吉川宗家のヲ匠座

篠也マシン

演目「星間一年戦争」(脚本)

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〇未来の都会

〇男の子の一人部屋
吉川イッチ之助「次は何を見ようかな」
吉川イッチ之助「キーワードは──」
  ・ヒーロー
  ・ロボット
  ・カッコいい
吉川イッチ之助「よし、自動創作開始」

〇荒廃した街

〇男の子の一人部屋
吉川イッチ之助「あ〜面白かった!」
吉川イッチ之助「でも──」
吉川イッチ之助「なんか物足りないんだよな」
母「イッチ~」
母「そろそろ出かけるわよ」

〇未来の都会
吉川イッチ之助「はーい」

〇劇場の座席
吉川イッチ之助「はあ」
吉川イッチ之助「なんで、伝統芸能なんか見ないといけないんだよ」
吉川イッチ之助「人間がAIの創るエンタメに勝てるわけ──」

〇劇場の舞台
吉川イッチ之助(か、怪獣!?)
吉川イッチ之助(いや、人間か)
吉川イッチ之助(どうして勘違いしたんだろう?)
吉川イッチ之助(わ!)
吉川イッチ之助(舞台の下から男がせり上がって──)
吉川イッチ之助(次は上から女の子!?)
吉川鉄シン「頭身!」
吉川フユ里「合体!」
オタク男子(甲)「いよっ!」
オタク男子(乙)「待ってましたっ!」
吉川イッチ之助(見える・・・見えるぞ!)
吉川イッチ之助(あれは──)

〇荒廃した街
吉川イッチ之助「合体ロボットだ!」
スーパーロボット「黒鉄」「行くぞ!」
スーパーロボット「黒鉄」「ぐ・・・」
吉川イッチ之助「あ!」
吉川イッチ之助「このままだとやられる」
吉川イッチ之助「が」
吉川イッチ之助「頑張れー!!」
スーパーロボット「黒鉄」「とばせ! 剛拳!」
スーパーロボット「黒鉄」「ジェットパンチ!!」

〇劇場の舞台
吉川夜々(ヤヤ)「ぐああー!!」
吉川イッチ之助「や」
吉川イッチ之助「やったー!!」
オタク男子(甲)「五代目!」
オタク男子(乙)「日本一!」

〇劇場の舞台
吉川鉄シン「五代目俺氏こと、吉川鉄シンでござりまする」
吉川鉄シン「本日は、わたくし共の拙い演技を御覧頂き──」
「恐悦至極にござりまする」
吉川イッチ之助(あの男の人・・・めちゃくちゃカッコいい!)
吉川イッチ之助「僕も──」
吉川イッチ之助「あの舞台に立ちたい!」

〇屋敷の大広間
吉川鉄シン「イッチ」
吉川鉄シン「おめえが息子となって六年」
吉川鉄シン「ついに元服か」
吉川イッチ之助「はい」
吉川イッチ之助「本当にお世話になりました」
吉川鉄シン「はっ」
吉川鉄シン「堅苦しい言葉はやめろや」
吉川鉄シン「──で」
吉川鉄シン「初公演では、何を演じるんだ?」
吉川イッチ之助「もう決めてるよ」
吉川鉄シン「そうか!」
吉川鉄シン「やはり、宗家伝統のスーパーロボット劇「黒鉄(くろがね)の砦」を──」
吉川イッチ之助「いや」
吉川イッチ之助「僕が演ずるのは「星間一年戦争」」
吉川イッチ之助「リアルロボット劇だ」
吉川鉄シン「な」
吉川鉄シン「なにっ!?」
吉川鉄シン「ふざけんじゃ──」
吉川夜々(ヤヤ)「まあまあ、あなた」
吉川夜々(ヤヤ)「落ち着いて」
吉川フユ里「そうよパパ」
吉川フユ里「イッチの考えも聞こうよ」
吉川鉄シン「むう・・・」
吉川イッチ之助「理由は単純」
吉川イッチ之助「僕はスーパー系よりリアル系が好きなんだ!」
「へ」
吉川イッチ之助「戦争の悲哀」
吉川イッチ之助「リアルな人間ドラマ」
吉川イッチ之助「兵器の一つに過ぎないロボット」
吉川イッチ之助「スーパー系にはない、深い魅力があるっ!」
吉川鉄シン「は」
吉川鉄シン「はーはっは!」
吉川鉄シン「黙れ小僧!」
吉川鉄シン「スーパー系には浪漫がつまってんだよ!」
吉川鉄シン「敵の攻撃を跳ね返す鋼のボディに──」
吉川フユ里「あー始まっちゃった」
吉川夜々(ヤヤ)「お茶でも入れてくるわね」

