この恋の結末はーー。(脚本)
〇高い屋上
──明日だ。
俺は、今までの半年間を思い出す。
〇施設のトイレ
トイレで出会った花太郎。
花太郎「努力が足りん!!」
それが口癖で。
高校卒業前に死んでしまって、先生になる夢が叶わず、トイレに住み着いている、うっとおしくて暑苦しい熱血漢の幽霊。
〇階段の踊り場
あい「大丈夫だよ」
トイレで、花太郎に身体を乗っ取られかけた俺を助けてくれ、落ち込むと、いつも励ましてくれた、あいさん。
〇美術室
きさき「頑張ってるの、知ってるから」
〇市街地の交差点
物心ついたときから、俺は幽霊が視えていた。
ただしゃべるだけ。
人間と同じ姿だから、「ひとりでしゃべってる」「誰と話してるの?」そんな周りの声で、ようやく区別がつく。
〇街中の道路
「あいつ、幽霊が視えるんだって」
〇教室
「呪われてるんだよ」
〇まっすぐの廊下
「気持ち悪い」
〇体育館の中
「ウザい」
〇体育館裏
「あっち行け」
〇学校のトイレ
「一生そこにいろ」
〇広い公園
如月かな「一緒に遊ぼう」
小学校で同じクラスの如月かな。
ブランコで幽霊の女の子と遊んでいた俺に「楽しそう。私もいいかな」
そう言って、笑いかけてくれた。
幽霊が視えるわけじゃない。
だけど、俺のことを唯一怖がらなかった。
〇大きな木のある校舎
学校に行くのが、少しずつ嫌じゃなくなってきたある日。
〇学校の昇降口
「上履き、ない」
かなの靴箱は空で。
嫌がらせをされた。
如月かな「大丈夫だよ。 先生に言って、スリッパ借りるし」
そう笑う彼女を見て、俺は泣きたくなった。
このまま一緒にいれば、嫌がらせは、エスカレートするだろう。
〇広い公園
悪意しかない人間たちの言葉の洪水と俺を狙わない卑怯さに疲れた俺は。
〇広い公園
かなと待ち合わせをして。
「もう遊ばない」
そう告げた。
如月かな「・・・・・・なんで?」
如月かな「私、気にしないよ」
如月かな「リクくん、優しいから」
俺といて、傷ついてほしくない。
かなが泣くのなんて、見たくない。
「嫌いなんだ、お前のこと」
〇広い公園
「大嫌いだからさ、近付かないで」
俺は、初めて嘘をついた。
かなは、泣かなかった。
ただ、寂しそうに笑うだけ。
〇広い公園
如月かな「ごめんね」
如月かな「今まで遊んでくれて、ありがとう」
そう言って、微笑んだかなのことを、ずっと忘れられなかった。
〇公園のベンチ
「これ、使って」
如月かな「見ちゃった。 傘、持っていかれたのに黙ってるなんて、優しいね」
──そんなことない。
「返してほしい」
そう伝える勇気がなかっただけなのに。
如月かな「話すの、小学校以来だね。 元気だった?」
〇おしゃれな教室
高校で、かなを見かけた。
彼女は、隣のクラスで、選択授業の書道の時間に俺の前に座った。
子どもの頃の面影が残っていたから、すぐにわかった。
でも、俺から話しかけるなんて、馬鹿な真似はしない。
気付かないふりをしようと思った。
中学校の同級生たちの話を聞いたクラスメートたちは、俺を避けた。
〇高い屋上
ひとりでいることなんて、慣れている。
〇まっすぐの廊下
きさき「今日も、元気な挨拶だね」
〇教室
きさき「掃除して帰るなんて、エライ!!」
〇古い図書室
きさき「わ。 あたしも、その本好きなんだ。 主人公、魔法が使えるのに、敵を魔法で倒さないなんて、優しいよね」
〇グラウンドのトラック
きさき「速くなった! やれば、できるじゃん!」
〇グラウンドのトラック
きさき「これで、体育大会、活躍間違いない!」
〇高い屋上
きさき「あたしがいるじゃん」
きさき「ひとりじゃないよ」
〇施設のトイレ
花太郎「猫背をヤメろ!」
