月はいつでも死んだふり

JIL SANDRE

エピソード1(脚本)

月はいつでも死んだふり

JIL SANDRE

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〇空
  大魔王様が時の勇者によって滅ぼされ
  100年──

〇荒地
  生き残った──
  いえ すでに朽ち果てた身を持つ
  我らアンデッドには それはおかしな
  表現ではございますが

〇森の中
  ともあれ我らは 人間を避けるように
  深き森へと その住処を変えてきたので
  ございます
  再興の日を 夢見て──

〇森の中
カミラ「闇魔法──」
カミラ「ダスタン」
カミラ「あっ」
アルノー「カミラ様 もう一度」
カミラ「(マヌエル どうだ?)」

〇森の中
マヌエル「(準備はできております)」

〇森の中
カミラ「よーし 本気出しちゃうぞぉ」
カミラ「闇の力借りて その動き封じこめん」
カミラ「闇魔法」
「ダスタン!」
アルノー「お見事で──」
ウーノ「待て! 今のはカミラじゃない!」
カミラ「お姉ちゃん! 証拠でもあんの!?」
ウーノ「ダンディな声が混ざってた!」
アルノー「ウーノ様 まずはご自分の事を」
ウーノ「だって 一瞬重低音なイケボが」
アルノー「ウーノ様の番ですぞ」
ウーノ「もうッ」
ウーノ「ダスタン」
カミラ「プッ」
ウーノ「ダスタン!」
ウーノ「先生 今確かに」
ウーノ「先生?」
アルノー「ガ ギ・・・」
カミラ「アハッ 先生が麻痺ってんの!」
ウーノ「笑ったな!」
カミラ「何よォ!」
大王「やめんか!」
「お父様」
大王「何があった ウーノ!」
ウーノ「カクカクジカジカで カミラがズルしたの!」
大王「ウーノ お前はできたのか」
ウーノ「え」
大王「ダスタンを成功させたのかと 聞いておるのだ」
ウーノ「ウーノは・・・」
大王「初級魔法すら使いこなせんとは」
ウーノ「だって!」
大王「もし再び 人間が攻めてきたら お前は我ら一族を守りぬく事ができるのか」
ウーノ「で できます!」
大王「たわけ! ダスタンひとつ使えない落ちこぼれが 何を抜かす!」
ウーノ「落ちこ・・・ うわぁ〜ん」
大王「泣くな! 長子であるお前に跡を継がせるつもり だったが 白紙に戻す!」
大王「カミラ お前もそのつもりで励め」
カミラ「はーい♪」
大王「お前も下がれ」
ウーノ「はい・・・」
大王「ハァー・・・」
大王「ところで お前は何をやっているのだ」
アルノー「ガ ギ・・・」
大王「ガ ギではないわ 全く」

〇ヨーロッパの街並み
  人間との交流はほとんどなく
  週に一度 街へ出る時くらいにございます
  いつものお嬢様なら この時間を
  楽しみにされておいでなのですが──

〇ヨーロッパの街並み
アルバン「落ち込んでおいでですな」
ウーノ「爺 そちは前に言っておっただろう お月様には我らのご先祖様が住んでいると」
ウーノ「だから聞いてみたのじゃ ウーノはお父様の跡を継げるのかと」
ウーノ「じゃが お月様は何も答えてくれなかった」
「・・・・・・」
ウーノ「爺 ウーノは落ちこぼれか」
アルバン「お嬢様」
アルバン「闇魔法とは自身に根付く負の心を エネルギーに変えるもの」
アルバン「悲しみ 憎しみ 怒り  そういった気持ちが闇魔法を 発現させるのです」
アルバン「お嬢様はまだお若い」
ウーノ「未熟者ということか」
アルバン「そうではございませぬ お嬢様もいずれは負の心を胸に抱く時が まいりしょう」
アルバン「それまではゆっくり成長なされば良いと そう申し上げているのです」
アルバン「それにお嬢様がそのような心を 早くにまとわれてしまうのは 爺にはちと寂しゅうございます」
ウーノ「爺 そちは──」
ウーノ「馬鹿者じゃ」
アルバン「へ?」
ウーノ「それではカミラに先を越されてしまうわ そちは歳のせいかのんびりしすぎる」
アルバン「恐れ入ります」

