バレンタインdeキッス

尾長イルカ

後編(脚本)

バレンタインdeキッス

尾長イルカ

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〇屋上の端
彩心(いろは)「何だ? こんな所に呼び出して」
旺太(おうた)「もうすぐバレンタインだろ 俺 欲しいものが・・・」
彩心(いろは)「これか?」
旺太(おうた)「いいのか!?」
彩心(いろは)「いらないのか?」
旺太(おうた)「いるいるいる!! フォー!! やったぜ!!」
彩心(いろは)「甘党だな」
旺太(おうた)「そういうことじゃ・・・」
旺太(おうた)「チョコもいいけど 実はお前に・・・アーうまく言えねえ」
彩心(いろは)「また 熱があるのか?」

〇電脳空間
「呼吸が乱れている  アドレナリンが過剰だ また保健室に行くか?」

〇屋上の端
旺太(おうた)「保健室はいいよ それよりキキキキキッ・・・」
彩心(いろは)「?」
旺太(おうた)「キスを!!」
彩心(いろは)「キスとは唇を接触させ 愛情を示す行為 挨拶あるいは儀礼 性行為の一部として行われる」
彩心(いろは)「キスの種類としては ディープキス ライトキス バードキス スライドキス カクテルキス  サーチングキス バタフライキス」
旺太(おうた)「バ バレンタインキッスがいい!!」
彩心(いろは)「そんなキスはない データベース上は──」
旺太(おうた)「お前が好きだ バレンタインキッスだ」
旺太(おうた)「言っちまった・・・」
彩心(いろは)「キスすると人間はどうなるのだ?」
旺太(おうた)「知らねーよ したことねえもん・・・」
旺太(おうた)「だけど多分 天にも昇る気分で・・・」
旺太(おうた)「きっと空も飛べるんじゃないかな?」
彩心(いろは)「人間はキスすると羽が生える? 空を飛べるのか?」
彩心(いろは)「キスで羽化すると? そんなデータは聞いたことがないな」
彩心(いろは)「データベースが間違っているのか?」
彩心(いろは)「興味深い」
旺太(おうた)「なにゴチャゴチャ言ってんだよ?」
彩心(いろは)「よし飛んで見せろ」
旺太(おうた)「え!」
旺太(おうた)「・・・・・・」
彩心(いろは)「なぜ飛ばない? キスしたぞ」
旺太(おうた)「・・・・・・」
彩心(いろは)「心拍数が下がっている 血圧も低下している」

〇電脳空間
「体温も下がっている 呼吸数も減っている」
「迷走神経反射のようだ 気分でも悪いのか?」

〇屋上の端
旺太(おうた)「なんだか 人形とキスしてるみたいだ・・・」
旺太(おうた)「こんなんじゃねーよ こんなんじゃねーよ」
旺太(おうた)「キスって こんなんじゃねーだろう!?」
旺太(おうた)「もっとドキドキしてワクワクして もっとキュンキュンするって!!」
彩心(いろは)「キュンキュンとは?」
旺太(おうた)「もっともっと手をつないだり 楽しく話したり遊んだり」
旺太(おうた)「もっともっと ときめいてワクワクして ドキドキ・・・」
旺太(おうた)「チクショウ チクショウ チクショウ」
彩心(いろは)「キュンキュンとは何だ? データベースには そんな用語は──」
旺太(おうた)「うるせえ キュンだよ バカヤロウ」
彩心(いろは)「キュン??」
  チョコを捨てて駆け出していく旺太

〇研究装置
彩心(いろは)「博士 キュンとは何だ?」
博士「キュン?」
  いきなり博士に キスする彩心
博士「おいおい!!」
彩心(いろは)「空を飛べるか?」
博士「飛ぶ? 誰が?」
彩心(いろは)「やはり飛べないか」
  ピョンピョン
  その場で跳ねる彩心
博士「何を飛び跳ねてるんだ? やはりバグか」
  首を傾げる彩心
彩心(いろは)「旺太と博士のキスは 少し違う気がする」
彩心(いろは)「旺太とキスした時 私は少し 飛べるような気がしたんだ」
博士「キスとかキュンとか飛ぶとか 一体何の話かね?」
  うつむいて立ち去る彩心
博士「本格的にヤバいな 今度の休みにメンテナンスだ やれやれ 忙しいのに」