〇屋敷の大広間
吉川鉄シン「ゼェゼェ」
吉川イッチ之助「ハァハァ」
吉川鉄シン「もういい!」
吉川鉄シン「ワシは手伝わんぞ!」
吉川イッチ之助「ああ!」
吉川イッチ之助「こっちから願い下げだ!」
吉川夜々(ヤヤ)「も~派手にやっちゃって」
吉川フユ里「──で」
吉川フユ里「本当の理由は?」
吉川フユ里「イッチはパパの黒鉄が大好きなくせに」
吉川イッチ之助「そうだよ」
吉川イッチ之助「だからこそ演じられない」
「え?」

〇和風
  僕は宗家の遠縁の出
  みんなのような──
  生まれもった華がない
  その差を埋めようと努力してきたけど、まだまだだ
  今は他の演目で力をつけ──
  誰からも認められるようになった時、伝統を継ぎたいんだ

〇屋敷の大広間
吉川フユ里「ふうん」
吉川フユ里「要は「下手くそだからできません」と言えなかったわけか」
吉川イッチ之助「違──」
吉川フユ里「ん〜?」
吉川イッチ之助「ああ、そうだよ!」
吉川フユ里「ちっちゃいプライド」
吉川イッチ之助「うるさい」
吉川フユ里「でも、そういうの好き」
吉川イッチ之助「か、からかうなよ!」
吉川夜々(ヤヤ)「クスクス」
吉川夜々(ヤヤ)「フユ里」
吉川夜々(ヤヤ)「イッチの初公演、手伝っておやりなさい」
吉川フユ里「オッケー」
吉川イッチ之助「義母さん、いいの?」
吉川イッチ之助「義父さんは反対してるのに・・・」
吉川夜々(ヤヤ)「ふふ」
吉川夜々(ヤヤ)「あの人は言ったでしょ」

〇空
吉川夜々(ヤヤ)「『ワシは』手伝わないとね」

〇古風な和室(小物無し)
吉川フユ里「星間一年戦争ってどんな話なの?」
吉川フユ里「リアルロボット劇には疎いのよ」
吉川イッチ之助「地球と植民地惑星の戦争を描いた物語さ」

〇宇宙空間
  主人公の『令』は、機械いじりが好きな普通の少年
  けど──
  偶然、地球軍の機動兵器のパイロットになるんだ
  立ちはだかるのは、惑星軍のエース『仮面騎士』
  この二人の戦いを軸に物語が進む

〇古風な和室(小物無し)
吉川フユ里「この仮面の男、見たことある」
吉川フユ里「正体は何なの?」
吉川イッチ之助「色んなアレンジがあるけど──」
吉川イッチ之助「かつて惑星軍に滅ぼされた国の王子というのが定石だな」
吉川イッチ之助「復讐のために顔を隠し、スパイ活動をしている」
吉川フユ里「へえ、面白そう」
吉川フユ里「──ねえ」
吉川フユ里「BLの波動を感じない?」
吉川イッチ之助「へ」
吉川フユ里「仮面の下は超絶イケメンでさ」
吉川フユ里「令にこう迫るのよ」
吉川フユ里「スーッ」
吉川フユ里「“俺と一緒に惑星軍を中から突き破ろう”」
吉川イッチ之助「ちょ、耳元で囁くなよ!」
吉川フユ里「えへ」
吉川イッチ之助「そんな展開じゃないから」
吉川イッチ之助「仮面騎士は惑星軍のトップに近づくために手柄を立てないといけない」
吉川イッチ之助「令を倒そうとするの」
吉川フユ里「むー」
吉川フユ里「男同士のつながりを見せたいのに!」
吉川イッチ之助「まったく」
吉川イッチ之助「僕は令の役をやる」
吉川イッチ之助「フユ里は仮面騎士役を頼む」
吉川フユ里「オッケー」
吉川フユ里「・・・」
吉川イッチ之助(さすがだ)
吉川イッチ之助(もうキャラに憑依してる)
吉川フユ里「”あれが地球軍の機動兵器か”」
吉川イッチ之助(僕は天才ではないけど──)
吉川イッチ之助(みんなに一歩ずつ近づいてみせる)
吉川イッチ之助「“あ、あの男は──!?”」
吉川フユ里「”見せてもらおうか”」

〇空
吉川フユ里「”地球軍の機動兵器の力を”」

〇未来の都会

〇劇場の座席
オタク男子(甲)「五代目の息子の初公演か」
オタク男子(乙)「演目は何だろう?」
オタク男子(甲)「宗家伝統の「黒鉄の砦」だろうな」
オタク男子(甲)「五代目と比べ、どこまでできるかが見物さ」

