〇黒
「カメラ準備よし、と」

〇見晴らしのいい公園
ユイ「ハーイ！ あたしはユイ 今日は親子で遠足よ」
ユイ「お父さん早くー」
「今行くぞぉ！ 我が娘よ」
ユイ「紹介するね お父さんのダン・スゥ ゴリラみたいなタンスなの」
「待たせたね、マイシスター！」
ユイ「お兄ちゃん！」
ユイ「お兄ちゃんのギンバ 年季の入った銀歯なの」
「みんなぁ 待ってぇ」
ユイ「こっちだよ、ママ」
ユイ「優しいレイコママ みんなのお尻も温めてくれる 落ち着くトイレよ」
ユイ「⋯⋯」
ユイ「ごめんごめん みんなにはわかりづらいよね」
ユイ「それじゃわかりやすく イメージ映像を具現化させるね」

〇電脳空間
ダン・スゥ「父のダン・スゥ」
ギンバ「兄のギンバ」
レイコ「母のレイコ」
「我ら宇宙一家ここに見参!!」

〇黒
　　なぜ彼らがユイの家族になったのか
　　それは1週間前に遡る

〇宇宙空間
　　彼らは宇宙からやってきた
　　目的は惑星を征服する為に

〇地球

〇黒

〇大きな一軒家

〇古いアパートの一室
ユイ「⋯⋯」

〇古いアパートの一室
　　惑星についた彼らは
　　一人の住人に目をつけた

〇サイバー空間
　　彼女の名前は【御手洗　唯】
　　36歳の女性
　　両親は彼女が幼い頃に他界
　　他に親戚等は無し
　　数日前に恋人と破局
　　友人は少ない
　　そんな孤独な彼女【ユイ】に寄生しようと
　　狙いを定めた宇宙人達であったが

〇大きな一軒家

〇古いアパートの一室
ユイ「ん」
ユイ「腹が痛い」
ユイ「トイレー！」
「ぬぉー!?」

〇個室のトイレ
ユイ「ふぬぬ」
ユイ「え？ 今のは何？」
「イヤーン!!」

〇古いアパートの一室
ユイ「なんか大きな音がしたような ⋯⋯気のせい？」
ユイ「⋯⋯」
ユイ「きゃっ」

〇宇宙空間
　　彼らはユイに寄生する事に失敗し
　　タンス、トイレ、銀歯に寄生してしまった
　　しかし

〇古いアパートの一室

〇Ｌ字キッチン

〇個室のトイレ

〇宇宙空間
　　なんやかんや意思疎通を試み
　　ユイの協力を得る事ができ
　　『なんかイメージ実体化するヤツ』
　　を使う事で活動が可能となった
　　その姿はユイがイメージしたものであり
　　周りにも同じように見えている
　　ただし実体はタンスとトイレと銀歯
　　ユイに助けられた為彼らは侵略を中止し
　　お礼として彼女の願いを叶える事にした
　　そして今
　　ユイと家族になった彼らは
　　日々様々な文化を学んでいるのである

〇黒

〇見晴らしのいい公園
ユイ「これがわたしの家族達」
ダン・スゥ「さて遠足といえば弁当だな」
ギンバ「お父さんの中に入れたよ」
ユイ「いや、あんたら食べられないじゃん タンスと銀歯とトイレなんだし」
ギンバ「ユイが食べてくれれば 食感から味覚までボクがデータを取るよ」
ダン・スゥ「遠慮なく食べるがいいぞ タンスに一杯あるからなあ」
ユイ「いや、そのタンスは わたしの下着入れてんだけど⋯⋯」
ギンバ「大丈夫 収納空間を改造したから それに容量が一杯になっても」
レイコ「不要な物はアタシが 異空間に流してア・ゲ・ル」
　　※普通のトイレには
　　異物を流してはいけません
　　ご注意ください
ギンバ「さすがだね、ママ」
レイコ「トイレですもの」
ギンバ「安心して遠足ができるね」
ダン・スゥ「はっはっは おやつのバナナも入ってるぞお」
ユイ「いや⋯⋯」
ギンバ「撮影はこの辺までにして 遠足楽しもう」
ユイ「うーん」

