山田しかいない世界

はちねこ

天国と地獄のジェットコースター(脚本)

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〇開けた交差点
吉蔵「俺は吉蔵(よしぞう)。 同級生で、幼馴染の山田と会う約束をしていたのに・・・」
吉蔵「おふくろ、親父。 おはよー」
山田「おはよう、よしぞう」
山田「おはよう、よしぞう」
吉蔵「ん?おふくろ若くね?」
山田「やあね、私はいつもこうだよ? 今日、山田くんと遊ぶんでしょ?」
吉蔵「そうだけど・・・ おやじ、山田にそっくりじゃん どうしたんだよ」
山田「ん?男性はだいたいこんなもんだろ。 馬鹿なこと言ってないで、山田くんと遊んできなさい」
山田「おはよう、よってぃー」
山田「ごめーん、待たせちゃって! 行こっか!」
山田「ごめーん、その辺ちょっと滑ってたんだー!」
山田「よってぃー、行こっか」
吉蔵「意味わかんねえ。 なんで、家から出たらお前しかいないの?」
吉蔵「なんで大量発生してんの ポ○モンじゃないんだからさ」
吉蔵「お前だけなら、女子はいねぇのか・・・」
山田「よしぞう〜、私かわいい?」
吉蔵「な、山田が女子に!? これはこれでアリだな・・・」
吉蔵「いや、何考えてるんだよ俺・・・」
山田「ちょっと! その女誰よ!?」
吉蔵「なんで昼ドラ展開迎えなきゃなんだよこのヤロー」
山田「ふふっ・・・ お姉さんと、デートしよっか」
吉蔵「やばいな、すげータイプだなお姉さん。 いやいや、これは山田・・・」
  きっと、なんか・・・おおがかりな、ドッキリか何かだろう、と思っていた自分を呪いたい。

〇渋谷駅前
  山田たちを引き連れて、歩く。
  
  だれもかれも、山田。
  『では、次のニュースです』
  ニュースキャスターも山田。
  『続いて、新成人を迎えたみなさんです』
山田「俺もついに、20歳となりました!」
  新成人というか、山田。
  
  強いて言えば、成人式のときの山田。
  山田。
  山田(スーツの色変えただけじゃねぇか)
  山田・・・
  もうこれ、山田コレクションできるぞ
  どうあがいても山田。

〇店の入口
  いつの間にか来ていたレストラン。
山田「いらっしゃいませ、お客様! 何名か分かりませんが、シェフ大喜びの人数ですね!シェフー!!」
山田「どうした? おっ・・・こりゃ、腕がなるってもんだ。 少々お待ちを・・・!」
「きゃー!!」
山田「どうなさいました、お客様・・・? っ!死んでる・・・」
山田「みなさん! 動かないでください!」
  料理店ですら、どうあがいても山田。
  
  しかも事件じゃねぇか。どうすんだよ
山田「(ペロッ・・・)これは・・・青酸カリ!?」
山田「え、でも一体誰が・・・ というか、なんで舐めて分かるんですか!?」
山田「そいつぁ、名探偵の山田だ」
  でしょうねえ、というかどうあがいても山田ぁ・・・
山田「犯人は・・・貴方です!!」
山田「な、私!? 私は何もしてないです!」
山田「んと、じゃあそこの貴方です」
山田「え、おいらそんな・・・難しことできねえだ」
  まさかの勘で当てていくタイプか。
  
  完璧、濡れ衣じゃねえか。
  迷探偵だろこれ。
  
  迷宮入りまで秒読みだぞ、どうすんだ
山田「それはそうと、おめえのて、白いど」
山田「これは、ケーキとかにかかってるよくわからないオシャレな粉が、いつものフーフーする癖でついちゃって・・・」
  ああ、アレな。
  
  お菓子とかによくかかってる、オシャレなアレ!粉砂糖!
山田「じゃあ、なめてみそ?」
山田「えっ・・・」
山田「舐めたら、甘えはずだ。 なんで舐めねえだ。 やましいことでもあるのか」
山田「くっ・・・ バレたら仕方ない」
  証拠をなんで、分かりやすく残したんだよ。
  
