ウチのお父さんが一番ヤバイ

ロングヒル松山

読切(脚本)

ウチのお父さんが一番ヤバイ

ロングヒル松山

今すぐ読む

ウチのお父さんが一番ヤバイ
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇一人部屋
  彼は小山高志。普通の会社員だ。
  妻と子どもたちに囲まれ、幸せな生活を送っている。
  変わったところや特技は特にない。
  強いて言うなら、高志は適応能力が高い。
  驚くことがあっても「そういうものか」とある程度すぐ順応できる。
  流されやすいとも言えるかもしれないが。
「お父さん、ごはんよー!」
  階下から催促の声が聞こえる。
  高志は急いでスーツに袖を通すとリビングに向かう。
小山高志「おっと」
  高志はうっかり忘れそうになっていた、眼鏡をかける。
  高志は、いままでは裸眼で頑張ってきたが、ついに昨日眼鏡を購入したのだ。
  なくても平気だと思っていたが、眼鏡をかけるとやっぱり世界の解像度が変わった。
小山高志「さてと・・・」

〇おしゃれなリビングダイニング
小山高志「おはよう」
小山美機「おはよー。パン今、焼いてるからちょっと待ってね」
  そういって妻の美機は、食卓でパンをかじっている。
小山高志「うん、じゃあ先に・・・・・・あれ?」
  高志は、受け答えしながら座っている美機のつむじの辺りがふと目に入る。
  そこには1㎝にも満たない長方形の穴が2つ開いていた。
  その形状はいわゆるコンセントの穴のようである。
小山高志「え・・・?」
  さらに顔を近づける。
  よく見るとコンセント穴の下に『100V』と書いてある。
小山高志「んん?」
  高志はコスコスとコンセントの穴をこする。
小山美機「ひゃ!? ちょ・・・な、なに!? どうしたの、高志さん!?」
小山高志「ああ、ごめん。なんか、君の頭に・・・コンセントみたいなのが・・・」
  高志がコンセントについて聞くと、きょとんとしている美機。
小山美機「そりゃロボットなんだから、普通ついてるでしょ・・・・・・」
小山高志「・・・え?」
小山高志「ロボットって・・・そう、だったっけ・・・?」
小山美機「そりゃあ、最新の機種だと、たいぷしーとかかもだけど・・・・・・何、もしかして私が老けたって言いたいの?」
小山高志「え!? いやいや、全然! というか、そういう規格とかのことではなく・・・」
  そのとき、チンとトースターの音がして、美機がパンを取りに行く。
  その後ろ姿に高志は尋ねる。
小山高志「僕、今まで全然気づかなかったんだけど・・・」
「眼鏡をつけ始めたからじゃない? 私も、最近レンズ交換して、高志さんの襟足にホクロ3つ並んでるの気づいたし」
小山高志「え、そうなの?」
「うん。夫婦でも結構知らなかったことあるのね~」
小山高志((そうか・・・ホクロが3つも・・・コンセントもホクロも同じか・・・))
  高志は納得しかけるが、ひとつ重大な疑問が噴出する。
小山高志「あれ? じゃあ、亜子と栄太は・・・どうやって生まれて・・・?」
小山美機「あなたも出てくるとこ見てたでしょ・・・急に何言ってるの」
小山高志「そう・・・だよね・・・?」
  確かに美機のお産には高志も駆けつけて、亜子の時も圭太の時も、一緒に見守った。
小山美機「何、今日は朝からどうしたの? 亜子と栄太もいるのに・・・」
小山高志((そうだ、子供たちにも聞いてみよう))
小山高志「なあ、お母さんって前からロボだったっけ・・・?」
  すると、長女の亜子は髪と角の手入れをしながら鼻で笑う。
小山亜子「パパ、アタシには夜更かしすんなっていう癖に寝ぼけすぎでしょ」
小山美機「亜子、髪と角はご飯食べてから」
小山亜子「はーい」
小山高志「・・・え、じゃあ栄太はどう思う?」
  栄太は第一触腕と第二触腕でパンにバターを塗りながら、
  第三触腕でテレビのチャンネルを変更し、目玉焼きに醤油をかけている。
小山栄太「;、、;。:」・。¥、。・;(出てくるとか出てこないとか、親の下ネタは、朝から聞きたくなったかなぁ)」
小山高志「ご、ごめん!」
小山高志((そりゃそうだよなぁ・・・朝っぱらから、赤ちゃんがどこから生まれたかなんて))
  反省していると美機が、焼いてくれていたパンをもってきてくれる。
小山美機「はい、高志さん」
小山高志「ああ、ありがとう」
  高志は、そのまま席に座って焼きたてのパンをかじる。
小山高志((うーむ・・・美機とはもう20年以上一緒に暮らしているが、まさかロボットだったとは・・・))
小山美機「はい、もしもし・・・え、また未来から!? はい、すぐ行きます!」
小山美機「ごめん、パート早出することになっちゃった!」
小山美機(パート形態)「夕飯までには帰れると思うけど、遅くなりそうならメールするね!」
小山栄太「、。:。:(了解。じゃあなんか夕飯作っとくよ)」
小山亜子「ママ、いい加減スマホ買いなよ。アタシ、メールとか見ないし」
小山美機(パート形態)「だってどうせ使わないし・・・・・・高いじゃない、あれ」
小山亜子「今なら安いのが、いっぱいあるんだってば、1円とか」
小山美機(パート形態)「亜子ちゃん、タダより高いものはないのよ? 変な契約結ばれるんでしょ? 怖いわよ」
小山亜子「スマホなんて、全部大企業なんだから今時、魂取るような契約させないって。ビビりすぎ」
小山栄太「:;。¥¥・¥・;(母さん、時間大丈夫?)」
小山美機(パート形態)「あ、いけない!」
小山高志「財布とハンカチは? 忘れ物ない?」
「大丈夫、行ってきますー!」
小山亜子「じゃあアタシも、今日遅くなるかもだから。 晩ご飯はパスで~」
  朝食を終えた亜子が席を立ちながら話す。
小山栄太「、。・][・;:(また例のバイトか)」
小山亜子「ちょ・・・! お兄ちゃん!!」
小山高志「例のバイトって・・・ファーストフード店のやつか?」
小山亜子「あ~・・・それは、ちょっと前に辞めちゃって。今は別のやつ」
小山高志「別のって?」
小山亜子「もー、なんでもいいじゃん! 別に変なバイトじゃないから! むしろ正義を成す的な?」
小山亜子「とにかくパパが心配するようなバイトじゃないから!」
  そう言うと、足早に洗面台へ行ってしまう亜子。
「お兄ちゃんは、死刑だから!」
小山栄太「;。:(おー、こわっ)」
  そう言いつつも、何事もなかったかのように食事を続ける栄太。
小山高志((亜子は優しい子だから、別にそういう心配はしてないが・・・内緒のバイトか))
小山高志「うーん。反抗期ってやつなのかなぁ」
小山栄太「¥^¥」「。・」;、。。;(というか、親離れの方が近いんじゃない?)」
小山高志「え、そっちか・・・それもやだなぁ」
小山栄太「・。ー¥:;^^ー(そういうもんだって。特に男親なんて)」
小山高志「というか栄太は、亜子のバイト知ってるのか?」
小山栄太「ー^ー・。::^¥・・。(詳しくは知らないけど。まあ、大丈夫じゃない?)」
小山高志「まあ、栄太がそう言うなら・・・」
小山栄太「、。。:「@;^^ー(父さんも遅刻しないようにね)」
小山高志「おっと、そうだ。あんまりゆっくりしてちゃダメだ」
小山栄太「:、・^ー@「・:(お皿置いといていいよ。洗っとくから)」
小山高志「いつもありがとうな。じゃあ行ってくる」

