第五話「殺人ファイル2 小早川凛の場合(後編)」(脚本)
〇体育倉庫
小早川凛「なんでもいいんです。橋本くんの 事故の時のことを教えてください」
中山宗助「いま修学旅行の準備で忙しいんだよ。 後にしてくれ」
小早川凛「あの時対戦相手だった来栖くんに、何か 不自然なことはありませんでしたか?」
中山宗助「お前・・・もしかして 来栖のことを疑っているのか?」
小早川凛「可能性は否定できません。 なので証拠を探しています」
中山宗助「・・・あのとき、意識を失くした橋本を 保健室まで運んだのは俺だ」
中山宗助「でも救急隊が来たときには もう息絶えてた」
中山宗助「柔道の死亡事故というのは 珍しいことじゃない」
中山宗助「俺も停職明けたばかりなんだ。 もうこの辺でいいだろう」
小早川凛「自分の監督不行き届きを棚に上げて、 よくそんなことが言えますね」
中山宗助「なんだと・・・?」
小早川凛「中山先生があてにならないことは よくわかりました」
小早川凛「自分で証拠を見つけ出し、 今回の件を追及します。それじゃ」
中山宗助「お、おい! ちょっと待て」
〇血しぶき
第五話
『殺人ファイル2
小早川凛の場合(後編)』
〇マンションの非常階段
来栖秀俊「修学旅行中に・・・生徒会長を殺すのか?」
筒井菜々子「そそ。殺し方色々考えたんだけどさ。 山での事故・遭難って、 一番ナチュラルな死に方かなって」
筒井菜々子「知ってる? 日本では年間3000人くらい 遭難する人がいて、 うち一割は死亡や行方不明なんだって」
筒井菜々子「小早川凛。 本当は私のファイルに、リストアップ されてなかった人なんだけど・・・」
筒井菜々子「屋上での会話も聞かれちゃったみたい だから仕方ないよね」
来栖秀俊「でもやっぱり・・・それだけで殺すのは おかしい。僕にはできない」
筒井菜々子「来栖くん、うちの生徒会を知らないな? 目的遂行のためなら なんでもするって有名だよ」
筒井菜々子「特に小早川凛、彼女はね」
来栖秀俊「・・・・・・」
筒井菜々子「でさ、せっかく山で殺すなら、 あいつをギリギリまで追い詰めて いたぶってやろうよ」
筒井菜々子「狩りみたいで楽しいじゃん!」
〇山道
小早川凛「二人の姿が消えた? 修学旅行中も 目を離さないでと言ったわよね?」
生徒会役員A「すみません」
小早川凛「また何か企んでいるのかもしれない・・・」
生徒会役員B「探して来ます」
小早川凛「もういい。やっぱり私がやる。 もうヘマはしない」
生徒会役員A「どこに行くんですか? このあと天気崩れるみたいですし、二人の居場所もまだ──」
小早川凛「来栖の鞄にGPSを付けておいたのよ。 電波はあるし、私でやれる」
〇森の中
小早川凛「だんだん雨足が強くなってきたわね・・・ だいぶ近くにいるはずなんだけど──」
大木の下に来栖の鞄が置いてある。
小早川凛「! 鞄だけ・・・? あいつはどこに」
筒井菜々子「またひっかかったー」
小早川凛「な、なんで・・・!?」
筒井菜々子「来栖くんに付けたGPSなんてお見通しだよ」
筒井菜々子「生徒会長って、 頭いいんだか悪いんだかわからないね」
小早川凛「そ、その手にあるのは・・・なに?」
菜々子は凛に近づいて行く。
小早川凛「や、やめて・・・来ないで」
筒井菜々子「私、人殺すの初めてだから、 お手柔らかにね」
小早川凛「やめて・・・!」
筒井菜々子「もしもし? 来栖くん? うん、やっぱり逃げた。 あいつのこと、逃さないでね」
〇森の中
小早川凛「はぁ・・・はぁ・・・そうだ。 電話・・・誰かに助けを──」
木の裏に隠れていた来栖に
携帯を取り上げられてしまう。
小早川凛「! く、来栖・・・! 返して!」
来栖秀俊「だ、誰かに僕たちのことを 言うつもりなんだろ?」
小早川凛「うるさい! 返しなさいよ!」
凛が強引に携帯を奪おうとすると、
来栖が凛を激しく突き飛ばす。
小早川凛「痛っ・・・!」
来栖秀俊「ぼ、僕は別に──」
小早川凛「やめて! 来ないでよ! 殺人鬼!」
来栖秀俊「・・・殺人鬼? 僕が?」
小早川凛「そうよ! 他にいないでしょ!」
来栖秀俊「違う・・・僕は普通の人間だ」
小早川凛「普通の人間は人を殺したりしない!」
来栖秀俊「黙れ!」
来栖は凛に襲い掛かり、首を絞める。
小早川凛「ぐ、あ、ああ・・・」
来栖秀俊「僕は・・・僕は、普通の人間だ!」
小早川凛「は、離してよっ・・・!」
来栖秀俊「ま、待て!」
〇薄暗い谷底
小早川凛「はぁ、はぁ・・・が、崖!? もう逃げ場がない」
凛が振り返ると、森に人影が見える。
小早川凛「く、来る・・・!」
中山宗助「小早川?」
小早川凛「! 中山先生・・・!」
中山宗助「お前ここにいたのか・・・ 急にいなくなるから探したんだぞ」
小早川凛「お、追われてるんです! 来栖秀俊と筒井菜々子に!」
小早川凛「このままだと私、殺されます!」
中山宗助「ちょっと落ち着け。何言ってるんだ」
小早川凛「橋本くんの件は事故じゃない、 殺人だったんです」
小早川凛「及川先生の件だって・・・ きっとあの二人がやったんです」
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