ママはアイドル(脚本)
〇おしゃれなリビングダイニング
一色 心春(こはる)「ただいま!」
一色 心春(こはる)「Tステ始まっちゃう!」
一色 心春(こはる)「良かった!間に合った!」
一色 心春(こはる)(あれ録画してある?)
一色 颯士郎(そうしろう)「心春!」
一色 心春(こはる)「うわ!パパなに!」
一色 颯士郎(そうしろう)「帰ってきたと思ったら部屋を走り回って騒々しい!」
一色 心春(こはる)「だってTステにママが出るんだよ! リアタイしたいじゃん!」
一色 心春(こはる)「あ、ママ!」
うちのママはアイドルグループ・カナリアの二期メンバーだ
一色 心春(こはる)「カナリアの中でママが一番可愛い・・・」
一色 心春(こはる)「絶対カナリアのセンターになれるよ!」
一色 心春(こはる)「パパもそう思うでしょ?」
一色 颯士郎(そうしろう)「・・・」
一色 颯士郎(そうしろう)「洗い物片付けたいからさっさと夕飯を食べろ」
一色 心春(こはる)「えっ・・・でも」
一色 颯士郎(そうしろう)「今夜はお前の大好物のカレーだ」
一色 心春(こはる)「カレー・・・」
一色 心春(こはる)「・・・手洗ってきます」
一色 颯士郎(そうしろう)「よろしい」
〇教室
翌日
友人「心春、見たよ!昨日のTステ!」
友人「カナリアの新規メンバーに選ばれた心春のお母さん凄すぎ!」
友人「私のお母さんと同い年なんて、信じられん!若いよね!」
一色 心春(こはる)「えへへ」
一色 心春(こはる)「昔、ママ事務所にスカウトされて、アイドルとしてプロデビューするところまでいってたらしいんだ・・・」
友人「すごいじゃん!」
友人「なんでプロにならなかったの?」
一色 心春(こはる)「それは・・・」
友人「やば!授業始まっちゃう!」
友人「お昼にゆっくり話聞かせて!」
一色 心春(こはる)「うん!わかった!」
一色 心春(こはる)(ママが一度夢を諦めたのは)
一色 心春(こはる)(わたしのせい・・・)
〇飾りの多い玄関
一色 心春(こはる)「ただいまー!」
一色 心春(こはる)「ママの靴だ!」
一色 心春(こはる)「久しぶりに三人でごはん食べられる!」
〇おしゃれなリビングダイニング
一色 颯士郎(そうしろう)「さくら、アイドル活動をやめてほしい・・・」
一色さくら「えっ・・・」
一色 心春(こはる)「えっ?」
一色 心春(こはる)「パパ!なんで!」
一色 颯士郎(そうしろう)「心春、帰っていたのか・・・」
一色 心春(こはる)「辞めろって一体どうして?」
一色 心春(こはる)「ママがようやく夢を叶えたんだよ!」
一色 心春(こはる)「カナリアのオーディションだって頑張って合格したのに!」
一色 颯士郎(そうしろう)「さくらがアイドルのままだといろいろと困るんだ・・・」
一色 颯士郎(そうしろう)「・・・これから書斎で仕事するから邪魔しないでくれ」
一色 心春(こはる)「ちょっと!パパ!」
一色さくら「颯士郎さん・・・」
一色 心春(こはる)「なにあれ!ひどくない?」
一色さくら「いいのよ、心春」
一色さくら「心春にも迷惑をかけてるでしょ? 家事も颯士郎さんにほとんどしてもらってるし・・・」
一色さくら「アイドルを辞めたらまたゆっくり家族で過ごせるようになるわ」
一色 心春(こはる)「アイドルになれたのはお母さんが頑張ったからじゃん!」
一色 心春(こはる)「パパがなにを言おうとも──」
一色 心春(こはる)「わたしはママの味方だからね」
一色さくら「・・・ありがとう、心春」
〇巨大ドーム
一色 心春(こはる)(ママがカナリアに加入してからの初ライブ!)
一色 心春(こはる)(緊張してきた・・・)
一色 心春(こはる)(せっかくママが二人分チケット用意してくれたのにパパ来なかったな)
一色 心春(こはる)(とりあえず物販に行ってペンライトを・・・)
カナリア古参A「ねぇ、カナリアの新メンバーどう思う?」
一色 心春(こはる)(新メンバーについて話してる?)
カナリア古参B「新メンバーマジねぇわ! 一色さくらなんて、おばさんじゃん」
カナリア古参A「多様性ってやつじゃないの?」
一色 心春(こはる)(ひどい・・・なんでそんなこと言うの?)
