田中家の優雅な一日目〜Zakuro's cooking(脚本)
〇スーパーマーケット
田中正(たなかただし)「ふぅ・・・今日は帰りが遅くなってしまったな」
田中正(たなかただし)「娘達に夕飯買って帰ろう」
田中正(たなかただし)、45歳既婚者、ごく平凡なサラリーマン。
そんな彼の帰りを待つ家庭は、世間から見れば変わっている
〇月夜
田中家の長女──ザクロ
〇水の中
次女──ルコウ
〇モヤモヤ
三女──ダリア
〇水玉2
そして末妹──ラン
〇一戸建て
この物語は、世間から浮世離れした、田中家の娘達による、
優雅(?)な日常である
〇おしゃれなリビングダイニング
ラン「姉様ー」
ルコウ「なーに? ランちゃん」
ラン「あのねー、ランねー、とってもお腹空いたのー」
ルコウ「あらあら」
ダリア(大変、すぐにご飯を用意してあげないと。だけどここは一言)
ダリア「チビは一生餓えときなさい」
ラン「びえええん! ダリアお姉ちゃんがランに酷いこと言ったー!」
ルコウ「ダリア!!」
ダリア「フフフ」
ダリア(妹の泣き顔を見るのはたまりませんわ)
ルコウ(困った妹達だわ、どうしましょう)
???「話しは聞かせてもらったわ」
ルコウ「そのお声は──!!」
〇月夜
ルコウ「ザクロお姉様!」
ザクロ「私にお任せない」
〇おしゃれなリビングダイニング
ラン「えっ、ザクロ姉様がランにご飯を作ってくれるの?」
ザクロ「勿論、可愛い妹の頼みですもの」
ラン「やったー!」
ルコウ(えっ!?)
ルコウ(まずいわ)
ルコウ(失礼だけれど、ザクロお姉様はお料理が出来ないどころか、寧ろ壊滅的)
ルコウ(絶対にロクな事にならないわ)
ダリア(ククク、面白いことになりそうですわ(笑))
〇おしゃれなリビングダイニング
ザクロ「さぁ、何でも言いなさい。今日はこのザクロ、妹の為に特別に腕を奮うことを誓うわ」
ラン「わーい、えーと、それじゃあねえ・・・」
・・・
〇モヤモヤ
ルコウ(あぁ・・・、お願いランちゃん)
ルコウ(どうか、ザクロお姉様でも失敗しないお料理を頼んでちょうだい)
ルコウ(お願い、お願い、お願い、お願い──!)
はたして、ルコウの願いはランに届くのか?
選択は如何に!?
〇おしゃれなリビングダイニング
ラン「え~と、それじゃあ・・・」
ラン「ラン、茹で卵食べたい!」
ラン「プリっとして、ホクホクで美味しいのー!」
ルコウ(ランちゃん、なんて良い子なの、それならザクロお姉様でもきっも大丈夫な筈よ)
ダリア(チッ、つまんねーですわ)
ダリア(そんな簡単なのじゃザクロお姉様が失敗するわけありませんし、)
ダリア(ルコウお姉様が慌てふためく姿を見られませんわ)
ダリア(あとチビのやつ、ザクロお姉様に簡単に頼み事を聞いてもらえるなんて、少しムカつくわ)
ザクロ「ラン、本当にそれで良いのかしら?」
ザクロ「私ならもっと遥かに難しいお料理が作れてよ?」
ラン「え・・・そうなのー?」
ルコウ「ザクロお姉様! 茹で卵も意外と手間がかかる立派なお料理です!」
ルコウ「だから作っていただけたら、私達姉妹一同、お姉様の事をより尊敬致しますわ」
ダリア(ここはルコウお姉様に乗って、ザクロお姉様に媚びるのもいいけど、あえて・・・)
ダリア「は? ダリアはそのようには思いませんわ」
