不思議な新渡目のアビス

山縣将棋

いつも君の側で(脚本)

不思議な新渡目のアビス

山縣将棋

今すぐ読む

不思議な新渡目のアビス
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇公園の入り口
安田 祥子「今日、西浦公園で女性の死体が発見されました、女性は無傷で、死因は不明です。現在警察は詳しい原因を調べています──」

〇マンション群
  成功しても何かに追われ、結婚しても何か釈然としない、与えられた普通に何か疑問を覚えて何か別の物を求める現代・・・
  何かを求めた先にある何か、その先には深い暗闇があるだけかもしれません。何かを求めたら貴方はもう深い暗闇の中
  そんな深い暗闇の中で貴方はどこを見つめていますか?
  そういえば、ドイツの、哲学者がこんな事を言っていました・・・
  『深淵を覗くとき深淵もまたこちらを覗いているのだ』と・・・

〇一人部屋
宇倍 透「なんかさ、最近物騒だよね、兄貴!」
新渡目 優大「そうだな、怖くて外も歩けないな・・」
宇倍 透「誰か来たみたい」

〇マンションの共用廊下
「はぁ〜い!いま開けます!」

〇玄関の外
宇倍 透「あっ、大家さん!」
虚田 人実「こんばんわ!」
宇倍 透「あらら、怒ってます?」
虚田 人実「今月と先月の家賃払って下さるかしら?」
新渡目 優大「すいません、明日には払いますよ!」
虚田 人実「信用できないわね!」
新渡目 優大「なら、少し中でお話しでもどうですか?お互いの事知らないままだと信頼って生まれないですよね?」
虚田 人実「ふざけないで頂戴!」
新渡目 優大「前々からお話ししたいと思ってたんです、大家さん是非お願いします・・2人きりで」
虚田 人実「な、な、2人きりって」
宇倍 透「僕は?」
新渡目 優大「数時間程どこかに行って来てくれないか?」
宇倍 透「・・・分かったよ」
新渡目 優大「さぁどうぞ!大家さん中へ」
虚田 人実「・・・少しだけなら」
新渡目 優大「もっと、お互いの事知りましょう」

〇コンビニのレジ
店員A「728円です」
安田 祥子(あれ?お財布がない)
店員A「あの・・・728円です」
安田 祥子「ご、ごめんなさい!」

〇街中の道路
安田 祥子「最悪・・・」
安田 祥子「わっ!」
上河 照「おい!どこに目ぇつけてんだよ!」
安田 祥子「す、すいません」
上河 照「あん?」
鐘賀 全「どうしたの?」
上河 照「全さん!」
上河 照「コイツがぶつかって服が汚れたんすよ!」
安田 祥子「ご、ごめんなさい」
鐘賀 全「どうしてくれんの?嬢ちゃん?」
安田 祥子「クリーニング代払いますから・・・」
上河 照「なら、3万でいいぜ」
安田 祥子「・・・今、財布なくて」
鐘賀 全「ハハッ面白いね嬢ちゃん、馬鹿にしてる?」
上河 照「全さん、コイツ完全に舐めてますよ」
鐘賀 全「そうだね、お灸を添えないとね」
上河 照「こっち来いや!」
安田 祥子「いや!は、離して」

〇入り組んだ路地裏
上河 照「おらっ!」
安田 祥子「きゃっ!」
鐘賀 全「さて、金が無いなら体で払ってもらおうか?」
上河 照「やっちゃいましょう!全さん!」
  2人が祥子に迫る
安田 祥子「嫌ぁぁぁぁー!」
鐘賀 全「ん?」
宇倍 透「どうも!」
鐘賀 全「何?君?」
宇倍 透「宇倍と申します!」
鐘賀 全「君・・・あっち側の人だね」
宇倍 透「いえ、向こう側です!」
鐘賀 全「俺ふざけた奴は嫌いでさ・・・」
宇倍 透「僕は、好きですよ」
鐘賀 全「死ねぇぇぇ!」
宇倍 透「危ないですよ!そんなの振り回したら!」
鐘賀 全「く、くそ、当たらねぇ!」
宇倍 透「おりゃ!」
鐘賀 全「しまったナイフが!」
宇倍 透「じゃあ、終わらせちゃいますね」
宇倍 透「弱っ・・・」
安田 祥子「た、倒しちゃった・・・の?」
宇倍 透「はい!」
安田 祥子「え、えっと、その・・・」
宇倍 透「この2人は通行の邪魔にならない所へ運んでおきますね!」
安田 祥子(た、助かったのかしら?)
宇倍 透「大丈夫でした?」
安田 祥子「は、はい!」
宇倍 透「ここ雰囲気が悪いんで違う場所に行きましょ!」

