拝啓、花嫁になる君へ。

彼岸花

読切(脚本)

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〇一人部屋
  仕事で疲れ果てた俺のもとに一通の手紙が届いた。
雄大「へぇ、春香結婚するのか!!」
雄大「まぁ大学卒業して五年も経てば知り合いの一人くらい結婚するもんか」
雄大「ハハハ!! ハハハハハ!!」
  はぁ・・・なんでよりにもよってお前なんだよ。春香

〇教室の教壇
  春香は幼馴染で、誰にでも好かれるような可愛い女の子だった
雄大「あぁ、やっべぇ!!このままだとまともな大学に行けねぇ!!」
  高校の頃の俺は勉強も運動も何もできないダメ人間だった
春香「ふっふっふー」
春香「お困りかな?雄くん」
雄大「なんだよ!!冷やかしなら、むこうでやってくれ春香!!」
春香「幼馴染のよしみで、天才の春香様が勉強を教えてあげようと思ったのに」
春香「そんなこと言っていいのかな?」
雄大「!?」
雄大「あ、あのう・・・春香様?」
春香「なんだね?雄くん?」
雄大「このバカに知恵をわけてくださいませ」
春香「ふむ。よかろう!!」
雄大「春香が勉強教えてくれるなら、俺のキャンパスライフは安泰だぁ!!」
春香「ただし、一つ条件があります」
雄大「な、なに?」
春香「私と同じ大学に入学すること」
春香「雄くんのいないキャンパスライフなんて、絶対つまらないんだもの」

〇一人部屋
  これが俺の恋の始まり
  いや、もしかするとこの日よりずっと前から春香のことを好きになっていたのかもしれない
  少なくとも確信を持って言えることは、どの瞬間で恋に落ちたのであっても
  正真正銘、俺の初恋だった

〇大学の広場
  恋に落ちたその日から、俺は春香にこの思いを届けようとタイミングを見計らう日々を過ごしていた
春香「いやぁ。冗談で言ったつもりだったんだけど、まさか本当に合格できるなんてね」
春香「もしかして愛のなせる業ってやつなのかい?」
雄大「そ、そうかもしれないな」
  その言葉に彼女の笑顔は奪われた
  この時俺は悟ったんだ。
  彼女が求めている俺は、『幼馴染の俺』で『彼氏の俺』では無いんだと
  告白さえしなければ、少なくとも幼馴染としての仲睦ましい今の関係は守れる。
  そして何よりも約束された失恋に立ち向かう勇気が俺には無かった
  だから俺は自分の気持ちを隠して、『幼馴染として』の日々を春香と送り、大学生活を終えた
春香「最後までよく頑張ったね」
  大学生活最終日に彼女はそう言った

〇一人部屋
  今思えばあいつは大学入学時から俺が恋に落ちていたことを知っていたのだろう
雄大「俺、意気地なしなのはずっと変わらないな・・・」
雄大「結局最後まであいつに好きだって言えなかった」
  あいつの結婚式が開かれるまで残り一週間
  昔と状況は何も変わらないはずなのに、俺の心には昔以上に混沌とした感情が渦巻いていた
雄大「今から行ったところで、昔と変わらず結果は見えてるのに」
雄大「はぁ・・・」
  物思いにふけて視線を下げると手紙に小さく何かが書かれていることに気づく
雄大「ん!?」
  目を凝らして小さな文字を見ると「おいで」と書かれていた
  招待状にわざわざ小さく「おいで」と書かれていることを不思議に思う俺
  幼い頃から一番近くで見てきたあいつを思い出す
  あいつはいつでも俺の心を見透かしているような行動をしていた
雄大「まったく、あいつにはかなわないな」
雄大「さて、明日仕事休みだし」
雄大「史上最高にダサい失恋をしに行こうか」

コメント

  • 春香はどんな気持ちでおいでって書いたんだろう。本当の気持ちを知りたかったのか、ちゃんと気持ちに区切りをつけさせてあげたかったのか。気になります。

  • 好きな人がいるとがんばれちゃうんだよね。幼馴染みの彼女の言葉があったからこそ、大学に受かり、今の彼がある。ずっと好きなのに言えないでいたら結婚の知らせってきついけど、今の自分のがあるのは彼女のおかげって思ったら、彼はこの恋がかなっても叶わなくても、彼女にずっと感謝して生きるんだろうな。私自身も同じような経験があって勝手に共感しながら読みました。

  • なんて素敵なストーリーなのでしょう。最高にキュンとしました。男の子は結局女の子に操られてばかりですね。でもそれでもオトコの、結局振り回されて心地いいのかもしれません。男女の思惑が全然違うのに、それが淡々と物語の中で進行していって、素晴らしいなと思いました。ふたりを応援したいなと思ったところで、素敵な展開になって、もう大満足です。このタイミングで物語が終わるというのも、大好きな展開でした。

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