私の家族はガチャで決まった

らいら

親ガチャ失敗とかよく言うけど、本当に物理で「家族ガチャ」が行われました。(脚本)

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〇カラフルな宇宙空間
  とつぜんだが、宇宙である
ヒカミ「15年かけて頑張って頑張って働いて、お金を3000万ヘル貯めて、そしてやっと高速宇宙タクシーに乗り込み」

〇美しい草原
ヒカミ「この「ソロ星」にやってきた!そして・・・」

〇団地
ヒカミ「天国のような住居を構えた!」

〇シンプルなワンルーム
ヒカミ「ここ、私の部屋!!」
ヒカミ「やったぁぁぁ!さいっこーーーー!!」

〇宇宙空間
  とある星系の隅にある、人工惑星「ソロ星」
  1人で働き、1人で遊び、1人で退場する星である。

〇団地
  住居は、ひとり住まい用のマンション群がずらり。
  隣人も全員1人。お茶会も飲み会も結婚式もない。誰も恋愛・結婚しない。
  病気等で一人暮らしが困難になった場合は、近隣のリユギ星に移ることになるが、それまでは自由。
  他者とのふれあいを拒んだ者たちが、噂を聞きつけて全宇宙から次々と移住してきた。

〇シンプルなワンルーム
ヒカミ「パソコンがあれば宇宙のどこでも仕事できるもんね。納品もネットだし」
ヒカミ「人間の技術の進歩様々だよ!」
ヒカミ「狩猟時代に生まれてたら3日も生き延びられずに死んでるね、私は」
ヒカミ「集団で生きるのがそもそも無理だし」
ヒカミ「血縁の「家族」と暮らすのだって無理だったんだから」
ヒカミ「これで一生対面で人と向かい合わずに生活できる。嬉しいなー」
ヒカミ「ぼっち民としての完全勝利だ!」
ヒカミ「いやっほぅぅううううーーーーーーーー!!!」

〇美しい草原
ヒカミ「は~、まいにちしあわせ・・・・・・」
ヒカミ「ネットに友達いるし、会話はネットでできるもんね」
ヒカミ「この星の住民とは毎日すれ違うから、完全な孤独ってわけでもない」
ヒカミ「それにこの星ではみんなひとりだから、自分だけ寂しいって思わなくて済む。こんなに「ひとり」を愛好する仲間がいる・・・」
ヒカミ「これを最高と言わずしてなにを最高と言うのか? 完璧な未来きちゃったわ・・・」
ヒカミ「うっひょお~~!」
ヒカミ「え? なに? 今の」
ヒカミ「36歳だけどもしかして魔法少女になったのかな・・・?! 私の時代きた?」
総裁ちゃん「だめだよぉ~、そんな星っ!」
ヒカミ「!!??(だれ?)」
総裁ちゃん「えらい!すごい!強い!総裁ちゃんで~~~す!」
ヒカミ「・・・・・・・・・・・!!??」
総裁ちゃん「って、なんかしゃべれよぉ!」
総裁ちゃん「リアクションないとつまらないでしょうが!」
ヒカミ(よっぽどのことがないと他人と交流しちゃ駄目って暗黙のルールだし・・・)
ヒカミ(いや、これは「よっぽどのこと」だ、けど、ここに来てから誰とも喋ってないし声出ねえ!)
総裁ちゃん「とにかく総裁ちゃんはこの星が気に入ったのだ!支配させてもらいま~~す!」
ヒカミ「え?」
総裁ちゃん「シャラララ~ン」

〇綺麗なダイニング
ヒカミ「・・・うっ・・・?」
ヒカミ「こ、ここは・・・家族が集まるような広いリビング・・・?」
ヒカミ「なぜ私こんなところに──」
藍川「・・・・・・・・・・・・・・」
ヒカミ(ひいいいいいーーー人がいるーーー!)
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・ ・・・・・・・ ・・・・・・・・・」
総裁ちゃん「おおおおおおいっ!! なんかしゃべれよぉ! ふたりともー!!」
ヒカミ「あ、あんたは・・・!さっきの変な人!」
ヒカミ「ソロ星の住民登録してない訪問者ですよね。勝手に入っちゃだめですよ」
ヒカミ(おかしいな、審査があって合格した住民しかソロ星に入れないはず・・・)
ヒカミ「とりあえず役所に連絡を」
総裁ちゃん「無駄だぞ~ む~だむだ」
総裁ちゃん「もう総裁ちゃんがこの星を和平的に完全掌握しちゃったから、星のシステムも全部乗っ取ってまぁ~~す」
ヒカミ「え、なにを言って・・・」
ヒカミ「ソロ星は隣のリユギ星の管轄だから、自治権はリユギ星にあるんだけど・・・」
総裁ちゃん「そのお隣の星も~、ぜーんぶ総裁ちゃんのモノっ!」
総裁ちゃん「今までのワンルームの住宅、ぜんぶファミリータイプに作り変えといたから」
ヒカミ「は?」
総裁ちゃん「それで~、ちょうど4で割れる人口だったからランダムで4人ずつに分けておいた」
総裁ちゃん「今日から4人で住んでね。総裁ちゃんが家族つくってあげたんだから、感謝してよね~っ!」
ヒカミ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ヒカミ「わ・・・私の部屋・・・私の部屋は・・・?」
ヒカミ「快適な一人暮らしは・・・?」
総裁ちゃん「泣くほどうれしいの? やったぁぁぁ!」
総裁ちゃん「やっぱり家族ってイイモノだよねええ!本で読んだぞ。絆!つながり!愛ってね!じゃねー!」
ヒカミ「き、きえ・・・た・・・」
ヒカミ「うそでしょ」