〇シックなカフェ
安田 祥子「助けて貰ったのにコーヒーまでご馳走になって本当申し訳ないです!」
宇倍 透「いえ、悪いことあったら、良い事がないとね!」
安田 祥子「悪い事・・・」
宇倍 透「何かあるんですか?聞きますよ?」
安田 祥子「いえ、気にしないで下さい!」
宇倍 透「話してスッキリさせましょうよ!溜め込むのは良くないですよ?」
安田 祥子「分かりました、ここだけの秘密ですよ!」
宇倍 透「もちろん!」
安田 祥子「実は私アナウンサーをしてまして──」

〇高層ビル

〇テレビスタジオ
射矢 実男「いやぁ〜安田君、いつも素晴らしいアナウンスで頼もしいよ!」
安田 祥子「ありがとうございます!」
射矢 実男「それでね、安田君にお話しなんだけど」
安田 祥子「何でしょうか?主任」
射矢 実男「来月から新しく入社してくる子がいてね・・・」
安田 祥子「あっ!新人教育ですね!お任せ下さい!精一杯頑張ります!」
射矢 実男「実は来月からその娘をメインにしようと思っていて・・・」
安田 祥子「え、どういう事ですか?私は?」
射矢 実男「もちろん安田君はアナウンサーとして、これからも活躍してもらいたいと思ってるよ」
安田 祥子「何だ、2人でやって行くという事ですね!」
射矢 実男「いや、安田君が活躍する場所は地方局だよ!安田君なら何処でもバッチリさ!」
安田 祥子「えっ?地方局・・・」
射矢 実男「そう!もう決まった事だから!」
慶山 多香美「来月から、よろしくお願いします主任!」
射矢 実男「おいおい、気が早いぞ〜」
慶山 多香美「フフッまた色々教えて下さいね♡」
射矢 実男「今夜あたりどうかな?」
慶山 多香美「え〜気がはやいですよぉ〜♡」
射矢 実男「お互い様だぞ〜」
安田 祥子「あの・・・」
射矢 実男「じゃあ、今までお疲れ様!地方で羽を伸ばしておいで!」
慶山 多香美「それじゃ先輩!」
「多香美ちゃんお昼食べ行こう!」
「はあ〜い!♡」
安田 祥子「ウソ・・・左遷って事・・・」

〇シックなカフェ
安田 祥子「って事があって、お先真っ暗ですよ!」
宇倍 透「・・・それ相当つらいですよね」
安田 祥子「今まで、恋愛も趣味も色々な事を後回しにして頑張って来て気づいたら32歳、そしたら、お役御免で左遷。笑っちゃいます」
宇倍 透「安田さん自分の気持ちに嘘は良くないです。一度折り曲げた紙は見かけは直せても元の状態には戻せません、心もです」
安田 祥子「・・・」
宇倍 透「悲しかったら、泣けば良いんですよ、その気持ち僕が受け止めますから」
安田 祥子「うっ・・ありがとう・・ございます・・」
  1時間後
安田 祥子「色んな話し聞いてくれてありがとうございます スッキリしました!」
宇倍 透「安田さんは笑顔の時が一番良いですよ!」
安田 祥子「そう言われると照れますね」
宇倍 透「これ、僕の名刺です!自宅でメンタルケアの仕事してますので、もし疲れたらここに来て下さいね!」
安田 祥子「はい」

〇マンション前の大通り
安田 祥子「すいません、送って頂いて!この辺で大丈夫ですよ!」
宇倍 透「分かりました!それじゃ気をつけて下さいね!」
安田 祥子(優しい人)