  馬鹿なの? それとも優しさ?
  てか、探偵無能じゃねえか。
  
  田舎っぺのが一枚上手だな。
山田「仕方なかったんだ・・・ そいつは、俺の彼女を・・・寝取ったんだから」
  胸糞展開じゃねえか。
  
  それならしゃーないわな。じゃなくてさ
山田「おめー・・・だがらって、人やっちまうのは違うだよ」
山田「初めてできた、彼女が・・・ ねとられて!! 裏切られる気持ち! 分かるんですか、あなた!」
山田「わがるよ」
山田「えっ・・・」
山田「おいらはな、嫁、守れながった。 病気で、なくなっちまっただ」
山田「・・・」
山田「大事なもんを、理不尽に奪われる気持ちは、いてぇほどわかるよ」
山田「でも、おめさあ。 自分がされて嫌なこと、人にやったらだめだど」
山田「誰かからみたクソ野郎でもな、誰かにとっての大事な人だ」
山田「!! ああ・・・自分は、なんてことを・・・」
山田「つぐなえ。 その命の限り、つぐなえばいいだ」
山田「そしたら大丈夫だあよ。 いけ、おめの行き先に」
山田「ああ・・・ありがとうございます・・・」
  どこか、悟りを開いた犯人。
  
  そのまま、連行されちまった。
  てかこの田舎っぺのおかげで、
  なんかいい感じに終わったんだが。
山田「いやー、僕が出るまでも無かった・・・ 彼のおかげで、事件は解決した。 みんな、今事件の名探偵に拍手を!」
  拍手がなる中、おめは普通に働いた方がいいど、と正論をかましていた。
  
  それに関しては、激しく同意する。

〇川に架かる橋
  所変わって、見慣れたうちの近くの住宅街。
  
  なにも起こらないといいけど・・・
山田「火事です! 住民の皆さんは速やかに避難してください!」
  起きちまったよ事件。
  
  ここって米○町なの?
  帰ったら、住民票移さねえとな。
「すみません、うちの引きこもりのたかしがまだ・・・」
山田「大変じゃないですか!場所は!?」
「もう、無理だと思います。 いっそのこと、社会のごみを燃やす機会だと思えば大丈夫ですかね・・・」
山田「お母さん、滅多なこと言うもんじゃないですよ! どんなであれ、あなたの子供です」
山田「まあ・・・あとで上官に説教くらうのと、始末書やらたくさん書かなきゃなんで、それが嫌です!」
  あらまあ正直ぃ!
  
  んでもって、お互いサイテーだぞ。
  てか最後ぇぇ・・・
「うちは、四階の部屋です。でも、もう・・・」
山田「いえ、行きます。 助かる可能性はまだある! 始末書やら書きたくない!行ってきます!」
  わーい、なんだかんだ最低ぃ。
  数十分後。
  
  誰もが、彼と息子の生還が厳しいと諦めかけていたその時。
  奴と、毛布にくるまれた息子らしき人物が火の海から現れた。
「ああ・・・たかし・・・ ごめんよ、お母さんだけ逃げて・・・」
山田「息子さん、少し危ない状態なので担架に乗せます」
「ありがとう・・・」
  なんだかんだ、いい展開・・・
  
  そして、ほどなくして鎮火。

〇繁華な通り
  もう俺は疲れた。
  
  今度こそ帰るんだからな。
  ただ、無事鎮火したとはいえ安心できない。
  
  回り道をする他ない。
山田「俺が来たら、もう大丈夫ですからね! もうすぐ救急車も来るからね!」
山田「う・・・あ・・・死ぬ・・・」
  だろうねえ、死ぬぞおい。
  
  救命士がいるのになんで、死亡フラグたってんだよ。不安しかないよ、まったく・・・
山田「んと、心臓この辺だから・・・えいっ!」
山田「ゔぁあぁああ!!!!」
山田「あれ、違うの? どうしよ、時間ないなあ」
山田「心臓マッサージって、アンパン漢のアレがちょうど良いテンポなんだよね」
  いやもう、お前は何もするな。
  
  そっちのほうが生存確率上がるだろ。
  てか呑気だなあ!
  
