こちら異世界派遣会社です!

カプセル

当店の日常(脚本)

こちら異世界派遣会社です!

カプセル

今すぐ読む

こちら異世界派遣会社です!
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇綺麗な会議室
  ────小さな会議室にて
天井「────いかがでしょうか・・・・・・」
客A「う~~ん・・・・・・」
  話し合い開始から既に一時間以上が経過していた。
  客の男は、テーブルに並べられている資料を手に取ってジッと眺めている。
客A「・・・・・・すみませんが、別の所も見てきてもいいですか?」
天井「あ、はい・・・・・・か、構いませんよ」
天井(ダメか・・・・・・)
天井「ありがとうございました」
  バタンッと扉が閉まる音が虚しく部屋に響き渡る
天井「・・・・・・・・・・・・」
天井「はぁ~~、またか・・・・・・」
天井「今日も契約することが出来なかったか・・・・・・このままだとまずいな」
  この瞬間をもって、雑紙になってしまった資料を集めていた。すると────
  コンコンッ
天井「はい、空いてますよ」
神異「お疲れ様。お茶、持ってきたから」
天井「母さんか・・・・・・ありがとう」
  差し出されたコップを受け取り、一息つく
神異「この後、いつも通りの会議があるから」
天井「あぁ、わかってる。少し休憩したら行くから」
神異「わかったわ、いつもの二階の部屋で行うからね。お父さんは少し遅れるって連絡があったから急がなくても平気よ」
天井「転子は?」
神異「さっき帰ってきて、休んでいるわ。あの子も少し疲れているみたい」
天井「そうか・・・・・・母さんも無理はしないでね」
神異「わかっているわ、それじゃあまた後でね」
天井「はぁ・・・・・・、厳しいな」
  差し出されたお茶を何とか飲み干して、部屋を後にした

〇小さい会議室
  ────会議室にて
「入るよ」
天井「あれ? まだ母さんだけ? 転子は帰ってきてるんじゃなかったのか?」
神異「もうそろそろ、来ると思うけど・・・・・・」
転子「めんご、めんご! 休憩してたら遅れた!」
天井「転子・・・・・・お前、姿が精霊のままだぞ」
転子「え? ・・・・・・あっ、本当だ!」
転子「い、今戻るから────」
転子「これで、良しっと」
天井「まったく、お前って奴はいつもいつも・・・・・・」
転子「良いじゃん、別にー。さっき帰ってきて、疲れてんだしー」
天井「そんなんじゃ、いつか失敗するからな」
転子「関係ないでしょ────っていうか、父はまだ帰ってきてないの? これじゃあ、始められないじゃん!」
神異「そろそろだと思うんだけどねぇー・・・・・・」
「すまない、遅くなった!」
天井「父さ────」
生鬼「すまない、ちょっと交渉が長引いてしまって」
天井「・・・・・・父さんまで」
生鬼「ん? ・・・・・・あっ! そのままで入ってしまった!」
天井「まったく・・・・・・」

〇小さい会議室
天井「定例会議を始める」
天井「まずは、俺から・・・・・・結論を言うと────」
天井「ダメだった。戻ってくる可能性は無いだろう」
  派遣担当スタッフ:天井(てんい)
転子「あたしの方は、今月でサポートが終わるから仕事が無くなっちゃう・・・・・・」
  異世界の案内人兼チュートリアルサポーター:転子(てんこ)
生鬼「私の方も・・・・・・交渉がまとまらなかった、すまない」
  世界、武器、能力交渉:生鬼(いき)
神異「あたしの方も呼び込みはやっているけど・・・・・・皆、大手の方に取られてしまうのよ」
  事務、呼び込み、その他等々:神異(しんい)
天井「しょうがないよ、うちは家族で経営する小さな派遣会社だ。大手にお客が流れてしまうのも理解できる」
生鬼「一時期は異世界転生ブームで多くのお客がいたというのに・・・・・・厳しいものだな」
  ある世界の住人が死後に別の世界で生まれ変わり、新しく人生をやり直すというもの────『異世界転生』
  その転生のサポートするのが俺たちの仕事だ
  俺の母である神異が呼び込みを行う
  そして俺がお客の希望や条件を聞き、適切な異世界やプランを提供
  父である生鬼は、転移先の場所や特典である特殊能力や武器の調達
  妹の転子は事務作業をしながら────
  お客が異世界で独り立ちできるまでのサポートをしている
神異「皆、苦しいみたいね・・・・・・」
神異「お母さん、外で呼び込みしてきた方がいいかしら?」
天井「そう・・・・・・だね、何とかノルマを達成しないといけないし、頼んでいいかい?」
神異「わかったわ、呼び込めるように頑張ってくるね」
  神異は部屋から退出した
生鬼「すまない、私の力不足で・・・・・・大手の奴らに取られてしまって」
天井「しょうがない、父さんのせいじゃない」
天井「異世界転生が認知された分、武器や特典、サポートに対する要求も強くなるのは仕方がない」
天井「お客にも選択の自由があるからね」
転子「でも、それを大手の奴らが独り占めするのはひどくない?」
転子「お客だけじゃなくて、武器や特典を作ってる人達、全員をかっさらうなんて」
生鬼「私達みたいな小規模の店、個人店は軒並み廃業に追い込まれている・・・・・・」
生鬼「向かいの転移屋も店じまいするみたいだ・・・・・・」
天井「マジかよ・・・・・・」
天井(転移屋の俺達には毎月、どれだけの人数を異世界転生させなければならないというノルマがある────)
天井(ノルマを達成できなければ、小規模の店に出される支援金が払われなくなってしまう・・・・・・)
天井(そうなれば、うちだってお終いだ!)
転子「ねぇ、ノルマ達成まであと何人なの?」
天井「あ、あぁ・・・・・・あと一週間で二人だ」
天井(転移は一瞬だが、最近は一週間に一人でも客が来ればマシな方だ・・・・・・)
生鬼「あ、あぁ、それで実はノルマの話なんだが──」
  重苦しい空気を割くように、大きな音を立てて扉が開いた
神異「た、大変よ!」
天井「どうしたんだ、母さん! そんなに慌てて────」
神異「お客さんよ! それも────」
神異「双子のお客さんですって!」