一色 心春(こはる)(恐くて言い返せないのが悔しい・・・)
一色 颯士郎(そうしろう)「お前らに一色さくらのなにがわかる!」
一色 心春(こはる)「パパなんで・・・?」
一色 颯士郎(そうしろう)「彼女は優しくて美しい最高の女性だ!」
一色 颯士郎(そうしろう)「女神と言っても良い!」
一色 颯士郎(そうしろう)「そんな彼女を貶めるのは許さない!」
一色 心春(こはる)「パパ・・・」
一色 心春(こはる)(でも、ちょっと恥ずかしい)
カナリア古参B「うわガチ勢かよ・・・」
一色 心春(こはる)(ファンの人もドン引きしてる・・・)
一色 颯士郎(そうしろう)「ガチ勢とはなんだ?」
カナリア古参B「かかわらんとこ・・・」
そう言って二人組は消えていった
〇コンサート会場
わたしとパパはホールに入った
一色 心春(こはる)「神席じゃん!関係者つよつよじゃん!」
一色 颯士郎(そうしろう)「心春、ちゃんとした日本語使いなさい」
一色 心春(こはる)「はーい!」
一色 心春(こはる)「・・・ママのアイドル活動反対してたから、パパはライブに来ないかと思った」
一色 颯士郎(そうしろう)「俺は今だって反対だ。なぜなら──」
一色 颯士郎(そうしろう)「あんな可愛い衣装を着た、さくらの姿を日本中に見られるのがいやだ!」
一色 心春(こはる)「やだー!ただの嫉妬じゃん!」
一色 心春(こはる)「同担拒否じゃん!」
一色 心春(こはる)(なんだ!心配して損した・・・)
一色 颯士郎(そうしろう)「同担拒否?」
一色 心春(こはる)「あ、そろそろ始まるみたいだよ」
〇コンサート会場
一色さくら「カナリアのメンバーとして加入しました一色さくらです。宜しくお願いします!」
一色 心春(こはる)「ママー!最高に可愛いよー!」
一色 心春(こはる)「ママの卵焼きは世界一だよー!」
一色 颯士郎(そうしろう)「さくらー!一番輝いてるぞ!」
一色 颯士郎(そうしろう)「さくらー!結婚してくれ!」
一色 心春(こはる)「いやパパと結婚してるでしょ!」
一色 颯士郎(そうしろう)「そうだった!」
〇満車の地下駐車場
ライブ終演後──
一色 心春(こはる)「あのさ──」
一色 心春(こはる)「パパ控えめに言って気持ち悪かったよ」
一色 颯士郎(そうしろう)「年甲斐もなく熱くなりすぎた・・・」
一色 心春(こはる)「でもママが楽しそうで良かった!」
一色 心春(こはる)「だってママが夢を諦めたのは私のせいだから・・・」
一色 颯士郎(そうしろう)「心春?」
一色 心春(こはる)「ママまだかな・・・」
一色さくら「二人とも来てくれたのね!」
一色 心春(こはる)「パパが車で来たからいっしょに帰ろう?」
一色さくら「ありがとう」
一色 心春(こはる)「パパ凄かったんだよ!!」
一色さくら「えっ?」
一色 心春(こはる)「ママのことすごく応援していた」
一色 心春(こはる)「辞めてほしいって言ってたの ただの嫉妬だったよ!」
一色 颯士郎(そうしろう)「嫉妬言うな・・・」
一色 心春(こはる)「だから目指すはカナリアのセンターだよ!」
一色 颯士郎(そうしろう)「お前はほんとすごいことをさらっというな」
一色 心春(こはる)「パパはセンターのママ見たくないの?」
一色 颯士郎(そうしろう)「それは見たい・・・」
〇車内
一色 心春(こはる)「ママ、疲れてない?家に着くまで寝て良いよ」
後部席の隣に座るママに私は尋ねた
一色 颯士郎(そうしろう)「まあ運転するのは俺だけどな」
一色さくら「ありがとう」
一色さくら「でも、あまりに気分が舞い上がって寝れそうにないわ・・・」
一色 心春(こはる)「ママの長年の夢だったもんね!」
一色 心春(こはる)「わたしがいたからママは夢を諦めたんだよね・・・」
一色さくら「えっ?」
一色 心春(こはる)「私が産まれなければママはもっと早く・・・」
一色さくら「心春!」
ママは私を抱き締めた
一色 心春(こはる)「わっ!」
一色さくら「あなたが産まれてこなければ良かったなんて思ったことないわ!」
一色さくら「貴方を授かってどんなに嬉しかったか!」
一色さくら「私は頼りない母親だけど貴方は私を一心に信じてくれる」
一色さくら「あなたは私にいつだって勇気をくれる」
一色さくら「だから私はまた夢へと挑戦できたのよ!」
一色 心春(こはる)「ママにとって私は邪魔じゃないの?」
一色さくら「心春のおバカさん」
一色さくら「そんなわけがないでしょ?」
一色さくら「あなたが大好きよ」
一色 心春(こはる)「うん・・・うん」
一色 心春(こはる)「私もママが大好き」
子供の手が離れた母親が仕事に復帰するのはよくあることで、その仕事がたまたまアイドルだっただけでなんの問題もないですよね。作中にも出てきた「多様性」をこういう形で社会が受け入れるのもアリだなあと思います。「同担拒否?」ってなるお父さんが可愛かった。
自分の母親が現役アイドルだったらしんどいけど、既婚者アイドルがいても面白いなと思う。パパが同担拒否なのは、おもろすぎだし、娘も応援していて、いい家族!
自分の現実とは程遠いと感じるストーリーですが、家族が一丸になるってこんなことなんだなあと思いました。旦那さんの気持ちもすごくわかるし、でも大好きな人のためなら許せるのですね。