〇一軒家
小山高志((今日は朝からびっくりしたけど・・・))
小山高志((まあ、今日も一日、頑張ろうか))
  こうして、小山家の日常は今日も続く。

〇おしゃれなリビングダイニング
小山亜子「あれ? ママどうしたの?」
小山美機(パート形態)「免許! 免許証忘れてた!」
小山栄太「・、。「。、、・、(父さんが出かけに声かけたのに」
小山美機(パート形態)「だって、持ってると思ってたんだもん!」
小山亜子「そういえば、ママさ」
小山美機(パート形態)「んー?」
小山亜子「パパに洗脳装置とか埋め込んでなかったの?」
小山栄太「。、:。@(それ俺も思った)」
小山美機(パート形態)「あー、出会った頃はそうしようと思ってたんだけど」
小山美機(パート形態)「高志さんマイペースというか・・・なんでも受け入れちゃうから機会がなくて。別にいっかって」
小山亜子「マジで? それでいままでバレなかったの?」
小山美機(パート形態)「そうなのよ~。あなたたちが産まれても大喜びするだけで、何も気にしてなくて」
小山美機(パート形態)「むしろ今日、私のコンセントに言及してびっくりしたわよ」
小山栄太「、。;:^(マジか・・・)」
小山亜子「そもそも、ちょくちょくママ変身してるしね」
小山美機(パート形態)「若いころは、魔法少女なのかって聞かれたことはあるわ」
小山美機(パート形態)「栄太と亜子も別に魔術や催眠とか、かけてないんでしょ?」
小山亜子「うん」
小山栄太「:@。^(全然)」
小山美機(パート形態)「あははっ! さすが、高志さんね!」
小山亜子「いや、いいパパだとは思うけど・・・」
小山栄太「:@・^ー(うん)」
  ウチのお父さんが一番ヤバイ
小山美機(パート形態)「わね!」
小山亜子「じゃん」
小山栄太「:@;(な)」

〇広い改札
小山高志「へっくしょん!」

コメント

  • トンデモないのに読みやすくて妙にリアルで😄
    いや、ずっとどんだけ目が悪かったんだ……!(笑)
    にしても、一切の差別をしないんだろうなというお父さん素敵ですね。だから奥さんもずっとズルズル一緒にいちゃったのかなとか。ほっこり😌

  • このストーリーを読んだ読者はみんな、パートナーの体にコンセントがないか確認しちゃいますね。高志さん、目の視力はメガネで回復しても、心の目は相変わらずピンボケしたままみたいでよかった。人類が滅亡しても最後に生き残る人はこういう人なんだろうなあ。

  • あ〜好き、こういう感じ!
    こういう作品がまさにこのコンテストの的を得ているのかなと思います。
    眼鏡をかけたら世界が変わる(気づく?)
    アイディアも素敵だしサラッと読みやすいのに印象に残る作品です。

コメントをもっと見る(4件)

成分キーワード

ページTOPへ