祭りの前日の神隠し

アシッドジャム

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〇新橋駅前
ぼく「・・・」
  気が付くと街から人がいなくなった。
  正確に言えばいなくなったというより影になった。
  祭りの前日
  祭りの準備をするはずだった。
  待ち合わせ場所で待っていたが
  誰も来ない。
  しかし誰と待ち合わせをしていたのか
  思い出せない。
  周りをさがしてみると本人がすっぽりといなくなったように影だけがそこにいた。
  これがだれの影かわからない。
  この街の住民は全員知っているはずだ。
  この街には100人しか住んでいない。
  だからお互いの事を知っている。
  だからこの影はきっとぼくの知っている人なんだろうと思う。

〇繁華街の大通り
  この街はかなり広く見える。
  だが、実際にはそれほど広くはない。
  ビルに囲まれた街は見えない壁に囲まれている。ビルの中にも入ることができない。
  入れるのは寝泊まりしているビル一棟だけだった。
  明日は10年に一度の祭りのはずだった。
  この祭りをすることで次の10年を平和にすごすことができるらしい。
  でも、こうなってしまっては祭りどころじゃない。後の祭りもできない。
  でもなんで
  みんなはこんな影になったんだろう?
  なにか理由があるのか?
  これは神隠しというやつなのか?
  でもなんでぼくだけ隠されなかったのか?
  とにかく今は街の隅々まで見て回るしかないのかもしれない。

〇商業ビル
  やはり見えない壁がありそれ以上は進めなかった。
  ビルの中も入れないままだ。

〇雑居ビルの一室
  唯一入れるビルに来た。
  どういうことだろう。
  ここにいた影は自分だ。
  自分とは形が違うのに自分だと思う。
  どういうことなんだろう?
  本当にみんなは神隠しにあったのか?
  もしかしてぼくが神隠しにあったのか?
猫村さん「やれやれ」
ぼく「!!」
ぼく「猫!?」
猫村さん「こんなところで発生してるとはな」
ぼく「どういうことなの? 猫さんは何か知ってるの? ていうか何で喋れるの?」
猫村さん「おまえは何でおれが猫だと思うんだ?」
ぼく「いや、どう見ても猫じゃん」
猫村さん「でもおまえは猫を見た事ないだろ?」
ぼく「え?」
猫村さん「そもそもおまえは何を知っているんだ?」
ぼく「なにをって・・・・・」
猫村さん「まぁ、いいや。 ちょっとついてこい」

〇駅の出入口
猫村さん「ここだ」
ぼく「ここって、駅?」
猫村さん「いくぞ」

〇廃列車
ぼく「こんなところに入れるなんて知らなかった」
猫村さん「入れなかったんじゃなくて、存在しなかっただけだよ」
ぼく「存在?」
猫村さん「そもそもの話さ、おまえはいつからここに存在してると思う?」
ぼく「いつからって。 ぼくは10歳だから10年かな?」
猫村さん「ちがうな。 おまえが存在をはじめたのはついさっきだよ。まだ2時間くらいしか経ってない」
ぼく「さっき?2時間? でも10年間生きてきたって感覚があるよ?」
猫村さん「よく考えてみろ? おまえは誰かを覚えているか? 親とか友達とか呼べる奴の顔や名前を思い浮かべられるか?」
ぼく「それは・・・」
猫村さん「何も思い出せないんじゃなくて、そもそも知らないんだよ」
ぼく「でも・・・」
猫村さん「よく考えてみろ。 こんなふざけた街が本当にあると思うか?」
ぼく「いや・・・」
猫村さん「この空間もおまえもさっき発生したんだよ」
ぼく「じゃあ、ここはなんなんだよ?!」
猫村さん「ここにはまだ名前なんかない こんな空間は無数にある」
ぼく「名前のない空間?」
猫村さん「こんな場所はできたり消えたりを繰り返す でもおまえみたいなのはそうじゃない」
ぼく「ぼくみたいなって・・・」
猫村さん「ほとんどの場合は失敗を繰り返す あの影みたいなのがそうだ あの影はおまえのなりそこない というより脱皮した抜け殻か」
ぼく「脱皮?抜け殻?」
猫村さん「ここは電脳空間だ つまり虚構空間ともいえる おまえは電脳空間に発生した神だ」
ぼく「神?ぼくが?」
猫村さん「そうだ 無限に近い失敗の繰り返しの末にやっと発生した神だ」
ぼく「そういわれても」
猫村さん「なに そんなに心配するな おまえはプログラムの道理を歩くだけだ」
ぼく「プログラム?」
猫村さん「世界はすでに終わってる 世界は終わるから始まるともいえる」
ぼく「終わってるの世界?」
猫村さん「神っていうのは世界を作ったわけじゃない 世界が終わった後に神は存在できるんだよ」
ぼく「もう、なにがなんだかわからない」
猫村さん「だいじょうぶだよ、イザナキ 何かがわかるなんてことはないんだよ それが神でもな」
ぼく「イザナキ?それってぼくのこと?」
猫村さん「そうだよ それがおまえの名前だ さぁこの線路を歩いて行け おまえを待ってるやつもいるよ」
  やれやれ
  これからどうなるのやら

〇海辺
猫村さん「いや~ やっとイザナキゲットしたな~」
蛇野田「今回は結構時間かかったじゃない? 猫村氏!」
猫村さん「おう蛇野田氏! 今回のはレアものだからね。 ちゃんと進化してほしいよ」
蛇野田「まぁ大丈夫っしょ!」

コメント

  • キャラクターや情景を上手く用いてパッパッパッと展開が切り変わるので,読みやすく爽快感がありました。サバサバ系の猫ちゃんがこの作品の中で良い存在感を出していると思いました。

  • 新しい視点からの物語でした。猫の登場から世界が急にガラッと変わって最後にまた変化して…短いストーリーの中で世界が何転もするところが楽しいと思います。

  • 主観と客観のギャップにとまどいました。最後の猫と蛇の会話で思惑からはずれてしまいましたが、それがいわゆる神隠しにあったということなのでしょうか!?

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