過去の夢よお料理よ未来に仲介

山縣将棋

お料理と過去(脚本)

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山縣将棋

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〇渋谷のスクランブル交差点

〇センター街

〇繁華な通り

〇見晴らしのいい公園
野上 恭二(何処を歩いても、何処を見ても自分だけ世間から切り離されてる感覚・・・孤独だ・・)
  20年前

〇オフィスのフロア
「野上君!これお願い!」
野上 恭二「わ、分かりました!」
「あと、これもな!」
野上 恭二「は、はい」

〇オフィスのフロア
野上 恭二「やっと終わった・・・」
野上 恭二(もうこんな時間かよ・・・)
  3ヶ月後

〇オフィスのフロア
野上 恭二「今月で辞めたいと思います」
「あっ、そう別に今日でもいいよ辞めるの」
野上 恭二「は、はい・・・(必要とされてない)」

〇白
  その後も、就職を繰り返したが、仕事は長く続かなかった・・・

〇工事現場
「さっさと運べ!新人!」
野上 恭二「す、すいません!」

〇ホテルの受付
「おいっ!予約取れて無いってどういう事だよ」
野上 恭二「も、申し訳ございませんでした!」

〇部屋の扉
  何をやってもダメな俺、いつしか精神が不安定になり、いつしか独りの世界に引きこもる時間が増えた・・・
  そして、先月、職も転々ている俺に悪い知らせが届いた。親父とお袋が交通事故で他界したと

〇見晴らしのいい公園
野上 恭二「俺って・・・つまらないな人生だな・・」
野上 恭二(今日で全て終わりにしよう・・・)

〇飲み屋街
野上 恭二(さて、最後の晩餐だ・・何食べようか・・・)
野上 恭二「んっ?」
男性A「うっうっ・・・」
女性A「ううっ・・・」
野上 恭二(何だ?泣いてる?酔ってるのか?)
男性B「うぁぁぁぁ!」
野上 恭二(もしかして、泣くほどうまい店があるのか?・・・──進んで見よう)

〇狭い裏通り
野上 恭二(この辺か?)
加古野 夢与「ありがとうね!またおいで!」
男性C「はいっ!」
野上 恭二(見つけた!後をつけて見よう・・・)

〇黒
野上 恭二「ここか・・・」

〇大衆食堂
野上 恭二(普通の定食屋?)

〇大衆居酒屋(物無し)
「いらっしゃい!」
野上 恭二「どうも・・・」
加古野 夢与「そこに、座って下さいな」
野上 恭二「ああ」
加古野 仲介「お客さん、見ない顔だね」
野上 恭二「今日、初めて来たからな・・・」
加古野 未来「うちの料理おいしいのよ!」
野上 恭二「どんなのがあるんだ?」
加古野 未来「メニューは無いわ、お客さんが食べたそうな物を判断して出す、それだけ」
加古野 夢与「水をどうぞ」
野上 恭二「メニューがない?」
加古野 夢与「そう。中華なら息子の仲介が、洋食全般は孫の未来が作るよ、私は和食だねぇ」
野上 恭二「・・・それって結局お任せって事だろ?」
加古野 夢与「そういう事だねぇ、所でお客さんお名前は?」
野上 恭二「・・・野上恭二」
加古野 夢与「そうかい、そうかい、ほんなら料理を作るから待ってておくれ!」
野上 恭二(名前なんて聞いてどうするんだ?)
加古野 仲介「ほらよ!」
野上 恭二「頼んで無い・・・」
加古野 夢与「サービスだよ、お飲み!」
野上 恭二「いいのか?なら遠慮なく・・・」
野上 恭二「ぷはぁ〜久々に飲むと美味いな!」
野上 恭二(今日で最後だけど、何か良い気分だな・・・)
加古野 夢与「ホレッ!出来たよ、お食べ!」
野上 恭二「へっ?」
野上 恭二「料理って、おにぎりとスープじゃねぇか・・」
加古野 未来「スープは私が作ったのよ」
野上 恭二(・・・こんな飯が俺にはお似合いかもな)
野上 恭二「・・・いただきます」
  おにぎりを食べスープを飲む野上
野上 恭二「あっ!」

〇アパートのダイニング
  この光景は確か俺が子供の頃の・・・
野上 悦子「夏休みだからってダラダラすんじゃないよ!」
野上 恭二「分かったって!それよりも母ちゃん、飯!」
野上 悦子「本当この子は食べる事しか考えてないねぇ」
野上 恭二「大きくなったら、母ちゃんを楽させてやるよ」
野上 悦子「そりゃ、ありがたいねぇ」
野上 悦子「ほら、お食べ!」
野上 恭二「これだけかよ!」
野上 悦子「文句言ってないで、さっさとお食べ!」
野上 恭二「は〜い!」
野上 悦子「たくましくなっておくれよ恭二」

〇大衆居酒屋(物無し)
野上 恭二「ハッ!」
加古野 夢与「美味しいかい?」
野上 恭二「これって・・・母ちゃんの味だろ?」
加古野 夢与「そうじゃよ、母ちゃんには会えたかい?」
野上 恭二「何で味が分かるんだ?家庭それぞれ違うだろ!」
加古野 夢与「ハハッ!顔見りゃ一発でわかるのさ、昔食べた味を再現する。この食堂はそんな場所さ」
野上 恭二「そんな事が可能なのかよ・・・」
加古野 未来「それだけでは足りないでしょ?、コレもどうぞ!」
野上 恭二「オムライス?」
加古野 仲介「後これも食いな!」
野上 恭二「唐揚げまで!」
加古野 夢与「さぁ、冷めない内にお食べ!」
  オムライスと唐揚げを口に運ぶ恭二
野上 恭二「あっ!」

