家族の肖像 

尾長イルカ

ドラキュラ爺ちゃんの恋(脚本)

家族の肖像 

尾長イルカ

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〇田舎の病院の廊下
心陽(こはる)「老人ホーム 潜り込んだはいいけど・・・」
心陽(こはる)「アッ 高杉さん!」
心陽(こはる)「ヤバい この姿を・・・」
  慌てて 物影に隠れる心陽
心陽(こはる)「早く爺ちゃん探さないと」
心陽(こはる)「何で私が・・・全部兄貴のせいだ」

〇中世の街並み
  爺ちゃんが若い頃
  ルーマニアに旅行してな
  宿屋で一晩中 狼の遠吠えが・・・
  それでも やっと寝たら
  夢を見たそうだ
  吸血鬼に襲われる夢を
  起きたら 腕に噛まれた後が・・・

〇おしゃれな居間
影虎(えいと)「それで 爺ちゃんは吸血鬼に」
心陽(こはる)「あほくさ」
心陽(こはる)「ボケ老人のたわ言」
心陽(こはる)「引き籠って ゲームばっかしてるから 兄貴もボケたのね ハハハ」
影虎(えいと)「これでも?」

〇部屋の扉

〇おしゃれな居間
心陽(こはる)「妹の前で脱ぐな」
影虎(えいと)「そっち?」
心陽(こはる)「よくできたコスプレ」
  触ってみる心陽
心陽(こはる)「アレアレ??」
影虎(えいと)「面倒くさい奴だな」
心陽(こはる)「え? じゃあママも? ひょっとして私も!?」
影虎(えいと)「隔世遺伝だ 爺ちゃんと俺だけ ウチは母子家庭だが 恵子(母)は人間だよ」
影虎(えいと)「お前は日焼けしてる 日焼けした吸血鬼はいない」
心陽(こはる)「ママを自分の女みたいに呼ぶな キモ!!」
心陽(こはる)「あと 引き籠りの癖に リビングを独占するな!!」
影虎(えいと)「まあ聞け」
影虎(えいと)「お前は老人ホームに潜入しろ」
影虎(えいと)「介護士の試験を受けろ そして 爺ちゃんの面倒を見るんだ」
心陽(こはる)「いやだよ」
影虎(えいと)「爺ちゃんの認知症が悪化して 誰かに噛みついたら どうする?」
影虎(えいと)「ボケたドラキュラなんて洒落にならん」
影虎(えいと)「それに 日光を浴びたら灰になっちまう」
心陽(こはる)「爺ちゃんを家に引き取れば?」
影虎(えいと)「恵子が大変だろ? 俺の世話で忙しいから」
心陽(こはる)「お前のせいやないか 引き籠りが」
心陽(こはる)「ママに甘えるな」
影虎(えいと)「俺も夜しか外に出れないんだ 好きで引き籠ってんじゃない」
心陽(こはる)「言い訳だろ」
影虎(えいと)「心配じゃないのか? 家族をどう思ってるんだ?」
心陽(こはる)「何で私が・・・」
影虎(えいと)「爺ちゃんのいる老人ホームには 高杉君が働いてるぞ」
影虎(えいと)「お前も看護士試験を受けたら 憧れの高杉君に会える」
心陽(こはる)「バーカ そんな手にのりませんよ」
  出て行こうとする心陽
  ドアノブを回す手が止まる
心陽(こはる)「ち ちなみに・・・試験っていつよ」
  兄貴はニヤリと笑った
  冷たい吸血鬼の笑いだった

