いつもと同じ朝のはずが‥(脚本)
〇飾りの多い玄関
それはいつもと変わらぬ朝、彼は朝のゴミ出しをしようとしていた
戸野倉真澄「今日はプラごみの日か‥」
〇一戸建て
家の外にゴミを置こうとした、その時‥
〇黒
〇飾りの多い玄関
戸野倉真澄「あれ?」
戸野倉真澄「俺、外に出たよな‥寝ぼけてる?」
〇一戸建て
戸野倉真澄「とにかく、ゴミを‥」
〇黒
〇飾りの多い玄関
戸野倉真澄「‥いや、だからゴミを」
〇一戸建て
戸野倉真澄「ゴミを‥」
〇黒
〇飾りの多い玄関
戸野倉真澄「何で!?」
「パパ―!ゴミ出したー!」
戸野倉真澄「いや‥あの‥」
戸野倉このは「ママー!もう行くよー!」
「ごめん、先に行ってて!ママもすぐ行く!」
戸野倉このは「はーい!」
戸野倉真澄「何で‥」
戸野倉このは「パパー!行ってきまーす」
戸野倉真澄「待って!」
戸野倉このは「なに?」
戸野倉真澄「パパ出られない!外に!」
戸野倉このは「何で?」
戸野倉真澄「わかんない」
戸野倉このは「はぁ?」
戸野倉真澄「わかんないけど、出られない」
戸野倉このは「ふーん‥じゃあ、行くね 遅刻しちゃうから」
戸野倉真澄「いや、待て待て待て! ふーんって何だよ! パパが出られないんだから、このはだって‥」
戸野倉このは「それゴミでしょ?出せばいいの?」
戸野倉真澄「えっ?まぁ‥」
戸野倉このは「ちょっと貸して」
戸野倉真澄「あっ、はい」
〇一戸建て
戸野倉このは「外に置けばいいのねー」
戸野倉真澄「気をつけろ! そこから中に戻されるぞ!」
戸野倉このは「はーい、置いて来たー」
戸野倉真澄「えっ?」
戸野倉このは「もーいいー?私行くねー!」
戸野倉真澄「あっ、はい‥ 行ってらっしゃい‥」
戸野倉真澄「何でだ?」
〇飾りの多い玄関
戸野倉真澄「どうして‥?」
戸野倉真優「あれ、ゴミ出してくれた?」
戸野倉真澄「えっ?ああ、うん‥」
戸野倉真優「ありがと、じゃあ行ってくるねー」
戸野倉真澄「いや!ちょっと」
戸野倉真優「何?どうしたの?」
戸野倉真澄「出られないの」
戸野倉真優「はぁ?」
戸野倉真澄「俺、出られないの」
戸野倉真優「どういう事?」
戸野倉真澄「このはは出られたけど、俺は出られないの」
戸野倉真優「‥意味が分かんないんだけど?」
戸野倉真澄「だよね、ちょっとやって見るから」
戸野倉真優「えーっ!仕事遅れちゃうよー」
戸野倉真澄「すぐだから、見てて!」
〇一戸建て
戸野倉真澄「いい?出るよー!」
〇黒
〇飾りの多い玄関
戸野倉真優「はぁ?何それ?どうやったの?」
戸野倉真澄「どうって‥だから、出られないんだって!」
戸野倉真優「えー、マジで‥ちょっと引くわ」
戸野倉真澄「あはは‥」
戸野倉真優「待って、私ちょっと出てみる」
〇一戸建て
戸野倉真優「ここからか‥」
〇住宅街
戸野倉真優「あー、出られたー!」
〇飾りの多い玄関
戸野倉真澄「出られるんだ‥」
戸野倉真優「あたしも出られないかと思ったー やばーっ!」
戸野倉真澄「やばって‥」
戸野倉真優「とりあえず遅刻しちゃうから行ってくるねー」
戸野倉真澄「えっ?ちょっと待ってよ」
戸野倉真優「ロデムにご飯あげといてー! あと夕食の支度もお願いねー!」
戸野倉真澄「だって、俺」
戸野倉真優「どうせ在宅でしょう?」
戸野倉真澄「そういう問題じゃ‥」
戸野倉真優「まー、今日はいいじゃん とにかく行ってくる」
戸野倉真澄「あっ‥行ってらっしゃい‥」
戸野倉真澄「何で‥俺だけ出られないの!」
〇黒
その後、戸野倉真優の会社では‥
〇大企業のオフィスビル
〇オフィスのフロア
咲良朱里「出られない?」
戸野倉真優「そう、外に出たと思ったら、また中にいるの」
咲良朱里「どうも意味が‥?」
戸野倉真優「だから、旦那が外に出た!振り返る! また後ろにいる!こんな感じよ」
咲良朱里「本当ですか?」
戸野倉真優「本当よー、笑うよね! とりあえず仕事あるから来ちゃったけど どうなってんだろね?」
咲良朱里「さぁ‥って言うか、大丈夫なんですか? 仕事休んだ方が良かったんじゃ?」
戸野倉真優「だって理解してもらえないでしょ?「旦那が玄関でループを繰り返して外に出られないから休ませて下さい」って言っても」
