「秘密」(脚本)
〇黒
「秘密」
〇明るいリビング
今でも、思い出せる。
深月(幼少期)「みーちゃんがパパとママのこと 好きかどーかー?」
深月(幼少期)「それはね──」
深月(幼少期)「「ひみつ」!!」
これが私の「秘密」の始まりだった──
〇黒
〇学校の廊下
飛彩「卒業式、やっと終わった〜〜 いくらなんでも長すぎでしょ〜〜」
深月「卒業という節目の式典だから仕方ないわよ」
私こと深月(みつき)と飛彩(ひいろ)を含めた3年生は今日、この高校を卒業した。
高校生活は楽しかったと思う。
勉強も運動もできたし、教師からの評判も良かったし、中学の時のように大きな事件もなかったし
なにより、飛彩がいたから。
飛彩「で?遂に教えてくれるんでしょ? 約束通り、深月の「秘密」を」
深月「この後、飛彩が入り浸ってる あの古びた神社で教えてあげるわよ 約束通りね」
高校卒業の日に山奥にある古びた神社で
飛彩に私の「秘密」のひとつを告白する。
それが私と飛彩の約束。
飛彩「でもさ、3年間一緒だったのにひとつしか 教えてくれないなんて深月は冷たいよね〜」
深月「1つ教えるだけでも喜びなさいよ 人に知られたくないから「秘密」なの もしも、12個全部知られるようなことがあったら──」
深月「間違いなく、私は自死するでしょうね」
飛彩「でた!深月の自殺願望!!」
飛彩「知られたくないんだったら 「秘密」があることも 言わなければいいのにね ほ〜んと、深月は変わってるね〜」
深月「「秘密」のことを飛彩以外の人に 話したことはないし あと、飛彩にだけは変わってる なんて言われたくないわよ!!」
飛彩「私ってそんなに変わってるかな?」
深月「変わってるわよ!!」
深月「変わってなかったら 神社には入り浸らないし 1人で会話したりもしないし 私と仲良くする理由も あんな理由にはならない!!」
飛彩「あ〜、知りたいとか隠したいっていう 感情はこの世に強く残るから 深月と仲良くしたいってやつ?」
深月「それよ、今聞いても意味がわからないもの」
飛彩「それはね──」
飛彩「「ひみつ」!!なんちゃって!!」
深月「はぁ・・・」
こういうつかみどころがない所も
飛彩の魅力だとは思うが・・・
飛彩「とりあえず、神社にいこうよ! はやく行かないと真っ暗になっちゃうよ!」
深月「え!ちょっと待って!待ってってば!」
〇黒
私の「秘密」──
それは小学校1年生から
高校3年生までの12年の間
年ごとに私が一番「秘密」にしたいことを
書き記したもの。
はじめは
可愛くて綺麗な「秘密」だった。
けれど、時間が経つにつれて
それはいつしか
醜く汚い「秘密」になっていった
だから、人には見せられない。
人に見られたら、死んだ方がマシだと思えるくらいに汚くて醜いから。
けれど、綺麗な「秘密」も増えた。
飛彩と出会ってからの3年間の「秘密」は
綺麗だから、飛彩にだったら言えると思う。
だから、飛彩にひとつだけ
「秘密」を告白する──
〇古びた神社
気がつくと、飛彩が目の前に立っていた。
飛彩「わぁ!? 思っていたよりずっとはやい登場だね!?」
深月「それは飛彩を、追いかけてきたから・・・」
飛彩「すごい!! ここまで完璧に意思疎通が できるなんて・・・ こんなのはじめてだよ!! さすが、深月だね!!」
深月「何を言ってるの? ていうか、もう真っ暗じゃない!?」
ついさっきまで明るかったはずの周りは
真っ暗になっていた。
飛彩「あ〜、流石に記憶の混濁、というより改変?が起こってるみたいだね。 まぁ、そうしないと受け入れられないだろうしね〜」
深月「いつにも増して何を言っているのかわからないけど・・・」
深月「まぁ、いいわ はやく約束を済ましましょう。 その為にここまで来たんだしね」
飛彩「その必要はないよ。 もう約束は済んだから」
深月「何を言って──え?」
飛彩の手には私の「秘密」があった。
深月「どうしてそれを・・・?」
飛彩「どうしてって私が頼んだんじゃん 「秘密」ごと持ってきてねって」
深月「そうじゃなくて どうしてそれを飛彩が持ってるの? 私が持ってないと──」
飛彩「『ぱぱとままのことがすきなこと』」
深月「!?」
飛彩「『ともだちのひなちゃんがすきなこと』 『おなじクラスのあつしくんがすきなこと』」
深月「な、なんで・・・」
飛彩「『あつしくんがわたしのことをきらいだと いっていたこと』 『あつしくんとひなちゃんがなかよくしてると心がいたくなること』」
深月「や、やめ──」
飛彩「ひなちゃんがいじめられる原因を作ったこと ひなちゃんに自殺を勧めたこと ひなちゃんが自殺して心の底から 嬉しかったこと」
深月「あぁ・・・」
飛彩「飛彩と約束をしたこと 飛彩と過ごせたこと そして──」
飛彩「『飛彩のことが好きなこと』」
深月「なんで・・・どうして・・・」
飛彩「悪いとは思ってるんだよ、深月 ごめんね」
深月「ごめんって・・・ 何が何だか・・・え?」
よく見ると、私の身体は透けていた。
深月「私、どうなっちゃったの?」
飛彩「どうなっちゃったのって 深月、今日も言ってたじゃん」
わからない
飛彩「しょうがないなぁ、知りたい?」
深月「知りたい知りたい知りたい知りたい知りたい知りたい知りたい知りたい知りたい知りたい知りたい知りたい知りたい知りたい知りたい」
飛彩「それはね──」
〇黒
「秘密」
これ…最後…死んでますよね?
秘密を知られたら死んじゃうって言ってたのはこのことかと思いました。
見事な伏線回収です。
「秘密」いう言葉を聞いた時から、人の思考は止まらなくなりますよね。登場人物の気持ちが見え隠れするような感じでうまく表現されていて楽しく拝見させて頂きました。
最初から最後まで重要なポイントは秘密!
こちら側で考えさせてもらえるところはすごく面白い!
しかし人に依存してしまう気持ちもわからなくはありません…。