決戦前夜 (脚本)
〇兵舎
男戦士「勇者が・・・死んだ・・・」
黒魔道士「言わなくたってわかっているわよ」
白魔道士「一体誰が?」
黒魔道士「それがわからないからこうやって集まってるんでしょ」
男戦士「唯一分かっているのは、ディナー中に勇者が突然泡を吹いてぶっ倒れたってことだな。文字通り『最後の晩餐』になったてわけだ」
黒魔道士「この宿にいるのは私と「白魔道士」と「男戦士」、それに食事の面倒を見てくれた「看板娘」の四人ね」
男戦士「そういえば白魔道士、お前は勇者によく言い寄られていたよな。見たところかなり嫌がっていたようだったが・・・」
白魔道士「なっ!私を疑っているんですか? それを言うなら黒魔道士だって言い寄られていました!」
白魔道士「それにあなただって、想い人である黒魔道士が言い寄られている姿を見ては殺意むき出しの眼差しで勇者を睨んでいたではないですか」
男戦士「たしかにあのバカ勇者は毎日のように黒魔道士にちょっかいを出していたから、その度にぶち殺してやろうと思ったさ」
男戦士「でも、今日は特別だ。このパーティーで過ごす夜も今日で最後だと思って見逃してやったんだ」
男戦士「それに少なからずアイツには借りもあるしな」
黒魔道士「わ、私だって、今日は特別だと思ってアイツに酒を注いでやったわ」
黒魔道士「いつもなら、あのいやらしい目から逃れるために男戦士に助けを求めるところだけど、今日は最後の夜だから優しくしてやったのよ」
白魔道士「私も今日は特別な日だと思い、日頃の悪行を大目に見て、勇者の食べ物全てから特殊効果を打ち消す魔法をかけていました」
白魔道士「毒だってその時に中和されているはずです」
男戦士「いよいよ迷宮入りだな。白魔道士が打ち消したはずの毒が勇者を殺したわけだ」
誰が勇者を殺したんだ?
〇兵舎
毒殺事件が起きる十分前。
看板娘(許せない。私の勇者様を誘惑するあの淫乱黒魔道士)
看板娘(あなたは勇者様のパーティにはふさわしくないわ。魔王軍の幹部ですら悶絶するという猛毒を酒に盛ってやるわ)
看板娘(フフフ。これでアナタはおしまいよ・・・。あぁ勇者様。 私だけを見てください)
〇兵舎
毒殺事件が起きる八分前。
白魔道士(今日の勇者のターゲットは黒魔道士みたいね)
白魔道士(いつもなら不快な勇者だけれども、明日の戦いにこの男は必要だわ。 こんなところで殺されては困る)
白魔道士(とりあえず勇者の食べ物に何か盛られていても大丈夫なように、特殊効果無効の魔法をかけておこう)
〇兵舎
毒殺事件が起きる五分前。
勇者「なぁなぁ黒魔道士。今日は俺の部屋に来いよ。最後の夜なんだ。別にいいだろ?」
黒魔道士(またコイツは・・・。 私がどれだけアナタのそういうところを嫌がっているかも知らずに・・・)
黒魔道士(でも今日は最後の夜。少しくらいは優しくしてあげよう)
黒魔道士「も、もう、バカ。私の酒を注いであげるから大人しくしなさい」
〇兵舎
毒殺事件が起きる五分前。
男戦士(また勇者のヤローが黒魔道士にちょっかいをかけていやがる。 俺の女だとわかってどうして手を出せるんだ)
男戦士(・・・いつもなら止めるところだが、 アイツの力でここまで来れたのも真実だからな・・・)
男戦士(今日のところは大目に見てやるか)
〇兵舎
毒殺事件が起きる三十秒前。
勇者(なんか今日みんな優しいな)
勇者(・・・これワンチャン黒魔道士いけるんじゃね?)
勇者(よ〜し。しっかり酒と気合いを入れて、 最後の夜に臨むとするか!)
ゴクゴク
そして勇者は殺された
なかなかクズな勇者ですね。笑
誰が犯人でもおかしくない状況で、まさかの人が犯人。
というか、勇者が毒入りの酒を飲んだのは…なんか事故のような気もします。笑
殺人事件の緊張感が伝わる展開ですが、その中でも勇者のクズっぷりが際立ってますね。偶然が重なり勇者は不幸にも亡くなってしまいますが、不思議にも悲しく感じられないですねw
ファンタジー要素がミステリー要素を見事に邪魔していなくてすごいと思いました。3人とも明日が終わったらさっさと解散する気だったのが、地味に笑えて好きです。