悪役好きの超真面目家族

jloo(ジロー)

超真面目家族、悪役に憧れる(脚本)

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〇実家の居間
  田西家の朝は、早い。
  何故ならこの時間は、特撮番組『鬼面ウォリアー』の放送が始まるからだ。
田西春子「お兄ちゃん、早くテレビつけて!」
田西長太「分かっているって。さぁて、今日の怪人マグダインの活躍はっと」
  家族全員が、リビングに集まってくる。
  俺たちの目当ては、ヒーローじゃない。悪役マグダインだ。
  異様な静けさの中で、テレビから軽快な音楽とナレーションが響き渡る。

〇新興住宅
鬼面ウォーリアー「鬼面ウォリアー! 今日も悪を成敗するぜ!」
鬼面ウォーリアー「さぁ、悪い子はいないかな?」
鬼面ウォーリアー「おっと、あそこにいるのはマグダインじゃないか」
鬼面ウォーリアー「また、悪さをしているんじゃないのか? おーい、マグダイン!」
怪人マグダイン「あぁ、てめぇ・・・・・・いきなり、話しかけんじゃねぇよ」
鬼面ウォーリアー「君は、目を離したらすぐに悪事ばかり働くからね。様子を、見に来ただけさ」
怪人マグダイン「うっせぇな・・・・・・ほっといてくれよ」
鬼面ウォーリアー「そんな訳には、いかないな。少し、荷物を検査してみてもいいかな?」
怪人マグダイン「駄目に決まっているだろうが、さっさとどこかに行け」
女性「ぷーくすくす、何あれ。気づいていないのかな?」
鬼面ウォーリアー「ん、私に用かな? そこの、女性たち」
女性「わ、見られちゃった。早く、逃げようよ」
鬼面ウォーリアー「背中に、何かついているのか? むむむ・・・・・・むむむむむ、これは」
怪人マグダイン「ふーはっはっはっは、気づいたか。鬼面ウォリアー! 俺の仕掛けた、罠に!」
鬼面ウォーリアー「半額シールだと・・・・・・姑息な!」
鬼面ウォーリアー「悪は、許さない! 喰らえ、鬼面サンダー!」
怪人マグダイン「ぐああああああああああ!」
  こうして、怪人マグダインは正義のヒーローによって倒される。
  まあいつもの展開なら、次の話で都合よく復活しているのだが。

〇実家の居間
田西長太「ふぅ・・・・・・今日も格好良かったな、マグダイン」
田西春子「ねぇ。私、痺れちゃったよ」
田西輝明「お父さんも、若返った気がするな」
田西芙美子「あなたたち、もうそろそろ出ないと学校と仕事遅れちゃうわよ」
田西輝明「いけないお母さん、朝ごはんの用意を頼むよ」
田西芙美子「任せて、腕によりをかけて作ってあげるから」
田西春子「あれ、何か背中が痒いような・・・・・・」
田西長太「くくく、気づいたか妹よ」
田西春子「あー、これは、半額シール!」
田西長太「くくく、哀れな妹め。こんな簡単な罠にも引っかかるとはな」
田西春子「お兄ちゃん、勝った気になるのはまだ早いよ」
田西長太「まさか・・・・・・俺に、何か罠を仕掛けたのか?」
田西春子「スマートフォンを、確認してみて」
田西長太「じゅ・・・・・・充電が・・・・・・無い」
田西春子「コンセントを、外しておいたんだよ」
田西春子「ふふふ。これでお兄ちゃんは、私の持っている携帯充電器を使わないと充電出来なくなっちゃったね」
田西長太「おら、寄こせ。まじで困るから!」
田西芙美子「はいはい皆、朝ごはんが出来たわよ」
田西輝明「お母さん、これは・・・・・・」
田西芙美子「え、ラーメンだけどどうかした?」
田西輝明「ちょっと朝に食べるには重いんじゃないか? それに、一週間も続けてだと流石に・・・・・・」
田西芙美子「あら、一部の地域では朝にラーメンを食べるのは普通のことよ?」
田西芙美子「それともまさか、私の作った料理に文句を言う訳じゃないわよね?」
田西輝明「ぐ、わざとか・・・・・・私も、舐められたものだな」
  父はラーメンを食べ終えると、食器を洗わずに台所の流しに置いた。
田西長太「父さん、それは違うよ!」
田西輝明「な、何だ息子よ」
田西長太「悪役にも、流儀がある。自分で食べた食器は、自分で洗う。これは皆で決めたルールじゃないか」
田西輝明「う、確かにこれは格好悪かったかもしれないな。すまない」
  大人しく食器を洗い始めた父に、母も満足げだ。
田西長太「それじゃあ、学校に行ってくるよ」
田西芙美子「行ってらっしゃい」

〇通学路
  こうして、俺たちの日常が始まる。
  超真面目家族の、ごく普通な一日の始まりである。

コメント

  • 悪役のマグダインよりも鬼面ウォリアーの方が圧倒的に職質や通報されそうな風貌だな、とか、ウォリアーがそもそも近づかなければマグダインに何もされなかったのに、とか、いろいろとツボで、田西家よりも私の方が番組のファンになりそう。田西家はいたずらよりも、異常に若作りのお母さんが気になって仕方がない。

  • 真面目な家族が一生懸命悪ぶっているのが伝わってきました。朝ご飯にラーメンはかなりな拷問だとは思いますが、そんな悪をも受け入れてしまうのは、やっぱり家族愛なんでしょうか。

  • みんなわりと小さなイタズラなのに春子がお兄ちゃんに向けてしたイタズラは、まあまあ大きめだったのが面白かったです😂充電器の線抜くのは本当に困るやつですよね😂
    ラーメンの食器を洗わなかったお父さんに怒っていたのもおもしろかったです。
    悪さするのが好きなのにそこの礼儀は弁えているんだなあと思いました😂

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