エピソード14(脚本)
〇古いアパート
〇CDの散乱した部屋
円城寺敏郎「え!」
円城寺敏郎「なんだこれ? めっちゃフォロワー増えてんじゃん!」
スマホが鳴る。
『丸山マネージャー』の表示。
円城寺敏郎「どうしたんすか?」
円城寺敏郎「・・・ え!?」
円城寺敏郎「今からですか?」
〇オフィスビル前の道
〇芸能事務所の受付
円城寺敏郎「おはようございます」
丸山祐子「あなた、何よその格好は! 正装で来なさいと言ったでしょ」
円城寺敏郎「何言ってんすか。 俺にとってはこれが正装ですけど?」
丸山祐子「スーツくらいあるでしょう」
円城寺敏郎「金なくてこないだ売っちゃいました」
丸山祐子「はー。時間がないからこれで行くわ。」
丸山祐子「いい? とにかく謝ること。 社長、すっごく怒ってるんだから」
円城寺敏郎「わかってますって。 でも、俺、なんも悪いことしてないっすよ? 悪いのは全部佐伯っすから」
丸山祐子「それから、佐伯の文句は絶対に禁止よ」
円城寺敏郎「なんでですか?」
丸山祐子「いいから言う通りにして」
円城寺敏郎「・・・わかりました」
〇豪華な社長室
パソコンの画面には『残念すぎるニュース』というサイトが表示されている。
「エキストラ俳優の円城寺敏郎氏、役欲しさにスキンヘッドになるも、佐伯謙介のせいでハゲ損になる。
本人は佐伯のことをバカ俳優呼ばわり」と書かれており、その下にはコメントが並んでいる。
こいつ君恋で観たことある。
くっそ演技が下手糞だったw
持ってる人が何でも持ってるなら、持ってない人は何にも持ってないな。
これが人生
芝居やってもねーやつがうだうだ言ってんじゃねー。
お前みたいなやつは今後観なくてよーし
うっせー、ボケ!
バカ俳優1人の不祥事くらいで事務所が潰れるか
円城寺敏郎「なんだ・・・これ・・・」
高梨順二「それはこっちの台詞だ! お前は、これまで私と裕次郎が築き上げて来たものを台無しにするつもりか!」
円城寺敏郎「・・・いえ、そんなつもりは」
高梨順二「だったらこれはなんだ!」
円城寺敏郎「これは、その、ノリって言うか」
高梨順二「ノリだと? そんなもので今後観るななどと抜かしたのか?」
高梨順二「テレビ局を敵に回す発言だぞこれは」
円城寺敏郎「・・・すんません」
高梨順二「それに、随分と謙介のことを悪く言っているな」
円城寺敏郎「いや、でも。 それは、あいつが悪いんじゃないすか! あいつがあんなこと」
円城寺敏郎「・・・」
高梨順二「うちにとってタレントは商品だぞ! 謙介は、うちが長年に渡り大事に育ててきた役者だ」
高梨順二「それを、お前みたいな新参者が」
円城寺敏郎「会社がちゃんと教育しないからあんなことになったんじゃないですか!」
丸山祐子「円城寺! いい加減にしなさい」
円城寺敏郎「だってそうじゃないですか。 だいたい、あいつ、現場でだってめちゃくちゃじゃないっすか」
円城寺敏郎「きっと親の教育だって——」
高梨順二「これ以上謙介の文句を言うんじゃない! 謙介は今反省してるんだ!」
円城寺敏郎「・・・なんであいつばっかり」
高梨順二「なんだ? はっきりと言え」
円城寺敏郎「なんで、佐伯ばっかり贔屓するんすか! だいたい、処分だって甘すぎますよ」
丸山祐子「ちょっと」
高梨順二「貴様、もう一遍言ってみろ!」
円城寺敏郎「何度でも言いますよ! あんな立場分かってない奴はクビにして、俺をもっとテレビに出してくださいよ!」
高梨順二「き・・・さ・・・ま・・・」
祐子、頭を抱える。
高梨順二「貴様こそクビだ! とっとと出てけ!」
円城寺敏郎「ええ! なんで? なんでそういう流れになるんすか?」
高梨順二「うるさい! 貴様の顔など、二度と見たくない!」
〇オフィスビル前の道
円城寺敏郎「クビって、冗談すよね?」
丸山祐子「・・・・・・」
円城寺敏郎「俺、そんなまずいこと言いましたかね? 確かに、テレビを観るなって言ったのは申し訳ないと思いますけど」
円城寺敏郎「でも、俺なんかが言ったところで」
丸山祐子「佐伯の方よ」
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