近衛隊長は永遠の忠誠を誓う(脚本)
〇城の回廊
姫「相談があるの。あとで部屋に来て」
姫「──誰にも聞かれたくないから、 絶対絶対、一人で来てね」
近衛隊長にそう囁いて、
国王の愛娘は少し寂しそうに微笑んだ
〇城の客室
職務を終え、けれどこれもまた職務の一環であると、
近衛隊長は隊服に剣帯した格好のままで姫の部屋を訪れる
姫「忙しいのに、ごめんなさい」
近衛隊長「いえ。姫の御為とあれば」
姫「堅いわ」
相変わらずねと笑った姫に、
近衛隊長は困ったように、
曖昧に口端を持ち上げる
近衛隊長「相談、とは」
切り出した近衛隊長に、姫はまた寂しそうに微笑むとソファから立ち上がって窓へと寄る
姫「輿入れの日取りが決まったわ」
近衛隊長「それは──」
近衛隊長は一度ぐっと口を閉じる
近衛隊長「おめでとうございます」
きっちりとした礼をとった近衛隊長に、
姫はありがとうと小さく返す
姫「だけどね。 私お慕いしている方がいるの」
姫の言葉に、近衛隊長の肩がぴくりと跳ねる
近衛隊長「それは・・・・・・ 御相手ではなく、という事ですか」
姫「意地悪ね」
分かっているくせに、と姫は言う
近衛隊長はすっと姿勢を正すと、
小さく首を振った
近衛隊長「──見当もつきません」
姫「そう」
姫は視線を窓の外から部屋の中へと──
近衛隊長へと向ける
姫「分かっているわ、私の想いが叶うことなどありはしない」
姫「だけど・・・・・・許して欲しいの」
近衛隊長「許す、ですか」
姫「えぇ。想う事を・・・」
姫「唯一人、貴方を、 想い続ける事を」
〇幻想空間
幼き頃より見守り、
そして近衛となってからは一番近くで護ってきた、
誰よりも何よりも大切な姫
けれどその姫も間もなく他国へと嫁ぐ
この想いは、決して口にしてはならない
〇城の客室
近衛隊長「私の忠誠は貴女に捧げた」
近衛隊長「今までも、 そしてこれから先も、 ずっと──」
〇城の客室
近衛隊長は姫の前まで足を進めると、
ゆっくりと跪いて姫の手を取る
そしてその指先にそっと口付けた──
決して結ばれることは無いけれど,忠実に心の支えとして近くに居てくれる/居ることができるのもまた幸せなのかもしれないとこの作品を読んで考えさせられました。
身分の高い家系の人達は恋愛の自由がないのだろうか。
二人の恋愛が叶わないと分かっていても、それでも愛の告白を我慢している。切ないです。
二人の地位にふさわしい、抑えた会話が、かえって切々としていて胸を突きました。短くても忘れられない瞬間ってありますよね…。どれだけの想いを抱えて今夜を越すのだろうと思うと、深い余韻を感じます。