〇玄関の外
宇倍 透「ん?」
新渡目 優大「どうでした?大家さん」
虚田 人実「・・・良かったわ」
新渡目 優大「大家さん、いや、人実さん」
虚田 人実「な、なに」
新渡目 優大「離れて欲しくない・・・」
虚田 人実「や、家賃は要らないわ、だから、その、今までの事とか・・・」
新渡目 優大「大丈夫!いつでも来て欲しいな」
虚田 人実「・・・ありがとう」
新渡目 優大「じゃあ、連絡待ってます」
虚田 人実「はい・・・」
新渡目 優大「気をつけて」
宇倍 透「何したんだよ、兄貴」
新渡目 優大「大人のスキンシップさ!」

  1週間後

〇おしゃれなリビング
宇倍 透「もうそろそろお昼だけど、どうする?」
新渡目 優大「俺は要らないよ、透は?」
宇倍 透「何か食べて来ようかな?」
新渡目 優大「お客様かな?」

〇玄関の外
宇倍 透「は〜い!」
安田 祥子「どうも!」
宇倍 透「祥子さん!」
安田 祥子「これ、お話聞いてもらった時のお礼です!良かったどうぞ!」
宇倍 透「美味しそう〜!」
安田 祥子「甘いの大丈夫ですか?」
新渡目 優大「大好物ですよ!」
安田 祥子「わっ!」
宇倍 透「ちょっ、兄貴!ビックリさせないでよ!」
安田 祥子「お、お兄さんがいらしたんですね!」
新渡目 優大「上がって下さい!一緒に食べましょう」
宇倍 透「良かったどうぞ!」
安田 祥子「は、はい」

〇おしゃれなリビング
新渡目 優大「はじめまして、『にどめ』と申します」
安田 祥子「安田です」
新渡目 優大「テレビでよく拝見していますよ」
安田 祥子「ご存知でしたか」
新渡目 優大「知らない人の方が少ないですよ」
安田 祥子「・・・えっと」
宇倍 透「苗字が違うのになんで兄弟?って顔ですね」
安田 祥子「あ、そんなつもりでは・・・」
宇倍 透「いいですよ、お話しますね!」
新渡目 優大「・・・紅茶を淹れて来るよ」
宇倍 透「実は・・・母が違うんです!異母兄弟ってヤツですね!」
安田 祥子「そ、そうなんですね」
宇倍 透「ハハッ、リアクション困りますよね?」
安田 祥子「いえ、仲良さそうに見えますよ!」
宇倍 透「そうなんです、仲良いんですよ!」
新渡目 優大「話しの途中に失礼・・・」
安田 祥子「わぁ〜良い匂い!」
新渡目 優大「パラディという特製の紅茶です」
宇倍 透「それ飲むとリラックスするんですよ!」
新渡目 優大「その紅茶を飲んだら、普通に戻れませんよ?」
安田 祥子「またまた、冗談を!」
宇倍 透「普通のコーヒーに変えましょうか?」
安田 祥子「あのっ・・今日ここに来た理由は悩みを相談しに来たんです。実は紅茶の事とか評判はネットで調べています」
新渡目 優大「それなら、大丈夫ですね、紅茶を飲むかどうかは安田さん次第ですが・・」
安田 祥子「・・・私」
安田 祥子「飲みます!何もかもスッキリした気持ちにたりたいんです!」
新渡目 優大「それなら、どうぞ」
安田 祥子「頂きます!」
安田 祥子(あれ、身体が動かない、何か吸い込まれる感じ)