〇黒
  旺太は学校を休んだ

〇屋上の端
彩心(いろは)「また呼びだし 今度はお前か」
初恵(はつえ)「旺太が休んでるの あんたのせいなの?」
彩心(いろは)「恋の病のせいだろう」
初恵(はつえ)「とぼけないで! あんた旺太に何したのよ!!」
  彩心に にじり寄った瞬間
  何かを踏みつける初恵
初恵(はつえ)「!!!!!!」
初恵(はつえ)「ひどいひどい」
初恵(はつえ)「私のチョコ捨てるなんて!! 旺太に渡さなかったの!?」
彩心(いろは)「旺太が捨てた」
初恵(はつえ)「ウソウソ 嘘つき!!」
  いきなりキスをする彩心
初恵(はつえ)「!!!」
彩心(いろは)「飛ぶか?」
初恵(はつえ)「痛い!! 何て面の皮が厚いのかしら」
  彩心をビンタして 手を痛める初恵
彩心(いろは)「やはりキスでは空を飛べないな 旺太は間違っている」
初恵(はつえ)「それって旺太にも キスしたってこと?」
彩心(いろは)「そうだ 旺太がキスすると空を飛べると」
  みるみる初恵の目から 涙が溢れ出す
  しゃがみこんで泣く初恵
彩心(いろは)「キスすると飛ぶのではなく しゃがみこむのか?」
  屋上の柵を乗り越える初恵
初恵(はつえ)「そんなに飛ぶところが見たければ 見せてやる!!」
  飛び降りようとする初恵
  力強く 初恵の体を引き上げる彩心
彩心(いろは)「人間の命は尊いとデータにある 命を粗末にするな」
初恵(はつえ)「偉そうに!!」
初恵(はつえ)「全部あんたのせいじゃない 全部あんたが悪いんじゃない 偉そうに説教しないで」
初恵(はつえ)「ほっといてよ」
初恵(はつえ)「鬼 悪魔 あんたは人間じゃない!! ひとでなし!!」
彩心(いろは)「そうだ 人ではない サイバネティック・オートマトン・エンバイロンメンタリー・フレンドリー・システム・マトリックス──」
初恵(はつえ)「何 わけ分かんないこと言ってんの!!」
  長い正式名称を いつも
  最後まで言わせてもらえない
  ショートして倒れる彩心

〇教室
浩(ひろし)「休みじゃなかったのか?」
旺太(おうた)「寝てたけど退屈でな 学校に来ちまった」

〇黒

〇教室
浩(ひろし)「何だ あの光」
旺太(おうた)「向かいの校舎の屋上だ 行こう!!」
  走っていく二人

〇屋上の端
闇ブローカー「よし 成功だ!!」
初恵(はつえ)「人殺し」
闇ブローカー「ハハハハハ」
闇ブローカー「これはロボットだ」
初恵(はつえ)「!?」
闇ブローカー「さあ引き上げるぞ」
  彩心をヘリに乗せ 離脱する男たち
旺太(おうた)「待て!!」
闇ブローカー「もう遅い」
旺太(おうた)「クソ!!」
  ヘリコプターの足に飛びつく旺太
初恵(はつえ)「危ない!!」
旺太(おうた)「ウォー」
  旺太をぶら下げたまま
  飛んでいくヘリコプター
初恵(はつえ)「旺太」
浩(ひろし)「まるでミッション・インポッシブル」
初恵(はつえ)「飛んでっちゃった・・・」

〇廃墟の倉庫
  ホテルにいた影の正体は
  闇ブローカーだった
闇ブローカー「博士のロボット 海外で高く売れるぞ」
部下「ボス こいつどうします?」
闇ブローカー「最後までヘリにしがみついて しつこいガキだ」
旺太(おうた)「畜生 ロープを解け!」
彩心(いろは)「!!」
  旺太同様
  縛られていた彩心が起きる
闇ブローカー「よく寝るロボットだな」
旺太(おうた)「ロボット?」
闇ブローカー「そうだ こいつはロボットだ」
旺太(おうた)「う 嘘だ・・・彼女は・・・」
旺太(おうた)「だってだって キスしたぞ!!」
闇ブローカー「ロボットとキス? イカれてるな」
闇ブローカー「さて お荷物は始末するか」
旺太(おうた)「お荷物? え 俺!?」
闇ブローカー「目撃者はデリートだ」
旺太(おうた)「やめろ!!」
闇ブローカー「勇敢だったぜ ヒーロー」
彩心(いろは)「人間の命は尊いと  データに書き込まれている」
旺太(おうた)「データって・・・本当にロボットなのか」
彩心(いろは)「私はサイバネティック・オートマトン・エンバイロンメンタリー・フレンドリー・システム・マト──」
旺太(おうた)「もういいよ!! ガッカリだ・・・」
彩心(いろは)「・・・・・・」
闇ブローカー「目が光ってるぞ? 宝石でもつけてるのか?」
闇ブローカー「これは驚いた 涙だ ロボットのくせに泣いてやがる」
旺太(おうた)「!!」
彩心(いろは)「命を奪ってはいけない 人間の命は尊い いや違う」
彩心(いろは)「旺太がいないと 旺太が・・・」
彩心(いろは)「私 飛べない・・・」
彩心(いろは)「なんだろう? 胸がドキドキする」

