俺は明日、告白される(脚本)
〇黒背景
もし、近い将来に起こる出来事がわかったら?
テストは百点
スポーツでもミスをしない
事故だって未然に防げる
〇黒背景
何不自由ない生活を送れるだろう
けれども、それが楽しいのは最初だけだ
どの教科のテストだろうと暗記するだけ
スポーツは再放送のようにプレイを繰り返す
アクシデントは一つも起こらない
なんの驚きもない、へいたんで山場のない生活
それが予知能力を持つ俺の日常だ
〇学校の屋上
・・・・・・
〇男の子の一人部屋
だから”明日告白される”と予知してしまった今でも、俺には喜び浮かれるような気持ちはない
勇気を振り絞った行為なのだろうが、返事はノーと決めている
なんの感動もない人間といても、きっと相手はつまらないだろう
〇一戸建て
〇教室
〇教室
〇市街地の交差点
〇一戸建て
〇男の子の一人部屋
告白されなかったんだけど?
予知した出来事は絶対に起こる。俺自身が介入しない限りは
告白こそ断るつもりでいたが、その行動自体をなくすようなことはしていない
つまり──俺の予知が外れた?
生まれてから十七年、一度も外れたことがない俺の予知が!?
〇一戸建て
こ、怖ぇえええ!
〇男の子の一人部屋
へいたんで山場のない生活とか気取ってたのに、めちゃくちゃ山場がきちゃった!
もしかして、俺の予知能力が消えた・・・?
しかし、そうとは思えない
予知は告白の件以外ならば、他にも雑多な出来事を的中させていた
〇学校の屋上
・・・・・・
〇男の子の一人部屋
そしてまた明日の出来事も、俺はすでに予知できている
能力が消えたという線は限りなく薄いだろう
新島光輝「というか俺、明日も告白されるじゃん。しかも同じ女に!」
正確にはまだ告白はされていない
だがそれを予知するのは二度目。なんともいえない気持ち悪い感覚だ
〇学校の屋上
なにものなんだ、こいつ・・・クラスメイトでもないし、後輩か?
俺の予知をくつがえせる女、あまりにも不気味過ぎる
〇男の子の一人部屋
新島光輝「待てよ? 予知した出来事をくつがえす──介入してる・・・!?」
本来なら俺にしかできない行為
けれどもそれは、ある仮定を立てることで例外が起こりうる
〇学校の屋上
新島光輝「桃原幸子、お前が予知能力者なのはわかっている!」
桃原幸子「わぁ・・・電波を受信できる人、初めて見ました」
新島光輝「しらを切っても無駄だ。未来を変えれるのは未来を知っているやつだけ」
新島光輝「つまり──お前には俺と同じ予知能力がある!」
桃原幸子「いや、ないですよ。もしあったら、この状況を回避してます」
新島光輝「・・・・・・」
新島光輝「確かに」
納得いく反論をされてしまった
桃原幸子「はぁ・・・新島先輩に突然呼び出されたと思ったら、まさか妄想をぶつけられるとは思いませんでした」
新島光輝「も、妄想じゃないし・・・」
桃原幸子「てっきり二人きりなのを良いことにぐいぐい迫り」
桃原幸子「壁際まで追い詰めた私を無理やり手籠めにするくらいはしてくれるのかと・・・」
新島光輝「初対面でそんなことするか! そっちの方が妄想だ!」
桃原幸子「また明日会う時に、ということですね」
新島光輝「次の機会にってことでもない!」
いや、待て。明日会う時に・・・?
〇学校の屋上
・・・・・・
〇学校の屋上
瞬間、通算三回目の告白の予知が行われた
新島光輝「お前まさか、明日俺に告白するつもりだったりするか?」
桃原幸子「──驚きました。それがさっきから言っている予知能力ですか?」
やっぱり。今日は俺が阻止したから、また明日に繰り越しってとこか
新島光輝「まあ、今さらごまかせないか。その通りだ」
桃原幸子「つまり先輩は私に告白される前に、男らしく告白するためにこういう場を」
新島光輝「違う」
新島光輝「お前に告白されるって予知が外れたんだよ」
新島光輝「予知が外れるなんて初めてだったから、わざわざ探して呼び出したんだ」
桃原幸子「私が先輩の初めてを奪ったんですね」
新島光輝「ああ、奪われたな。できればその方法を知りたいところなんだけどなぁ!」
桃原幸子「それについては簡単な話です。私の妄想力ですね」
新しすぎる概念を出すな
〇黒背景
私、いつも妄想ばかりしてる暗いやつなんですよ
桃原幸子「告白すると決めたのに、どんな反応をされるか、ずっとずっと妄想して──」
桃原幸子「妄想の中で断られちゃうんです」
桃原幸子「だからまた明日告白しようって、一度先延ばしにしちゃいました」
〇学校の屋上
桃原幸子「・・・私の妄想力が、先輩の予知能力を上回ったってことですね」
新島光輝「それは・・・たいした妄想力だな」
桃原幸子「ええ、本当に。お騒がせしてごめんなさい」
桃原幸子「もう、告白なんてしないって決めました」
新島光輝「なんでしないんだよ?」
桃原幸子「だって、ドン引きですよね?」
桃原幸子「好きな人とのおしゃべりで浮かれて、下ネタ言いまくる女なんて」
それはそうだな
けど──
新島光輝「俺は楽しかったぞ」
桃原幸子「え?」
新島光輝「予知能力って、あるとすっごくつまんないんだよ。先のこと丸わかりでさ」
新島光輝「でも桃原との会話は、全然先がわかんなくて、振り回されて・・・それが楽しくて」
新島光輝「だから、桃原さえよければ俺と──」
桃原幸子「ま、待ってください!」
桃原幸子「明日、絶対に私から告白しますから」
桃原幸子「──その時に答えを聞かせてくれますか?」
〇一戸建て
〇男の子の一人部屋
告白される予知をしちゃったんだから、そりゃ明日になるよな
それにしても──
新島光輝「予知した出来事が楽しみだなんて、なんか変な感じだな」
桃原はなんと言って告白するのだろう
面識のない俺を好きになった理由も聞いていない
答えはイエスともう決めているのに、期待感で心臓が高鳴る
──俺は明日、告白される
〇一戸建て
〇教室
〇教室
〇市街地の交差点
〇一戸建て
〇男の子の一人部屋
告白されなかったんだけど?
〇一戸建て
なんでだよ!?
〇男の子の一人部屋
新島光輝「くそ、また桃原の教室まで行かなきゃ・・・!」
そう言いながら、こんどは予知ではなく予感があった
きっと明日から、感動の毎日が始まると
予知能力者が翻弄される姿は傑作でした(笑)
ラスト、予想できたオチにも関わらず笑ってしまいました!
予知能力を超える妄想力ってすごいです!
でも、彼女といると退屈とは無縁になりそうですね。笑
妄想って楽しいから、彼女の気持ちもわかる気がするんですが、ちょっと彼女はネガティブな方向へいっちゃってますね。
コメディとしても笑えておもしろかったですし、恋愛の予測不可能な部分と予知能力って相性いいなー!と思いました。
主人公の相手が楽しくないだろうと告白を断ろうとしたところ、地味に性格良くていいキャラですね。総じて見ていて楽しい作品でした。