読切(脚本)
〇高級住宅街
優人「今日はありがとう、来てくれて」
香織「いいの、ずっとご挨拶したいって私言ってし」
優人「(今日は、俺の彼女を自分の両親へ紹介する日だ)」
優人「(今までタイミングが合わなかったのがようやく叶った)」
優人「(香織とは将来結婚を考えている)」
香織「私・・・恰好とか大丈夫かな?」
優人「そんなに緊張しなくても、いつも通りにしてたら大丈夫だって」
優人「あ、着いた ここが俺の実家」
香織「緊張する・・・」
〇一軒家
ピンポーン
???「はい」
優人「母さん、俺だよ 開けて」
優人母「優人ね、待ってたわよ」
パタパタパタ ガチャ
優人母「優人、おかえり」
優人母「香織さんも、優人から話は聞いてるわ いらっしゃい」
香織「はい あ、これ粗末なものですが」
優人母「あら、ありがとう」
優人母「立ち話もなんだし、さぁ入って」
〇おしゃれなリビングダイニング
優人父「おお、優人か 香織さんもいらっしゃい」
優人「父さん久しぶり」
香織「はじめまして 優人さんとお付き合いしている香織といいます」
挨拶はつつがなく進んでいき・・・
ガチャ バタバタ
優人弟「ただいまー あれ」
優人「おかえり」
優人弟「あれ、兄貴?・・・と」
香織「はじめまして」
優人弟「はじめまして」
優人弟「あれ、兄貴が彼女連れてくるの今日だっけ?」
優人「そうだよ」
優人母「もう、アンタは早く着替えて部屋に行ってなさい」
優人弟「はい!了解です 香織さんごゆっくり」
バタバタ
香織「(ちょっと優人!優人って弟いたの?)」
優人「(あれ、言ってなかったっけ?)」
香織「(聞いてないよ!ビックリしてめちゃくちゃ緊張しながら挨拶しちゃった)」
優人「(自然だったけどなー)」
香織「(もう!)」
〇おしゃれなリビングダイニング
数時間後
優人「父さん、母さんそろそろ・・・」
優人母「あら、もうこんな時間」
優人父「母さんは喋りすぎだ」
優人父「香織さん、今日は来てくれて本当にありがとう」
優人父「優人をこれからもよろしく頼みます」
香織「はい!わかりました」
優人母「香織さん、今度は香織さんのご両親と一緒に顔合わせ ぜひお願いしますね」
優人父「お、いいね ぜひご挨拶させていただきたい」
香織「はい、ぜひ 私の家族も喜びます」
優人「香織、電車の時間あるから駅まで送ってく」
香織「うん、ありがとう 今日はお邪魔しました」
〇高級住宅街
優人「香織、ごめんな 母さん喋ると止まらなくて」
香織「全然!優人の昔の話たくさん聞けたし 特にあの話・・・」
〇おしゃれなリビングダイニング
優人母「香織さん、このアルバム見て見て 優人の小さいころの写真なんだけど」
香織「え、どれですか!?見たいです!」
優人母「この写真、優人が小学生のときマラソン大会で悔しがっててねー」
香織「かわいいー!!」
優人父「盛り上がっとるが、いいのか?」
優人「大丈夫・・・」
〇高級住宅街
香織「あの写真可愛かったよ」
優人「早急に忘れてくれ」
香織「いやいや、それにしてもいい家族だったなー さすが優人のご家族」
優人「香織のご家族もこの前会ったけど、いい家族じゃないか」
香織「ありがとう」
香織「じゃ、駅すぐそこだからここまでで大丈夫」
優人「気をつけてな」
優人「(さて、戻るか)」
優人「(かりものの家に)」
〇一軒家
ピーンポーン
優人母「はい」
優人「俺だよ、開けて」
〇おしゃれなリビングダイニング
優人「ただいま」
優人母「おかえりなさい・・・どうでした?」
優人「はい、問題ありません」
優人「今回の依頼は、以上で終了です」
優人母「End of the hydrangea. 今回はご依頼誠にありがとうございました」