〇田舎の病院の廊下
  試験は落ちて 兄貴にバカにされた
  仕方なく掃除婦として潜入することに
  何で私が・・・
心陽(こはる)「ニセ掃除婦って バレたらヤバい これじゃあ 高杉さんと話せない」
心陽(こはる)「アッ! 正蔵爺ちゃん」
心陽(こはる)「爺ちゃん 兄貴がこれを」
心陽(こはる)「中に輸血パックが・・・ どこで手に入れたか知らないけど 血を飲みたくなったら それを」
正蔵(しょうぞう)「血? 飲む? 何のことじゃ?」
心陽(こはる)「ボケちゃって・・・」
看護師「あなた何してるの?」
心陽(こはる)「そ 掃除です! この辺を履き忘れて」
心陽(こはる)「フー やばかった」
美智子(みちこ) 「あの・・・」
心陽(こはる)「また!」
美智子(みちこ) 「これを正蔵さんに」
心陽(こはる)(ラブレター?)
心陽(こはる)「爺ちゃん 女の人から」
心陽(こはる)(顔 赤くなってるよ 吸血鬼のくせに)

〇おしゃれな居間
影虎(えいと)「ラブレターなら大問題だ」
心陽(こはる)「爺ちゃんがモテるとは」
影虎(えいと)「バカだなお前は」
心陽(こはる)「何が!」
影虎(えいと)「その婆さんが 爺ちゃんに近づいてみろ」
心陽(こはる)「婆さんじゃなくて 美智子さんよ」
心陽(こはる)「応援するよ 爺ちゃんの恋」
影虎(えいと)「爺ちゃんは吸血鬼だぞ」
影虎(えいと)「婆さんに噛みついたら 大騒ぎだ!!」
心陽(こはる)「美智子さんも吸血鬼になったら 二人で永久にラブラブでいいじゃない」
影虎(えいと)「吸血鬼だってバレたら 日本に住めなくなるぞ!!」
心陽(こはる)「海外暮らしゴージャス!!」
影虎(えいと)「さすがだな 試験に落ちるはずだ」
心陽(こはる)「てめえ! 兄貴だからってぶっ飛ばすぞ」
影虎(えいと)「やってみろ」
心陽(こはる)「きたねえな・・・」
影虎(えいと)「爺の恋を邪魔しろ いいな?」
心陽(こはる)「は?」
影虎(えいと)「家族を守るためだ  いいな」

〇児童養護施設
  二人が会わないように気をつけた

〇トレーニングルーム
  施設のトレーニングに励むようになった
  恋のせい?
心陽(こはる)「爺ちゃん頑張ってるね」
正蔵(しょうぞう)「いやいや 運動不足だから」
  顔を赤らめ 照れ笑い
  そんな 爺ちゃんが眩しかった
正蔵(しょうぞう)「あの人に返事の手紙 渡してくれたよな?」
心陽(こはる)「うう うん ちゃんと渡したよ・・・」
正蔵(しょうぞう)「そうか・・・何も言ってこんなぁ」
心陽(こはる)「い 忙しいのかも・・・」

〇休憩スペース
  一人佇む美智子さんを 見るのが辛い
美智子(みちこ) 「フー(ため息)」
美智子(みちこ) 「アラ あなた・・・お手紙渡してくれた?」
心陽(こはる)「ええ まあ・・・」
  ポケットには
  爺ちゃんの返事の手紙が・・・
美智子(みちこ) 「会ってくれないのかしら・・・」
美智子(みちこ) 「フー(ため息)」
心陽(こはる)「・・・・」

〇田舎の病院の廊下
  そんな ある日
心陽(こはる)「ヤバ 曲がり角から美智子さんが」
心陽(こはる)「お腹痛いの? トイレ行こうか」
正蔵(しょうぞう)「痛くないぞ」
心陽(こはる)「ボケちゃって 漏らしたら大変 早くあっちへ!」
  足音が
「何してるの?」
  見つかった! 振り返ると・・・
心陽(こはる)「高杉さん」
高杉 蓮(れん)「心陽ちゃん お爺さんの面会?」
心陽(こはる)「え? そうそう 親族面会に」
高杉 蓮(れん)「そう お爺さん孝行だね」
心陽(こはる)「は はい・・・」
正蔵(しょうぞう)「トイレは?」
心陽(こはる)「行くから 黙って」
高杉 蓮(れん)「トイレ? 介護手伝おうか 僕の仕事だし」
心陽(こはる)「イエ 大丈夫です!」
正蔵(しょうぞう)「トイレは?」
心陽(こはる)「シッ 黙って!」
看護師「アラ? 掃除の人」
高杉 蓮(れん)「掃除? そう言えば その服」
心陽(こはる)「ああ イエ 掃除婦ファッションです マイブームで・・・」
看護師「あなた掃除婦でしょ?」
高杉 蓮(れん)「お爺ちゃんの面会だろ?」
心陽(こはる)「掃除婦ファッションで面会です」
看護師「それより蓮 今度の旅行 北海道にしようよ」
高杉 蓮(れん)「ルミがいいなら」
心陽(こはる)「社員旅行?」
看護師「婚前旅行よ ねぇ蓮💛」
高杉 蓮(れん)「ルミ💛」
心陽(こはる)「ええええ!!!!」

