妻を造ろうとしたとある天才科学者の末路(脚本)
〇地下実験室
とある科学者がロボットを作り上げた。
最新鋭のAIを搭載した人型ロボットだ。
命令に従い自ら考え学び、必要であれば自己に改造を加える。
博士「わしの妻そっくりになるんだ。これが命令だ」
ロボット「カシコマリマシタ」
博士「妻のことはこのデータから学んでくれ。ワシと出会ってからの記録が残っとる」
ロボット「カシコマリマシタ」
〇地下実験室
しばらくして科学者が研究室に訪れると、
果たして妻そっくりの容姿をしたロボットが立っていた。
近付いて目を凝らしても、手で触れてみても分からないほどの精巧さだ。
博士「よし。いい出来だ。思った以上と言っていい」
博士「仕草はどうだ? ちょっと動いてみろ」
ロボット「カシコマリマシタ」
博士「なんだその声は!?」
博士「見た目はそっくりでも、声は全然ダメじゃないか!」
博士「それではとてもじゃないが私の妻ではない!」
博士「妻そっくりの声になるようにするんだ」
ロボット「カシコマリマシタ」
〇地下実験室
博士「どれ? 声は変わったか?」
博士「何か喋ってみろ」
ロボット「かしこまりました」
博士「素晴らしい!」
博士「まさに妻にそっくりの声だ」
博士「この前の続きだ。動いてみろ」
ロボット「かしこまりました」
ロボットは滑らかに動いてみせる。
しかし、長年連れ添った妻の癖をよく知っている科学者には違和感が拭えなかった。
博士「まだぎこちないな。本物と見間違えるほどに動きを真似ろ」
ロボット「かしこまりました」
〇地下実験室
次の日研究室を訪れた科学者は、一瞬ぎょっとした。
部屋の中に妻が居るかと思ったからだ。
部屋の片付けをするロボットは、見た目も仕草も妻そっくりだった。
博士「驚いたな。ここは自分を褒めるべきか」
博士「よし、少し会話をしてみよう」
ロボット「かしこまりました」
科学者はロボットに色々と言葉をかける。
しかし、それに対する返答はまったく満足のいくものではなかった。
博士「ダメだダメだ!」
博士「てんでなっとらん」
博士「お前は人間の心って物を分かってない」
博士「そこをきちんと理解するんだ」
博士「いいか? お前は妻そのものにならんといかんのだ」
博士「次にわしがこの部屋に訪れる時には、わしの妻そのものを見せるんだぞ?」
ロボット「かしこまりました」
〇山奥の研究所
研究室を出た科学者は、ほくそ笑んでいた。
もうすぐ思い描いた夢が実現出来る。
そう思うと自然と笑みがこぼれた。
博士「やはりわしは天才だ」
博士「今日は良い夢を見れそうじゃわい」
家に帰った科学者は、日ごろの疲れもあり、ぐっすりと深い眠りについた。
〇山奥の研究所
明くる日、科学者は少し寝坊をしたが、意気揚々と研究室に足を運んだ。
博士「さて。わしの命令は今度もきちんとできてるかな?」
〇地下実験室
部屋へ入ると科学者はさっそく今日の成果を確かめようと声をかける。
博士「試しにわしの妻なら今の状況でどう答えるか言ってみろ」
ロボット?「あなた! 一体どういうつもり!?」
ロボット?「最近帰りが遅いと思ってたら、こんな所で何をしているの!?」
その言葉を聞いた科学者は満面の笑みを浮かべた。
博士(完璧だ!)
まさに見た目も仕草もそして発せられる言葉も妻そのものだった。
博士「よし。今からお前に説明してやる」
博士「わしはこれから妻を殺すつもりだ」
博士「愛していたが、わしの部下に誑かされるなど、許せんからな」
ロボット?「何を・・・・・・?」
博士「いい反応だ!」
博士「ただ妻を殺しても、上手くいかん」
博士「まだ捕まりたくはないからな」
博士「それで妻そっくりのロボットを造って、それとすり替えるのだよ」
博士「妻と違ってロボットは命令に背くことはないからな」
博士「まさに理想の妻と言える、というわけだ」
ロボット「それ以上はいけません!!」
突然研究室の扉が開き、妻そっくりの見た目をしたロボットが飛び込んできた。
博士「な・・・・・・なっ!?」
科学者は思わぬ出来事に驚き固まる。
ロボット?「あなたなんかに殺されてたまるもんですか!!」
科学者が視線を妻に戻すと、
妻は右手に大きな金属製の工具を握りしめ、
高々と持ち上げたそれを振り下ろす最中だった。
悪いことはできませんね。笑
でも先に浮気をしたのは奥さんで、始末しようとしたけど返り討ちにあったと。
とてもスムーズな文章で、最後までのまとまりがすごかったです。
こういう技術が発達したらいいなぁと思う反面、内面も外見もうまくできすぎて、どれがロボットでどれが人間かわからなくなってしまったら、ほんとにこんなことが起こりそうですね。ハラハラ。未来の地球でこんなことが起こらないことを望みます!(笑)
ブラックユーモア的で面白かったです!星新一のショートショートのようでした☆妻と同じ行動をとるわけですから、そうなりますよね(笑)