魔王、タップノベルのコンテストに応募してみる(脚本)
〇闇の要塞
☆☆☆☆☆
魔王、タップノベルのコンテストに応募してみる
☆☆☆☆☆
〇貴族の応接間
参謀「陛下 何を焦っておいでなのです?」
魔王「うるさい! 6時間後が締め切りなのだ!」
魔王「見よ」
参謀「タップノベルのコンテスト?」
魔王「異世界の投稿サイトだ 小説を募集しておる」
魔王「その締切が11月30日の24時なのだ」
参謀「11月30日の24時・・・」
参謀「6時間後ではないですか!?」
参謀「もしかして、それで焦って・・・」
魔王「ひと月も前から いろいろと考えていたのだ」
魔王「だが・・・」
魔王「何も思いつかぬ」
参謀「魔王様 そんなことよりも 今は王国の防衛を」
魔王「そんなこと?」
魔王「貴様、今『そんなこと』 と言ったな」
〇雷
〇貴族の応接間
参謀「ぐえっ!」
魔王「イライラする あぁっ!」
魔王「イライラする」
魔王「魔物A、来い」
魔物A「はい、陛下」
魔王「あいつを連れてこい」
魔物A「あいつ、と申しますと」
魔王「姫だ 囚われの姫だ! 今すぐ連れてこい!」
〇牢獄
魔物A「来い! 陛下がお呼びだ」
〇貴族の応接間
魔王「来たか」
魔王「うーむ イメージがわかぬ」
魔王「まっ!」
魔王「うむ、これでいいだろう」
魔王「おまえもだな」
魔王「まっ!」
魔王「・・・」
魔王「まだ違う、なにかが違う そうだ・・・」
魔王「まっ!」
〇オフィスのフロア
囚われの姫「いったい何を?」
魔王「その・・・ 物語を紡いでみようかと・・・」
囚われの姫「物語?」
魔王「なんだその目は」
魔王「くだらないお遊びだと言いたげだな」
囚われの姫「違いますわ」
囚われの姫「むしろ素敵だなぁって」
魔王「っ?!」
魔王「笑わないのか? 魔王が小説を投稿しようとしているのだぞ」
囚われの姫「素敵じゃないですか」
魔王「そ、そうか・・・」
魔王「だが思いつかぬ」
魔王「ある程度、構想はできておるのだ しかしだ・・・」
囚われの姫「どんなお話なんですか?」
魔王「おふぃすらぶ、だ」
囚われの姫「・・・」
魔王「笑うな!」
魔王「分からぬのが 男が女に愛をささやく場面だ」
囚われの姫「やってみましょうか? 私でよろしければ」
そう言って、
囚われの姫は、私の腰に手を回した
囚われの姫「ではどうぞ 愛をささやいてください」
魔王「おい、女! 俺のものになれ!」
囚われの姫「違いますわ」
囚われの姫「そういう時は 『月が綺麗ですね』 と言うのです」
魔王「月が・・・」
囚われの姫「そして、くちづけするのです」
魔王「っ!!」
魔王「そなた、物語を紡いだことがあるのか?」
囚われの姫「ありません でも・・・」
魔王「でも?」
囚われの姫「思いを馳せることはあります たとえ、異世界の男女であっても」
囚われの姫「牢獄は暇ですから」
魔王「そうか・・・すまなかった」
囚われの姫「そんなことはいいんです 早く続き書いてください 時間ないんでしょ?」
〇教会
〇オフィスのフロア
囚われの姫「がんばってください! あと2時間、切っちゃいましたよ」
ドタドタドタ──
魔物A「陛下、大変です! 勇者どもが攻めてまいりました」
魔王「なんだと?」
魔王「いたしかたない」
囚われの姫「待って! もうちょっとで完成でしょ?!」
魔王「しかし行かねばならん」
囚われの姫「ここが正念場なのに!」
魔王「誰しも役割というものがある 私は私の役割を全うせねばならぬ」
囚われの姫「・・・」
〇謁見の間
魔王「勇者よ、 相談なんだが・・・」
ゆうしゃ「この期に及んで命乞いか、魔王!」
魔王「この対決、明日にしてくれぬか?」
魔王「せめてあと半日後」
魔王「時間がないのだ、私には」
ゆうしゃ「断る」
魔王「仕方ないな ならば瞬殺するまでだ」
魔王「究極魔法!」
〇雷
〇謁見の間
ゆうしゃ「ぐぅ・・・」
魔王「死んだか あっけないな、勇者とあろう者が」
魔王「さっさと戻って続きを・・・」
ゆうしゃ「待て魔王!」
ゆうしゃ「まだ、まだ終わっちゃいない」
魔王「立ち上がらなくともよいのに・・・」
ゆうしゃ「魔王、覚悟しろ!」
魔王「続きは明日にしてくれ」
ゆうしゃ「ふざけるな!」
「・・・」
リンゴーン、リンゴーン♪
〇教会
リンゴーン、リンゴーン♪
〇謁見の間
魔王「あぁ、日付が変わってしまった・・・」
ゆうしゃ「何をごちゃごちゃと!」
魔王「もういい、もういいのだ・・・」
ゆうしゃ「死ねっ、魔王!」
グサッ、ドカッ、ドガガ
ゆうしゃ「なんだ、尻すぼみの魔王だな」
ゆうしゃ「とどめをさしてやる」
お待ち下さい、勇者様!
