すみれ座を探して

つとむュー

すみれ座を探して(脚本)

すみれ座を探して

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すみれ座を探して
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〇街の全景
菜々「ねえ、すみれ座って知ってる?」
  幼馴染の菜々が、ポツリと呟く。
  夜空を見上げながら。
  空には月はなく、星々が綺麗に輝いている。
  でも、すみれ座なんて、聞いたことがない。
  「なんだそれ? 場末の映画館?」
菜々「はぁ? 星見てんだから星座に決まってんでしょ!」
  「ゴメンゴメン、僕が悪かったよ。ちゃんと聞くからさぁ・・・・・・」
  いつもの癖でつい菜々をからかってしまう。
  七夕祭りの後、二人でこの公園にやってきた。
  見慣れた顔とはいえ、浴衣姿はちょっと色っぽい。
菜々「この星々のどこかに、お父さんの好きだったすみれ座があるの」
  菜々はゆっくりと話し始める。
  中学生の頃、星座の絵葉書をお父さんにもらったこと。
  そこに書かれていたのは、七夕祭り、夏の星座。
  そして「すみれ座が一番」というメッセージ。
菜々「その直後だったんだ、お父さん死んじゃったの・・・・・・」
  僕は慌てて話題を戻す。
  「それでその絵葉書は?」
菜々「無くなっちゃった・・・・・・」
菜々「いつもそばにと、本の栞にしてたのがいけなかったのよね」
菜々「あーあ・・・・・・」
  お父さんのメッセージが書かれた絵葉書。
  今はもう無くしてしまったという。
  それならば、僕に出来ることは一つだけだ。
  「じゃあさ、一緒にすみれ座を探してやるよ」
  僕がそう言うと、菜々の瞳が輝いた。
「ホント!?」
  「捜索報告会は、そうだな・・・・・・来年の七夕祭り。それでいい?」
菜々「うん。私、期待してるから・・・・・・」
菜々「ね!」

〇図書館
  それから僕は、図書館に通って星座の本を調べた。
  でもすみれ座なんて、どの本にも載っていない。
  結局、報告会は開かれぬまま僕達は高校を卒業した。
  そして菜々は、北の方の短大へ進学した。

〇男の子の一人部屋
  連絡も無く一年が過ぎたある日。
  部屋の片隅から古い本が出てきた。
  昔、菜々から借りていたやつだ。
  そういえばあいつとの約束、ついに果たせなかったな・・・・・・
  そんなことを考えていると
  本から何かが落ちた。
  「えっ、星座の絵葉書?」
  そう、それは例の絵葉書だった。
  拾い上げた僕は、裏の文面に目を通す。
  そこに書かれていたのは、こんな言葉だった。
  『菜々、smileが一番だよ』
  それはかつて彼女が話していた、お父さんからのメッセージ。
  「すみれ、か・・・・・・」
  「バカだな、あいつも」
  菜々の輝く瞳、それがすみれ座だったのだ。
  カレンダーを見る。週末は七夕だ。
  報告会の開催を伝えようと、僕はスマホを手に取り、一つ深呼吸した。
  完

コメント

  • お父さんの心の中だけで輝き続けてきたすみれ座が、時を経て語り手である男の子の瞳を通して彼の心の中で再び輝きだすのだと思うと感慨深いですね。

  • とっても甘く優しい短編物語に、胸がじんわりとします。今は亡きお父さんの気持ちが届いたとき、菜々さんはどんな反応をするのだろうと想像したくなりますね。

  • なんだか胸がじんわり温かくなる作品でした😊
    1年後報告会をしよって言う約束は、1年後も一緒にお祭りに行く口実だったのかなと思いました😌
    1年後の報告会は実現できなかったけれど、もう一度会う機会が出来たし、お父さんからの絵葉書も見つかって、本当に良かったです!

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