〇劇場の舞台
吉川イッチ之助「吉川イッチ之助でござりまする」
吉川イッチ之助「本日はわたくしの初公演にお越し頂き──」
「まことにありがとうござりまする」
オタク男子(甲)(あれ?)
オタク男子(乙)(五代目がいないぞ?)
吉川イッチ之助「これからお見せするのは『星間一年戦争』」
吉川イッチ之助「わたくしが令の役を」
吉川フユ里「わたくしが仮面騎士を演じさせて頂きまする」
「どうぞ、最後までお楽しみくださいませ」
オタク男子(甲)「──これは興味深い」
オタク男子(乙)「どういうことだ?」
オタク男子(甲)「宗家がこの演目を演じたことはない」
オタク男子(甲)「五代目と息子でモメたのかもな」

〇劇場の舞台
吉川イッチ之助(さあ、始まるぞ)
吉川イッチ之助(ここは舞台の上ではない──)
令(イッチ之助)(戦争中の市街地だ!)

〇荒廃した街
令(イッチ之助)「惑星軍の攻撃!?」
令(イッチ之助)「シェルターでは持たないぞ」
オタク男子(乙)「へえ」
オタク男子(甲)「憑依するように演じる五代目と違い、計算しつくされた演技」
オタク男子(甲)(悪くないが──)
令(イッチ之助)「これは、地球軍の機動兵器!」
機動兵器(令)「う、動くぞ・・・!」
機動兵器(令)「き、来た!」
機動兵器(令)「武器は──」
機動兵器(令)「これか!」
機動兵器(令)「や、やったのか・・・」
仮面騎士「あれが地球軍の機動兵器か」
機動兵器(令)「あ、あの男は──!?」
仮面騎士「見せてもらおうか」
仮面騎士「地球軍の機動兵器の力を」
オタク男子(甲)「待ってましたっ!」
オタク男子(甲)「ついに仮面騎士の登場か・・・」
オタク男子(乙)「何者なんだ?」
オタク男子(乙)「ワイ、あまり詳しくなくてな」
オタク男子(甲)「よくあるパターンは、亡国の王子で惑星軍のスパイだな」
オタク男子(乙)「本来戦う必要のない二人が死闘を繰り広げるわけか」
オタク男子(甲)「ああ」
オタク男子(甲)「この演目の悲しいところさ」

〇荒廃した街
機動兵器(仮面騎士)「やるな──」
機動兵器(仮面騎士)「地球軍の機動兵器!」
吉川フユ里「初公演にしてはなかなか」
吉川イッチ之助「台本通りにこなすため、君の倍は練習したからな」
吉川フユ里「ふふ」
吉川フユ里「ただ台本通りに演じるなら──」
吉川フユ里「AIと変わらないわよ!」
機動兵器(仮面騎士)「はぁー!」
機動兵器(令)(こんな立廻り、台本には──)
機動兵器(仮面騎士)「どうした地球軍の起動兵器!」
機動兵器(令)「チィッ!」
機動兵器(仮面騎士)「くっ!」
機動兵器(仮面騎士)「メインカメラをやられたか」
機動兵器(仮面騎士)「ここは一旦引く!」
オタク男子(甲)(最後の立廻り──)
オタク男子(甲)(いいじゃねえか)

〇秘密基地の中枢
  その後も続く、令と仮面騎士の闘い──

〇宇宙戦艦の甲板
吉川イッチ之助(ついに最終幕──)
吉川イッチ之助(無事に終わらせてみせる!)
機動兵器(仮面騎士)「さらにやるようになったな」
仮面騎士「──令よ」
仮面騎士「私の想いに賛同するなら、同志になれ」
令(イッチ之助)「誰が貴様の同志など!」
仮面騎士「ならば、決着をつけよう──」
令(イッチ之助)「望むところだ!」
令(イッチ之助)「うおおお!」
仮面騎士「ぐあああ!」
オタク男子(乙)「お!」
オタク男子(甲)「ついに仮面が割れるぞ」
吉川イッチ之助「と」
吉川イッチ之助「義父さん!?」
「な」
「なんだってー!!」

〇宇宙戦艦の甲板
仮面騎士(鉄シン)「む、息子よ」
吉川イッチ之助(ど、どうしてここに!?)
仮面騎士(鉄シン)「ワシは仮面の力にずっと操られていたのだ」
オタク男子(乙)「おい!」
オタク男子(乙)「こんなアレンジもあるのか?」
オタク男子(甲)「いや、初めて見る」
オタク男子(甲)「面白くなってきたぞ・・・!」
吉川イッチ之助(何がどうなってる)
吉川イッチ之助(台本から外れて、めちゃくちゃだ!)
吉川鉄シン「イッチ」
吉川鉄シン「観客席を見てみろ」
  みんな・・・
  心の底から楽しそうだ
  まるで幼い頃の──

