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ビスマス工房

Story#0299:のらねこたちのせんそう(脚本)

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〇雪山の山荘
  簡素な段ボール箱の中、僕らは震えながら声を振り絞って鳴いていた。
  一緒にここに置き去りにされた兄弟猫たちの内、一匹は既に冷たくなっている。
  僕らはそれでも鳴き続けた。またあの暖かい手が、僕らを抱き上げてくれると、その時は本気で思っていたんだ。

〇砂漠の滑走路
シルエット1「ねえ、知ってる?迷子になった猫の名前を紙に書いて飛行機にして飛ばしたら、その猫が飛行機に乗って帰ってくるんだって」
  それは子供たちの間で真しやかに流れる噂の一つだった。
シルエット1「本当?」
シルエット1「本当よ。家のタマちゃんも、一ヶ月位いなくなってたんだけど、この方法を試してみたら帰ってきたの」
シルエット1「そうなんだ。試してみようかな」
シルエット1「猫、飼ってるの?」
  私は答えなかった。

〇ビルの地下通路
シルエット3「猫、ですか?」
  男は少し驚き、おうむのように聞き返した。
シルエット3「ああ。要注意団体、Group#0299の正体は、野良猫たち、らしい」
  上司はいたって真面目な顔で”猫だ”、と繰り返した。
シルエット3「しかもどこかで知恵を付けて来たのか、人間に近い振る舞いをする」
  Group#0299は、迷子になったペットの名前を紙飛行機にして飛ばすとそのペットを必ず飼い主の元に返す要注意団体だ。
シルエット3「何で、それを知っているんですか?」
  上司はしれっと、『勘だよ、勘』とだけこたえた。
  今回の任務は難しくはない。Group#0299と接触し、色々インタビューする、それだけの任務だ。
シルエット3「子供が拾ってきた猫が、捨てても、捨てても帰ってくるからって、相談があったんだよ」
シルエット3「はあ。世も末ですね」

〇シックな玄関
シルエット4「また猫なんて拾ってきて!元の場所に戻してきなさい!」
  玄関を開けてすぐにそう言われ、泣きながら猫を公園に置き去りにしに行った。
シルエット1「何で、母さんは猫が嫌いなんだろう」

〇ビルの地下通路
シルエット3「こんにちは。いくつか質問したいことがあるのですが、宜しいですか?」
とらやん「構わんにゃ」
シルエット3「どうして貴方は、迷子の猫たちを助けるのですか?」
とらやん「飼い主に探されている猫ほど、幸せなものはいないからにゃ。あっしは迷子探しの手伝いをしてるだけにゃ」
シルエット3「それだけですか?」
  黒猫は頷いた。

〇大樹の下
  一週間して公園に行く。あの猫はもういなかった。
シルエット1「えい!」
  紙にあの猫にあげた名前を書き、紙飛行機にして飛ばした。
シルエット1「これで帰ってくるかなあ」

〇戦闘機の操縦席(滑走路)
とらやん「今日は──家にゃ」
  愛機に乗り込み、離陸する。
シルエット3「やあ、Entity#0299。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、良いかな」
  聞き覚えのある人間の声に、そちらを振り向く。
とらやん「何?どうやってここに」
シルエット3「勘です。質問に答えてくれますか?」
  勘だけでここを見付けるとは。この人間、只者じゃない。黒猫は覚悟した。
とらやん「構わんにゃ」
シルエット3「貴方、二ヶ月前まで”猫山”にいましたね」
  その俗称で知られるある隠れ里は、つい二ヶ月前まで居た場所だった。
とらやん「ああ。それがどうしたにゃ」
シルエット3「君は、猫山で生物に知性を与える方法を見付けた。そして迷子の猫を助け、彼らに知性を与えていった。何故だ?」
とらやん「薄々分かってるんじゃないかにゃ?僕は、猫たちに人間に対して反旗を翻す選択肢を与えてるんだにゃ」
  そこまで聞けば、十分だろう。
シルエット3「局までご同行願います」

〇綺麗な一戸建て
  翌朝、一通の黄色い手紙が玄関ポストに入っていた。
  手紙には青い文字で、こう書かれていた。
  ”貴君の飼い猫返し、確かに承った”
シルエット1「あ」
  空を見上げると、小型飛行機が飛んでいた。その腹部分が開いて、何かが投下された。
  パラシュートを背負ったあの猫が、腕の中に降りてきた。
シルエット1「良かったあ」
  猫を抱いて泣いてしまった。

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