ザクロ「──だそうだけれど、ルコウ?」
ルコウ「ダリア!!」
ルコウ「お姉様! ダリアは捻くれ者ですから、あの子の発言は放っといて下さい!」
ルコウ「そしてお姉様は可愛い下の妹のお頼みを叶えて差し上げるべきですわ!」
ザクロ「そ、そこまで言うのであれば仕方ないわね」
ザクロ(今日のルコウは圧が強いわね)
ルコウ(危ないところだったけれど、なんとか軌道修正できたわ)
ルコウ「ダリア、貴方の思い通りになんかさせないわよ」
ダリア「ふん、つまんねーですわ」
〇システムキッチン
ザクロ「フフフ、可愛い妹の為にこのザクロ、腕を奮うわよ」
ザクロ(卵は沢山あるようね)
ザクロ「ルコウ、ダリア、貴方達も私の茹で卵を食べたいかしら?」
ルコウ「はい、勿論です」
ダリア(ザクロお姉様の手料理・・・)
ダリア(まぁ、茹で卵ぐらいなら失敗しないだろうし、ならば勿論)
ダリア「ザクロお姉様の手料理なんていりませんわ!」
ダリア「・・・」
ダリア「ハッ!」
ザクロ「そう、残念ね・・・」
ザクロ「けれど、そこまでハッキリと言わなくても良いんじゃないかしら?(ガチ泣)」
ダリア(しまった、ついいつもの癖で、思ってる事と逆の事を言ってしまいましたわ)
ルコウ「ダリア! 向こうへ行ってなさい!」
ダリア「くっ、」
ルコウ「お姉様、気を取り直して続きを致しましょう」
ルコウ「ダリアはああ言ってましたが、きっといつもの捻くれ発言で本気では無い筈です」
ルコウ「それと、必要無いかと存じ上げますが、このルコウも微力ながらお手伝い致しますわ」
ザクロ「慰めてくれるのねありがとう」
ザクロ「ルコウ、あなたは私にとって一番頼りになる存在だわ」
ルコウ「ザクロお姉様・・・」
〇おしゃれなリビングダイニング
ラン「わぁ、姉様達とっても仲がいいね!」
ダリア「お黙りチビ!」
ダリア(くっ、二人っきりでイチャイチャし始めてムカつきますわ)
〇システムキッチン
ザクロ「それじゃあ、この生卵を・・・」
ザクロ「電子レンジに入れて・・・」
ルコウ「お、お姉様!?」
ルコウ「お鍋は使わないんですか?」
ザクロ「ええ、そうよ?」
ザクロ「それに向こうを見てご覧なさい」
〇おしゃれなリビングダイニング
ラン「お腹空いた! お腹空いたー! 早く! 早くー!」
ダリア(チッ、うるせえガキですわ)
ダリア(追い出されたけど、ザクロお姉様達の元に避難しますわ)
〇システムキッチン
ザクロ「見ての通り、ランがお腹を空かせて泣いてるわ」
ザクロ「だから早く食べさせてあげる為に、お鍋にお湯を沸かす時間が惜しいのよ」
ルコウ「ザクロお姉様、そこまで妹の為を思っておられたなんて・・・」
ルコウ(あぁ、流石は私達のお姉様)
ルコウ(普段はポンコツ──じゃなくて、失敗が多いけれど)
ルコウ(この御方なりに私達の事を思って行動しておられるんだわ)
ザクロ(ふふ、最近お料理の本で見た電子レンジで時短料理とやらを試して見るわ)
〇システムキッチン
キッチンの物陰
ダリア(ザクロお姉様・・・本当に思いやりのあるお方だわ。だけど──)
ダリア「・・・」
ダリア(なんと愚かなんでしょう)
ダリア(面白いことになるからここで様子を伺いますわ)
〇システムキッチン
ダリア「クスクス」
ルコウ(ハッ! ダリアがいつの間にかこっちを見て笑ってる!)
