〇高級マンションの一室
　　─都内のタワーマンション─
　　勝ち組しか住めないマンションに住む、主婦の境紀子。32歳。
　　大手メーカー永光電器に勤める境真人35歳と５年前に結婚
　　今日は同じマンションの友人を呼び、お茶をしている
境紀子「理恵さんは旦那さんとは大学のサークルで知り合ったんですか？」
西村理恵「そうなんですよ。克己君とは学生時代からの付き合いだから、夫婦というより友達みたいな関係です」
境紀子「希美さんは？」
梶原希美「夫は高校時代の英語教師だったんですよ」
西村理恵「えー！？　教師と生徒の関係だったの？　それって条例に引っかかるんじゃ？」
梶原希美「でも、付き合ったのはちゃんと卒業してからですよ」
西村理恵「じゃあ、大丈夫なのか」
西村理恵「紀子さんは？」
境紀子「社内恋愛だったんです・・・」
梶原希美「どちらからプロポーズしたんですか？」
境紀子「私の方からです。夫に一目惚れで・・・」
梶原希美「紀子さんって見た目と違って積極的なんだ」
西村理恵「でも、紀子さん、真人さんに超愛されているわよね」
西村理恵「週末は必ず二人でデートなんでしょ？」
境紀子「ま、まあ・・・」
西村理恵「うらやましい」
西村理恵「うちの克己君なんて、疲れたって言って、週末は寝てばかり」
西村理恵「どこにも連れていってくれないんですよ!!」
梶原希美「うちは最近冷たくて・・・」
梶原希美「旦那さんから長く愛される秘訣とかあるんですか？」
境紀子「うちもアドバイスするほどうまく言ってないですよ」
境紀子「喧嘩もしょっちゅうしますし・・・」
西村理恵「喧嘩と言っても口喧嘩でしょ？」
境紀子「いえ、殴る蹴るの殺し合いです」
梶原希美「紀子さんが旦那さんを殴る姿なんてイメージできない」

〇高級マンションの一室
　　─その日の夜─
境真人「ただいま・・・」
境紀子「お帰りなさーい」
境紀子「今日も遅かったのね・・・」
境真人「紀子、お願いがあるんだ・・・」
境紀子「何？」
境真人「別れてくれないか？」
境紀子「何で？」
境真人「もう嫌だ・・・」
境真人「こんな嘘にまみれた生活・・・」
境真人「俺にはもう耐えられないよ・・・」
境真人「出頭して洗いざらい話す・・・」
境紀子「別れないと言ったら？」
　　真人、紀子の首を絞める
境真人「お前を殺して、俺も死ぬ!!」
　　真人、紀子の首を絞める力を更に強める
境紀子「ぐうう・・・」
　　真人の手が震えだし、紀子の首を放す
境真人「だめだ・・・」
境真人「殺せない・・・」
境紀子「ゲホゲホ・・・」
境紀子「真人さんに人は殺せないわ・・・」
境紀子「5年前もそうだったじゃない」
境紀子「あなたは泣き出して、結局トドメをさしたのは私だったし・・・」
境真人「あれは課長が悪いんだよ・・・」
境真人「俺の横領なんかに気付かなければあんな目にあわなかったのに・・・」
境真人「そもそも、何で俺にあんな計画を持ち掛けたんだ？」
境紀子「そんなの決まっているじゃない・・・」
境紀子「真人さん・・・」
境紀子「あなたのことを愛しているからよ」
境真人「そんなウソはいい!!」
境真人「本当の目的を言ってくれ!!」
境紀子「本当よ」
境紀子「おかげでＦＸの失敗で作った借金も返済できたでしょ？」
境真人「それは・・・」
境紀子「あのときはああするしか他になかったのはあなたが一番わかっていたでしょ」
境紀子「それに・・・」
境紀子「愛がなければ遺体処理なんかしないわよ・・・」
境真人「課長の遺体はどこにやったんだ？」
境紀子「大丈夫」
境紀子「絶対に見つからないところに隠したから」
境紀子「だから安心して・・・」
　　紀子、真人を押し倒す
境真人「おい、何をするんだ？」
境紀子「そろそろ子どもが欲しいなって・・・」
境真人「や、やめろよ!!」
境紀子「真人さんは私の言うことだけ聞けばいいのよ」

〇高級マンションの一室
　　─半年後─
　　お茶をしている紀子と希美。
　　紀子の妊娠６か月目のお腹が目立つ。
境紀子「まさか、理恵さんと克己さんが別居するなんてね・・・」
梶原希美「理恵さん、実家に帰ったって・・・」
梶原希美「あんなの仲良さそうたったのに・・・」
境紀子「希美さんも元気ないみたいですけど、何か悩みがあるんですか？」
梶原希美「旦那が浮気をしているようなんです・・・」
梶原希美「しかも、相手は今受け持っているクラスの生徒みたいで・・・」
境紀子「教え子に手を出しているんですか!?」
境紀子「ひょっとして、常習犯だったんじゃない？」
梶原希美「そうかもしれない・・・」