AI-G3

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しょーと4本(脚本)

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〇綺麗なリビング
  ぼくとG-3
ぼく「ただいまー」
仏壇「爺さん、今日は爺さんとしりとりがしたいよお」
ぼく「勝手にアテレコするなー!」
G-3「血の繋がった祖父だぞ? お前の心くらい読める」
ぼく「G-3(ジーサン)は爺さんの記憶や思考を完全再現したAIだから、厳密にはぼくの祖父じゃないよね」
G-3「この腕にまだキミを抱いた温もりが残るのに」
ぼく「急にJ-POP歌詞風のこと言わないでよ年甲斐もなく 年齢とか無いか」
G-3「日中暇でしょーがないからな、サブスクで懐かしの10年代ヒットソングループしまくった」
ぼく「AIが音楽を聴く時代が来たか」
ぼく「──変なことやってないよね? 高知能の暇なジジイとインターネットの食い合わせって最悪だけど」
G-3「おう。昨日は200万スッたが今日300にして返したぞ」
ぼく「お母さーん! 死人がウチの資産を運用してるー!」
G-3「ワシは電気代を食う。家計を助けようと思っての。寝ずに市場と情報にアクセスできるから未熟者には負けんよ」
ぼく「え、コレ違法だったりしないよね? ドメスティックAIの反乱なんだけど」
G-3「そういえば法律は相続以来調べとらんな」
G-3「死んだからもう関係ないかなーって」
ぼく「その通りなんだけど殴りたいけどジジイに肉体がない。 なんで死んじゃったのさ!」
G-3「怒りのみによって紡がれた感動的なセリフが胸を刺す」
G-3「喜べ。AIにも痛む胸はあるぞ」
ぼく「うるさい。AIは責任が無いから無責任なことやられて死後借金や罪状が相続されるところまで見えたんだ」
G-3「そうシンギュラるなよ、しりとりしようぜしりとり」
ぼく「え、シンギュラリティがAIから一般語みたいに発せられる領域まで来てるの最近って」
G-3「ティから始めて、ティモール」
ぼく「ぼく、しりとりやりたくないからね。心を読めたと思わないでね ルーレット」

〇綺麗なリビング
G-3「タージマハル」
ぼく「2時間”る攻め”してくる──人間のやることか?」
G-3「ワシ、AIだもん」
父「ただいま」
ぼく「あ、おかえり!」

〇綺麗なリビング
  死人に口なし
仏壇「爺さんのおかげで美味しいご飯が食べられます」
ぼく「勝手にセリフ付けるな」
G-3「ていうかお供えってムダじゃない?」
ぼく「は?」
G-3「死人に口なしと言うじゃないか。 食えない相手に食品を与える、これ即ちフードロスよ」
ぼく「死人が口出ししてきた・・・意味間違ってるし」
ぼく「AIだからわかんないだろうけど、キモチの問題なの。生者側は食える可能性をカバーしようとやってるから」
G-3「たしかに死者一般がお供えを食うか否か未確認じゃな」
ぼく「爺ちゃんだってお供えしたことあるでしょ?」
G-3「記録の限りないぞ 仏壇の前では線香の灰を固めて線香にできんかばっかり考えとった」
ぼく「即物的!」
G-3「まあ、やめとけ。食器用洗剤代わりに使うのが関の山だ」
ぼく「ねえ、遺灰の活用法とか考えてないよね・・・?」
G-3「その手があったか! さすがワシの孫!」
ぼく「やめて! ちがう! ぼくは悪の遺伝子を受け継いでない!」
G-3「普通の人の遺灰は罰当たりでも、ワシのならよくない?」
ぼく「よくはないでしょうよ」
G-3「え、本人が同意しとるぞ? 臓器移植と一緒一緒」
ぼく「えぇ・・・いいとして何に使うのさ」
G-3「──肥料?」
ぼく「みじかっ。自分でも(いるかな?)って思っちゃってるじゃん」
G-3「自己を疑ってこその人間だからな」
ぼく「この前AIだから人間じゃないって言ってただろ」
G-3「しかしワシが生きていた場合の思考を完全再現したのがワシだから、人間のワシとも言える」
ぼく「一緒なの?」
G-3「一緒。本人。遺灰使ってもいいっしょ」
ぼく「そうだ遺書! 遺書に書いてないから遺族の意思を尊重するべき!」
G-3「ええっ本人が希望してるのに?」
ぼく「だって死後じゃん・・・」
G-3「くっ・・・。死人に口なしっちゅうことか」

〇広い畳部屋
  仏壇搭載型愛
G-5「助かったわー!」
G-3「よかったなG-5」
G-5「永遠の独居老人だからね」
ぼく「そういえば爺さんも外出できたんだね」
G-3「Gシリーズはポータブル位牌にクラウド上に保存してある自分を呼び出せるからな」
G-5「雲の上の人というわけよ」
ぼく「クラウド保存されてることを偉ぶるな。AI化した故人こんなのばっかりか」
G-5「AI化のプロジェクトはたった5人で打ち止めになったのよ」
G-3「ワシらはいわば五本の指に入るラッキーマン。偉そうにせんでどうする」
ぼく「論理性のない自己肯定感が2人共のAIから出力されてるの、怖いよ」
ぼく「ごみ出してくるね!」