ダリアが遠くで笑う時、良くない事が起こる
そのことをルコウはよく分かっていた。
ルコウ「ねえ、ザクロお姉様。やはり正攻法でお料理する方が良くては?」
ザクロ「何故?」
ルコウ「何故と言われましても、それは・・・えーと・・・」
ラン「早くー! お腹空いたの姉様ー!」
ザクロ「ランも待ちくたびれただろうし、余計な口出しは無用、私の方法でやるわよ」
ルコウ「は、はい。ごめんなさい」
ルコウ(あぁ、嫌な予感がするわ)
田中正「ただいまー、今帰ったぞー!」
田中正「それと遅くなって悪かったな。夕飯買って来たぞ」
〇おしゃれなリビングダイニング
ラン「やったー! パパがご飯買ってきてくれた!」
ラン「わーい、おかえりー!」
〇システムキッチン
ザクロ「ちょっとラン! 私の茹で卵はどうするつもり!?」
ルコウ(ザクロお姉様を止めれるお方は、お父様しかいない)
ルコウ「お姉様申し訳ございません、私もお父様をお迎えにいきます」
ザクロ「ルコウまで!?」
ザクロ「・・・」
ザクロ「ダリア!」
ザクロ「ダリアは素直じゃ無いわね、ずっと様子を伺って本当は私の手料理が食べたかったんでしょう?」
ザクロ「ルコウとランは放って、私と一緒に茹でして作っていただきましょう」
ダリア「いえ、今回はご遠慮します」
〇手
ザクロ「魔法・・・カルマ(宿命)」
〇システムキッチン
ダリア(お、お姉様の捕縛魔法! 逃げられない!)
ザクロ「フフフ、さぁお料理の続きよ」
生卵イン、電子レンジ。スイッチオン
ダリア「ああああ!!」
〇シックな玄関
ラン「おかえりパパー!」
田中正(たなかただし)「ただいま」
田中正(たなかただし)「今日は夕飯に、ランの大好きな茹で卵一杯のおでんを買って来たぞ」
ラン「♪」
田中正(たなかただし)「あと今日はもう一つ嬉しいことがあるぞ」
田中正(たなかただし)「久しぶりに母さんが”アッチ”から帰ってくるぞ」
ルコウ「お帰りなさいませお父様」
田中正(たなかただし)「おお、ルコウまで迎えてくれるのか。嬉しいな」
田中正(たなかただし)「ん? なんか焦ってるみたいだな」
ルコウ「はい、実は・・・」
〇おしゃれなリビングダイニング
田中正(たなかただし)「いいかいお前達」
田中正(たなかただし)「卵のような殻に覆われた食材を電子レンジで温めたらな、」
田中正(たなかただし)「熱で内部が膨張して爆発するから絶対しちゃいけないぞ?」
「はい、気をつけます」
田中正(たなかただし)「うむ、では今日はもう遅いんだから寝なさい。後片付けは父さんがやっておくから」
ラン「あー、びっくりした」
ルコウ「そうね。一応爆発した時に二人とも幸いケガは無かったみたいだけど・・・」
ルコウ「あの後、別の意味で怪我しそうなのよね」
ラン「姉様、ザクロ姉様達はどこにつれてかれたのー?」
ルコウ「ランちゃんはまだ知らなくていいわよ? だからもうお布団に行って寝ましょう」
ラン「はーい・・・」
〇暗い廊下
田中家、地下、秘密の通路
その先
〇皇后の御殿
田中姉妹の母──アザミの部屋
アザミ「・・・」
ザクロ「お母様、私は卵がああなるとは知らなかったんです。決して悪気があった訳では・・・」
アザミ「──!!」
ザクロ「ヒィィィ! お母様どうか魔法で折檻だけは御勘弁を!」
ダリア「なんで私も巻き込まれるんですのー!?」
〇一戸建て
ザクロ&ダリア「ごめんなさーい!!」
こうして、田中姉妹の今日の優雅な一日は過ぎたのだった。
終わり。
四姉妹とお父様とのビジュアルギャップに笑ってしまいましたww
四姉妹、どれもキャラが際立っていて、掛け合いが楽しすぎます!ルコウさんは、、、そのうちストレス性胃炎とかやらかしそうですね。
母親の正体も含め、続きが読みたくなる作品ですね!
とても面白く拝読させて頂きました!
優雅な一日?なのか、こんな日常だったら飽きないんだろうなぁと感じます笑
これはこれで大変なのかもしれませんが…。
最初は可愛いお洋服の姉妹だなあ〜、私もあんな服装してみたいなあ〜☺️なんて思っていたのですが、ダリアのひねくれ発言が出始めた辺りからダリアに目が離せなくなっておもしろかったです😂やっぱり女が集まったら大抵いざこざが勃発しますよね😂あと、卵をレンジに入れた場面でヒヤヒヤしていたら案の定爆発しておもしろかったです!