推し引退まで、あと1日

ワカメ昆布

推し引退まで、あと1日(脚本)

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〇広い改札
  12:30
  駅・改札前──
  アカウント名『ポリ袋』が
  立っている。
アカウント名:izumi「すんませ〜ん!」
  アカウント名『izumi』が
  やってくる。
アカウント名:ポリ袋「おぁ〜久しぶり!」
アカウント名:izumi「先月以来っすね」
アカウント名:ポリ袋「時間経つの早! ──とりあえずお昼・・・の前に、 コインロッカーええ?」
アカウント名:izumi「もちろんす」

〇駅のコインロッカー
アカウント名:ポリ袋「ふぐぬぬぬぬぬ」
  ロッカーに荷物を押し込む『ポリ袋』。
アカウント名:izumi「いつも何でそんな荷物多いんすか?」
アカウント名:ポリ袋「いや明日で最後やから・・・たくさん・・・ぐぬぬぬ」
アカウント名:izumi「でもロッカーに入れたら使わなくないすか?」
アカウント名:ポリ袋「・・・正論やめてや」
アカウント名:izumi「いつも無理矢理入れるから壊しそうで怖い」
アカウント名:ポリ袋「うっさい!!」
アカウント名:ポリ袋「──ぐぬぬぬ・・・! よし、入ったぁ!!」
アカウント名:izumi「・・・」
  ロッカーをポンポン叩く『ポリ袋』。
アカウント名:ポリ袋「今日までいっぱい詰めてごめんな、ありがとな」
アカウント名:ポリ袋「じゃ、行くか」

〇繁華街の大通り
  ファミレス『オーミー』に向かう2人。
アカウント名:izumi「てか昨日のツイートみました?! マヤちゃんの!」
アカウント名:ポリ袋「夜行バスん中で泣いた」
アカウント名:izumi「ポリさん泣くの珍しいっすね」
アカウント名:ポリ袋「一応人間やからね、泣くで」
アカウント名:izumi「まだだってのに、すでに引退しましたみたいな言い回し可愛かったですよね」
アカウント名:ポリ袋「わかる、わかる」
アカウント名:ポリ袋「明日にはアカウント消えるから、 全ツイートスクショ保存した」
アカウント名:izumi「エグ・・・ください」
アカウント名:ポリ袋「他力本願やめや?ええけど」
アカウント名:izumi「絶対容量死ぬ」
アカウント名:ポリ袋「知らんわ、マヤちゃんへの愛で容量もなんとかせい!」
アカウント名:izumi「あ、笹さんあと30分位で着くそうです」
アカウント名:ポリ袋「神」
アカウント名:izumi「先オーミー入ってましょっか」

〇ファミリーレストランの店内
  12:50
  ファミレス『オーミー』
アカウント名:笹パンダ「ごめん遅れた!!」
アカウント名:izumi「残業って・・・今土曜の昼っすよ?」
アカウント名:笹パンダ「あうん、金曜の残業で・・・」
アカウント名:ポリ袋「嘘やろ」
  注文ボタンを押す『笹パンダ』。
アカウント名:笹パンダ「・・・それが本当なんだよ。怖いだろ? 会社選びは慎重にな、大学生」
アカウント名:ポリ袋「いや、怖すぎる」
店員「──ご注文をお伺いします」
アカウント名:笹パンダ「あ、和風ハンバーグで」
アカウント名:笹パンダ「──だから本当、会社は人生の一大選択じゃん? ポリちゃんもそう思うでしょ?」
アカウント名:ポリ袋「てか言ってなかったけど、私フリーターなんよね」
アカウント名:ポリ袋「でも現場とお金の両立考えると最高なんで、izumiくんも卒業したらフリーターなろな?」
アカウント名:izumi「初耳でした」
アカウント名:笹パンダ「僕ら4年間の付き合いのくせに、お互い知らない事多いよね」
アカウント名:ポリ袋「それはそうやな・・・まぁでもオタク同士ってそんなもんちゃう?」
アカウント名:ポリ袋「出会いもTwitterやし、本名すら知らんしなぁ」
アカウント名:izumi「でもお二人が最強オタクってことは知ってますよ」
アカウント名:ポリ袋「えっ?!」
アカウント名:ポリ袋「まって急にどうしたの?!」
アカウント名:izumi「・・・いや、一応、世話になったんで」
アカウント名:笹パンダ「izumiくん、高校生の時からの成長がすげぇ」
アカウント名:ポリ袋「エグい・・・」
アカウント名:笹パンダ「ポリちゃんって泣くんだね」
アカウント名:ポリ袋「・・・一応人間やからな」
アカウント名:笹パンダ「・・・でもさ、明日が終わったら、もうマヤちゃんはアイドルじゃねぇんだよな」
アカウント名:笹パンダ「だからもう、俺らもオタクとして存在できねぇんだよな・・・」
アカウント名:ポリ袋「・・・急にやめてや」
アカウント名:笹パンダ「マヤちゃんTwitterも消しちゃうんだろ?」
アカウント名:ポリ袋「あ、それ聞いた?」
アカウント名:笹パンダ「とりあえず全ツイートスクショした」
アカウント名:izumi「やっぱこの人たちすげぇや・・・」