〇黒
安田 祥子「えっ?何ここ?」
安田 祥子「新渡目さん?」
新渡目 優大「暗い闇の中はどうですか?落ち着きますか?」
安田 祥子「実は暗いの苦手なんですよね・・・」
新渡目 優大「大丈夫、リラックスして、そして、僕の声に耳を傾けて」
安田 祥子「は、はい」
新渡目 優大「安田さんの抱えてる悩み話して下さい。ゆっくりでいいです」
安田 祥子「わかりました!実は来月に左遷させられる事になって──」
安田 祥子「それで、私、辛くて・・・」
新渡目 優大「素直に感情を吐き出せるのは素晴らしい事です。でも、もう一つ足りません」
安田 祥子「えっ?足りない?」
新渡目 優大「感情と欲望は2つで1つです。感情を外に出した後に欲望を叶える事で、初めて心の苦しみから解放されるのです」
安田 祥子「よ、欲望ですか?」
新渡目 優大「その通り、欲望を言ってごらんなさい」
安田 祥子「で、でも」
新渡目 優大「躊躇わずに、お話し下さい」
安田 祥子「皆んなに優しくされたい!特別扱いしてもらいたい」
新渡目 優大「なるほど・・優しさを求めてるのですね」
安田 祥子「・・・はい優しさを求めてます」
新渡目 優大「それが荒削りな展開になっても?」
安田 祥子「はい、構いません。」
新渡目 優大「分かりました。貴方の欲望・・・」
新渡目 優大「欲望を叶えたいなら、食べて下さい。貴方が望んだ色の世界が待っている事でしょう」
安田 祥子「・・・・・・」
新渡目 優大「口にするかは、貴女次第ですが・・・」
安田 祥子「食べます・・・」
  そっとリンゴを口に運ぶ祥子
安田 祥子(頭に電流が走る・・・)

〇水玉2
安田 祥子「あれ?とてもいい気分になってきたわ」
安田 祥子「空に浮いてる気分!」
安田 祥子「アハハッ」
「アハハハハッ」

〇白

〇女の子の一人部屋
安田 祥子「・・・夢」
安田 祥子「ヤバっ!遅刻!」

〇改札口前

〇高層ビル

〇テレビスタジオ
安田 祥子「遅刻して、すみませんでした!」
射矢 実男「安田君・・・」
安田 祥子「寝過ごしてしまいました!申し訳ありません!」
射矢 実男「ふぅ・・・」
安田 祥子(絶対に怒ってるわよね・・・)
射矢 実男「・・・ったよ」
安田 祥子「えっ?」
射矢 実男「良かったよ、何事も無くて、家で倒れてるかもしれないと思って、君の家に今から行くつもりだったんだ」
安田 祥子「・・・」
射矢 実男「ずっと働きすぎて疲労が溜まっていたんだよ!だから、今日は、無理しちゃいけないよ」
安田 祥子「・・・はい」
射矢 実男「よしっ!午後からは適度に頑張ろうな!」
安田 祥子「いつもの主任なら怒るのに・・・」

〇オフィスのフロア
安田 祥子「何か怒られる方がしっくりくるわ・・・」
安田 祥子(とりあえず、コーヒー飲んで落ち着こう)
安田 祥子「ひえっ!」
  ぶつかった拍子にコーヒーが目の前の人の服にかかる
志田 児野実「おいっ!やってくれたな」
安田 祥子「先輩!」
志田 児野実「・・・」
安田 祥子「こ、コーヒーが!」
安田 祥子「すいません弁償しますから!」
志田 児野実「そんな事しなくても大丈夫」
安田 祥子「でもっ!」
安田 祥子「へっ?」
志田 児野実「新しいコーヒー買ってきてくれよ、2人分な!服は替えがあるから心配すんな!」
安田 祥子「・・・」
志田 児野実「何してんだよ、はやく行ってこい!」
安田 祥子「は、はいっ!」

〇マンション前の大通り
安田 祥子「ミスしても、今日は主任怒らなかったし、先輩もいつもなら私の事をおばさんってバカにするのに・・何か変な日ね」
「姉さん!」
安田 祥子「はい?」
鐘賀 全「先週は失礼しました!」
安田 祥子「あ、あなたは!」
鐘賀 全「いやぁ〜姉さんも人が悪いですよ、その道の人なら、早く言ってくれれば良いのに・・・」
安田 祥子「何の事ですか?」
鐘賀 全「迷惑かけて本当に申し訳ありませんでした!」
安田 祥子「えっ?・・・」
鐘賀 全「これ、受け取って下さい。受け取ってもらえないと本当に俺の・・命が・・・」
安田 祥子「受け取れませんよ・・・」
鐘賀 全「勘弁して下さい姉さん、嫁と子供がいるんです懐に納めてもらわないと、皆んな消されて・・」
安田 祥子「そ、そんな」
鐘賀 全「お願いします!先週の事は許して下さい!」
安田 祥子「・・・わ、分かりました!」
鐘賀 全「ありがとうございます」
安田 祥子「わ、私はこれで」