  こんな状況で歌うやついるわけ・・・
山田「呼ばれて飛び出りゃ死にかけBOY! 危うくレクイエムかまそうとした俺やばいぃ!YEY!」
山田「あ、あなたは・・・ 伝説のラッパー、ダンタリオン!?」
  なんかお呼びじゃねぇの来たぞ。
  
  余計やばそう、逃げて、超逃げて。
山田「その少年の魂に、また火を灯すぜ。 背中くらい、貸すぜBrother」
山田「ありがとうございます! 今は、一刻も争います。お願いします・・・!」
山田「おけ! じゃあいくぜ・・・ 少年への讃美歌!アンパン漢!」
  いやこの間のやり取り、無駄ぁ!
  
  救急車早く来てくれ頼む。
山田「ああ、ああ、アンパン漢ー優しいYOUはぁー♪ いかなくていい、自分のためにもっといーきろー!」
山田「何がYOUのしーあわせ? 何をしーてよろこんぶー?YEY! 分からないまーま終わるー」
山田「そーんなのは、嫌だぜBabyー 忘れないで、Dream On! 零さないで、Tier・・・」
山田「だから!俺は!逝くんだ、どーこまーでも!YEY!」
  ピーポー、ピーポー
  聞き覚えのあるサイレン。
  
  これで彼は・・・
山田「ダンタリオンさん、ありがとうございました!」
山田「これくらい、お安い御用ってもんよ・・・」
山田「現実は・・・はあ・・・地獄・・・」
  少年なんとか息してる、やったぁ。
  
  でも、最後に発したのは真理だな。
  救急車から、ほんとの救命士が降りてきた。 今度からは、わからないのに無理して救命活動しなくていいからね、と諭される。

〇明るいリビング
  あれ、俺・・・あの地獄から抜け出せたのか?
おかん「おはよう、よしぞう。 随分うなされてたけど、大丈夫?」
吉蔵「おふくろ・・・!」
オヤジ「おお、起きてきたか、よしぞう」
吉蔵「オヤジ・・・!」
おかん「あらあら、よっぽど酷い夢を見たんだね。 でも、大丈夫よ」
オヤジ「そうだぞ。 今日、山田くんと遊ぶって楽しみにしてたじゃないか」
吉蔵「!!そうだ、山田! こんなことしてる場合じゃない。 いってきます!」
  玄関から出て・・・
山田「おはよう、よしぞう」
吉蔵「や、山田ぁ・・・」
山田「うお、どうした! なんかやなことあったんか?」
吉蔵「いや・・・ 道中話す」
吉蔵「取りあえず、普通の世界で良かったよ・・・」
山田「どんな夢見たんだよ・・・」
山田「まあ、今日はパーッと遊ぼう!」
吉蔵「おう・・・ありがとな・・・」
  その後行った飲食店で、山田にくりそつのシェフがいて叫んでしまったのは・・・
  
  仕方ないよな・・・
  END

コメント

  • 最後に鏡を見たら自分の顔も山田というオチかと思ってワナワナしてたら夢オチでホッ。でもお父さんは山田のままの方が髪の毛があったかくてよかったかもでしたね。

  • おじいよかった!!おじいキャラよかったよ!あえて同じ名字と人物で世界がどんどん進んでいきながら、人同士の会話とか家庭事情が複雑な家とか、ラップの人とかところどころグッと心を掴まれる展開がたまらなかったなぁ。名字シリーズ展開したら追っかけます!!

  • よっぽど友達の山田君となかいいでしょうねえ! こんな夢はみたことないんですが、今日寝る時に好きな俳優さんがこんな形で夢にでてくれたらいいなあ。

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