花太郎「教室に入るときは、大きな声で挨拶しろ」
花太郎「瞳をみて、話すんだ」
花太郎「ボソボソ話すなっ」
花太郎「嫌なら嫌って言っていい」
〇施設のトイレ
全力で喜怒哀楽を表現して、他人のことに真剣に向き合える花太郎は、すごい。
〇階段の踊り場
「花太郎のこと・・・・・・」
あい「好き、よ」
なな「ヘヘ、ナイショね」
るい「お慕いしてます」
りか「ばっかじゃない」
松次郎「イイやつだから」
えみ「めちゃ好きだよー!」
みか「教えない」
〇美術室
きさき「・・・・・・話があるの」
〇高い屋上
頬が赤い。
きさき「──リクが好き」
きさき「幽霊だから、」
きさき「あたしが、一生守ってあげる」
〇高い屋上
「──ごめんね」
きさき「・・・・・・だよね。 幽霊から告白なんて困るよね」
「違う。
嬉しかった。
でも、ごめん
ーー俺、好きな人がいるんだ」
「ありがとう。気持ちは、すごく嬉しい」
「告白されたの、はじめてだ」
きさき「そっか」
きさき「──わかった」
きさき「嬉しいな。 リクの1番もらっちゃった」
きさき「応援するね。 リクの恋が叶うように」
きさき「告白してみたら?」
俺なんて。
と、出かかった言葉を飲み込む。
好きになってくれた、きさきさんに失礼だ。
「頑張ってみるよ」
きさき「うん、頑張って。 きっとうまくいくよ」
きさき「幽霊のあたしが告白しちゃうくらいカッコイイ男の人だから」
勇気をだして、告白してくれたきさきさん。
〇おしゃれな教室
──ずっと、ずっと。
嫌でしかなかった、自分の能力が。
〇施設のトイレ
花太郎「お前なら、できる」
〇階段の踊り場
あい「ずっと、あなたの味方です」
〇学校の昇降口
なな「一緒にいるの、楽しい」
〇古い図書室
るい「すごく、安心します」
〇学校の駐輪場
りか「応援してるぞ」
〇グラウンドのトラック
松次郎「最高だな!!」
〇体育館の中
えみ「心強いです」
〇まっすぐの廊下
みか「顔見たら、元気でたっ」
〇美術室
きさき「あなたに、会えて嬉しい」
〇おしゃれな教室
今は、あって良かったと思える。
〇施設のトイレ
「花太郎、俺、したいこと見つかった」
花太郎「そうか」
「初めて会ったとき、聞いてくれたよな」
花太郎「あぁ、覚えてる。 したいことはないか、聞いたな」
「あるよ。今はある」
「かなに謝って。今も好きだって伝えたい」
「俺たち、公園で話すようになったんだ」
花太郎「良かったな」
「明日、屋上で告白するよ」
花太郎「──。 ・・・・・・」
花太郎「公園じゃなくて、いいのか?」
「皆の前で、伝えたいんだ」
花太郎「そっか。 頑張れ」
〇高い屋上
身体を無くしても、想いだけで存在している幽霊を、俺は尊敬している。
〇高い屋上
〇高い屋上
〇高い屋上
明日、笑ってくれたら、いいな。
〇高い屋上
〇男の子の一人部屋
──電話が鳴った。
知らない番号だった。
『はい。宮野です』
『リクくん。
かなの母です』
声が震えている。
〇黒背景
〇男の子の一人部屋
『かなが事故にあったの』
幽霊のみんなに勇気づけられたんですね。
素敵な友情だなぁと思いました。
多分それは生きてる、生きてないにこだわらない感情なんですよね。
トイレの花太郎くん!熱血情熱爽やかイケメンの幽霊キャラクターに初めて出会いました。最高です。前世に何があったのか、彼が死んだ理由が知りたくなりました。
こんなに楽しくて優しくて、いつも見守ってくれている幽霊たちだったら、みえても楽しいな♪かなちゃん、どうなってしまったか気になります。無事に告白できたらいいな、、幽霊になってしまっても、一緒にいられて告白できるならそれはそれでいいのかなって思ってみたり。