〇黒背景
囚われの姫「お待ち下さい、勇者様」
〇謁見の間
ゆうしゃ「妃殿下・・・」
〇貴族の応接間
魔王「うぅん・・・」
囚われの姫「お目覚めですね、魔王さん」
魔王「勇者は?」
囚われの姫「魔王の玉座で祝勝会中です」
魔王「敗れたのだな、私は」
囚われの姫「はい・・・」
魔王「そなた、参加しないのか」
囚われの姫「このまま あなたを見捨てることなんてできません」
囚われの姫「あと少しではないですか」
囚われの姫「完成させましょう! あなたの物語を」
囚われの姫「そして私に──」
囚われの姫「聞かせてください」
〇朝日
〇時計台の中
〇貴族の応接間
魔王「過ぎてしまったな、締切を」
囚われの姫「ですね」
囚われの姫「ですが、物語は完成しました」
魔王「そなたのおかげだ ありがとう」
魔王「残念だが、 この物語は私だけの宝物に」
囚われの姫「なりません」
魔王「しかしすでに締切が・・・」
囚われの姫「コンテストはただのきっかけにすぎません」
囚われの姫「もっと大切なことがあります」
魔王「もっと大切なことだと?」
囚われの姫「読んでもらうこと それこそが最も大切なのことなのです」
囚われの姫「読んでもらってこそ生きるのです それが物語です」
囚われの姫「届いてこそ、物語と呼べるのです」
囚われの姫「投稿してください たとえ締め切り後でも」
魔王「ううむ」
囚われの姫「ほら」
魔王「わかった」
ポチッ!
〇闇の要塞
〇貴族の応接間
魔王「ドキドキするものだな」
魔王「読んでもらえるのだろうか 私なんかの物語が」
囚われの姫「私なんか? 私なんかなんて言ってはいけません」
囚われの姫「創作はみなに平等です 庶民だろうが、姫だろうが そして魔王だろうが」
囚われの姫「ほら、さっそくコメントが」
魔王「おおっ!」
魔王「なぁ、姫よ」
魔王「私のそばにいてくれぬか? これからもずっと」
囚われの姫「ええ」
囚われの姫「私も──」
囚われの姫「あなたといると楽しいですから」
魔王「私も同じ気持ちだ」
魔王「『月が綺麗ですね』だな そなたの表現を借りると」
私は囚われの姫の腰に手を回した
すると──
囚われの姫は
にっこりと微笑んで──
私の身体を縄で縛った
〇西洋の城
〇牢獄
我が王国は滅びた
いや、正確に言うと
他の魔物が魔王の位を継いだ
今や私は囚われの身だ
だが、かまわない
囚われの姫「元魔王ちゃん」
魔王「なんだ、元囚われの姫ちゃん」
囚われの姫「次の作品なんだけど、どーする?」
魔王「こめでぃ、など どうだろう」
囚われの姫「うん、いいと思うよ 私も考えたげる」
今がずっと幸せかもしれない
魔王と呼ばれていた頃よりも
お わ り
もう設定で楽しすぎます。魔王と囚われの姫がオフィスラブ、という場面で吹いてしまいました。
さらには、生みの苦しみもあり、恋愛要素もありと盛りだくさんですね。
多くのタップライター(希望者含む)の背中を押すステキな作品です。
意外な展開で楽しめました!
まさか、恋愛話だとは笑
魔王だからってタップノベルで小説作っちゃいけない!なんてないですもんね!ぜひ読んで見たいです笑
締め切りに間に合わなくとも、形として残るので、誰かが必ず見てくれます!