〇鍛冶屋
アルバン「時間がかかりそうですな」
ウーノ「爺 ウーノは」
アルバン「いつものところですな お迎えにあがります」
ウーノ「お父様には・・・」
アルバン「勿論内緒にしておきまする」
客のボッシュ「聞こえたぜ その子を一人にすんのかい」
客のボッシュ「最近子供を狙った誘拐事件が 流行ってんだ よしたほうがいい」
ウーノ「フン 人間如きに攫われるような 愚か者ではない」
客のボッシュ「人間如き?」
アルバン「オッホン! 人間──強盗危険だわ そうおっしゃられたのです」
客のボッシュ「人間強盗とはな ま せいぜい気をつけるんだな お嬢様──」

〇ファンタジーの学園
ウーノ「・・・」
エート「君」
ウーノ「ウーノのことか?」
エート「僕はエート よく見てるよね 僕らのこと 一緒に遊ぼうよ」
ウーノ「一緒に?」
エート「全ての人に隔てなく接すること それが僕ら騎士団学校の教えなんだ」
ウーノ「人間と一緒にするな」
エート「アハハッ じゃあ君は鬼だね  ほら こっち」
ウーノ(鬼でもないわ・・・)

〇ファンタジーの学園
アルバン「いかがでしたかな 学校は」
ウーノ「うむ 爺は」
ウーノ「だるまさんが転んだ という遊びを知っておるか」
アルバン「はるか東の地により伝わった 古き遊びでしょう」
アルバン「さすがは騎士団学校にございますな 集中力と判断力を養うつもりなのでしょう」
ウーノ「学校では いろんなことを 教えてもらえるのだのう」
アルバン「恐れながら」
アルバン「お嬢様は学校に通いたいのでは」
ウーノ「違う!」
ウーノ「・・・いや すまぬ 嘘をついた でも無駄じゃ お父様が許してくださるまい」
「・・・・・・」
ウーノ「ウーノは お父様が言うほど 人間が悪いものではないと思っている」
アルバン「──」
アルバン「かしこまりました この爺がお力になりましょう」
アルバン「大王様も昔ほど人間との付き合いに 厳しくはございませぬ」
アルバン「それに爺には年の功というものが ございます」
アルバン「この爺めにお任せくださいませ」
ウーノ「爺」
ウーノ「先の馬鹿者という言葉 取り消すことに致す」

〇荒地
  こッ

〇森の中
  このッ

〇立派な洋館
  大馬鹿者がーッ!

〇謁見の間
アルバン「ハハー」
大王「人間と学ぶなど  あやつは何を考えておる!」
アルバン「私めもそのように お伝えしたのですが・・・」
大王「連れてまいれ」
アルバン「いやぁ・・・」
大王「ウーノをここへ連れてまいれ!」
アルバン「ハハー」
  お嬢様はその晩
  ひどいお叱りを受け
  そのまま屋敷を
  飛び出されたのでございます──

〇空
  ハァ・・・

〇ヨーロッパの街並み
ウーノ「ウーノは ただ立派に成長して お父様の跡を継ぎたいだけなのに」
ウーノ「なぜわかってくださらないのか」
ウーノ「のう お月様」
ウーノ「・・・いない お月様はどこへ行ってしまったのじゃ」
???「お嬢様」
ウーノ「爺?」
???「いえいえ 人間強盗にございます」
ウーノ「ウッ!」
ウーノ「そちは・・・」
客のボッシュ「一人でいるなっつったろ お嬢様」

〇森の中の小屋
  オラ ここだ

〇地下室
エート「ウーノちゃん!」
客のボッシュ「想定外だが いいとこのお嬢ちゃんだ がっぽりふんだくってやる」
エート「女の子に乱暴するな!」
客のボッシュ「うるせぇ!」
客のボッシュ「まずは坊やの取引からだ 大人しく待ってろ」
ウーノ「エート」
エート「騎士は女の子を守らなきゃダメって ・・・グスッ」
エート「うわぁーん」
ウーノ「エート」
エート「すぐにパパが助けに来てくれるよ そうだ 君のパパだって」
ウーノ「お父様は・・・ 来ない」
エート「え!?」
ウーノ「ウーノのことが嫌いなのじゃ」
エート「そんな」
「・・・・・・」
ウーノ「エートの軟弱者」
ウーノ「そちが泣くから ウーノまで悲しくなってきたではないかッ」