〇女の子の一人部屋
安田 祥子「変な1日、これが紅茶の効果かしら?」
安田 祥子「・・・今日はもう寝よう」

〇女の子の一人部屋
安田 祥子「・・・」
安田 祥子「あ、れ、金縛り?体が重い・・・」

〇黒
新渡目 優大「こんばんは」
安田 祥子「にどめ、さん?」
新渡目 優大「フフッ紅茶の効果が効いてるようですね・・・」
安田 祥子「やっぱり、紅茶の効果だったんですね」
新渡目 優大「凄い効き目でしょ?」
安田 祥子「は、はい」
新渡目 優大「それより、安田さん身体が重くなるという事は 欲望がまだ満たされてない証拠です」
安田 祥子「そ、そんな事は・・・」
新渡目 優大「正直な欲望を仰って下さい」
安田 祥子「・・・新人の子がいなくなればいいと思いました。そうすれば地方への異動が無くなるかなと・・・」
新渡目 優大「・・・安田さん、その欲望は叶うでしょう。しかし、その後に欲望にのまれたら、辛い現実が待っているかもしれませんよ?」
安田 祥子「大丈夫です!もうそれ以外の欲望はありませんから。」
新渡目 優大「欲望っていうのは願望とは違い自分勝手なものですから・・気をつけて下さい」

〇女の子の一人部屋
安田 祥子「はっ!」
安田 祥子「夢・・・?」

〇テレビスタジオ
安田 祥子「おはようございま〜す」
志田 児野実「・・・おはよう」
安田 祥子「どうしたんです?」
志田 児野実「メール見てないのか?」
安田 祥子「メール?」
志田 児野実「あの新人の女の子・・・昨日亡くなったんだよ」
安田 祥子「うそっ!」
志田 児野実「・・首を絞められた後があるそうだ」
安田 祥子「そ、そんな・・・」
志田 児野実「そして、主任が犯人として疑われている」
安田 祥子「・・・」
志田 児野実「メールみとけよ・・・」
安田 祥子「・・・すいません」
志田 児野実「もしかしたら犯人は、女子アナウンサーを狙っているかも知れないから、今日お前は休み」
安田 祥子「えっ、でも・・・」
志田 児野実「詳しい事は、また連絡する!気をつけて帰れよ」
安田 祥子「多香美ちゃんが死んだ・・・」

〇高層ビル
安田 祥子「どうなってるの・・・」

〇不気味
安田 祥子「良かったじゃない、邪魔者が消えて」
安田 祥子「誰!」
安田 祥子「もう1人のアンタよ」
安田 祥子「そんな訳ない!」
安田 祥子「アンタは欲望の塊で、他人の不幸は蜜の味と思ってるでしょう?」
安田 祥子「思ってないわ!」
安田 祥子「アンタは残酷な人間よ、隠さなくて良いのよ」
安田 祥子「うるさい!あっちに行って!」
安田 祥子「楽しくやりましょうよ、私たち姉妹みたいなもんでしょ?」
安田 祥子「消えて!」
安田 祥子「何なのよ!」

〇高層ビル
志田 児野実「おいっ!大丈夫か?」
安田 祥子「え、あ、はい!すいません!」

〇大きいデパート
安田 祥子「今日、私どうかしてる・・・」
安田 祥子「そうだ!」

〇宝石店
安田 祥子「わぁ!綺麗」
伊良内 光「何かお探しですか?」
安田 祥子「運気が上がるアクセサリーって有りますか?普段も使えるような?」
伊良内 光「こちらはどうですか?」
安田 祥子「良いですねぇ!」
伊良内 光「お値段もお手頃で6万円ですよ」
安田 祥子「あっ!こちらは?」
伊良内 光「こちらはダイヤモンドでお値段が高額な品ですが・・・」
安田 祥子「いくらです?」
伊良内 光「85万です」
安田 祥子「そ、そんなに?」
伊良内 光「どうされます?」
安田 祥子(そんな高額なお金額なんて・・・)
安田 祥子「あっ!」

