〇ラブホテルの部屋
　　12月24日　23：30
　　クリスマスイブの夜
　　準はベッドの隅に行儀よく座り
　　ただひたすら今の状況を整理していた
　　・・・
　　この僕がアプリで知り合った女の子と
　　ご飯を食べた後一緒にホテルに来ている
　　しかもクリスマスイブに
　　待て、待ってくれ！
　　だってこれまで女の子と遊んだ事ないし
　　まともに喋った事もない
　　しかも俺童貞じゃん!!
　　なのに今ホテルにいる！
　　準は自分で何を考えているか分からず
　　ただひたすらドギマギしていると
　　浴室から声が聞こえてきた
りか「お風呂上がったよー！ ジュンジュンも入りなよー！」
　　なに！
　　りかちゃんもう上がったの!?
　　やばいやばい、一旦落ち着こう
　　とにかくこの後の流れを整理しよう
　　ってホテルなんて初めてなのに!?
　　何をどう整理すんだよ！
りか「ジュンジュン？」
準「お、おぉん！今入る！」
　　とにかく今彼女が髪を乾かしている間に
　　攻略法を考えよう
　　そうだ僕はゲーマーだ
　　何匹もドラゴンを倒した伝説の勇者だ！
　　この状況クリアできる！やれる！
　　何より童貞だって事はバレたくない！
　　準は現実とゲームの世界を
　　混同させてしまうほど取り乱していた
　　まずは自分の能力を分析しないと
　　ざっくりとこんな感じか？
　　準（Lv.１）
　　経験値：０（童貞）
　　スキル：ネットで得た知識,ゲーム
　　弱点：女性,お酒,会話
　　むしろこの弱点でよくここまでこられたな！
　　いや単純にりかちゃんの能力が高かった
　　笑って頷いてるだけで会話が成立した
　　そんなりかちゃんの能力は
　　りかちゃん（Lv.100）
　　経験値：未知数（多分すごい）
　　スキル：会話,お酒
　　弱点：知らん
　　オワタ
　　いきなりラスボスじゃん
　　こんなのを相手に丸腰で
　　太刀打ちできるわけないじゃん！
　　丸腰？そうだアイテムだ！
　　どこかにアイテムがあるはず！
　　準はテレビ台の中を開けた
　　冷蔵庫からドリンクを見つけた
　　それと、な、なんとこれは!?
　　勇者の剣（大人のおもちゃ）だ！
　　しかもピンク！
　　課金が必要なのか
　　た、高すぎる！
　　でもこいつがあれば
　　自分の腕前は多分ごまかせるはず
　　ここはお値段以上と受け取るべきか
　　いや待て、普通に考えて初見でこんな
　　真っピンクの棒を持ってるやつ
　　ドン引きされる！
　　ちくしょう
　　枕元にある無課金の防具は必ず装備しよう
　　準が課金アイテムをあきらめたとき
　　ドライヤーの音が止まった
　　やばいりかちゃんがくる！
　　相手は百戦錬磨の最強戦士！
　　しかも風呂上がり！
　　準はダイナミックにベッドに身を移した
　　そして自分にこう言い聞かせた
　　そうだ！自分は伝説の勇者だ！
準「僕は、できる!!!!」
　　振り返えるとりかが立っていた
　　準は少し驚いた
りか「ふぅーさっぱりした！ てか今何か言った？」
準「あ、いや別に！」
りか「ねぇ、すっぴんも意外といいでしょ？」
準「お、おぉん！お、幼くなるんだね！ すごく可愛い！」
　　正直今の僕にはりかちゃんが
　　百戦錬磨の最強戦士、
　　いやそれ以上の強キャラにしか見えない
　　でも僕は伝説の勇者なんだ！
りか「早くお風呂入りなよ！お湯溜めといた！ 泡風呂だよー！」
準「お、おっけー！入ってくるね！」
　　泡風呂だよー！じゃないんだよ！
　　落ち着きなくなるわ！
　　てか何にも攻略できてないよ！
　　とにかく後は風呂で考えよう
りか「てか部屋めっちゃ明るくない？ ちょっと暗くしようよ」
準「そ、そうだね！ えっと電気は・・・」
　　電気どこ!?この枕元のやつ？
準「えーっと・・・」
　　いやどのボタン!?
　　めっちゃあるじゃん！これか？
　　準がボタンを押すと
　　軽快な音楽が部屋中に流れた
準「ちょ！えっと、これじゃなくて！」
　　はいオワタ
　　ゲームオーバーです
　　準は焦りを隠しながらなんとか
　　その場を乗り切ろうとした
　　しかし焦れば焦るほど手元は震え
　　どうしていいかわからなくなった
　　それを見ていたりかが
　　微笑みながら口を開いた
りか「ねぇジュンジュン」
準「は、はい！」
りか「ジュンジュンって童貞でしょ？」
準「え!?いや、その・・・」
準「え!?」
　　準はその言葉に焦りを通り越し
　　恥ずかしさでどうにかなりそうだった
　　しかしりかからは
　　予想とは違う言葉が出てきた
りか「別にいいじゃんそんな隠す事でもないよ むしろ誠実でりかはご飯食べてる時から好感もってたよ」
　　見透かされてたのか
　　僕ちょーカッコ悪いじゃん・・・
　　てかめっちゃいい子じゃん・・・
りか「私はアプリで話してる時から ずっと楽しかったよ文字で会話する時の ジュンジュンはありのままだけど」
りか「実際会ったらどこか無理してて すごく緊張してるのが伝わった」
準「そ、そっか」
りか「背伸びせず自分らしくいた方がいいよ！ もっと自信をもちなよ！」
準「自分らしく・・・」
　　そうだ、僕は背伸びしてた
　　色々と考えすぎて空回りして
　　すごく失礼な事をしてた
　　なんだかすごく気が楽になった
　　その時、準の見ている景色は変わり
　　ありのままの自分になれた
　　落ち着いてりかと真っ直ぐ向き合えた
りか「ジュンジュン お風呂入ってきなよ！」
準「あぁ、入ってくるね」
りか「後ちょっとで日付変わってクリスマスだよ！ まだまだ飲むよ！」
　　僕はこの時すでに
　　彼女を好きになってたのかもしれない

〇ラブホテルの部屋
　　12月24日 23：59
　　この後、準が童貞を卒業したかは、
　　準と彼女だけの秘密
　　完