読切(脚本)
〇幻想空間
(効果音)「ゴボゴボゴボ・・・・」
瀬能陽菜は、今、母親、果歩のお腹の中で眠っている。ココにいる意味はわからない。
気がついた最初は大きな風船の中の水の中・・・。間違って紛れた小石のよう。
でも今はその風船も窮屈なぐらい、自分の身体が大きく成長した。そしてお友達も何人か。何人?。人じゃないけど。
その一人?が陽菜の頬をツンツンする。
陽菜「ああ、おはよう」
きーちゃん(記憶力)「おはよう。気分はどう?」
陽菜「んん、ちょっとキツイかな」
ひーちゃん(表現力)「そりゃ、もう直ぐだからさ」
陽菜(???)
そーちゃん(想像力)「想像してみて。もう直ぐココを出て、もっと広い所に行くの。そこには無限の可能性があるの」
陽菜「ええ?皆は?」
せっちゃん(説得力)「ぼくらも一緒に行くよ、多分」
陽菜「じゃ、ずっと一緒だね」
きーちゃん(記憶力)「それがね。外に出ると人間として正を受けて成長していくの」
きーちゃん(記憶力)「世界が違うし、ココに居た事は覚えていないかもしれない。私たちの事も」
陽菜「そんな事ないよ。忘れる訳ないよ」
きーちゃん(記憶力)「でもそれは少しだけのサヨナラ。成長する過程でまた私たちと出会うことになるの」
きーちゃん(記憶力)「それが1年後か2年後か判らないけど、きっとまた会える。見て貴方のおへそ」
陽菜「大きい紐が繋がってる。前に教えてもらったね。ママが栄養送ってくれてるって」
せっちゃん(説得力)「ママがいっぱい栄養を送らなかったら、今みたいに大きく成れなかったし、これから行く世界にも行くことができないから」
せっちゃん(説得力)「出たらイッパイ感謝しよう!」
陽菜「んん、わかった」
〇病室
果歩「なんか、今日は中で(ゴボゴボ)っと動いているのか、なんか話してるのか。激しくは無いけど、落ち着きが無いというか」
正「君が難しい本ばっかり読んでいるから、反応しているのかも?もっと面白い絵本でも見せてよ!って」
果歩「今は書記官デビューに向けて知識を蓄えないと。でも生まれてからはイッパイ本読んであげるの。頼んでおいた絵本買ってくれた?」
正「はいはい、これですね」
果歩「ありがと」
正「なんかストレートだね(会い、今日)」
果歩「これから、いろいろな出会いがあるのこの子。「会い」って、「愛」でもいいじゃない。(愛、今日)って。どんな表情するのかな」
〇幻想空間
ひーちゃん(表現力)「ねえねえ、ぼくら付いて行けるかな?」
きーちゃん(記憶力)「どうかな。その時じゃないと、判らないな」
陽菜「なに話してるの?」
ひーちゃん(表現力)「ああ、なんでもないよ。でもぼくも別れたくないよ。今は」
きーちゃん(記憶力)「必要な過程だから。でも、もしかしたら・・・だけど」
ひーちゃん(表現力)「そうだね。もしかしたら皆一緒かもしれないから」
陽菜「何か心配事?」
きーちゃん(記憶力)「陽菜ちゃん。これから起こることはとっても大事な事。急な出来事に驚くかもしれない」
きーちゃん(記憶力)「でもそれは誰もが、皆に起こる事なの。だから怖がらないで、心配しないでね。ココから出たら直ぐに感謝しようね、ママとパパに」
きーちゃん(記憶力)「二人がいなければ楽しい時をこれから過ごせないから。「ありがとう」って、そう言うだけで大丈夫」
きーちゃん(記憶力)「それからママとパパと一緒に素晴らしい日々を重ねていくの。そうしたら、私たちとまた会えるの。それが、人間っていうのよ」
陽菜「ふーん・・・」
〇水中
(効果音)「ブクブク・・・ゴーーゴーーー!!」
せっちゃん(説得力)「始まったね」
(効果音)「ポン!」
陽菜は突然、能力たちと同じ位の身体に小さくなった。大人の子指程に
果歩の体内は大量の水に覆われ、それが渦を巻いてる。その圧力で陽菜たちは下の方へ吸い込まれる
陽菜「うわ~」
不思議な事に、陽菜と共に果歩の体内で暮らしていた能力たちは、その渦から空を飛ぶように離れていく
陽菜「きーちゃん、ひーちゃん、そーちゃん、せっちゃーん!!」
きーちゃん(記憶力)「ごめんね、やっぱり一緒に行けないみたい」
ひーちゃん(表現力)「また直ぐに会えるから、ちょっとだけバイバイ!」
そーちゃん(想像力)「想像してね、怖くないよ~」
せっちゃん(説得力)「あーちゃん、頼んだよ!」
陽菜は渦に巻き込まれていく過程で気づかなかったが、しっかりと陽菜の身体を抱えている能力がいた
あーちゃん(愛嬌力)「ぼくが付いていくね」
陽菜「うん」
陽菜とあーちゃん(愛嬌力)は下へ下へと渦に巻き込まれ、その先の細いパイプのような空洞に水と一緒に勢いよく流されていく
陽菜「うわーーーー、怖いよ~!!」
あーちゃん(愛嬌力)「大丈夫さ」
〇病室
果歩「うううう・・・・」
正「しっかり」
(効果音)「ザザザザ・・・ザプーン!」
果歩の身体から噴水のように水が噴き出し、一緒に陽菜が空中に
あーちゃん(愛嬌力)は『スー』っと陽菜の体内に吸い込まれ姿を消した
(効果音)「ポン!」
陽菜は突然、出産時の新生児と同じ位の大きさになって、正の腕の中へ
正「うわ~」
陽菜-新生児「あああ、何か言うんだった、なんだっけ?えー?」
陽菜-新生児「おぎゃーおぎゃー<<」
陽菜は云わなければならない事を忘れてしまった。この世に出てきた驚きと急な出来事で
正「おお、よしよし・・・元気だな、ほらママだよ」
正は果歩の方へ陽菜を抱きながら向かせた
正「素晴らしいプレゼントをありがとう、ご苦労様」
果歩はニッコリと笑い、両手を広げる。正は陽菜を果歩へ
正「あれ?泣き止んだ。はあ、ニッコリ笑って」
果歩「愛嬌のある子。だれに似たの?」
〇幻想空間
きーちゃん(記憶力)が陽菜の頬をツンツンする。陽菜は寝ていて起きない
きーちゃん(記憶力)「いい顔だね。どんな夢見てるのかな?」
それは出産の前日に見た陽菜の夢
人間が生まれるって中々表現が難しいと思いますが、優しい可愛らしい表現になっており、とても心に来ました。
もしかしたら我々もこんな感じで生まれてきたのかもしれませんね。
胎内の出来事が、かわいく書かれていて、だから赤ちゃんってかわいいんだなぁって思いました。
あーちゃんだけ一緒に行けたのも、赤ちゃんに必要なものだったからなのかな?と。
すごくいい作品でした。
神秘的な世界が可愛い記憶と共に表現できていて、かつ共感できるお話でした。生まれ持った・・・とかいう性格とか才能とか、きっとこのように出来上がっていくのだろうなあと想像させられました。