咲良朱里「確かに‥やばい事言ってんなとしか思えません」
戸野倉真優「でしょ? だからね、とりあえず仕事に来たの」
咲良朱里「はぁ‥真優さん、タフですね」
戸野倉真優「ふふふ、社会人はタフなのさ!」
戸野倉真優「あっ!中島君、昨日の資料だけどー!」
咲良朱里「玄関でループ? 何それ?」
〇黒
その頃、戸野倉このはの通う小学校では‥
〇学校の校舎
〇教室
戸野倉このは「という事なのよー」
多田野夢「さも会話してたみたいに言うのやめてよ、何にも話してないからね」
戸野倉このは「だから、パパが家から出られないの」
多田野夢「その「だから」の部分は既読してないから」
戸野倉このは「謎よねー」
多田野夢「つまり、このはちゃんのパパが引き籠ってるって事?」
戸野倉このは「違うよ、引き籠るは出たくないって事でしょ?違うの、出られないの」
多田野夢「引き籠りでも、出たいけど出られないって事もあるんじゃない?」
戸野倉このは「そうなの?」
多田野夢「うん、心の病的なもので」
戸野倉このは「そういう小学生の会話として重い流れは避けたいのよね」
多田野夢「えー、でもうちのお兄ちゃん、中二からずっと引き籠りだよ」
戸野倉このは「うちのって、夢ちゃん家の話?」
多田野夢「うん」
戸野倉このは「重いわ‥」
多田野夢「そう?でもお兄ちゃんが家の事をしてくれるから助かるってママは言ってるよ」
戸野倉このは「へー‥えっ?じゃあ、中学入ってから学校に行ってないの?」
多田野夢「違うよ、最初は行ってたんだけど、中二になってから行かなくなったの」
戸野倉このは「そうなんだ‥」
多田野夢「だぶんね、中二病」
戸野倉このは「中二病?」
多田野夢「うん、中二になるとみんなが罹る‥ そうね、大人の階段みたいなもの」
戸野倉このは「えっ?」
多田野夢「第二次性徴と同じ漢数字の二が付く中二病は、思春期には欠かせない病らしいわよ」
戸野倉このは「夢ちゃん、何言ってんの?」
多田野夢「でもね、私たちがいま罹ると、飛び級して一気に中学入学になるから気をつけないと」
戸野倉このは「そうなの?」
中島さゆ「はーい、そこ! ゴールの無い会話をしてないで席についてー!朝の会やりますよー!」
多田野夢「はーい」
戸野倉このは「はーい」
〇黒
再び戸野倉家では‥
〇一戸建て
〇明るいリビング
戸野倉真澄「ロデムー、美味しいか?」
戸野倉真澄「そうかそうか‥ さて、どうするか‥」
戸野倉真澄「そもそも原因は何だ? 何か思い当たる事は‥」
〇黒
昨日の夜‥
〇明るいリビング
戸野倉真澄「ぷはー! あー、会社行きたくねー!」
戸野倉真澄「もう家から出られなくなればいいのになー!」
〇明るいリビング
戸野倉真澄「はっ!あれか! あの時の俺の願いが叶ったって‥!?」
戸野倉真澄「違うよね‥落ち着こう、俺」
戸野倉真澄「まずは、会社に連絡だ」
〇オフィスのフロア
沢登陽「はい、センターウッズイベント企画の沢登です」
〇明るいリビング
戸野倉真澄「あー、沢登?」
沢登陽「あっ、課長?おはようございます」
戸野倉真澄「うん、おはよう あのさぁ‥オレ、実は‥」
戸野倉真澄「(いや‥これをそのまま話したら、やばい奴って思われるな)」
沢登陽「どうかしました?」
戸野倉真澄「あのさ、ちょっと色々あって、当分在宅になりそうなんだけど、大丈夫?」
沢登陽「あー、そういう事なら大丈夫っす! 何の問題もありません!」
戸野倉真澄「そうなんだ‥じゃあ、宜しく‥」
〇オフィスのフロア
沢登陽「はい、失礼しまーす」
〇明るいリビング
戸野倉真澄「何の問題も無いか‥」
戸野倉真澄「よし!ロデム! 今の状況を冷静に考えてみよう!」
戸野倉真澄「俺が外に出られなくて、困りそうな事は‥」
戸野倉真澄「仕事‥会社に行かなくても問題無し!」
戸野倉真澄「買い物‥ネットスーパーがある!」
戸野倉真澄「友人からのお誘い‥ここ数年無し!」
戸野倉真澄「家族でのお出かけ‥俺は置いて行かれる!」
戸野倉真澄「なるほど!特に問題なし!オレ孤独!」
戸野倉真澄「えーん、ロデムー」
戸野倉真澄「はぁ‥仕事しよ‥」
〇黒
