〇実家の居間
　　ある日、私はおじいちゃんの家を整理するために泊りがけで作業をしていました。
　　祖母は事故により他界。
　　おじいちゃんは一人でこの家に住んでいます。
　　ですが体を悪くしており、お医者さんからはそう長くはないと告げられました。
　　私はおじいちゃん子だったこともあり、おじいちゃんの家の整理を申し出て今に至ります。
安田　蜜柑「ねえ、おじいちゃん」
十文字　次三郎「どうした？」
安田　蜜柑「おじいちゃんの、本棚整理してたら」
安田　蜜柑「なんか、写真と新聞記事が出てきて・・・・・・」
十文字　次三郎「どれどれ？」
十文字　次三郎「・・・・・・」
十文字　次三郎「ああ、これか」
安田　蜜柑「それで・・・・・・」
安田　蜜柑「これ、なに？」
安田　蜜柑「新聞に事故で死んだって・・・・・・」
安田　蜜柑「それと・・・・・・」
安田　蜜柑「これ、おじいちゃんだよね？　隣に写っていつ人がもしかして・・・・・・」
十文字　次三郎「そうだ。おじいちゃんの初恋だった人だよ」
安田　蜜柑「そっか・・・・・・」
安田　蜜柑「・・・・・・」
安田　蜜柑「もしよかったら、何があったのか教えて？」
十文字　次三郎「・・・・・・」
十文字　次三郎「いいだろう」
十文字　次三郎「これは私が17歳の時だった・・・・・・」

〇学校の屋上
十文字　次三郎「材木座さん、いるかな・・・・・・？」
十文字　次三郎「もし、振られたら嫌だな・・・・・・」
十文字　次三郎「うう・・・・・・緊張する」
十文字　次三郎「だけど、頑張って告白しないと・・・・・・！」
十文字　次三郎「そうしないと・・・・・・」
十文字　次三郎「よし！」
材木座　裁子「十文字くん？」
十文字　次三郎「あ、材木座さん！　俺────」
十文字　次三郎「き、君のことが・・・・・・」
材木座　裁子「───────────────────」
十文字　次三郎「・・・・・・」
材木座　裁子「きゃ!?」
「きゃーーーーーーーーーーーー!?」
十文字　次三郎「材木座、さん・・・・・・？」
十文字　次三郎「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああ！」

〇実家の居間
安田　蜜柑「柵に寄りかかって、柵が壊れたことによる転落死・・・・・・」
十文字　次三郎「そうだ」
十文字　次三郎「あそこは、柵が揺れることで有名だったんだ」
十文字　次三郎「私が屋上に行ったとき、彼女はそこに寄りかかっていた」
十文字　次三郎「私が注意をしていれば・・・・・・」
安田　蜜柑「おじいちゃんのせいじゃないよ」
十文字　次三郎「そうだな・・・・・・」
安田　蜜柑「・・・・・・そういえば、おばあちゃんもベランダからだったよね」
十文字　次三郎「ああ」
十文字　次三郎「年末の大掃除だったな」
十文字　次三郎「重い物を持っていたら、よろけて・・・・・・」
十文字　次三郎「ベランダに寄りかかったが、運悪く地震で柵が歪んでいたようだった」
十文字　次三郎「そしてそのまま・・・・・・」
十文字　次三郎「・・・・・・」
十文字　次三郎「私の愛する者はみんな私を置いていく・・・・・・」
安田　蜜柑「おじいちゃん・・・・・・」
十文字　次三郎「・・・・・・もう夜も遅い。寝なさい」
十文字　次三郎「私は明日早く家を出るからよろしく」
安田　蜜柑「わかった。おやすみなさい！」
十文字　次三郎「・・・・・・おやすみ」
安田　蜜柑「・・・・・・」
安田　蜜柑「あれ？　新聞の裏にラブレターがある」
安田　蜜柑「えっと・・・・・・材木座さん、愛しております」
安田　蜜柑「ふふ、おじいちゃんもこんなこと書くのね」
安田　蜜柑「・・・・・・屋上の、柵の近くに？」
安田　蜜柑「これって・・・・・・」
安田　蜜柑「まさか、そんなわけないよね・・・・・・？」
十文字　次三郎「お、そうだ」
安田　蜜柑「わぁー!?　おじいちゃん!?」
十文字　次三郎「すまんが、ベランダに来てくれぬか？」
十文字　次三郎「ちょっと手伝ってほしいことがあってな・・・・・・」
安田　蜜柑「うん、いいよ」
安田　蜜柑（こんな雨なのに、何の用だろう？）
十文字　次三郎「あ、そうだ蜜柑」
安田　蜜柑「何？」
十文字　次三郎「ベランダの柵がグラグラしているから、気を付けてな・・・・・・」