〇綺麗なダイニング
  「総裁ちゃん」の言っていたことは、事実だった。
  公式ホームページを開くと、「ソロ星」が「あなたも家族を持てる夢のような星です!」という宣伝文句に変わっていた。
  総裁ちゃんは遠い未知の星から来た、超高次元の能力を持つ人物。一瞬で情報は書き換えられた。
ヒカミ「『彼女は宇宙を旅して、気に入った星に立ち寄って支配する。飽きれば3日で出ていくが』」
ヒカミ「『500年居座って延々とその星をおもちゃにすることもある』」
ヒカミ「『もちろん逆らうことはできない。彼女が逆上すれば、一瞬で星ひとつ消せるーー宇宙ペディアより』」
ヒカミ(絶望しか・・・・絶望しかない!!)
ヒカミ(一人でのびのび暮らすために来たのに。資金をためた私の15年間は一体・・・・・・)
ヒカミ(それに、ランダムで組んだ4人で暮らすって・・・・・・嫌すぎる)
ヒカミ(さっきの人もろくに目も合わさないままリビング出ていっちゃったし)
ヒカミ(私も部屋にひきこもろう・・・)
ヒカミ「個室は4つあるよね?さすがに・・・ははっ」

〇シンプルなワンルーム
ヒカミ「いや元の私の部屋そのまま再現されてるんかい!」
ヒカミ「と、とりあえず・・・よかった・・・私物もそのまま全部あるし個室は4つある」
ヒカミ「もう、ここで暮せばいいだけじゃん・・・ キッチン・バス・トイレとかは共用部分使わないといけないけど・・・」
ヒカミ「よし、「家族」の誰ともこの先一生顔合わせないで過ごそう そもそも家族じゃないし」
ヒカミ「あっ・・・共用部分の掃除どうするのか問題が・・・めんどくせぇ~」
ヒカミ「そもそも4人もいたら、絶対、鉢合わせするよね・・・」
ヒカミ「お風呂に入る時間だけは話し合って決めないといけなくない? ああ~~~もう・・・」
ヒカミ「いや残りの2人も女とは限らないし・・・男だったらどうしよう・・・」

〇白いバスルーム
リュカ「・・・・・・・・」
ヒカミ「・・・・・・・・・・・・・・」
ヒカミ(朝4時なら大丈夫だろうとお風呂に来たものの、もう鉢合わせしました──)
ヒカミ(っていうか、若い!?中学生? ソロ星は自活してる人しか移住できないはずじゃ・・・)
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ヒカミ(・・・あっ)
  風呂を沸かして入った

〇綺麗なダイニング
シャーロット「・・・・・・・・・・・・・」
ヒカミ(その夕方。残りの1人とも邂逅しました──)
ヒカミ(とりあえず全員女子なのはよかったけど、これからどうしたら・・・)
ヒカミ(みんなで一度集まって話したほうがよくない?あの「総裁ちゃん」とかいう奴を追い出す作戦を)
「・・・・・ ・・・・・・・ ・・・・・・・・・」
総裁ちゃん「おーーい!だからしゃべれって!!」
ヒカミ「ヒィ、そんなこと言われても1人になりたいからみんなソロ星に来たのに・・・」
総裁ちゃん「ほんとにコミュ障ってオモロイなー!全世帯みんな避けあって暮らしてるよ!」
ヒカミ「エンタメじゃないんだよ!!」
総裁ちゃん「エンタメに決まってるだろ? この世は総裁ちゃんのための娯楽なんだから」
総裁ちゃん「この星、映画館ないけどどうしてるんだ?よく住めるよな。ファミレスもないし」
ヒカミ「ほっといてよ!映画とかは配信で見るからいいんだよ!ご飯は宅配が充実してる!災害時の備蓄も地下に100年分」
総裁ちゃん「でもなー、さすがに動きがなさすぎるかな。次は男女混合でガチャするか~」
ヒカミ「えっ、ガチャって・・・」
総裁ちゃん「男女比率2対2の家族にしてやろう!本で読んだぞ、家族ってのはそういう感じだって」
ヒカミ「まじでやめて!そんなの大昔の話だから!今は自由の時代!」
総裁ちゃん「え~?じゃあ4人でちゃんと「話し合って」よ?総裁ちゃんを追い出すんだろ?」
ヒカミ「そ、それは・・・」
総裁ちゃん「総裁ちゃんを楽しませてよ!遊び尽くしたら次の星に行くからさっ!」
総裁ちゃん「じゃ、よろ~!」
ヒカミ「行ってしまった・・・」
ヒカミ「話し合っても全部聞かれてるんだよね!?無理すぎない?」
ヒカミ「・・・・・・」
ヒカミ「この星の治安が戻るまで、隣の星に逃げるか・・・」
ヒカミ「移住費用でお金使い果たしたんだったわ」
  次の給料日まで、隣の星に宇宙タクシーで行くことすらできないヒカミだった

コメント

  • 総裁ちゃんの能力や生き方が宇宙ぺディアのとおりなら、能力が高すぎる存在も分かり合える相手がいないからある意味孤独ですよね。人に家族を押し付けて一人で騒いでいるけど、彼女も実は家族というものが欲しいんだったりして。

  • 総裁ちゃんが明るい悪者で笑いました。本人に悪気が無さそうだし高次元な能力の持ち主なのもあって太刀打ちできないですね!今後の生活も波乱が続きそうで面白そうだなと思いました。

  • 家の中で連日知らない人と無言で顔を会わせるって死ぬ程辛いですね。逆にこれで話が進むのか気になってしまいます。

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