〇大きいデパート
安田 祥子「フフッ(そういえばお金貰ってたわね)」
安田 祥子「さて、帰りましょうか」

〇開けた交差点
安田 祥子「ふん♪ふん♪」
安田 祥子「わっ!」
新渡目 優大「おや?」
安田 祥子「新渡目さん!」
宇倍 透「ご機嫌ですね!安田さん」
新渡目 優大「いい事でもあったのですか?」
安田 祥子「嫌な事があったので、気持ちを切り替えようと・・・」
新渡目 優大「首元のネックレスお似合いですよ!」
安田 祥子「ありがとうございます!」
宇倍 透「ダイヤモント・・・安田さんらしい選択ですね」
安田 祥子「そうなんです!何か欲しくなってしまって」
新渡目 優大「そのダイヤモンドみたいに、安田さんも、永遠に輝くといいですね!」
安田 祥子「永遠には無理ですけど、出来ればずっと輝いていたいですね!」
宇倍 透「アハハッ」
安田 祥子「そうだ!前に頂いた紅茶の料金お支払いがまだだったので、今お支払いしますよ」
新渡目 優大「別にいらないですよ」
安田 祥子「そ、そういう訳には、いきません」
新渡目 優大「それなら、そこの自販機で缶コーヒーを買って頂けませんか?」
安田 祥子「か、缶コーヒーですか?」


〇開けた交差点
新渡目 優大「はぁ〜外で飲む缶コーヒーは美味しいです」
安田 祥子「本当に缶コーヒだけで良いんですか?」
新渡目 優大「もちろん!」
宇倍 透「兄貴、そろそろ行かないと仕事が・・」
新渡目 優大「おっと、そうだね・・・」
安田 祥子「すいませんお忙しいのに」
新渡目 優大「大丈夫ですよ、安田さん、これからも輝き続ける事を願ってます」
宇倍 透「じゃあ行こうか、兄貴」
安田 祥子「ありがとうございました!」
新渡目 優大「どういたしまして」
安田 祥子「さぁ私も帰ろうっと」

〇トラックのシート
運転手「・・・」
運転手「・・・」
運転手「し、しまった!」

〇白
安田 祥子「えっ!」

〇病室のベッド
安田 祥子「・・・」
安田 祥子「はっ!」
志田 児野実「き、気付いたか・・・」
安田 祥子「先輩・・・私って・・・」
志田 児野実「車に跳ねられたんだよ」
安田 祥子「えっ?」
志田 児野実「幸い軽傷で済んだがな・・・」
安田 祥子「・・・そうなんですね」
志田 児野実「・・・ずっと眠ってた方がよかったかもな・・」
安田 祥子「どういう意味ですか、それ」
安田 祥子「・・・」
阿波 久津見「安田祥子だな・・・」
安田 祥子「えっ?はい」
阿波 久津見「アンタを殺人の罪で逮捕する」
安田 祥子「どういう事?」
星木 幹「とぼけるな!慶山多香美を殺害しただろ う!」
阿波 久津見「慶山が住むマンションの防犯カメラにアンタが写っていたんだ」
安田 祥子「何かの勘違いですよね?」
阿波 久津見「先程アンタのスマホを確認させてもらった、殺害した時の様子が収められてる」
安田 祥子「わたし、やってないわ!」
星木 幹「ならこの動画を見ろ!」

