スクープ、前日

枕蔵

発売日前日の夜の話(脚本)

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〇開けた交差点
  俺の名前はひゅう吾。
  イケメン人気俳優だ。
  
  だが、それも今日まで。明日からは違う。
  なぜなら、俺に関するスクープが、明日、週刊誌に載るからだ。
  つらい。逃げたい。なんてこった。
  
  泣き言は山のようにでるけれど、全部自分のせいなので、泣いていられない。
  事務所も俺を見捨てた。
  当たり前だ。
  7股して、相手は全員人妻。
  誰がこんなやつをかばえるというのだ。
  明日から外を歩けなくなるので、最後の散歩のつもりで家から出てきた。
  コンビニに寄って、たんまり酒を買おうかな。

〇小さいコンビニ
葉子「あ、あのもしかして、俳優のひゅう吾さんですか!?」
ひゅう吾「そうだよ、ひゅう吾だよ」
葉子「あなたの大ファンなんです!!!!」
ひゅう吾「ありがとう。 サインはいる? 握手は? なんならハグもいいよ」
葉子「そんな! 恐れ多くて! 私、ひゅう吾さんに感謝しているんです。 つらい時いつも元気をもらってました」
葉子「真面目でかっこよくて人として尊敬できるひゅう吾さんのファンになれたことが、私の生涯の自慢です!!」
ひゅう吾「あは・・・あは・・・そんな、あはは・・・」
ひゅう吾「本当にごめんなさい!!」
葉子「どうしたんですか!?」
ひゅう吾「俺、明日、週刊誌に載るんだ。 3股・・・いや7股しちゃって。女性と、いや・・・人妻と。俺、ひどいやつなんだ」
葉子「え・・・!?」
ひゅう吾「俺のファンだった事は、生涯の汚点になるから、早く忘れなよ。本当にごめんな」
葉子「・・・そうなんですか・・・ショックですねえ・・・それでこれからどうするつもりなんですか?」
ひゅう吾「やけ酒でも飲もうかと思ってる。 これからのことはなんも考えてない」
葉子「どこまでも正直なんですね・・・ そのお酒、私におごらせて貰えますか?」
ひゅう吾「え? まじ? いいの?」
葉子「はい。ちょっと待っててください」
葉子「お待たせしました。 はいどうぞ」
ひゅう吾「水!?」
葉子「あなたの頭にびしゃびしゃにかけようと思ったんだけど、水が可哀想だからやめます。今日はやけ酒は止めてください」
葉子「一晩中、走って、走りまくって、これからの事考えてください。 明日を待つんじゃなくて明日に乗り込んでください」
ひゅう吾「え・・・」
葉子「それでは! お元気で!!」
ひゅう吾「あ、お元気で・・・」

〇海辺
  はあっ
          
      はあっ
              はあっ
  俺はあの後、走った。走り続けた。
  気づけば海に来ていた。
  海はきれいだった。
  
  海は大きかった。
  
  海は永遠だった。
  俺は、生まれ変われるのだろうか。
  
  海みたいに広い男になれるのだろうか。
  
  ペットボトルを握りしめながら自問した。
ひゅう吾(この水は、俺が初めて出たドラマのスポンサーの商品だ! あの娘は、それを分かって、俺にくれたんだろうか!?)
ひゅう吾(あのドラマでは初めてキスシーンもしたんだよなあ・・・・・・ムフフ・・・)
ひゅう吾「いかん! いかん! 俺は変わるんだ! あのドラマの有名セリフを海に叫ぼう!! ん!? なんだこれ」
ひゅう吾「わっ、砂浜に落ちていた雑誌に足を取られた。 しかも俺をスクープした週刊誌じゃんか。くじけるわ──」
ひゅう吾「いや、負けるな! 叫ぶんだ! すーはぁー」
  世界ごとお前を愛している!!
  
  俺はお前に見合う男になってみせる!!
  
  待ってろよ、世界! 一緒に輝こうぜ!
  雑誌の表紙の女の子が、俺を見守ってくれているようだった。
  
  よし、やるぞ。
  
  明日が本当の俺のデビューだ
  ──FIN

コメント

  • スクープってすっごくドキドキするんでしょうね。
    でも、こんな時にちゃんと向き合えるかで、世間の評価も変わってくると思うんですよ。

  • 自分の主観ですが、何か大きな失敗をしてしまったとき、それに対して向き合えるか向き合えないか、逃げるか逃げないかで人間の成長は決まる気がします!
    頑張れ7股男!

  • 7股しかも全員人妻とは人気俳優はやることが違いますね笑
    嫌なことを吐き出すように海に向かって走った光景が目に浮かびます。夜の海の力は魔力の様に吸い込まれますね。どん底に落ちても彼なら這い上がれるとエールを送りたくなりました。

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