至極なふたりは本命を取り合う仲です

キリ

第三話(脚本)

至極なふたりは本命を取り合う仲です

キリ

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〇華やかな裏庭
レティシア(どうして...テグリスさんは、 わたしにキスなんて...)
レティシア(挨拶とはいえ、唇にっ...)
レティシア「んんんん~~~! !」
掃除婦「おやっ」
掃除婦「あなた、はじめて見る顔だけど、 メイドさん?」
レティシア「ああはじめまして!昨日から城にいます レティシア・キャロルといいます」
掃除婦「レティシアさんね、 わたしは掃除婦をしてます」
掃除婦「おばさんで構わないよ」
レティシア「おば様と呼ばせていただきますね」
レティシア「掃除婦ということは、この城の掃除を?」
掃除婦「ええもちろん」
掃除婦「わたしは掃除しかできないけれど」
掃除婦「わたしの他にも、各々の業務の 得意分野たちが居るのですよ」
レティシア「そうなんですね~」
掃除婦「レティシアさんは? 何の業務を?」
レティシア「わたしは...」
ヨル「私の側室だ♪」
「うわあっ! !」
レティシア「また突然...側室とは?」
掃除婦「あらま~~そうだったの♪」
レティシア「え?」
掃除婦「あ!じゃあ おばちゃん向こうの部屋 掃除してきますので、お二人で♪ね♪」
掃除婦「おっほほほ♪」
レティシア「おば様、なぜあんなに嬉しそうに?」
ヨル「そなた側室の意味を知らぬのか...」
ヨル「要は妃という意味だ」
レティシア「ええ? !」
レティシア「それは困ります! !」
ヨル「なーに、その場しのぎであって そなたのこと、本気ではないぞ」
レティシア「・・・ううっ」
ヨル「もしや、慕う相手がいるのか?」
レティシア「・・・は、はい」
ヨル「ほお~それは詳しく聴かせてほしいな~」
テグリス「殿下」
テグリス「来客でございます」
ヨル「来客だと?」
ヨル「今日会合予定は無かったが...今行く」
テグリス「・・・」
テグリス「っ!」
ヨル「そうだそなた、一つ言いそびれていた」
ヨル「そなたがテグリスの看病係ということは 伏せておいてくれ」
ヨル「テグリスはこの城の、優秀な護衛騎士兼 私の従者をしている」
ヨル「"最強"と詠われるテグリスが、不慮の事故で負傷したと知れ渡ったら・・・」
ヨル「弱みに漬け込んでくる相手が いるかもしれない」
ヨル「だから、これは私とそなたと、テグリスの 三人だけの秘め事にしておくのだ」
ヨル「良いな?」
テグリス「殿下、お急ぎを」
ヨル「分かっている!ではな」
テグリス「・・・」
レティシア(うう...テグリスさんの顔を まともに見れないっっ)
レティシア(あのことには触れないようにしよう!)
レティシア「お忙しいですね、殿下は」
テグリス「・・・なあ」
テグリス「慕う相手とは...誰だ?」
レティシア「え?」
レティシア「すみません、聞こえませんでした...」
テグリス「いや、いいんだ」
レティシア「フフッ」
テグリス「・・・?」
レティシア「テグリスさんって、"クラウド"に 似てるんですよね~」
テグリス「クラウド?」
レティシア「はい!わたしの好きな本に出てくる 主人公なんです!」
レティシア「本...」
レティシア「あああぁ! !」
レティシア「どうしましょ、図書館の仕事があります」
レティシア「帰らないとっ!」
テグリス「それなら、裏道から出るといい」
レティシア「裏道!ありがとうございます!」
テグリス「案内しよう」

〇謁見の間
  同時刻、ヨルは玄関と王座に立ち寄った
  しかし、お客は誰一人来ていなかった
ヨル「おのれテグリス、この王に向かって 客が来ただとたぶらかすとはっ...」
ヨル「ただでは済まさん!」

〇西洋の街並み
テグリス「着いたぞ」
レティシア「あ!見慣れた街並み」
レティシア「ありがとうございました」
テグリス「・・・ここで良いのか?」
レティシア「はい!あとは図書館にずっと こもっていないといけないですから」
レティシア「ご心配無く♪」
テグリス「・・・」
レティシア「では!」
テグリス「あ・・・」
テグリス「・・・終わる頃合いに、迎えに行くぞ」
テグリス「と、言いたかったのだが」

〇古書店
レティシア「ありがとうございました~ また来てくださいね~」
レティシア「ふう、」
レティシア「なんだか、家に帰ってきたからか さっきまでお城に居たなんて夢みたい」
レティシア「図書館にこもりきりだったけど、それは お城でも変わりなかった」
レティシア「だけど・・・」
  レティシアは、受付に伏せておいた
  フォトフレームを起こした
レティシア「・・・っ」
レティシア「ここで待ってなくちゃ」
レティシア「"誰か"が、戻ってくるまで...」
ヨル「こらそなた!なぜここにいる!」
レティシア「あ、殿下」
レティシア「なぜって、ここはわたしのウチですから」
ヨル「ウチはもう"ウチ"になったのだから ここではない!"ウチ"に帰るぞ!」
レティシア「ええとぉ、何をおっしゃっているのか...」
ヨル「そなたは、テグリスの骨折が治るまで ウチっ、城にだなあ、居なければならない」
ヨル「いまここにいるということは、看病を おろそかにしていることではないか!」
レティシア「それは、ごもっともです...」
レティシア「ですが殿下、テグリスさんは 骨折していないそうです! わたしに、証明してくださいました!」
レティシア「だからご心配ないですし、 わたしが看病するほどでは...」
レティシア「はっ...」
レティシア(このことは、テグリスさんより 口止めされているんでした!)
ヨル「っ! ! !」
ヨル「そ、そうか骨折してなかったのか」
ヨル「私の見立てが謝っていたとはな」
ヨル(嘘がもうバレたのか~~~)
ヨル(これでは、テグリスから娘を引き離す ことになってしまうではないか...)
ヨル(弱ったな...)
ヨル「お!」
ヨル「その写真...」
レティシア「あああ!これですか?」

〇西洋の街並み
  ヨルに見せてくれた写真は、ほぼ白黒に
  なっていて、笑顔で溢れた少年と少女が
  写っていた

〇古書店
ヨル「いい写真だな」
ヨル「もしや、この少女はそなたか?」
レティシア「はい」
ヨル「ならば少年は?」
レティシア「それが...覚えてないんです」
ヨル「え?」
レティシア「その写真がなんで白黒かっていうと この図書館は建て直したものでして」
レティシア「前の図書館は...火事になりました」
レティシア「まだ幼かったわたしにとって、火事の ショックが大きく、一部ではあるのですが 記憶を失ってしまって...」
レティシア「でも、この男の子が約束したことは 覚えています!」
レティシア「"この図書館にまた遊びにくる"って」
レティシア「もう来てるかも知れないけど、 わたしはどこの誰かは知らない」
レティシア「せめて、恥ずかしくても 名乗り出てくれれば...」
ヨル「この少年が、そなたの慕う相手なのだな」
レティシア「そうですね、誰かは分かりませんが」
ヨル「この少年がもし、"俺"だったら...」
ヨル「見つけたことになるな...」
レティシア「・・・?」
レティシア「殿下?」
ヨル「・・・」
ヨル「レティ...」
レティシア「っ!」

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