白石兄妹

七宮 あず

読切(脚本)

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〇男の子の一人部屋
  ボクの名前は夕李(ゆうり)
  今年の春、高校生になったばかりだ。
  ボクには家族に内緒にしていることがある。
夕李「サイズはピッタリ、と」
  この前ひそかに買ったコス。
  お年玉を貯めて、コスプレショップで購入してきた衣装だ。
  幼いころから女の子の服に興味があった。
  遊びもサッカーや野球より、人形遊びが好きだった。
  でも、周りの目が気になるボクは、できるだけ表に出さないようにしていた。
夕李「なんだろ、スカートって意外と楽な気がする・・・」
  鏡を見て、自分の世界に浸っていた。
  しかし、その世界は一瞬にして破られた。
飛鳥「夕李、ウチのプリン食べたやろ!」
  部屋の扉が開き、怒鳴り声が聞こえる
飛鳥「って・・・・・・」
夕李「あっ・・・」
  入ってきたのは今年大学生になった姉の飛鳥だった。
  一番見られたくない相手に見られてしまった。
夕李「え、あっ・・・」
  頭が真っ白になるとは
  こういう時のことを言うのだろう。
夕李「きゅ、急に入ってくんなよ!」
飛鳥「10回以上ノックしとるわ」
飛鳥「それよりその恰好・・・」
夕李「こ、これは・・・」
  これは、やばい。
父「おい、うるさいぞ」
  父が階段をのぼる音が聞こえる。
  この自宅コスがもうできなくなる・・・
  すると、アス姉(飛鳥)が部屋の外に出た。
飛鳥「あーいつものプチ喧嘩だから父さんは上がって来んといて」
父「お前たちのプチはプチじゃないだろ」
飛鳥「と・に・か・く!」
飛鳥「大丈夫だからリビングに戻ってよ。サッカー中継始まっちゃうよ」
父「そうだな。 仲良くするんだぞ」
飛鳥「はいはい」
  父は階段を降りていく
  どうやら父にバレるのは回避できたらしい。
  しかし、アス姉はどうしてバラさなかったんだろう?
  そんなことを考えていると、アス姉が部屋に戻ってきた。
飛鳥「ねえ、いつの間に買ってたん!? 何きっかけ!? ・・・・・・」
  怒涛の質問責めだ。
  想定外すぎてどう対処すればいいかわからない。
夕李「せ、先月買って 今日が着たの2回目・・・」
飛鳥「だからまだあか抜けない感じなんやね まあ、夕李は高校生になったばかりやし あたりまえか」
  一人合点して、うんうん頷く。
  こんな目をキラキラさせたアス姉を見たことがない。
夕李「あの、アス姉?」
飛鳥「おっとごめん。取り乱した」
飛鳥「バレたくなきゃ ちゃんと鍵もしておかないとだよ」
夕李「ごもっともで」
  気持ちがそわそわして
  かけ忘れていた。
  それはそうと
  アス姉に聞きたいことがある。
夕李「ねえ、アス姉はこの格好変に思わないの?」
飛鳥「変」
夕李「やっぱり」
飛鳥「素材がいいのに、服が合ってないんよ」
  あ、そこなの?
夕李「女装については何も思わんの?」
飛鳥「別に?」
飛鳥「むしろ素材として夕李は良いから男女問わず衣装を着せたい思っとったんよ」
飛鳥「でも、父ちゃんにはバレんようにしよか。 あんひと、そういうの好かんし」
  父は以前、テレビでコスプレの特集があった時、
  コスプレや女装に対して否定的な意見を言っていた(内容は自主規制)。
  とりあえず急展開過ぎて頭がついていかない。
飛鳥「明日、暇?」
夕李「まあ、暇だけど」
飛鳥「アンタに似合いそうな女の子な服買いに行くよ」
夕李「え、でも」
飛鳥「いやならばらす」
夕李「分かりました お好きにどうぞ」
  姉に見つかり、万事休すと思ったが、まさかの展開になった
  助かりはしたけど
  アス姉にいいように使われそうな気がする・・・

コメント

  • もし夕李のような弟がいたら、私も飛鳥のようにアドバイスして、なんなら一緒に買い物に行く派です。口紅やファンデを彼女と買いにいく男子もいるみたいだし、最近は自由度が広がってきていますよね。ただ、お父さん世代に理解してもらうのはちょっとハードルが高いかもですね。

  • こういうことって現実にあるんですかねえ? もしあったとしたら素敵だなあと思いました。思春期の頃は、そういう傾向が出現したり、試してみてやっぱりノーマルに戻ったりするのかもしれませんね。お姉ちゃんがその手助けを上手くしてくれたらいいですね。

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