〇見晴らしのいい公園
ユイ（成り行きで宇宙人助けちゃったけど）
ユイ（家族として触れ合いの為にも 文化を学びたいだなんて）
ユイ（願いを叶えるっていうから 家族と若さって願ったけどさ でも）
ユイ「若返り過ぎじゃあ!!」
ダン・スゥ「ど、どうした娘よ」
ユイ「若返るって子供じゃなく もっとピチピチの頃がいい！」
ギンバ「そう言われても若返り機は 30年単位だし」
ユイ「そこをなんとか改良しろよお」
ギンバ「18時間後には戻れるよ」
ユイ「効果も永遠じゃないんか 銀歯引っこ抜いて インプラントにするぞ、おい？」
ギンバ「落ち着くんだマイシスター」
ダン・スゥ「すまんのぅ ワレらは家族として 喜んでもらいたいだけなんじゃ」
ギンバ「ボクらはこの星の文化も 家族の役割もわかっていない」
ダン・スゥ「だから少しずつ 家族にできる事は何か 文化を通して知りたいんじゃよ」
ユイ「⋯⋯」
ギンバ「ボクらは家族なんだ キミはもう一人じゃない」
ダン・スゥ「ほら、折角の親子遠足だ おやつを食べようじゃないか」
ユイ「そうね⋯⋯ ってそれどこから出した？」
ダン・スゥ「もちろんタンスから⋯⋯」
ユイ「それ⋯⋯」
ユイ「わたしの下着じゃあ！」
ダン・スゥ「すまんすまん間違えた バナナに色が似ていて」
ユイ「⋯⋯」
ユイ「チェストォ!!」
ダン・スゥ「タンスに穴が空いてしまったぞ」
ギンバ「すぐ直せるよ」
ダン・スゥ「確かに」
「はっはっは」
ダン・スゥ「おや、人が増えてきたのぅ」

〇公園のベンチ
ユイ「まったくもう⋯⋯ ん？」
ユイ（あれは元カレのマチオ！）
マチオ「──で この後オススメの店が」
ユイ（海外へ行く夢が諦めきれないから 別れようって言ってたのに）
ユイ「クソがっ」
マチオ「⋯⋯ん？」
ユイ「ぱぱ その女の人だれ？」
若い女「えっ？ マチオって既婚者？」
マチオ「ち、ちがう！ こんな子知らないし」
ユイ「ままが探してたよ 一緒に帰ろう」
マチオ「え、えーと 人違いじゃないかな お嬢ちゃん」
若い女「この嘘つき!!」
マチオ「誤解だ 待ってくれ」
ユイ「ふん」
レイコ「⋯⋯」

〇黒

〇大きな一軒家

〇個室のトイレ
ユイ「疲れたぁ」
ユイ「あんな男のことなんて忘れよ」
レイコ「そうよ 男は星の数程いるんだから」
ユイ「うわ、びっくりしたぁ」
レイコ「今日はいつもより便座を暖めておいたわ」
ユイ「あ、ありがと」
レイコ「ユイチャン あなた悩みがあるわね？ ママに話してご覧なさいな」
ユイ「悩みというか 元カレがクソすぎて なんで好きになったのか凹んでるわ」
レイコ「大丈夫 アタシ達を頼りなさいな 家族ですからね」
ユイ「え？」
レイコ「明日ひな祭りという物を開催するわ もちろんイケメンな子も招待して お家でパーティするの」
ユイ「それはいいけど うちにひな人形なんてないわよ」
レイコ「なんとかするから大丈夫 聞いた話を再現して 完璧なひな祭りをするから楽しみにして」
ユイ「そ、そう」
レイコ「それじゃ、また明日ね」
ユイ（幼い頃のうろ覚えな知識しか 伝えてないけど大丈夫かな）

〇黒

〇大きな一軒家
「ええぇー!?」

〇桜並木
ユイ「家の中が桜並木に!?」
ダン・スゥ「はっはっは ひな祭りには花を飾るっていうから 部屋を改造させてもらったぞ」
ギンバ「後は灯りだよね」
ユイ「いや、それよりわたし また６歳児になってるやん!! 改良しろよお」
ギンバ「ごめんごめん 準備が忙しくてさぁ それより始めるよ」
ユイ「え？」
レイコ「ママのトイレで照らしてア・ゲ・ル」
ギンバ「そしてボクの銀歯の輝きで反射させる！」

