誰が為の愛

米子

六話 新たな役割(脚本)

誰が為の愛

米子

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〇黒背景
「はぁ、はぁ」

〇トレーニングルーム
サヤカ「はぁっ」
サヤカ(苦しい、けど)
サヤカ(生きてる!って感じする)
サヤカ(前の事件をきっかけに ジムに入会したのは正解だった)
サヤカ(私に足りなかったのは、運動!)
「いいペースですよ、藤堂さん」
インストラクターの木村「フォームも良くなってます」
サヤカ「はいっ」
サヤカ「”筋肉は努力を裏切らない”」
サヤカ「ですよね!?」
インストラクターの木村「ええ、そうです」
サヤカ「木村さんは」
サヤカ「裏切れないものってありますか?」
インストラクターの木村「うーん」
インストラクターの木村「妻と娘、ですかね」
「あははは」
  あははははは

〇おしゃれな廊下
  はあぁぁあ
サヤカ(なんだろう)
サヤカ(この、ふと沸き起こる虚無感)
サヤカ(明るい気分って どうして持続できないのかな)
サヤカ「ん?」

〇綺麗な部屋
  契約期間満了に伴う更新のご案内
  現在ご入居いただいている
  202号室の賃貸契約が
サヤカ(あぁぁぁ)
サヤカ(死ぬほど面倒くさい)
サヤカ(動かなきゃいけないって)
サヤカ(頭では分かってるんだけど)
サヤカ「はぁ」
サヤカ「あとで考えよ」

〇綺麗な部屋
サヤカ(この映画、微妙)
サヤカ(・・・あ)
サヤカ(また虚無感)
サヤカ(なにか、気を紛らわすものがほしい)
サヤカ(現状とかこの先とか)
サヤカ(考える余裕すらなくなるもの)
サヤカ「はぁ」
  直人がこの部屋に戻ってくる可能性は
  1%もないんだろうか
サヤカ(不安な状況の中で)
サヤカ(私を、思い出す瞬間ってないの?)
  直人は憎い、でも
  会いたい
サヤカ(私からは嫌だ)
サヤカ(直人から望んでほしい)
サヤカ(連絡、したくなるような)
サヤカ(そんな”付加価値”が)
サヤカ(私にあれば)
  ミタカを──
  捕まえられれば
  世間にとっても、直人にとっても
  ”価値”のある人間になれる?
サヤカ(──結局)
サヤカ(あいつをどうにかするしかないのか)
サヤカ(そういえば、事件の新しい情報って)
  強盗殺人事件 男2人を逮捕
  夫殺人未遂の妻、ビルから転落死
サヤカ「ん」
サヤカ「ない!?」
サヤカ「情報が、全然更新されてない」
サヤカ「人が亡くなってるのに」
サヤカ「もう次のニュースに消されてく・・・」
サヤカ「なんか」
サヤカ「人生って何なんだろ」
  新着通知:ミタカ
サヤカ「びっくりした、もう何!?」
サヤカ「明日?」
サヤカ「急だな」
サヤカ「まぁ」
サヤカ「暇なんだけどね」

〇遊園地の広場
サヤカ「で」
サヤカ「なんでこの場所?」
ミタカ「呑気なサヤカには分かんないだろうけど」
ミタカ「カフェとかの会話って意外と周囲に 聞こえてるんだよね」
ミタカ「こういう所の方が」
ミタカ「込み入った話に 適してるんじゃないかなって」
サヤカ「へぇ」
ミタカ「それにいいじゃん」
ミタカ「ジェットコースター乗りたいし」

〇ジェットコースター

〇ジェットコースター
「サヤカー!」

〇観覧車の乗り場
ミタカ「ほら、早く」
サヤカ「待って」
サヤカ「さっきので酔った」
ミタカ「馬鹿真面目にハンドル回すからだよ」
サヤカ(あんたが競争って言ったからでしょ)

