乙女ゲームの主人公の「親友」だけど、何か聞きたいことある?

水野 七緒

1・まずは自己紹介(脚本)

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〇撮影スタジオ
鈴木 葵(はぁ・・・ 今月も収入ヤバいな・・・)
鈴木 葵「あ、どうも。 鈴木 葵(あおい)です」
鈴木 葵「乙女ゲームの中の人です」
鈴木 葵「ああ、いやいや 乙女ゲームの 主人公じゃなくて・・・」
鈴木 葵「その「親友」です」
鈴木 葵「そう、親友──」
鈴木 葵「いや、モブじゃねーよ!」
鈴木 葵「モブは、こういうの!」
鈴木 葵「それか そもそも立ち絵がないから」
鈴木 葵「私は「親友」」
鈴木 葵「だから、こうして 立ち絵もあるし」
鈴木 葵「名前もちゃんと フルネームってわけ!」
鈴木 葵「え・・・「鈴木」って名字が ありきたりすぎる?」
鈴木 葵「まあ、そのあたりは その・・・」
鈴木 葵「個性が関係している っていうか・・・」
鈴木 葵「たとえばさ、 私と同じ親友役でも・・・」
  こういう人とか・・・
  こういう人だと・・・
  名字が「白鳥」とか「道明寺」とか
  個性的なやつになるんだよね
鈴木 葵「でも、私はこのとおり普通なんで 名字も無難に「鈴木」ってわけ」
鈴木 葵「まあ、十中八九、 主人公より目立たない 主人公に都合のいい役回りってこと・・・」
???「葵ちゃーん」
鈴木 葵「あ、主人公」
主人公「おつかれさまー。 そろそろ撮影はじまるって」
鈴木 葵「えっ、もう イベントストーリーのシナリオ あがってきたの?」
鈴木 葵「今回の担当ライター 書くの早いじゃん」
主人公「んーなんかね 栄養ドリンク5本飲んで 頑張って書き上げたみたい」
鈴木 葵「うわ、マジか・・・」
鈴木 葵「そんな生活 絶対に嫌だわー」
鈴木 葵「ていうか、あんた・・・ その格好どうしたの?」
主人公「ああ、ええとね お洗濯が間に合わなくて」
鈴木 葵「いや、でもこれから 撮影じゃん」
主人公「大丈夫だよ、 私は、いつもどおり 声だけの出演だもん」
鈴木 葵「でも、スチルは・・・・・・」
主人公「今回は「彼」くんたちの 単独イラストだって」
鈴木 葵「・・・・・・あ、そう」
鈴木 葵(まあ、うちのゲームは スチル以外での 主人公の顔出しNGだもんね)
鈴木 葵「で、私の登場シーンは? 3つ? 4つ?」
主人公「それが、ええと・・・ 1シーンだけみたい・・・」
鈴木 葵「・・・・・・はぁっ?」
鈴木 葵「6時間待たせておいて たったそれだけ!?」
主人公「う、うん・・・ええとね」
主人公「プロローグの 水着を選ぶとこだけみたい・・・」
鈴木 葵「いやいや、待ってよ」
鈴木 葵「そりゃ、たしかに 今回のイベントストーリーのテーマは 「彼とのバカンス」だけどさ」
鈴木 葵「もうちょっとくらい 出演させてくれても・・・」
ディレクター「主人公ちゃーん、 葵ちゃーん」
ディレクター「そろそろ スタンバイしてくれる?」
主人公「はーい!」
主人公「じゃあ、行こうか。 葵ちゃん」
鈴木 葵「・・・・・・うん」
鈴木 葵「はぁ・・・マジか 出演1シーンだけって」

〇撮影スタジオ
ディレクター「それじゃ、本番!」
ディレクター「用意──スタート!」

〇試着室
  7月リリース予定:イベントストーリー
  「彼とイっちゃう★真夏のキラキラバカンス」
  鈴木 葵
  「見て見て、主人公!
  この水着、超かわいくない?」
  主人公
  「え、でも派手すぎないかな」
  主人公
  「それに、その・・・・・・
  布地が少ないっていうか・・・・・・」
  鈴木 葵
  「そんなことないって!
  これくらいふつうだよ」
  鈴木 葵
  「それに『彼』も
  絶対喜んでくれるって!」
  主人公
  「・・・・・・そうかなぁ」
  鈴木 葵
  「そうだよ。だから買っちゃいな、
  絶対似合うって」
  主人公
  「うーん・・・・・・」
  ブルル・・・
  主人公
  「あ、ごめん。電話・・・・・・」
  (えっ、「彼」から?)
  あなたに
  電話をかけてきたのは──?