〇劇場の座席

〇宇宙戦艦の甲板
吉川鉄シン「計算通りの演技もいい」
吉川鉄シン「だが、時には己の感覚を信じてみろや」
吉川鉄シン「てめえなら、もっとできるはずだ」
吉川イッチ之助「・・・」
仮面騎士(鉄シン)「う・・・」
仮面騎士(鉄シン)「目がかすむ・・・」
令(イッチ之助)「だ、だめだ!」
仮面騎士(鉄シン)「最後に自分の目でお前の顔を見れて・・・」
仮面騎士(鉄シン)「ワシは・・・嬉し──」
令(イッチ之助)「う」
令(イッチ之助)「うおぉぉー!」
令(イッチ之助)「父さぁぁーん!!」
  立ち上がれ
  涙を拭け
  僕はこの先も──
令(イッチ之助)「戦い続ける!」

〇舞台袖
吉川夜々(ヤヤ)「すごい歓声」
吉川フユ里「あは」
吉川フユ里「めちゃくちゃなアレンジだったけど、好評みたいね」
吉川フユ里「それにしても──」
吉川フユ里「さすが、パパ」
吉川フユ里「最終幕で入れ替わった時、私の声まで真似るなんて」
吉川鉄シン「そんなこと朝飯前さ」
吉川鉄シン「──イッチ」
吉川イッチ之助「何だよ?」
吉川鉄シン「おめえの思ってる通り──」
吉川鉄シン「今の実力じゃ伝統は継げねえな」
吉川イッチ之助「・・・知ってる」
吉川鉄シン「だが」
吉川鉄シン「最後の演技──」
吉川鉄シン「悪くなかったぞ」
吉川イッチ之助「・・・」
吉川イッチ之助「二度も背中を叩きやがって」
吉川フユ里「ふふ」
吉川フユ里「少し殻を破れたみたいね」
吉川フユ里「頭で考えるだけでは、誰かの心を震わせられないものよ」
吉川イッチ之助「フユ里!」
吉川イッチ之助「いつからこんなことを──」
吉川フユ里「最初に言ったでしょ」
吉川フユ里「男同士の『つながり』を見せたいって」
吉川イッチ之助「・・・く」
吉川夜々(ヤヤ)「さあて」
吉川夜々(ヤヤ)「今日の公演も〆ね」
吉川夜々(ヤヤ)「フユ里、私のライブも手伝ってよ」
吉川フユ里「もちろん」
吉川フユ里「じゃあねイッチ」
吉川イッチ之助「ふん」
吉川イッチ之助「──まったく」

〇劇場の舞台
吉川夜々(ヤヤ)「本日は、わたくし共の拙い演技を御覧頂き──」
吉川フユ里「恐悦至極に存じまする」
吉川夜々(ヤヤ)「さあ」
吉川フユ里「さあ」
「さあさあ!」
吉川夜々(ヤヤ)「ここからは──」
「盛り上がっていくわよ!!」
オタク男子(甲)「ヤヤヤー!」
オタク男子(乙)「フユちゃーん!」

〇空

〇未来の都会
  ここは『ヲ匠座』
  廃れたオタク文化を見せる劇場

〇劇場の舞台
吉川鉄シン「吉川宗家でござりまする」
吉川鉄シン「わたくし共の公演にお越し頂き──」
「まことにありがとうござりまする」
吉川鉄シン「本日の演目は──」
  今日も僕たちは、この場所で──

コメント

  • マシンさんこんばんは
    過去作を読ませて頂いてます

    松竹さんの事を理解した素敵なお話でした
    特に家族それぞれの演技の違いを見れる所はお気に入りです!

    私 能って見たいけど見たことなくて、マシンさんは舞台裏の話も細かく書かれてましたね!すごい
    ゲームのクオリティがあがって家で楽しめる機会が増えても多様な文化に触れることは大事ですね

  • オタク文化は進化はしても廃れることはありません!
    新演目のラストは、ありそうでない、でもやっぱりあったらうれしい、シビれる展開でした。
    オタク文化はジャンルもファンも千差万別なので、あらゆる演目を創れそうですね。

  • 何だこの熱量…ッ?感じる…熱い想い…好きな物へ敬意を払う姿勢…めっっちゃ面白いじゃないすか!😂
    テンプレ化も各々の演目とか考えたり、稽古つけたりとか色々想像の余地ありますね!👏
    松竹さんにこの熱量、届いて欲しいです👏

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