」
織姫(オリヒメ)「えっ?」
神奈(カンナ)「なんでウチには3人の母さんがいるの?」
織姫(オリヒメ)「えっ、いや・・・。えーっとわたし達は性交によって産まれたわけじゃなくて、人工受精だから・・・」
「もっと分かりやすく!!」
織姫(オリヒメ)「えーっと・・・」
織姫(オリヒメ)「その組み合わせとしてね・・・」
織姫(オリヒメ)「マナちゃんがお母さんでお母さんがお父さんなのがケイちゃん」
織姫(オリヒメ)「お父さんがお母さんで、マナちゃんがお父さんなのがカンちゃん」
織姫(オリヒメ)「お母さんがお母さんで、お父さんがお父さんなのがわたし!!」
「・・・・・・」
圭太郎(ケイタロウ)「とりあえず・・・」
神奈(カンナ)「怒ろう」
織姫(オリヒメ)「えっ?」
織姫(オリヒメ)「もしかして喋っちゃ駄目だったかも!!」
〇シックな玄関
由紀恵(ユキエ)「あいむほーむ!! ユキエママのお帰りであーる!!」
由紀恵(ユキエ)「みんなお休みかしら?」
〇高級マンションの一室
由紀恵(ユキエ)「あれ? ほんとに?」
???「おかえり~」
由紀恵(ユキエ)「わっ!? いたの?」
織姫(オリヒメ)「お母さん・・・お腹空いた・・・」
由紀恵(ユキエ)「ご飯まだなの? どゆことー?」
由紀恵(ユキエ)「姫ちゃん、皆は?」
織姫(オリヒメ)「・・・・・・」
由紀恵(ユキエ)「お腹痛めて産んだ我が子のそんな表情初めて見たわね」
織姫(オリヒメ)「・・・あっちに皆いる」
由紀恵(ユキエ)「どれどれー?」
〇黒
つまりだ
権野愛菜を母親に、
権野由紀恵を父親としているのが、
権野圭太郎。
権野沙夜を母親に、
権野愛菜を父親としているのが、
権野神奈。
そして権野由紀恵を母親に、
権野沙夜を父親としているのが、
権野織姫。
〇古めかしい和室
圭太郎(ケイタロウ)「ということでいいんだよな?」
神奈(カンナ)「な?」
愛菜(マナ)「そうですうううう・・・」
沙夜(サヨ)「あの・・・神奈、この体勢は母にはきつくてですね・・・。膝が・・・」
神奈(カンナ)「やっと本の中のことに納得がいった」
圭太郎(ケイタロウ)「違和感あって当たり前だもんなあ? 深い事情があるのはどっちだって話よ」
圭太郎(ケイタロウ)「親子の縁ってどうやったら切れんだっけ?」
神奈(カンナ)「まずは第三者にアピールしなきゃ」
愛菜(マナ)「ごめんにゃしゃああああああああいッ!!」
沙夜(サヨ)「とんでもないことを言い出さないで下さい。 ・・・本気じゃないですよね?」
由紀恵(ユキエ)「・・・・・・」
由紀恵(ユキエ)「あちゃあ・・・。だから愛菜はちゃんと見とけって言ったのに・・・」
由紀恵(ユキエ)「逃げよっと」
〇高級マンションの一室
由紀恵(ユキエ)「姫ちゃん! 私達だけでもご飯食べちゃおうか!!」
由紀恵(ユキエ)「!」
織姫(オリヒメ)「すぅ・・・。すぅ・・・」
由紀恵(ユキエ)「こういうとこ沙夜そ~っくり!!」
由紀恵(ユキエ)「・・・・・・」
由紀恵(ユキエ)「これからもきっと大変だろうけど・・・」
由紀恵(ユキエ)「よろしくね、私達の天使達!!」
「ひいいいいいいいいいいいッ!?」
由紀恵(ユキエ)「その前に家庭の危機かな?」
織姫(オリヒメ)「みん・・・な仲良くね・・・」
これは、近い未来に
もしかしたらあり得るかもしれない家族のお話。
近未来のジェンダーフリーの社会では旧約聖書の理解や解釈も変わってくるんでしょうね。現在は血のつながりのない親子のステップファミリーも多くなりましたが、将来的にジェンダーのミックスカップルが増えてくると状況把握はお手上げですね。結論としては、みんな仲良く暮らせたらそれが一番ですね。
びっくりです!そして途中で頭の整理が必要になりましたww 新しい形の家族形態ですが、6者6様のこの家族、とっても楽しそうですね!
なんと……確かに近未来にあり得そうな家族ですね!
混乱しかけましたが、母親とそっくりなので整理しやすいですね。ここに至った経緯も気になります。
会話のテンポが良くて楽しかったです😄