〇観覧車のゴンドラ
ミタカ「おー! 壮観だね」
サヤカ(疲れた)
サヤカ(何なのよ、この時間)
ミタカ「はい、サヤカ」
サヤカ「何? 急に」
ミタカ「これ、どこのかわかる?」
サヤカ「どこのって、このパッケージ」
サヤカ「・・・TPNマート?」
ミタカ「正解」
ミタカ「有坂は」
ミタカ「TPNのバイヤーなんだ」
ミタカ「今は半生菓子の部門だね」
サヤカ「え! そうなの?!」
サヤカ「すごいじゃない」
ミタカ「ここで本題」
ミタカ「サヤカには」
ミタカ「有坂と仕事での接点を持ってほしい」
ミタカ「極力自然な形で接近して」
ミタカ「そこから関係を深めて情報を集めてほしい」
サヤカ「言うのは、簡単だけど」
サヤカ「相手は三大コンビニのひとつでしょ?」
サヤカ「さすがに無謀な気が」
ミタカ「サヤカ、食品部門だよね?」
ミタカ「プレゼンでも仕掛けて頑張ってよ」
ミタカ「こっちもサポートするからさ」
サヤカ(最近落ち着いてると思ったのに)
サヤカ(またわけ分かんないこと言いやがって!)
サヤカ(だいたい、家とか職業とか 結構情報持ってんじゃない)
サヤカ(あと何が知りたいの!?)

〇マンションのエントランス
  有坂・・・
  悪い人には見えなかったけど

〇観覧車のゴンドラ
サヤカ「あんたが」
サヤカ「そこまで有坂を憎む理由って何なの?」
ミタカ「・・・・・・」
サヤカ「それを聞く権利はあるでしょ?」
ミタカ「復讐だよ」
ミタカ「僕から」
ミタカ「大切な人を奪った復讐」
サヤカ「奪った、って?」
サヤカ「殺されたってこと?」
サヤカ「どうせ」
サヤカ「また嘘なんでしょ?」
サヤカ「・・・・・・」
ミタカ「・・・・・・」
サヤカ「本当、なの?」
ミタカ「どっちにとってもいいよ」
ミタカ「僕の事はどうだっていいんだよ」
ミタカ「サヤカは 役割を果たしてくれればいい」
サヤカ(相手は大手企業)
サヤカ(関わるとしたら やる事が山ほど出てくる)
サヤカ(自分の事なんて──)
サヤカ(考えられなくなるくらいに)
サヤカ「──分かった」
サヤカ「やる」
ミタカ「今回は物分かりがいいんだね」
サヤカ「こっちにも利益があるから乗るだけ」
ミタカ「じゃあこれあげる」
ミタカ「最近の直人だよ」
ミタカ「サヤカが渋ったら」
ミタカ「直人を使ってどうにかしようと 思ってたんだけど」
サヤカ「・・・・・・」
サヤカ「よかった、元気そうで」
サヤカ「──返す」
ミタカ「連絡、とってないの?」
サヤカ「当たり前でしょ」
ミタカ「そう」
ミタカ「泣いて土下座で懇願してきたら」
ミタカ「許してやってもいいのに」
ミタカ「なんて、思ってたりする?」
サヤカ「え?」
サヤカ「思ってない」
ミタカ「ほんと?」
ミタカ「自分からは癪だから」
ミタカ「相手から求められたい」
ミタカ「相手が連絡せざるを得ないような」
ミタカ「そんな」
ミタカ「特別な立ち位置を手に入れたい」
ミタカ「こう考えたこと、ない?」
ミタカ「今のサヤカだと、そうだな」
ミタカ「”僕”の逮捕──」
ミタカ「なんて、良い手段かもね」
サヤカ「・・・・・・」
サヤカ「考えるわけ、ないでしょ」
ミタカ「ならいいんだけど」
ミタカ「妙な事は考えないほうがいいよ」
ミタカ「それにさ」
ミタカ「連絡が来ない、って現実がある以上」
ミタカ「相手にとって」
ミタカ「連絡する必要のない人」
ミタカ「ってことなんだよ」
サヤカ「馬鹿らしい」
サヤカ「勝手に人の考え決めつけないでよ」
サヤカ「直人が連絡してくるはずないでしょ」