優人「(今回香織に会わせた俺の家族は、本当の俺の家族じゃない)」
〇施設の入口
(本当の家族は、俺を捨てた)
(幼少期から、ずっと施設で育ってきた)
(他人には頼るまいと生きてきた俺だが・・・)
〇美しい草原
(大切な人ができた)
〇おしゃれなリビングダイニング
優人「(本当は香織に嘘をつきたくなかった)」
優人「(ただ、香織と香織の家族は仲がすごくいいこと)」
優人「(香織が俺の家族と会いたがってくれていたこともあって)」
優人「(本当のことを言い出せなかった)」
優人「(いつか絶対ばれることなのに)」
優人母「以上をもって、本日の劇団「紫陽花」のサービスは終了です お疲れさまでした」
優人父「お疲れ様でした」
優人弟「お疲れ様でしたー」
優人「(この人たちはネットで、演技のお仕事なんでもやります!と書いてあった劇団の人だ)」
優人「(ここの家、アルバムの写真、思い出話は全て事前に用意した小道具だ)」
優人「あの、そういえば」
優人母「はい、なんでしょう?」
優人「香織のご両親と顔合わせの約束しようとしてましたけど、あれってどういうことですか?」
優人「聞いてないんですが・・・」
優人母「こういうのは早いほうがいいかと思ったのと・・・」
優人母「下世話な話ですけど、追加で仕事もらえるかなと思いまして」
優人「なるほど」
優人母「では、またよろしくお願いいたします 失礼します」
優人父「うちのボスは、経営が傾いてる劇団の運営に必死で仕事第一だが」
優人父「優人くん、僕個人としては君と香織さんがうまく結婚できるよう祈ってるよ」
優人「・・・!ありがとうございます」
優人弟「俺も、優人さんのこと応援してるっす」
優人弟「俺劇団の仕事なかなかなくて、でも今回優人さんの弟役演じるのすげー楽しかったです」
優人弟「演劇の楽しさ再認識しました!」
優人弟「なので次回以降も仕事よろしくお願いします! 失礼します」
優人「は・・・はは」
〇駅前広場
・・・
プルルルル
電話の声「はい、こちら、」
香織「あの!先月ご依頼させていただいた葉山と申します」
電話の声「あ!葉山様ですね 先月はどうもありがとうございました」
香織「今度両家の顔合わせするかもしれません もう一度お願いしたいのですが」
香織「「家族代行サービス」を」
電話の声「ありがとうございます」
電話の声「3か月先まで、サービス可能な日程をメールにてご連携いたします」
香織「ありがとうございます よろしくお願いします」
プープープー
香織「(ごめんね優人)」
香織「(私に家族がいなくて、天涯孤独だって分かるとあなたは私に気を使ってしまう)」
香織「(同情心で結婚しようってなるかもしれなかった)」
香織「(だけどそんな気持ちのあなたと家族になりたくない)」
香織「(だから私は)」
香織「(家族を演じてあなたを騙し続ける!)」
〇おしゃれなリビングダイニング
優人「(香織、俺は君と家族になるために)」
優人「(この人たちと偽物の家族を演じきってみせる)」
Fin.
実際、披露宴の列席者をレンタルする人がいますね。この物語のシチュエーションも現実にはありえないとは言えない時代なのかもしれません。二人とも相手を思う気持ちは真実だからこその嘘で、そこが切ないですね。
2人の行末が少し心配になりました。嘘も方便といいますが、私なら事実を知っても受け止めてくれる相手の結婚するかなあと思います。それでも2人は似たような生い立ちだから、最後はお互いを支え合ってほしいですね。
恋人の親への挨拶という、穏やかな幸せの物語かと思いきや、まさかの展開に驚きました。そしてラストには!?
恋愛は個対個でも結婚は家対家になるものだなーと改めて感じさせられました。