〇電脳空間
彩心(いろは)「血圧 心拍数 呼吸数 関係ないのに」
彩心(いろは)「なぜ こんなに胸が苦しいんだ・・・」

〇廃墟の倉庫
彩心(いろは)「これがキュンか? これがキュンなのか!?」
旺太(おうた)「そうだよ それがキュンだ」
彩心(いろは)「苦しい・・・」
彩心(いろは)「でも嬉しい」
闇ブローカー「何を わけ分かんねーこと言ってんだ」
  ロープを引きちぎり 立ち上がる彩心
闇ブローカー「コイツ もう一度電気ショックだ!」
闇ブローカー「!!」
闇ブローカー「ロ ロボットの色仕掛けなんか・・・」
  下着を男の顔に投げつける
闇ブローカー「うわー💛」
  男たちが目をそらし ひるんだ瞬間
  素早く倒す彩心
  落ちた下着をつける
旺太(おうた)「俺 全然見てねえから」
彩心(いろは)「声がうわずっている 鼓動が激しい 呼吸が速い」
旺太(おうた)「見た見た 見ました!! ごめんなさい!!」
彩心(いろは)「お前に見られるの なんか嫌だ」
旺太(おうた)「ロボットだろ?」
彩心(いろは)「でも嫌だ」
  旺太のロープを解く彩心
旺太(おうた)「お前本当に・・・」
  倒れる彩心
旺太(おうた)「彩心 彩心」

〇大きな木のある校舎
初恵(はつえ)「ありがとう でも・・・」
浩(ひろし)「・・・・・・」
初恵(はつえ)「バレンタインって女の子から 好きな子にチョコを・・・」
浩(ひろし)「日本ではね でも・・・ どっちからあげたって・・・」
初恵(はつえ)「・・・・・・」
浩(ひろし)「やっぱナシかな・・・」
初恵(はつえ)「アリだよ」

〇怪しい研究所
旺太(おうた)「あれから彩心は?」
博士「目を覚まさない」
博士「彼女には介護用ロボットとして 人の心や感情を学んで欲しかった」
博士「しかし間違いだったようだ」
博士「心や感情なんて 数値化できないものを 解るハズなかったんだ」
博士「負荷が掛かり過ぎて 彼女の人工知能はダウンした」
博士「二度と動かないかもしれない」
旺太(おうた)「博士が作ったんだろ? 直せないのか?」
博士「経験学習型ロボットの彩心は 人工知能も自ら拡張する その法則性は解らない」
博士「だから直せない 残念だが・・・」

〇研究装置
旺太(おうた)「ガッカリだって言ったのは嘘だ 俺 嘘つきなんだ」
旺太(おうた)「彩心は彩心だよ」
旺太(おうた)「ロボットでも サイバナンタラカンタラでも関係ねえ」
旺太(おうた)「俺はお前が お前のことが!!」
旺太(おうた)「お前がいなきゃダメなんだ お前にキュンなんだ!!」
  泣き崩れる旺太
旺太(おうた)「・・・・・・・・・」
旺太(おうた)「・・・・・・・・・」
旺太(おうた)「さよなら」
  最後に優しくキスをした
  部屋を出て行く旺太

〇電脳空間
「鼓動が速い 呼吸が無茶苦茶だ なぜ泣いている?」
  おしまい

コメント

  • ロボットに感情が芽生えるとは・・・変な奴らにやられそうになった時はどうなるかと思ったけど、彼女に感情が芽生えて無事乗り越えましたね。幼馴染ちゃんの方は上手く行ってそうだし、ロボットちゃんも早く坊やを追い掛けて欲しいですね。

  • 最後の展開、とても感動しました!
    色々ありながらも幸せなラストになって、嬉しかったです!

    ロボットの色仕掛けが効きまくってる闇ブローカーが面白かったです!
    まさか色仕掛けをしてくるとは思わなかったでしょうし、可愛いロボット相手ですから無理もありませんね笑

  • 面白くて一気に後半まで読みました!いいですねぇこういう展開!大好物です!読んでいて、自分もロボットにキュンと恋しましたw😄

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