〇綺麗な会議室
  ────小さな会議室
天井「────以上が私達が提供出来るサービスになっております」
客C「なるほど、よくわかったよ!」
天井(よし、好印象だ)
天井(ただ、問題は────)
客B「質問ですが、僕達が転生した世界の言語はちゃんと聞き取れるのでしょうか?」
天井「問題ありません。どの世界の言語も日本語に聞こえるようになりますので安心してください」
天井(こっちの客は、事細かに質問してくる。見た目の割にはしっかりしているな)
客B「・・・・・・武器や特殊能力といった特典は一つだけなんですよね?」
天井「は、はい。他には無い当店オリジナルの武器や能力がありますよ」
  武器や特殊能力が掛かれているリストを手渡した
客B「うーん、あまり魅力的な物が・・・・・・それにこれだけだとお姫様を救えるか怪しいですね」
天井(く、苦しいな・・・・・・だが、リストに載ってあるのが全てだ)
客C「ねー、何を迷ってんだよ。さっさとしろよ」
客B「ふー・・・・・・そうだな」
天井(ま、まずい! このままだと────)
  ガチャ
転子「き、君達! た、助けて!」
天井(て、転子! それにその姿────)
生鬼「ぐははっ! 食べちゃうぞ!」
天井(と、父さんまで!)
転子「い、今すぐにでも転移すれば間に合うよ! さぁ早く!」
天井(ご、強引な!?)
客C「た、大変だ!」
客B「くっ、致し方ない────お兄さん、特典はコレとコレ! 早く僕達を転移させて!」
天井「よ、よろしいのですか?」
客B「早く!」
天井「わ、わかりました!」
天井「いってらっしゃいませ!」
  双子の客と転子に姿が一瞬にして消え去った
天井「・・・・・・父さん! あんなふざけた事をなんで────」
生鬼「・・・・・・仕方ないだろう、あの子達には申し訳ないことをしたが、致し方が無い」
天井「でも・・・・・・」
天井「それに転子も何故・・・・・・」
生鬼「実は・・・・・・言わなきゃいけないことがある」
生鬼「実はまだノルマは達成できていないんだ」
天井「え? でも、残りは二人で、二人送ったから達成したじはずじゃ────」
生鬼「実は、ここに来る前に呼び出しを受けて────」
生鬼「ノルマの人数が一人追加になってさ・・・・・・」
天井「えっ!」
生鬼「そのことを話したら転子も、無理矢理でも人数を稼がないと・・・・・・って」
天井「じゃあ、ノルマまでは────」
生鬼「────あと一人必要だ」
天井「そんなぁー・・・・・・」

コメント

  • 近年は猫も杓子も異世界だからこういう会社が乱立していてもおかしくないかも。中小企業は他社との差別化は必須だし、送り出した後のクレーム処理なんかも大変そう。でも、借金で首が回らなくなったら家族全員で異世界に逃げればいいからそこは安心ですね。

  • 現実にもありそうな社会経験、グッド

  • 異世界転移への認知が深まっている現在だからこその、さらに日常化が進んで普通に行える設定の物語ですね。すっごく楽しいです!

成分キーワード

ページTOPへ