ウチの家に女騎士がやって来た⁉

アサギリナオト

ウチの家に女騎士がやって来た!?(脚本)

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アサギリナオト

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〇本棚のある部屋
  夏休みが始まって二日目の朝──
カイト(・・・・・・?)
  『桜井カイト』は自室に何者かが侵入する気配を感じた
???「おはようございます」
カイト「・・・・・・」
???「おはようございますと申しているのですが?」
カイト「・・・・・・」
カイト「・・・誰?」
シエル「私は『シエル・メルフォーディア』」
シエル「貴方のお父上の愛人です」
シエル「・・・と、言うのは冗談です」
カイト「・・・・・・」
シエル「私は貴方のお父上に世話になり、お父上から貴方のことを任された者です」
カイト「・・・・・・」
カイト「意味がわからん」
  カイトは彼女を無視して二度寝に入った
シエル「・・・・・・」
  シエルはスーツを脱いでカイトの隣に横たわった
カイト「・・・・・・」
シエル「・・・・・・」
カイト「おい」
シエル「何でしょう?」
カイト「お前、何してる?」
シエル「ご覧の通り、添い寝ですが」
カイト「・・・・・・」
カイト「もしかして、お前はアホなのか?」
シエル「失敬な」
シエル「貴方ほど頭はよくありませんが、アホではないです」
シエル「・・・たぶん」
カイト(最後、自信なくした・・・!?)
  カイトはツッコミの勢いで眠気が吹っ飛んでしまった
カイト「・・・・・・」
カイト「お前は俺の何を知ってる?」
シエル「全てではありませんが、貴方のことはお父上から、よく聞かされました」
シエル「文武両道」
シエル「やれば何でもこなせる数十年に一人の逸材であると、お父上は実に誇らしげでした」
カイト「・・・・・・」
シエル「・・・ですが、その才能を無駄にしている怠け者でもあると」
カイト「・・・・・・」
カイト「お前は父さんの何なんだ?」
  カイトは現在、一人暮らしである
  カイトの母は彼が生まれてすぐに亡くなった
  そして父は数年前に姿を消し、カイトはずっと一人で暮らしてきたのだ
  シエルが真剣な顔付きでカイトの父について語り始めた
シエル「仲間です」
カイト「は?」
シエル「私は貴方のお父上──勇者ラインハルト様と同じパーティに属しておりました」
カイト「・・・・・・」
カイト「ごめん、何言ってるか全然わかんない」
カイト「勇者ラインハルト?」
カイト「何だよ、それ?」
シエル「ラインハルトは〝我々の世界〟でお父上が名乗っていた偽名です」
カイト「(我々の世界・・・?)」
シエル「お父上が初めて【リンデル】に転移なさったのは今から20年ほど前──」
シエル「この国の〝神隠し〟という怪奇現象に見舞われ、迷い込んだ先の世界が【リンデル】だったそうです」
カイト「ちょ、ちょ、ちょっと待って!」
シエル「?」
カイト「それって、つまり──────」
カイト「父さんが昔、神隠しに遭って──アンタが住んでる【リンデル】っていう世界に転移したってことか?」
シエル「その通りです」
シエル「そして転移先で困っていたお父上を助けたのが貴方のお母上──賢者エリス様です」
カイト「なっ!?」
シエル「貴方のご両親は【リンデル】で知り合い──」
シエル「かつて【リンデル】を支配していた魔王を倒すべく、パートナーとなられたのです」
カイト「・・・・・・」
シエル「お二人は死闘の末に魔王を倒し、後に夫婦となられました」
シエル「そして最初に身ごもった子どもが貴方です」
カイト「・・・そんな途方もない話を信じろってのか?」
シエル「貴方の飛び抜けた才能は勇者様と賢者様の血縁によるものです」
シエル「本来であれば、貴方の才は【リンデル】の平和ために捧げられるべきでした」
シエル「ですが、エリス様が貴方の身代わりとなり、平和維持のため【リンデル】に留まられた」
シエル「そしてラインハルト様が赤ん坊の貴方を地球に連れ帰ったのです」
カイト「・・・その話が本当なら、俺の母さんは────」
シエル「はい。エリス様は生きておられたのです」
シエル「・・・ほんの数年前までは」
シエル「【リンデル】に新たな魔王が出現し、エリス様は魔王の配下に暗殺されました」
シエル「我々はエリス様の訃報を真っ先にラインハルト様にお報せしました」
カイト「数年前・・・・・・」
カイト「父さんが失踪した時期か・・・」
シエル「はい。ラインハルト様は急ぎ【リンデル】に向かい、エリス様の葬儀に駆け付けました」
シエル「ラインハルト様は大層お嘆きになられ、人目もはばからず涙を流された」
シエル「しかしラインハルト様の強さは我々の想像をはるかに超えていた」
シエル「エリス様の亡骸に別れを告げた直後、新しい勇者パーティの結成を宣言なさったのです」
カイト「・・・で」
カイト「その新しいパーティメンバーに選ばれた一人が、アンタか?」
シエル「はい」
シエル「因みに私は騎士の称号を得ています」
カイト「・・・・・・」
  確かに彼女の話は筋が通っている
  しかし、だから何だと言うのだ?
カイト「父さんに俺のことを頼まれたって、言ってたな?」
シエル「はい」
カイト「実際には何て頼まれた?」
シエル「貴方の家族になってほしい──と」
カイト「は?」
シエル「そして貴方に責任を取らせて、魔王退治を手伝わせようとのことです」
カイト「それ絶対に言っちゃ駄目なヤツだよね!?」
シエル「・・・失礼。口が滑りました」
カイト「・・・・・・」
  これで確定した
  この女は間違いなくアホである
  カイトは相手にしているのがバカらしくなり、シエルを無視して服を着替え始めた
シエル「・・・・・・」
カイト「・・・何だよ?」
シエル「・・・・・・」
カイト「・・・つか、部屋から出て行けよ」
  シエルはカイトの体を、まじまじと見つめている
シエル「良い体ですね」
カイト「ああ?」
シエル「脂肪が少なく、筋肉の質も良い」
シエル「さすがはラインハルト様のご子息です」
カイト「・・・そりゃ、どうも」
シエル「因みに私の体はいかがでしょう?」
  そう言ってシエルはカイトを誘うようにポージングを取り始めた
カイト「・・・・・・」
カイト「興味ねえよ」
シエル「何故ですか?」
カイト「いや、何故って・・・・・・」
シエル「私、美少女ですよ?」
カイト「自分で言うな!!」
カイト(この女と話しているとマジで疲れる)
  服を着替えたカイトは出かける準備をした
シエル「どこに行かれるのですか?」
カイト「別に・・・・・・」
カイト「ただの散歩だよ」
シエル「では私も付いて参ります」
カイト「結構です」
シエル「私も着替えるので少しお待ちになって下さい」
カイト「話、聞けよ」
  カイトはシエルを放置して玄関に向かった