〇可愛い部屋
慶山 多香美「何ですか?いきなり動画なんな回して」
慶山 多香美「えっ?」
慶山 多香美「じょ、冗談ですよね?」
「や、やめて!」

〇黒
「先輩・・・苦し・・・」

〇病室のベッド
安田 祥子「嘘よ、嘘・・・」
阿波 久津見「とある路地裏の防犯カメラの映像だ・・」

〇入り組んだ路地裏
上河 照「・・・」
「起きな!」
上河 照「おい、嘘だろ、・・・」
安田 祥子「本気よ!」
上河 照「よ、よせ!」
安田 祥子「えっ?何て?」
上河 照「い、命だけは・・・」
安田 祥子「だ〜め💕」
安田 祥子「アハハハハハハッ」
鐘賀 全「す、すいませんでした!」
安田 祥子「金よ!誠意ある金額をよこしな!」
鐘賀 全「わ、分かりました!」
安田 祥子「持って来ないと、アンタの家族皆殺しよ!」
鐘賀 全「必ず用意します」

〇病室のベッド
安田 祥子「なんで・・・こんな・・私やってない」
阿波 久津見「詳しい話しは、署で聞く」
星木 幹「午後8時17分安田祥子!連続殺人の罪で逮捕!」

〇おしゃれなリビング
宇倍 透「安田さん、逮捕されたみたい。深淵を長く覗きすぎたね・・・」
新渡目 優大「108個の煩悩を消した次の日には、109へ欲望を増やしに行く、人なんて深淵に取り憑かれてる人だらけさ」
宇倍 透「求めるものを優しさだけで止めておけば良かったのかな?」
新渡目 優大「地位の確立まではギリギリセーフだったと思うけどね・・」
宇倍 透「あっ!そういえば、欲に負けてアクセサリー買ってしまったもんね安田さん・・・」
宇倍 透「お客様だよ兄貴!」

〇玄関の外
虚田 人実「ど、どうも」
新渡目 優大「お待ちしてましたよ、人実さん」
虚田 人実「あの、今日も・・・」
新渡目 優大「もちろんです!中にお入り下さい」
虚田 人実「・・・お邪魔します」
新渡目 優大「あっ!そうだ!人実さんにプレゼントがあるんですよ」
虚田 人実「わ、私に?」
新渡目 優大「家賃の事お世話になってますから、受け取って下さい!」
虚田 人実「あ、ありがとう、綺麗なダイヤモンドね」
新渡目 優大「綺麗な宝石が輝くには暗闇が必要なんですよ!」

〇街中の道路
鐘賀 全「痛ぇな!コラ!」
宇倍 透「何か?」
鐘賀 全「あ、す、すいませんでした!」
宇倍 透「何を怖がってるんです?」
鐘賀 全「・・・あの、俺、こう見えて、霊感があって・・・その・・・」
宇倍 透「そうですか・・・」
鐘賀 全「・・・前に缶コーヒー飲んでた所を見かけてその時に気付いたんですが・・アレって人の生命力ですよね?」
宇倍 透「凄い霊感ですね!」
鐘賀 全「あなた方は人間ではない・・ですよね?」
宇倍 透「最初に言ったでしょ?向こう側だって」

〇おしゃれなリビング
虚田 人実「そういえば気になってたんだけど・・・」
新渡目 優大「何でしょうか?」
虚田 人実「貴方っていつもコーヒーを一口残すわよね?」
新渡目 優大「ああ、その理由はですね・・・」

〇黒
  深淵が僕を求めるのです、それは欲望のように、終わりのない暗闇。深淵に染まらないようにあえて一口残すんですよ・・
  といっても、私は深淵を勧める側なんですけどね──

〇黒
新渡目 優大「さぁ、お手をどうぞ──」

コメント

  • なんだか恐ろしい話ですね!
    単純な人間なので深淵の深さは分からないし、覗いたら真っ逆さまに落ちそうですww
    自分の知らない面を見るのも怖いですね😮

  • パラディのフレーバーに紛れて幻覚作用か何かが入っているものかと思っていたら、さらに恐ろしいものでしたね。後半はコーヒーよりもビターな展開に衝撃でした!

  • ニーチェはこうも言ってますよね。「怪物と闘う者はその過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ」。自らの欲望との闘いに敗れれば大きな代償を払うということでしょうか。新渡目の「欲望と願望は違う」と言う言葉を肝に銘じてコーヒーは一口残すくらいの人生を心がけたいものです。

コメントをもっと見る(5件)

成分キーワード

ページTOPへ