〇駅のホーム
  これは、俺の就職が決まり東京へ行く時の場面
野上 悦子「大丈夫かい?恭二」
野上 恭二「大丈夫だよ!母ちゃん!」
野上 成一「何かあればすぐに帰って来い!」
野上 恭二「心配しないでよ、父さん」
野上 悦子「あんた、溜め込むタイプだから・・・」
野上 恭二「これが最後じゃないだろ」
野上 成一「そうだよ、盆や正月にまた会えるさ!」
野上 悦子「・・・恭二」
野上 恭二「その時は、昨日の夜に食べたオムライスと唐揚げを作ってよ母ちゃん!」
野上 悦子「分かったよ、作ってやるさ!いつも通りの味でね!」
野上 恭二「ありがとう!母ちゃん」
  まもなく16番線にのぞみ10号が到着します
  安全柵の内側までお下がり下さい──
野上 恭二「新幹線が来たみたい!」
野上 成一「気をつけていくんだぞ!」
野上 悦子「・・・・・・」
野上 恭二「うん!見送りありがとう!」
野上 成一「アイツもだんだん大人になっていくな・・」
野上 悦子「・・・恭二」
  間も無く新幹線が発車します──
野上 悦子「恭二!」
野上 悦子「身体壊すんじゃないよ、寝不足もだめ、夜遊びはそこそこに、それと身体に良いものたべて、それから、」
  ドアが閉まります
野上 恭二「母ちゃんも元気でな!」
  プシュー(ドアが閉まる)
野上 悦子「恭二!恭二!」
野上 悦子「恭二ぃぃぃ〜」
野上 成一「盆休みには一回り成長して帰ってくるさ!」

〇大衆居酒屋(物無し)
  それが、親と話した最後の会話、その後は親の期待を裏切り会社をすぐに退職した。俺は恥ずかしさと申し訳なさから両親を遠ざけた
野上 恭二「ウメェ・・・うっうっ」
加古野 夢与「そうかい!良かったよ」
野上 恭二「母ちゃん・・忘れてた・・この味・・・・・・最後の会話・・もう会えねぇ・・・」
加古野 夢与「そんな事はないよ恭二、ここに来ればいつだって会えるさ」
野上 恭二「ううっ・・・」
加古野 仲介「一番美味い飯ってのは家族で食べた時の料理なんだよな!」
加古野 未来「そう。暖かくて、安心するでしょ?」
加古野 夢与「美味しい料理には色んな物が詰まってるのさ!」
野上 恭二「そんな単純な事、今更気づいたよ・・・」
加古野 夢与「生きる事は、お金を沢山稼ぐ事でも、成功する事でもないんだよ。生きるって事はねぇ、食べる事なのさ!」
野上 恭二「・・・母ちゃんに言われてるみたいだぜ」
加古野 夢与「アンタ、人生を終わりにしようと思ってたろ?」
野上 恭二「・・・・・・」
加古野 夢与「あんたが今まで生きてきた理由は食べる欲求を止めなかったからだよ・・魂の奥底ではね生きたいって望んでるのさ」
野上 恭二「そうか、生きる意味って近くにあったんだな」
加古野 仲介「そうさ、たまに見えなくなることもあるけど、ちゃんと還ってくるもんさ!」
野上 恭二「俺が死のうとしてたの良く気づいたな」
加古野 夢与「さっきも言ったろ顔みりゃわかるのさ、 あたしゃ母ちゃんだからね!」
野上 恭二「・・・ハハッしんみりするのはもうやめだ! 前を向いてしっかりと生きていくよ!」
加古野 夢与「そうそう、その勢いだよ恭二!」
野上 恭二「ご馳走様!いくら?」
加古野 夢与「8800円だよ!」
野上 恭二「えっ!」
野上 恭二「・・・(高けぇ)」
加古野 夢与「毎度!」
  つい見逃してしまうような定食屋その暖簾をくぐった先で出される定食は、過去の人物を蘇らせる。それは温もりに包まれた家庭の味

〇繁華な通り
後輩「その話、本当っすか先輩!」
野上 恭二「もちろん、本当だよ」
後輩「じゃあ今度連れてって下さいよ!」
野上 恭二「ハハッ、君にはまだ必要ない味だよ」
後輩「とか言って本当はないんでしょ?──」
野上 恭二「どうかな?」

〇繁華な通り
  この道を真っ直ぐ歩き

〇雑居ビル
  あの角を右に曲がり

〇狭い裏通り
  左手にみえるその看板を目印に、真っ直ぐ、真っ直ぐ進んだら

〇大衆食堂
  たどり着くのは、暖かい家族が待つ定食屋
「いらっしゃい!」

コメント

  • 必要としている人の前にしか現れない、
    そんな不思議な定食屋に感じました。
    私も疲れたら行ってみたいです…☺️

  • 優しい世界にほっこりしました☺️
    もう一度食べたいあの味を提供し、家族のぬくもりを感じさせてくれる料理店…あの繁盛具合も納得ですね!
    人を生まれかわらせる不思議なお店、ひょっとしたらこの世のものではないのかも?と、バックグラウンドを考えてしまいました!

  • 家族と食べた料理が一番美味しい。
    なんだか心に沁みました。
    落ち込んだ時に思い出す母の味、もう2度と食べられないと思っていたものを再現してもらえるなんて素敵なお店ですね。

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