代役専門女優

美飾 唯

女優復活の前日(脚本)

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美飾 唯

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〇お台場
  私は、香住麗華
  女優・・・ただし、降板した女優の代わりに出演するのが仕事
  人は、私を・・・”代役専門女優”と呼ぶ

  私は、恋人だった脚本家の彼を失い、それから、主演女優の道を捨てた

〇墓石
  私は、時々、愛する彼に会うために、この場所を訪れる

〇墓石
香住麗華「澄矢・・・」

〇花模様3
  私の中にはまだ残っている
  あなたとの記憶・・・
  肌に触れた時の指先の優しさ
  耳元に届く優しい囁きさえも・・・

〇菜の花畑
香住麗華「私は、今も・・・あなたと共に、生きている」
香住麗華「代役専門の女優として・・・」

〇菜の花畑
香住麗華「私が主演女優をつとめるのは、あなたが書くドラマだけだと決めているから」

〇撮影スタジオのセット
国仲綾子「麗華、仕事よ」
国仲綾子「不倫疑惑で降板になった島崎あいりの代役」

〇綺麗なリビング
  マネージャーの国仲さんから連絡
  今回は、教師を演じる
  校舎の屋上から身を投げようとする女子高生を救う役
  もちろん、仕事は引き受ける
  でもその前に、降板した女優に会わないと

〇お台場
香住麗華「私の目的は、もう一つ 降板した女優を復帰させることだから」
香住麗華「それが、亡くなった彼との約束」

〇公園のベンチ
香住麗華「聞いたわ 不倫で降板?」
島崎あいり「違います」
島崎あいり「私、不倫なんて、していません」
香住麗華「敵の罠に填められた ・・・とでも?」
島崎あいり「策略です 私の活躍を妬んだ」
香住麗華「だったら、諦めないで」
香住麗華「女優を続けるのよ」
島崎あいり「この世界が、こんなに汚いなんて」
島崎あいり「もう、失望しました」
香住麗華「私の演技をを見に来て!!」
島崎あいり「え!?」
香住麗華「そして、もう一度、考え直して」
島崎あいり「・・・」
香住麗華「私、必ずあなたを復帰させてみせる!!」

〇教室の外
  ドラマの撮影は始まった
  私は、島崎あいりが演じるはずだった教師・桜弥生になりきる
  この日、あいりは、私の演技を見に来た
  彼女は女優の道を諦めようとしている
  私の演技で、彼女の気持ちに変化があれば・・・

〇高い屋上
  クライマックスシーン・・・撮影開始

〇高い屋上
  監督の合図で、カメラは回った
  私の唇からは、自殺を止めようとする教師のセリフが紡ぎだされる
香住麗華「『なにがあったか知らないけれど、命を無駄にしないで』」
中山瑞樹「『もう、生きていたくない』」
中山瑞樹「『生きていたって、なにもいいことなんてない』」
香住麗華「『だからなに?』」
中山瑞樹「え!?」
香住麗華「『あなたには未来がある・・・』」
香住麗華「『・・・なんて、そんな無責任なことは言えないし、言うつもりなんてない』」
香住麗華「『これからもっと、辛いことがあるかもしれないから』」
香住麗華「『でも・・・だからこそ生きてほしい』」
香住麗華「『まだどうなるかもわからない未来があるからこそ、生きてほしいの』」
香住麗華「『私達、まだ出会って少しじゃない?』」
香住麗華「『もっと話をしたい』」
中山瑞樹「『私、どうしたら・・・』」
香住麗華「『何があったか知らないけど、ゆっくり話しましょ』」
中山瑞樹「『せんせい──』」
香住麗華「『私ね、明日が悲しむ今日を生きないで・・・っていう言葉が好き』」
香住麗華「『あなたも、明日という日が悲しむような今日にしないで』」
中山瑞樹「『先生・・・信じていいの?』」
香住麗華「『私は、あなたを死なせない』」
香住麗華「『絶対、死なせないからぁぁぁ!!』」
中山瑞樹「『せんせいぇぇ!!助けて──!!』」
  私は瑞樹に駆け寄り、震える体を抱きしめた
  うぉぉぉぉーーーー!!
  遠くで見ていた生徒達が、私達を取り囲んだ
  しばらく、歓声がやむことはなかった
  監督のOKで、シーンの撮影は終了した

〇フェンスに囲われた屋上
  私の演技を見ていたあいり
  ・・・なにを、思ったただろう!?