〇観覧車の上
「そんなこと」
「分かってるよ」

〇遊園地の広場
  僕たちの約束は半年だよね
  のんびりしてられないよ
  あまりにも成果がない時は
  延長も考えるかも
  冗談だって
  じゃ!頑張って

〇雑誌編集部
サヤカ(って言われても)
サヤカ(急に営業かけて 取り合ってくれる先じゃないでしょ)
サヤカ「うーん」
サヤカ(ん?)
サヤカ(そうだ)
サヤカ(この前の●■株式会社って)
サヤカ(TPNマートと取引あるはず)
サヤカ(直接じゃなくても)
サヤカ(ここを介して接点が持てれば──!!)
「藤堂さん、まだかかりそう?」
サヤカ「もう終わります」
先輩の藤木「なんかトラブル?」
サヤカ「いえ、実は」
サヤカ「●■への提案に悩んでて」
先輩の藤木「ああ」
先輩の藤木「あと一押しなんだって?」
サヤカ「そこなんですけど」
サヤカ「実は」
サヤカ「TPNへの参入を見据えた 提案をかけたいんです」
先輩の藤木「えっ、TPN?」
先輩の藤木「それは、部長とかにも 許可とらないとまずいかも」
サヤカ「ですよね」
先輩の藤木「色んな取引先から話きくけど」
先輩の藤木「TPNへの参入は倍率高いと思うよ?」
サヤカ「それでも」
サヤカ「やってみたいんです!」
サヤカ(正確には)
サヤカ(やるしか、ないんですよ)
先輩の藤木「藤堂さん」
先輩の藤木「分かった」
先輩の藤木「俺、明日部長に話しとくよ」
サヤカ「ありがとうございます!」
  よし! そうと決まれば
  市場調査も情報収集も
  徹底的にやるわよ

〇コンビニの店内

〇デパ地下

〇綺麗な会議室

〇空
  社内プレゼン当日

〇大会議室
サヤカ「以上が」
サヤカ「●■株式会社へのご提案内容です」
先輩の藤木「もしもTPN案件が確定した際には」
先輩の藤木「発注等、私もサポートしながら 進めて参ります」
部長「開発プロセスに寄り添うという」
部長「付加価値を付けた原料提案、か」
サヤカ「いかがでしょうか?」
部長「お二人はどうかな?」
上司「悪くないのでは」
上司「提案の価値があると思いますよ」
部長「よし」
部長「じゃあその案で行ってみなさい」
部長「頼もしいじゃないか、藤堂さん」
部長「期待しているよ」
サヤカ「はいっ」
部長「あれ、飲み会は今日だよな?」
上司「ええ、7時から駅前です」
部長「じゃあ皆も遅くならないようにな」

〇大衆居酒屋
「お疲れ様でーす!」
「そして」
「恩田さん、結婚おめでとうー!」
サヤカ「花束は皆から」
サヤカ「プレゼントは営業からね」
同期の恩田「わー!」
同期の恩田「ありがとうございます!」
部長「ウェディングブーケって感じだねえ」
部長「式も楽しみにしてるよ」
同期の恩田「はい!」
同期の恩田「あ、でも」
同期の恩田「ブーケだったら私よりも」
同期の恩田「はい、サヤちゃん」
サヤカ「え」
同期の恩田「次はサヤちゃんの番だからね」
サヤカ「あー・・・」
部長「お! 藤堂さんもそろそろか?」
サヤカ「いや、その」
サヤカ「実は私」

〇大衆居酒屋
「え---!?」
同期の恩田「別れちゃったの!?」
部長「そうか、残念だなぁ」
サヤカ「すみません、こんな明るい場で」
同期の恩田「もったいない」
同期の恩田「長く付きあってたのに、なんで?」
サヤカ「まぁ~、そこは色々」
同期の恩田「そっか」
同期の恩田「じゃあ」
同期の恩田「誰かいたら紹介するね」
サヤカ「ありがと」
後輩の持田「料理きましたよー」
同期の恩田「あ!」
同期の恩田「私の元彼どう?」
同期の恩田「今彼女いないみたいだし」
サヤカ「え!?」
サヤカ「いや、いいって」
同期の恩田「なんで?」
サヤカ「なんで、って」
同期の恩田「だって」
同期の恩田「これからどうすんの?」
サヤカ「え」
サヤカ「っ・・・」
同期の恩田「サヤちゃんって」
同期の恩田「はっきり言葉にしないから」
同期の恩田「どうしたいのか よく分からない時あるんだよね」
同期の恩田「優しすぎる? からなのかなぁ」
同期の恩田「そういうとこ、変えたほうがよくない?」
部長「いいじゃないか藤堂さん!」
部長「お願いしちゃいなさいよ」
同期の恩田「試しに3人でご飯だけ行ってみようよ」
同期の恩田「平日の夜がいいかな」
同期の恩田「あ・・・」
同期の恩田「サヤちゃんは忙しい?」
部長「仕事なんか、後回しにしなさい」
部長「藤堂さんも、もっとね」
部長「普通の幸せ目指して頑張んなさい」
部長「ねえ!?」
上司「部長! 飲みすぎです!」
同期の恩田「ほらほら、部長もそう言ってるし」
サヤカ(・・・ここを)
サヤカ(切り抜ける方法は)
サヤカ(酒しかない)
サヤカ「藤堂サヤカ! 飲みまーす」
「おー!? 何だ!?」
サヤカ「あはははは」
  ははは