〇ヨーロッパの街並み
アルバン「悲しみ 憎しみ 怒り  そういった気持ちが闇魔法を 発現させるのです──」

〇地下室
ウーノ「いや 待て」
エート「ウーノちゃん?」
ウーノ「ウーノには」
ウーノ「闇魔法がある!」
客のボッシュ「よーし 取引だ 表に出な」
ウーノ「悲しみの奥に眠る 深き闇の力借りて その動き 封じこめん」
ウーノ「闇魔法──」
ウーノ「ダスタン!」
エート「カ キ・・・」
ウーノ(ウソ・・・)
客のボッシュ「コイツ 急に動かなくなりやがった」
客のボッシュ「早く出ろ!」
ウーノ「エートに手を出すな!」
客のボッシュ「邪魔すんな!」
客のボッシュ「こ こいつ!」
客のボッシュ「ん?」
客のボッシュ「君 撃たれたよね? なんで死なないのかな?」
ウーノ「馬鹿者!」
ウーノ「ウーノはもう」
ウーノ「死んでいる!」
ウーノ「許さん!」
客のボッシュ「バババケモンだぁ!」
ウーノ「逃がすか!」

〇森の中の小屋
客のボッシュ「ハァ ハァ」
客のボッシュ「あ!」
「王立騎士団だ! 大人しくしろ!」
客のボッシュ「騙しやがったなッ」
「待てィ!」
「・・・ん?」
ウーノ「ダスタン!」
騎士団員2「ガ ギ・・・」
ウーノ「ダ ダスタン!」
騎士団員1「ガ ギ・・・」
ウーノ「お願い! ちゃんと当たってェ!」
客のボッシュ「へへッ」
ウーノ「ダ・」
ウーノ「ダ・・」
ウーノ「ダ・・・」
ウーノ「ダルマサンガコロンダ!」
客のボッシュ「へッ!?」
客のボッシュ「イテテ  ん?」
客のボッシュ「グエッ!」
ウーノ「闇魔法── 誰?」
アルバン「お嬢様!」
ウーノ「爺! どうして?」
アルバン「街の幽霊に聞いたのです それより早くこの場を!」
ウーノ「でも エートが」
アルバン「お嬢様 お姿が──」
ウーノ「アッ!」
アルバン「早くお色直しを ささッ」
ウーノ「エート・・・」

〇空
  翌日

〇謁見の間
大王「それでわざわざ街まで行って 買い占めたのか 呆れた奴じゃ」
アルバン「ですが この記事を見てくださいませ お嬢様がこんなご活躍を」
アルバン「早速 皆に伝えに──」
大王「待て」
大王「あれは 何だったのだ」
アルバン「あれとは?」
大王「ダル マサ ロンダ?」
アルバン「大王様 それははるか東の地により伝わった 古き──」
アルバン「魔法にございます」
大王「あやつが魔法を・・・」
アルバン「大王様 私めもひとつ忘れておりました」
アルバン「あの時の魔法は 大王様なのですね」
大王「フン」
アルバン「お嬢様に代わり 御礼申し上げます」
大王「ウーノに伝えい ダスタンを3日で完璧にせよと」
大王「さすれば前のことは 無かったことにしてやる」
アルバン「ハハーッ」
大王「・・・」
大王「ダルマサロンダ!」
大王「何故じゃ・・・」

〇森の中
アルバン「こちらでしたか」
ウーノ「爺か」
アルバン「お嬢様もご覧くださいませ」
  謎の少女 大手柄
  誘拐犯が転んだ!
ウーノ「でも 正体がバレてしもうた もう学校には──」
アルバン「その下を──」
  誘拐された少年は調べに対し
  何も見てないし何も知らないと
  話している
ウーノ「エート!」
アルバン「さすが騎士団学校の生徒ですな」
アルバン「さっ 特訓でございます ダスタンをマスターせねば!」
ウーノ「ゆっくりで良いと申し──」
アルバン「なりませぬ! 早く負の心を自分のモノになされませ!」
ウーノ「じ」

〇荒地
「爺〜!」

コメント

  • 闇魔法とかアンデッドとかホラーテイストかとお思いきやウーノの成長物語なんですね。犯人以外悪人が出てこないハートフルな展開にほっこりしました。私も「ダスタン」をマスターして相手を「ギ ガ」と固まらせてみたいな。

  • 草刈正雄のような声…
    すごく想像が付いて面白かったです😂
    ウーノちゃん学校に行きたかったのですね。
    こうして、行きたくても行けない子もいるんだなあと思うと、適当に学生生活を送っていた自分は贅沢だったんだなあと思います(笑)

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