〇撮影スタジオ
ディレクター「──はーい、OK!」
ディレクター「葵ちゃんの撮影は以上だよね」
ディレクター「おつかれさま。 また次回もよろしくね!」
鈴木 葵「はぁ・・・・・・」
ディレクター「それじゃ、主人公ちゃん 選択肢後の撮影 はじめてもいいかな?」
主人公「はーい」
鈴木 葵(・・・・・・仕方ないか)
鈴木 葵(このあと、主人公は 選択肢で選んだ「彼」と バカンスに行くわけだし)
鈴木 葵(そこに「親友」が同行したら ただの邪魔者になるよね)

〇撮影スタジオ
鈴木 葵「まあ、でも今回の私 けっこう重要な ポジションだったわけだし」
鈴木 葵「それで良しとして・・・・・・」
鈴木 葵「・・・・・・え、どこが 重要なのかって?」
鈴木 葵「うわ、気づいてないのか・・・」
鈴木 葵「あのさ・・・ じゃあ、とりあえず さっきのシーンを思い返してみてよ」

〇試着室
  鈴木 葵
  「見て見て、主人公!
  この水着、超かわいくない?」
  主人公
  「え、でも派手すぎないかな」
  主人公
  「それに、その・・・・・・
  布地が少ないっていうか・・・・・・」
  鈴木 葵
  「そんなことないって!
  これくらいふつうだよ」
  鈴木 葵
  「それに『彼』も
  絶対喜んでくれるって!」
  主人公
  「・・・・・・そうかなぁ」
  鈴木 葵
  「そうだよ。だから買っちゃいな、
  絶対似合うって」

〇撮影スタジオ
鈴木 葵「ね、私、主人公に 大胆なデザインの水着を 買わせたでしょ」
鈴木 葵「あれさ、フラグっていうか 今回のイベストの 重要な前振りなわけよ」
鈴木 葵「というのも たぶん、このあと 誰かの個別ルートで」
鈴木 葵「水着絡みのハプニングが 起こるはずなんだよね」
鈴木 葵「たとえば、そうだな・・・」
鈴木 葵「「主人公の水着姿が可愛くて ナンパされて彼が焦る」とか」
鈴木 葵「「泳いでいるうちに 水着がポロリして、彼が慌てる」 とか」
鈴木 葵「あとはさ、水着の布地が 少なめってことだから」
鈴木 葵「たぶん、アハーンな 糖度高めなイベントが 待っているわけよ」
鈴木 葵「まあ、夏だしね。 うちのユーザーさん そういうの大好きだしね」
鈴木 葵「ところが そこでネックになるのが うちの主人公のキャラ設定」
鈴木 葵「あの子、いちおう 「奥手キャラ」ってことに なってるんだよね」
鈴木 葵「それなのに、自分から 大胆な水着を選んだら キャラ崩壊に繋がるじゃん?」
鈴木 葵「かといって そういうのを着せないと 盛りあがらないわけよ」
鈴木 葵「夏なのに!」
鈴木 葵「せっかくの バカンスなのに!」
鈴木 葵「ってことで「親友の私」が 大胆な水着を勧めて 主人公に買わせたってわけ」
鈴木 葵「ほらね、 いい仕事してるじゃん、私」
鈴木 葵「今回の個別ルートで 水着絡みの甘々展開があったら」
鈴木 葵「半分くらいは 私のおかげだからね?」
鈴木 葵「ほんと、みんな 感謝してよね!」
鈴木 葵「ってことで「親友」は 今回、重要な役割を 担ったわけだからさ」
鈴木 葵「特別に、こっそり ボーナスなんて・・・」
鈴木 葵「・・・・・・え?」
鈴木 葵「バカンス用の新規背景と 「彼」5人分の水着差分で 予算を使い切った?」
鈴木 葵「はぁぁ・・・マジか」
鈴木 葵「それじゃ、次のイベストまで 試食販売のバイトでも してきまーす」

コメント

  • 主人公の親友ってそんな感じですよね。笑
    でも、その親友ポジションのキャラが好きな人もいますので、鈴木さん侮れない!
    読んでてすごくおもしろかったです!

  • 面白いです!終始「わかるー」と頷きながら読んでいました。主人公のためになることを
    「都合よく」してくれる大事な存在、彼女にスポットライトがもっと当たりますように。

  • 楽しいストーリでした、主役ではなく、その親友。その視点からのお話し、新鮮でした。メインではなくてもサブでも輝けていける彼女にとても好意が持てました。

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