〇個別オフィス
  あいりの芸能事務所
  社長、いらっしゃいますか?
  あいりか、入れ

〇個別オフィス
佐伯恭介「どうした? 決心はついたか?」
島崎あいり「はい、もう一度チャンスを・・・」
佐伯恭介「だったら・・・」
島崎あいり「私、脱ぎません」
佐伯恭介「そうか」
島崎あいり「過激なラブシーンもしません」
佐伯恭介「それで、この世界に残れると?」
島崎あいり「記者会見を開いてください」
佐伯恭介「・・・」
島崎あいり「会見で、すべてを話そうと思います」
佐伯恭介「辛い思いをするぞ」
島崎あいり「覚悟はできています」
島崎あいり「どうしても女優を続けたいんです」
佐伯恭介「銃弾のように、質問が飛んでくるが・・・」
島崎あいり「それで、女優として復帰できるなら」
佐伯恭介「わかった、会見を開こう」
島崎あいり「社長・・・」
佐伯恭介「俺が、防弾チョッキの役割をしてやるよ」
佐伯恭介「思っていることを、すべて吐き出したらいい」
島崎あいり「はい、よろしくお願いします」

〇渋谷駅前
  そして・・・翌日

〇高速道路
国仲綾子「テレビを見て!!」
香住麗華「国仲さん!?」
国仲綾子「島崎あいりが記者会見やってるから」

〇シックなリビング
香住麗華「・・・決心がついたのね」

〇大会議室
島崎あいり「私、女優を辞めません」
島崎あいり「こんなことがあって、過激な役を引き受けるとか、引退だとか・・・」
島崎あいり「いろいろ言われていますけど・・・」
  今までと同じ仕事をしていくと?
島崎あいり「はい」
島崎あいり「だって、スキャンダルなんて、初めからありませんから」
  デマだったと!?
島崎あいり「もちろんです」
島崎あいり「私、ファンを裏切ることはしていません」
島崎あいり「女優としての誇りがありますから」
  ファンの皆様に理解されると思いますか?

〇花模様
島崎あいり「これからどうなるかわかりません」
島崎あいり「ファンのサポートがあるのかどうかも」
島崎あいり「でも、私は女優を続けたい」
島崎あいり「そう思わせてくれたのは、一人の先輩女優の演技でした」
島崎あいり「どうか、私に次の役をください!!」

〇墓石
香住麗華「澄也、彼女女優に復帰したわよ」
香住麗華「やっぱり、私はあなたを忘れられない」
香住麗華(髪を撫でてくれた指先のしなやかさも、まだ覚えているもの)
香住麗華(あなたとの記憶があれば、私は女優でいられる)
香住麗華「だから・・・」
香住麗華「いつまでも、私を見守り続けていてね」

〇渋谷のスクランブル交差点
国仲綾子「麗華仕事よ」
国仲綾子「女性問題を担当する訳あり検察官の代役」
香住麗華「OK・・・」
香住麗華「面白そうな役じゃない」
香住麗華「キャスティングされていた女優は、どうして降板したの?」
国仲綾子「それがね・・・──」

〇空
  THE END

コメント

  • 代役専門という発想が面白くて引き込まれました。彼女自身に何かあったときも誰かが代役を務めるのでしょうね。代役の代役の代役…代役の数珠つなぎの先には何があるのか。芸能界は恐ろしいところですね。

  • やはり大きな悲しみを経験し乗り越えてきたからこそ、強く美しく、他の人にもこんなに優しくなれるのでしょう。彼の存在が今も生きているんですね。

  • 代役専門女優って設定が生きてますね!
    彼女は今までにどれだけの女優さんを救ってきたんだろう…と思いました。
    これもまた素敵な生き様だと思います。

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