読切(脚本)
〇通学路
修「ううー・・・」
愛梨「どうしたの、修君」
修「それがさー、愛梨ちゃん。最近、変な夢 ばっかり見るんだ」
修「それで、目が覚めてから、寝れなくなって、寝不足なんだよ・・・」
愛梨「あらー。それは大変ね。どんな夢なの?」
修「えっとね、知らない人に刺されて、死んじゃうんだよ・・・ 。すごく怖くってさ・・・」
愛梨「へー。でもさ、殺される夢って、夢占いだと縁起いいんだよ」
修「え?そうなの?」
愛梨「うん。他にはどんな夢を見たの?」
修「えーっとね、いろんな色の雲が光る夢とか、大仏に追いかけられる夢とか、太陽が昇る夢とか・・・かな」
愛梨「すごい!ぜーんぶ、縁起がいい夢だよ!」
修「えええ!そうなの?」
愛梨「そうだよ。だから、落ち込むことないんだから」
修「そうなんだ?じゃあ、頑張って変えなくていいんだね」
愛梨「うん。すっごくいい夢なんだから。・・・ って、え?変えなくていいって、どういうこと?」
修「えっとね、僕ね、夢を変えることができるんだよ」
愛梨「夢を変える?」
修「頑張って、集中すれば、見る夢を変えることができるんだ」
愛梨「へー。凄いね」
修「えへへ」
修「でも結構、大変なんだ。変えられるのは3日に1回くらいなんだけどね」
愛梨「でも、夢を変えれるなんていいなぁ。 初夢もいい夢見れるってことだよね?」
修「え?初夢?初夢ってなあに?」
愛梨「ほら、もうすぐでお正月来るでしょ?新年になって、一番最初に見る夢を初夢って言うの」
愛梨「それで、初夢でいい夢が見れると、一年間、いいことが起こるんだってさ」
修「へー、そうなんだ!ねえねえ、初夢にはどんな夢を見ればいいの?」
愛梨「えっとね。ナスビと鷹だって」
修「ナスビと鷹?鷹って鳥の?」
愛梨「そうそう。で、一番いいのは、富士山の夢をみることなんだって」
修「そっか。初夢に、富士山とナスビと鷹の夢を見ればいんだね?」
〇シンプルなワンルーム
修「・・・ よし、頑張って、初夢でいい夢を見るぞー!」
修「えーっと、富士山、鷹、ナスビだよね?うーん、うーん・・・ 。集中集中」
遠くで除夜の鐘が聞こえてくる。
修「富士山・・・ 鷹・・・ ナスビ・・・ 。すうー」
〇通学路
修「愛莉ちゃん、明けまして、おめでとう!」
愛梨「おめでとう、修君。今年もよろしくね」
修「うん、よろしくー。あ、そうそう。愛梨ちゃん。やったよ!」
愛梨「え?なにが?」
修「昨日ね、ナスビを持ってたら、鷹に襲われて、富士山から落ちて死ぬ夢を見たんだ!」
修「すごいでしょ!これで、今年一年、いいことばっかり起きるんだよ!」
愛梨「うわー。凄いね」
修「えへへ」
愛梨「・・・ でも、修君」
修「なに?」
愛梨「初夢は今日の夢だよ」
修「え?」
終わり。
あー、よくある勘違いですよね、「初夢」を見るべき日については。それにしても、必死で夢を見ようとする修くんの可愛さは抜群ですね。
見る夢を変えることが可能な修くんに羨望のまなざしをむけていたところ、初夢の勘違いがさすがに幼い男の子の知識で好感もてました。来年こそ完璧な初夢にしてほしいです!