〇ファミリーレストランの店内
  14:30
  ファミレス『オーミー』
アカウント名:笹パンダ「あーでもオタクじゃねぇ俺ってまじで存在意義ねぇ〜!!!」
アカウント名:ポリ袋「分かる〜〜!!!! 私なんてただのフリーターやん?!そんな・・・そんな、社会に必要とされるぅ!?」
アカウント名:izumi「・・・ちょっとうるさいっすよ二人とも」
アカウント名:笹パンダ「冷静だなぁオイ」
アカウント名:izumi「僕だって今すぐにでも発狂したいっすよ」
アカウント名:笹パンダ「3人でオーミー来る事も、もうねぇのかな」
アカウント名:ポリ袋「えっ・・・そ、それは、」
アカウント名:ポリ袋「・・・ねぇ、また食べに来ようよ!!、ねぇ!」
アカウント名:izumi「そっすね・・・」
アカウント名:笹パンダ「──今ポリちゃんも内心『もう行かねぇかもな』とか思ったでしょ」
アカウント名:ポリ袋「・・・」
アカウント名:izumi「・・・まずは明日っすよ」
アカウント名:笹パンダ「正論だわ」
アカウント名:izumi「そういえば、笹さん今日のメガネは?」
アカウント名:笹パンダ「これ。総製作費15,000円!」
アカウント名:ポリ袋「すご〜!! 特段豪華やなぁ!!フレームキラキラ!」
アカウント名:ポリ袋「んで『感・謝』! この、レンズにお決まりのドデカい文字!!」
アカウント名:izumi「これ見るとライブの実感湧きます」
アカウント名:ポリ袋「4年間でそういう体になってんのオモロいな」
アカウント名:笹パンダ「最後だから言うけどさ、 最初『マ・ヤ』ってレンズに文字入れたメガネかけてライブ行ったら──」
アカウント名:笹パンダ「マヤちゃんが『えっ?!』ってリアクションしてくれて、笑ってくれて」
アカウント名:izumi「へぇ!」
アカウント名:ポリ袋「『えっ、私のこと見えてるそれ?』って意味やと思うけどなぁ」
アカウント名:笹パンダ「まぁそれでもいいのよ、マヤちゃんが笑ってくれればそれでいいのよ」
アカウント名:ポリ袋「・・・深いなぁ」
アカウント名:ポリ袋「・・・でも私らの4年間全部そのためにあるもんな」
アカウント名:笹パンダ「今思えば現場全部文字入りメガネ掛けてたわ」
アカウント名:izumi「相当嬉しかったんすね」
アカウント名:ポリ袋「・・・ん?」
アカウント名:ポリ袋「・・・てことは、マヤちゃんのこと、レンズの文字越しでしか見たことないってこと?」
アカウント名:izumi「確かに・・・」
アカウント名:笹パンダ「・・・」
  静かに頷く、『笹パンダ』。
アカウント名:ポリ袋「それは・・・アカン・・・腹筋死ぬ」
アカウント名:笹パンダ「結局マヤちゃんがメガネ見てくれたのは最初だけだったけどさ」
アカウント名:izumi「ま、でも今日は見てくれるといいですね」
アカウント名:笹パンダ「な〜、最後、笑ってくれるといいな」

〇女の子の一人部屋
  翌日
  23:45
  
  引退ライブ終了後
  グループラインにて──
アカウント名:ポリ袋「おい、おいおいおいおいおい」

〇一人部屋
アカウント名:笹パンダ「おいおいおいおい」

〇男の子の一人部屋
アカウント名:izumi「僕も見ました、やばいっすね」

〇一人部屋
アカウント名:笹パンダ「とりあえず来週、オーミー集合!」

〇ライブハウスの控室
  ──10分前
  
  マヤちゃん、Twitter
  あ!そうだ!あと一つ。
  最後までずーっと文字入りメガネで
  参戦してくれてた彼、
  今日の文字は『感謝』だった!
  ありがとう!
  ──私のこと、
  ちゃんと見えてたのか、
  ちょっと気になるなぁ。
  
  #永遠の疑問
  #感謝

コメント

  • 推しが同じ人達だと盛り上がりますよね!
    ただオフ会とかだと、HNで呼ばれるのがちょっと恥ずかしいです。笑
    応援メガネをちゃんとわかってくれてたマヤちゃんすごい!

  • こういう仲間が集えるのって、やはりsns社会の恩恵ですね。オタクの中にも、他の人の共感しあいたい人とそうでない人いると思うけど、この3人見ていると一緒に楽しむのっていいなあと思いました。

  • この時代だからこそ、共通の趣味を持った人と繋がりやすいですよね、読みながらこんなに共通の趣味を持った方と繋がれたら羨ましいなと思いました。

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