〇シックな玄関
  玄関で靴を履いてドアを開けた
シエル「お待ちください」
  シエルは薄着のままカイトを追いかけて来た
カイト「・・・何だよ?」
シエル「私も付いて参ります」
カイト「それは、さっき聞いたよ」
シエル「そうですか」
シエル「では参りましょう」
カイト「は!?」
  シエルは薄着のまま外に出ようとした
カイト「ち、ちょっと待った~!!」
  カイトはシエルの腕を引っ掴み、彼女を玄関の奥まで引っ張り込んだ
カイト「ぜぇ・・・、ぜぇ・・・」
シエル「・・・・・・」
カイト「てめえ何してんだ?」
シエル「無論、貴方の護衛を────」
カイト「余計に敵を増やすわ!!」
  カイトは出かける前から疲れ切ってしまった
カイト「・・・いいから服を着てこい」
シエル「・・・ですが」
カイト「今度は勝手に出て行ったりしねえよ」
カイト「いいから行けって」
シエル「・・・では、お言葉に甘えて」
  シエルは二階の部屋まで服を着替えに行った
カイト「・・・・・・」
シエル「お待たせしました」
カイト「スーツを着ろ!! スーツを!!」
  布で隠せている部分が先ほどと、ほとんど変わっていない
カイト「・・・ってか、どっから出した!?」
シエル「ラインハルト様の書斎にございました」
カイト「(おやじ~・・・!!)」
シエル「どうやらラインハルト様には、そういう趣味がおありだったようです」
カイト「いちいち口に出さんでいい」
  カイトは父の意外な性癖を知ってしまい、頭が変になりそうだった
カイト「・・・・・・」
カイト「とにかく、もう一度着替えてこい」
シエル「・・・スーツにですか?」
カイト「ああ──」
カイト「”スーツに”だ」
  カイトは強く念押しした
シエル「・・・・・・」
シエル「・・・・・・ちっ」
カイト「おい、今舌打ちしたか!?」
  シエルは再び着替えに戻った
カイト「・・・・・・」
カイト(何なんだよアイツは・・・)
  カイトは、ついに頭を抱え始めた
シエル「お待たせしました」
シエル「それでは参りましょう」
カイト「・・・・・・」

〇通学路

〇オフィスビル前の道
シエル「どちらへ行かれるのですか?」
  カイトは目的地のコンビニを指でさした
シエル「あれは・・・・・・」
カイト「そっか」
カイト「お前が住んでるファンタジー世界にコンビニなんてあるわけねえよな」
シエル「ええ」
シエル「ですが、以前にラインハルト様から、いくつか店名を教わったことがあります」
シエル「確か、あの青い看板は────」
シエル「『ローション』」
カイト「違うわ、ボケェ!!」
  カイトは思わず激しくツッコんだ
カイト「はあ・・・・・・」
カイト「今日はもう帰ろう・・・」
シエル「何故ですか?」
カイト「よく考えたら財布持ってくるの忘れたわ」
カイト(そもそもコイツから離れるのが目的だったからな)
シエル「・・・・・・」
シエル「致し方ありません」
シエル「今日のところは引き上げましょう」
  そう言ってシエルは右手を高く上げた
シエル「へいっ、タクシー!」
カイト「だから金ねえっつってんだろ!!」
  その日、ウチの家に女騎士がやって来た
  そして、その日からカイトと女騎士の奇妙な同居生活が始まるのだった

コメント

  • シエルのボケが独特でクセになる感じがいいですね。今のところピントのずれたバカップルみたいになってるけど、ボケとツッコミもほどほどに、いずれは戦うシーンも見てみたいです。

  • 驚きの設定とそれをすんなり受け入れるカイトくん、楽しいですね!残念な頭のシエルさんの言動、面白くてずっと見ていられますねww

  • 最初は鬱陶しそうにしていたけど一緒にお散歩していたし、ツッコミ入れたりしてるし、100%鬱陶しいと思っている感じでは無さそうなので、これから良いコンビになって行くのではないかなあと思いました😄
    続きが楽しみです!

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