困ったストーカー(脚本)
〇ファンシーな部屋
──もしもし? どうしたの、シイちゃん
椎名シイ「・・・」
シイちゃん?
椎名シイ「あ、ごめんね。ちょっとぼうっとしちゃって」
椎名シイ「えーっと・・・今から時間あるかな? ちょっと家まで来てほしいの」
い、今? 急だね・・・でもまあ、シイちゃんの頼みは断れないな!
椎名シイ「ありがとう。私の家、わかるかな?」
もちろん! 十分くらいで行けるから、待ってて!
椎名シイ「うん。待ってるね・・・」
〇ファンシーな部屋
辻浦ツウ「──どうしたんだよ、しぃちゃん。急に家に呼び出して」
椎名シイ「ごめんね。実は聞いてほしいことがあって・・・」
辻浦ツウ「私たち親友だろ? なんだって言ってくれよ!」
椎名シイ「ツウちゃん・・・!」
椎名シイ「実はね──私、ストーカーに困ってるの」
辻浦ツウ「す、ストーカー!? 大変じゃんか! 警察は?」
椎名シイ「警察にも相談したけど、周辺の見回りを増やすくらいしかできないって」
辻浦ツウ「公務員め、なんとお役職仕事な・・・!!」
椎名シイ「まだ具体的な被害もないし、仕方ないよ」
辻浦ツウ「仕方がないって・・・」
辻浦ツウ「それなら、ストーカーはどんなことをしてくるんだ?」
椎名シイ「とりあえず、窓を見てくれる?」
辻浦ツウ「窓?」
〇空
〇ファンシーな部屋
辻浦ツウ「あれなに?」
椎名シイ「ストーカーだよ」
辻浦ツウ「いやいやいや、窓に張り付いてるよ!? これ完全に警察に言えるよ!」
椎名シイ「でも見てるだけだし・・・」
辻浦ツウ「それが被害だよ! 普通は見られないんだから!」
椎名シイ「日常にちょっとした刺激をくれるし・・・」
辻浦ツウ「楽しんでんの!? 困ってないじゃん!」
椎名シイ「困ってるのは、あのストーカーじゃないの」
椎名シイ「押し入れを開けてみてくれる?」
辻浦ツウ「うん? いや、まあ、開けるけどさ・・・」
〇黒背景
〇ファンシーな部屋
辻浦ツウ「いたよ!? 体育座りのメガネがいたよ!?」
椎名シイ「第二ストーカーだよ」
辻浦ツウ「予備みたいに言ってんじゃないよ!」
辻浦ツウ「・・・二人いるの!?」
椎名シイ「もう何人かいるけど・・・」
辻浦ツウ「先に言えよ! 心の準備が足りなかったわ!」
辻浦ツウ「というか、家に侵入されてるじゃん! これ警察動くって!」
椎名シイ「でも困ってないし・・・」
辻浦ツウ「困れよ! 無敵か!」
椎名シイ「一人になりたい時、そっと出て行ってくれるし・・・」
辻浦ツウ「だからなんだよ!? なんのフォローにもならないよ!」
辻浦ツウ「──結局どのストーカーに困ってるのさ? その人を教えてよ」
〇ファンシーな部屋
ツウちゃん
辻浦ツウ「なに?」
困ってるストーカーは、ツウちゃんだけだよ
辻浦ツウ「・・・ははは、なに言ってるの? 私が、ストーカー?」
私が電話したの、”篠原デイちゃん”っていう友達のはずなの
それなのに──どうしてツウちゃんが電話にでたの?
辻浦ツウ「シイちゃんが相談するなら親友の私でしょ?」
辻浦ツウ「篠原デイ、だっけ? ──そいつに電話するわけないじゃん」
ツウちゃんは昔の友達だよ。中学校以来、まともに会ってないよ
辻浦ツウ「おかしなこと言わないでよ」
辻浦ツウ「私はシイちゃんのこと、ずっと知ってるよ? 会ってなきゃ知れないでしょ?」
ツウちゃん。私の友達、何人も怪我してるの
怪我自体は軽いものだし、私自身にはなにも起きないから、警察は動いてくれない
辻浦ツウ「知らない。私はシイちゃんの親友。親友の私が知らない人が、友達なわけない」
ツウちゃん・・・
デイちゃんに、なにをしたの?
〇血しぶき
辻浦ツウ「シイちゃん」
辻浦ツウ「私たちは、親友だよね?」
〇白
辻浦ツウ「──!!」
〇ファンシーな部屋
ストーカー「まったく、シイさんは煽りすぎです」
第二ストーカー「いくら俺たちがいるからって、相手はなにするかわかんない奴だぞ?」
椎名シイ「・・・ごめんね。ツウちゃん、昔は良い子だったから」
第二ストーカー「良い子ねぇ・・・あーあー、すっかりのびちまってる」
第二ストーカー「とりあえず、警察でも呼ぶか・・・」
ストーカー「あ、ダイキくん? デイさんは・・・無事ですか! それならよかったです」
椎名シイ「デイちゃんは大丈夫そう?」
ストーカー「はい。電話を盗まれただけだそうです」
椎名シイ「そっか・・・ありがとうね、二人とも!」
椎名シイ「ダイキくんにも、後でお礼を言わなきゃ」
第二ストーカー「ダイキならワンコールいれてやるだけで、泣いて喜ぶだろうよ」
椎名シイ「あはは、そうかも!」
〇白いアパート
警官「──通報があって参りました! どなたかいらっしゃいますか!?」
〇ファンシーな部屋
ストーカー「お迎えが来ましたね」
第二ストーカー「よし、じゃあツウを突き出して終わりだな」
第二ストーカー「またな、シイちゃん!」
椎名シイ「うん。本当にありがとね」
〇白いアパート
警官「ほら、きびきび歩け!」
〇空
椎名シイ「ふぅ・・・」
椎名シイ「困らないストーカーばかりなら、平和なのになぁ」
これだけのストーカーを引き寄せるって、もはや特異体質ですね。予想を裏切る展開ばかりで、ドキドキしながら楽しませてもらいました。
ストーカーがたくさんいるのに、困ったストーカーは彼女だけというあたり、なかなか強く生きてるなぁと思いました。
でもたしかに、男の人たちは誰にも危害は加えてませんし。
ストーカー1人という勝手な固定概念を遥かに越えてもはや交流持ってる時点でファンクラブなのでは?なんて思ってしまいましたが面白かったです!