〇桜並木
ダン・スゥ「お代理様とお姫様はワレらに任せろ」
ユイ「いや、お内裏様とお雛様だから そもそもあんたらタンスとトイレだし」
ダン・スゥ「細かい事は気にするなぁ」
レイコ「今日はお友達を呼んだのよ」
ユイ「え？」
　　近所に住む男子
　　ショウ君（６）
ショウ「なんかゴリラっぽい人と トイレ臭い人にパーティするからって 誘われたんだけど」
レイコ「いらっしゃーい ゆっくりしていってね」
ショウ「お邪魔します」
レイコ「後は頑張ってね」
ユイ「へ!?」
ユイ（おいおいおい 彼氏欲しいとは思ったけど これは年齢差的にアウトだろお!?）
ユイ（さすがにこれはどうするかな）
ショウ「ねぇ」
ユイ「えっ!?」
ショウ「よろしく、ね」
ユイ（あらあらあら？ なんか可愛いじゃないこの子）
ユイ（まぁ今はわたし一時的にとはいえ お子様なんだし 友達としてならアリよね）
ユイ「よろしくね」
ショウ「えっと よ、よろしく」
ダン・スゥ「さぁ、パーティの始まりだ バナナもあるぞぉ」
ギンバ「人形の準備もできたよ」

〇蝶
お茶ロボットちゃしぶまる「ソチャ　デ　ゴザイマスル」

〇桜並木
ユイ（げぇ！ これは元カレが置いていった なんかよくわからない人形!?）
ギンバ「ひな祭りには人形も必要だね」
ユイ「いや、こういう人形じゃなくって」
ダン・スゥ「はっはー ひな祭りは楽しいのぉ」
ユイ（こんなのひな祭りじゃない けど⋯⋯ わたしを喜ばせようとしてるのかな）
お茶ロボットちゃしぶまる「ソチャ⋯⋯」
ユイ「楽しんであげる事も親孝行よね きっと」
お茶ロボットちゃしぶまる「ソチャ⋯⋯そそ⋯⋯そそそっ チャッ」
ショウ「ね、ねえ！ このロボットなんかおかしくない？」
ユイ「え？」

〇サイバー空間
お茶ロボットちゃしぶまる「ソチャァァァァッ!!」

〇数字
お茶ロボットちゃしぶまる「ソチャ⋯⋯セイフク⋯⋯ソチャ」
ユイ「なにこれぇ!?」
ギンバ「征服に来た宇宙人に寄生されたんだ なんて非道な」
ユイ（あんたらも元は 征服しに来たんじゃないかい！）
ダン・スゥ「父に任せろぉ」
ダン・スゥ「我々は平和を愛する！ まずはバナナを食べて落ち着くんだ」
ユイ「それはわたしの下着じゃあっ!!」
ダン・スゥ「間違えた！」
ユイ「チェストォォォ!!」
お茶ロボットちゃしぶまる「ソ⋯⋯チャッ」
レイコ「あらあら 後片付けはママに任せて」

〇新緑
レイコ「宇宙に流しておくわねぇ」

〇古いアパートの一室
ユイ「部屋が元に」
ユイ「⋯⋯あれ？ ショウ君がいない」
「うーん」
ユイ「大変！ 爆発に巻き込まれたみたい」
レイコ「問題ないわ、任せて」
ユイ「流したらダメじゃん！」
レイコ「安心して、ママの愛の力であの子は無事 怪我も記憶もキレイにして あの子のお家まで流したわ」
ユイ「大丈夫なのそれ⋯⋯？」
ダン・スゥ「ひな祭りとは愉快 他の文化も色々体験したいのぉ」
ギンバ「こどもの日や七夕とか ソフトクリームの日なんかも 気になるなぁ」
レイコ「たくさん経験しましょ」
ユイ「あんたら」

〇大きな一軒家
ユイ「いい加減にしろぉー!!」

〇大きな一軒家

〇大きな一軒家
　　どうやらわたしとこの家族達の
　　異文化交流をする日々は
　　まだまだ終わらなさそうです
　　きっとこれからも楽しい日々が続くはず
ユイ「ってわたしゃまだ６歳のままかーい！」
ユイ「チェストォ!!」