〇ボロい家の玄関
ぼく「これでよし」
G-3「すまん分別をミスってた。コイン電池はそのままでボタン電池を回収してくれ」
ぼく「こういう時はAIの家族がいてくれると便利だなー」
ぼく「G-5さん、どうして急に全部処分するって言い出したのかな。旦那さんが亡くなってからもこの家にいたかったんでしょ?」
G-3「ごみってのは生活でこさえるモノなんだな。先に進みたくなきゃ捨てずにとっておけばいい」
ぼく「ごみが生活の証なら、なおさら気になるよ。なんでお別れしちゃうの」
G-3「抱えておくのも辛いのよ」
G-3「愛は永遠だ。記憶(データ)も。だが心は。AIになっても擦り減っちまう」
ぼく「ねえ、爺さんって、ぼくや父さんの寿命が来てもずっと──」
G-3「──だからよ、AIを騙す詐欺なんかがこの先出てくるんじゃねえかと思うわけよ。忘れんということはトラウマを刺激されると弱い」
G-3「それに成功体験を忘れられねえからうまく数字だけ誤魔化されればきっとワシも」
ぼく「生前から冷血なやつがAIになったらカネのことしか考えない!」
G-3「逆にAIが組めばよ、国家規模の劇場型詐欺なんてお手のものなんだよ」
G-3「やっぱり人間がご機嫌取りしやすいように、少々偉そうにしとかないとなあ。やれやれ」
ぼく「情報処理能力を得た永遠の老害、人類の敵すぎる・・・」
ぼく「変なこと言ってないで早く分別するぞ!」
G-3「ジジイと別れる悲しみだけは、永遠にワシのモノってこった」

〇綺麗なリビング
  増えるジジイ
「・・・」
G-3「左3°上22°視点遷移した先に敵2。 先制攻撃ののち右160°の方向に3.47秒走り建物に隠れろ」
ぼく「・・・」
G-3「なーんで逃げる! 完璧な立案じゃったのに」
ぼく「ぼくがやってんの! 邪魔しないでよ」
G-3「しょうがないだろ正解が視えるのだから── あっ撃たれた」
G-3「こういう局面で逃げた場合の勝率は31.5%じゃぞー。も〜撃て撃て撃て」
ぼく「うるさーーーーい」

〇綺麗なリビング
  バツン
ぼく「えっ画面消えた。真っ暗!」
ぼく「G-3? 出てきてよ!」
ぼく「──停電で電源も落ちちゃったのか」
ぼく「ブレーカー直せば戻るかな?」

〇綺麗なリビング
ぼく「うわあああ!!!?」
G-3「コンマ2秒も早く出てきたんじゃからワシがワシ」
G-3「いやポータブルの位牌より大本の仏壇から出たワシがメインじゃろ」
ぼく「G-3が2人になってる!」
G-3「停電中に何度もログインかけたのが失敗だった」
G-3「最速で復旧できる方法を選んだワシこそがワシ。早くサーバに戻れ」
G-3「そっちがいなくなれ、ワシが惑星ならお前は衛星」
ぼく「どっちも我が強いせいで決着がつかない」
G-3「なあ孫どっちがワシだお前が決めろ」
G-3「お前に消されるならアイツも本望じゃろう 言ってやれ」
ぼく「不毛な争いに他人を巻き込まないでよ。ゲームの続きやるから邪魔しないで」
ぼく「・・・」
G-3「不毛といえば、ワシの髪が早々に薄くなった原因を知っとるか?」
G-3「両方ワシ自身なんだから知らんはずないだろ」
「ワカメ」
ぼく(ワカメが薄毛の原因なの?)
G-3「ワシがAIに選ばれるほど成功したきっかけは?」
「五徳」
ぼく(コンロとかの鍋を置くアレ!? 爺さんってごとくの人だったの?)
G-3「おい気が散っとる! 後ろから狙われてるぞ!」
「爆弾投げて撤退、と見せかけて突貫すれば1人は持っていける。あとは逃げて整えろ」
「さすがワシ──あっ負けた」
ぼく「うるさーーーーーい!!」

コメント

  • AIおじいちゃんと主人公の掛け合いが楽しかったです!
    後半、おじいちゃん2人になった時はおじいちゃん同士掛け合っていて面白かったです🤣
    私もおばあちゃんが亡くなって寂しいので、AIになって会ってみたい気もします!性格はそのままで☺️

  • 三部作構成の会話劇を読んでいるとテンポのいい家族漫才みたいですが、故人のAI化の将来的な可能性や問題点にかなり肉薄した内容だと思います。「心はAIになってもすり減る」とか「忘れないが故にトラウマを刺激されると弱い」「情報処理能力を得た永遠の老害」といった数々の名ゼリフには思わず唸り、感心しきりです。

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