その日の夜‥
〇明るいリビング
戸野倉真優「で、結局出られないまま?」
戸野倉真澄「うん‥」
戸野倉このは「ふーん」
戸野倉真澄「ふーんって‥もうちょっと心配してよ」
戸野倉真優「でも、特に困って無いんでしょ?」
戸野倉真澄「えっ?」
戸野倉真優「だって仕事は在宅で、買い物もネットだし」
戸野倉真澄「はい‥」
戸野倉真優「まあ、家の中でもだいたい何とかなるって事よね」
戸野倉真澄「動じないね、真優さんは‥」
戸野倉真優「ほら、私じゃないし」
戸野倉真澄「えー‥」
戸野倉このは「じゃあ、パパはこれからずっと家にいるの?」
戸野倉真澄「いるって言うか、出られないんだけどね」
戸野倉このは「‥‥」
戸野倉真優「どうかしたの、このは?」
戸野倉このは「もしかしてパパ、中二病?」
戸野倉真澄「中二病?」
戸野倉このは「うん、夢ちゃんが言ってたの 中二病になると家から出られなくなるんだって」
戸野倉真優「夢ちゃんって、同じクラスの?」
戸野倉このは「そう、だから夢ちゃんのお兄ちゃんは お家に引き籠ってるって」
戸野倉真澄「さらっと重い話題を持ってきたな‥」
戸野倉真優「パパそうなの?中二病なの?」
戸野倉真澄「違うってわかってるでしょ? 面白がらないで!」
戸野倉このは「でも、夢ちゃんのお母さんは、お兄ちゃんが家の事をしてくれるから助かるって言ってるみたい」
戸野倉真優「あら、それは助かるー!」
戸野倉真澄「だから、引き籠ってるわけじゃないから!」
戸野倉真優「いいじゃないの!もういっその事、 専業主夫になっちゃえば?」
戸野倉真澄「はい?」
戸野倉このは「専業主夫?」
戸野倉真優「そう、パパがお家の事を全部やって、 ママがお仕事でお金を稼いでくるの」
戸野倉このは「ふーん」
戸野倉真澄「いやでも、俺の稼ぎが無くなると家計がさ‥」
戸野倉真優「大丈夫、私、けっこう稼いでるし それに今度、昇進するらしいから」
戸野倉真澄「ホントに?」
戸野倉真優「そうよー、部長だって!」
戸野倉このは「ママすごーい!」
戸野倉真優「でしょでしょ!」
戸野倉真優「だからさ、お給料も上がるし、 お金のことは心配しないでよ」
戸野倉真澄「マジかー‥」
戸野倉このは「パパは?」
戸野倉真澄「パパは‥課長」
戸野倉このは「ふーん 部長と課長ってどっちがすごいの?」
戸野倉真澄「‥パパ、ちょっと外の空気吸って来る」
戸野倉このは「あー、パパが無視する―!」
戸野倉真優「でも出られないんでしょー?」
戸野倉真澄「玄関の外までだから‥」
〇飾りの多い玄関
戸野倉真澄「専業主夫か‥ でも、考えたほうがいいかもな‥」
〇一戸建て
戸野倉真澄「オレだけ出られない‥か」
〇住宅街
戸野倉真澄「あれ?あれ?出られてる! オレ出られてるよ!」
戸野倉真澄「やったよー!おーい、真優、このはー! オレ出られたよー!」
〇飾りの多い玄関
翌日の朝‥
戸野倉このは「パパ、行ってくるねー」
戸野倉真優「私も行くね、ゴミ出しお願いねー!」
戸野倉真澄「はーい、行ってらっしゃーい!」
〇一戸建て
戸野倉真澄「いやー、いい天気だー でも昨日のアレは何だったんだろう‥」
戸野倉真澄「とにかく、ゴミをと‥」
〇黒
〇飾りの多い玄関
戸野倉真澄「あれ?‥まさか‥」
〇一戸建て
戸野倉真澄「そんな、まさか‥」
〇黒
〇飾りの多い玄関
戸野倉真澄「また‥また‥」
戸野倉真澄「オレだけ出られない!」
おしまい
こんばんは!
不思議なお話でしたね!夜は出られた、どうして!?
ぱぱの劣等感や深層心理が働いていたとか...娘と奥さんが明るくてタフなのも面白かったです
そして娘の友達の何も話してないからってメタぽい発言すきです
出られないんじゃなくて、光速で地球を一周してるんだと思います。←すみません、読者が中二病みたいなこと言っちゃって。家からどころか部屋からどころか自分の殻からも出られないもんですから・・。時間がループするストーリーはよく見ますが、時間軸はそのままで場所がループするのも結構辛いですね。夜だけOKな理由も知りたいです。
こういう話大好きです!
なぜ出られなくなったのかが謎ですね😅
夜だけ出られるのも不思議です。