読切(脚本)
〇未来の都会
時は西暦3500年・・・
人間社会が崩壊して50年が経った・・・
出生率が低くなっていく人間社会の中で、段々と生殖機能を持たない子供が増えていった。
その数は段々増えていき50年前には、
0(ゼロ)となった・・・
それでも、まだ人間は焦っていなかった
・・・
クローン人間を作り出していたから・・・
〇先住民の村
賢二「クローン人間反対派が戦争を起こしてから世界が変わってしまったな」
佳子「そうね。あれから人間の子供は生まれなくなってしまったわ・・・」
賢二「このままいけば人間が築いた歴史も我々で終わりを告げるんだろうな・・・」
佳子「そうね。悲しいけど・・・」
村長「君達ここにいたのか!!探したぞ!!」
賢二「村長そんなに急いでどうかしましたか!?」
佳子「こんな世の中なのだから焦る必要もないでしょう・・・」
村長「とんでもないものが出来たんだ!!」
賢二「なんですか??」
村長「タイムマシーンが完成したんだ!!」
〇小さな小屋
村長「他の者に聞かれると騒ぎになってしまうからのう。ここで話の続きをしよう」
佳子「タイムマシンって冗談ですよね!?」
村長「違う!!本当なのだ!! もうすでに何度もタイムトラベルを実行している!!」
賢二「何故、私達にそんな話をするのですか??」
村長「折り入って相談があるからだ!!」
佳子「相談って何でしょうか??」
村長「タイムマシンで過去に行って欲しい!!」
賢二「私達よりも若くて体力がある方に行ってもらえばいいんじゃないでしょうか??」
村長「もう何度か試したよ。しかし何も成果は得られなかった・・・ 何故かは分からないが、西暦2023年しか行けなくてな・・・」
村長「時代が離れ過ぎているせいか過去を変えても未来は何も変わらなかった」
村長「後は、昔の人に話しを聞いてみたり、こちらの未来に来てもらって子孫を残してもらうしかないと思っている」
賢二「はぁ。そうなんですね・・・」
村長「そこで君達の出番という訳だ!!」
佳子「どうしてそうなるのでしょう」
村長「西暦2023年の過去で祖先が生きているのを確認出来たのが君達夫婦だけなんだ!!つながりがあれば話を聞いてくれるはすだ!!」
賢二「いきなりの話で何と言っていいやら・・・」
〇住宅街
拳士「今日は晴れてるなぁ〜 どこか行くか?」
健吾「水族館に行きたいな」
春日「最近家にいることも多かったからたまにはいいんじゃないかしら」
拳士「そうと決まったら早速準備して行くぞー!!」
賢二「来てしまったなぁ」
佳子「まっやるだけやってみましょ」
〇水族館前(看板無し)
賢二「やっと見つけた!! すみません待ってください!!」
拳士「わ、私ですか!?」
賢二「そうです。お話があって参りました」
拳士「何かの勧誘か何かですか!? お金なら無いですよ・・・」
賢二「そうじゃないんです!!」
私は家族を待たせている彼を強引に引き留めて事情を説明した・・・
〇都会のカフェ
拳士「事情は分かりましたが、私に協力出来ることはありません。 それに今も半信半疑です」
賢二「そうですよね・・・ お話聞いて頂きありがとうございました」
佳子「信じられないかもしれないけど本当のことなのよ」
拳士「例え本当のことだとしても結論は同じです」
拳士「今は遠い未来の話でしたが、例え数年後に人類が滅びるから協力してくれと言われても同じです」
拳士「未来よりも今の家族と全力で向き合っていきたいと考えています」
拳士「申し訳ありませんが、今の私には協力することは出来ません。 失礼致します」
佳子「失敗だったわね」
賢二「そうだな」
賢二「私達は自分のことしか考えていなかったのかもしれない。 自分が不幸だからって人に押し付けていいものではないな」
佳子「そうねー他にも何か方法があるかもしれないし。 一緒に考えてみましょ」
〇先住民の村
私達は現状を変えることしか考えていなかったのかもしれない
未来を変えることも大事だ。しかし、今と向き合っていくことも同じくらい大事だ。
まだ時間はある。
皆で協力していけばいい
まだ今の時代が終わった訳ではない
未来人限らず、どんな時代の人間も過去に遡って軌道修正したくなることはあるはずです。でも、他の時代の人間を犠牲にしてまで自分たちの時代を救う必要はないということですよね。この物語では両時代ともに合理的で良識ある判断を下せる人たちでよかったです。
途中までは、西暦2023年の人間と協力して未来を変える展開かなーと先読みしていたのですが、気持ちのいい裏切り方をされてしまいました。現在・直近の問題に全力を注ぐ、これは考えてみれば至極当然の考え方ですよね。西暦3500年の未来に幸あらんことを。
この数年、世界的に科学やテクノロジーに頼りすぎる傾向で、その現象が私達人間が本来持つべき本能や文化を少しづつ衰退させているような気がします。時代に合わせて生きていくことも大事ですが、この夫婦のように未来をよりよくするために個々に自覚をもつことも必要ですね。