〇駅のホーム
  はぁぁぁぁ
通行人「チッ、気をつけろ」
サヤカ(はぁ!?)

〇街中の階段
  なんか
  もう色々無理な気がする
サヤカ(私なんかが)
サヤカ(この先、誰かを愛したり)
サヤカ(愛されたりすることって)
サヤカ(ある?)

〇大衆居酒屋
  あの時
  本当は
  悲しかったのに

〇街中の階段
  笑うしかできなかった
サヤカ「うっ」
サヤカ「直人」
  助けて
サヤカ「ぐっ」
  誰か!
  助けて!!
  着信:ミタカ
サヤカ「はい?」
ミタカ「プレゼン、どうだった?」
サヤカ「・・・通ったよ」
サヤカ「来週先方にアポとる」
ミタカ「へえ、すごいじゃん!」
サヤカ「こんな事くらいしか」
サヤカ「できないから」
ミタカ「サヤカ、頑張ったんだね」
サヤカ「・・・そうよ」
サヤカ「頑張ってんのよ、私だって」
サヤカ「頑張ってるけど」
サヤカ「うまくいかない」
サヤカ「皆みたいに」
サヤカ「できない」
サヤカ「っう」
ミタカ「え、泣いてんの?」
ミタカ「一人で?」
ミタカ「またやけ酒で号泣? やめなよ」
サヤカ「・・・・・・」
サヤカ「泣いてないわよ!」
ミタカ「大丈夫だよ、サヤカ」
サヤカ「え?」
ミタカ「何で泣いてんのか分からないけど」
ミタカ「サヤカは大丈夫」
サヤカ「ミタカ・・・」
ミタカ「じゃあ、この調子で!」
サヤカ(はぁ)
サヤカ(勝手な奴)
サヤカ「でも」
サヤカ(今は、少しだけ)
サヤカ(こいつに救われた)

〇空

〇オフィスビル前の道
  1週間後

〇小さい会議室
サヤカ「具体的には弊社の原料をご使用頂いた際の」
サヤカ「市場調査や官能評価のデータを」
取引先の人「すみません」
サヤカ「いえ」
取引先の人「あー、ここか」
取引先の人「藤堂さん、申し訳ないんですが」
取引先の人「10分程席を外しても大丈夫ですか?」
サヤカ「もちろんです」
取引先の人「楽にしててください トイレや水分など、ご自由に」
サヤカ「ありがとうございます」
サヤカ(ふぅ、緊張する)

〇女子トイレ
サヤカ(書類もあと半分くらいだし)

〇施設の廊下
サヤカ(間延びしすぎないようにして)
  火災です 火災です
サヤカ「え!?」
  えぇえええ?

コメント

  • 今回は3話くらいをイッキ読みしたかのような気分です。サヤカに色んな展開があってオオ~と思いましたが、最後には緊急事態発生だなんて…目が離せません。

  • サヤカさん、すっごいストレスフル……
    心の内から湧き出る不安感と、外部からの無神経な対応、こんなのに挟まれたら……。サヤカさんの心情が、ひしひしと伝わってくるようでした。そんなサヤカさんの心の内を見透かしたような言動のミタカさん、彼女の本音部分が物凄く気になります!

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