〇本棚のある部屋
  バチが
  バチが当たった
  人の恋を邪魔したから・・・
  爺ちゃんの部屋で泣いてると・・・
  爺ちゃんは
  手紙を大切にしていた
  それと
  ある秘密に気づいた!!

〇部屋の扉

〇おしゃれな居間
心陽(こはる)「夜中どこ行ってるの?」
心陽(こはる)「高杉さんの結婚話  実は知ってた?」
心陽(こはる)「人でなし」
影虎(えいと)「吸血鬼だ 人じゃーねぇ」
心陽(こはる)「家族のためも嘘 自分のためでしょ!!」
心陽(こはる)「自分が吸血鬼になって人を襲うのが怖い だから 爺ちゃんで成功すれば 自分も上手くいく」
心陽(こはる)「爺ちゃんを実験台にしてるのよ」
影虎(えいと)「お前はバカだから 分んないのさ」
心陽(こはる)「分るよ! あれでしょ  「人のシリ見て 我がシリ直せ」って」
影虎(えいと)「人の振り見てだ 何で爺の尻 見なきゃいけねぇんだ」
影虎(えいと)「お前は俺にコンプレックス持ってる 何やっても俺に勝てないからな」
影虎(えいと)「俺の計画 邪魔したいのか?」
心陽(こはる)「私はおまけの子 ママは兄貴ばっか可愛がって・・・ 憎かった でも でも」
心陽(こはる)「家族のためって言われて さすがお兄ちゃんて 信じてた・・・」
心陽(こはる)「でも分った 本当は自分のためにやってるんだ!!」
心陽(こはる)「あんたは兄貴じゃない 人の心のない 本当の吸血鬼よ」
心陽(こはる)「もう 爺ちゃんの恋を邪魔しない」
心陽(こはる)「あんたにも 邪魔させないから」
影虎(えいと)「認知症だぞ 人を噛んだら・・・」
心陽(こはる)「絶対噛まない」
影虎(えいと)「何で?」
心陽(こはる)「一度も人を噛んだことがないの」
心陽(こはる)「輸血パックに手をつけてない 飲まないんだよ  たとえ輸血パックでも」
心陽(こはる)「もし飲んでたらドラキュラだもん 不老不死だもん ボケるわけないじゃん!!」
心陽(こはる)「爺ちゃんが認知症になったのが 血を飲んでない証拠」
心陽(こはる)「爺ちゃんは吸血鬼になった 感染はした だけど最後まで人間として 生きようとしてるんだよ」
心陽(こはる)「そんな爺ちゃんの きっと最後の恋 邪魔させないよ」
  走って出て行く心陽

〇児童養護施設
  夜中に
  二人を引き合わせた

〇施設の休憩スペース
美智子(みちこ) 「やっと会えた」
正蔵(しょうぞう)「「あなたのことを一時も忘れられない、是非お会いしたい」 手紙嬉しかった!」
美智子(みちこ) 「忘れた事ないもの この70年間」
正蔵(しょうぞう)「70?」
美智子(みちこ) 「ルーマニアでお見かけして以来」
美智子(みちこ) 「あの日 伯爵が邪魔しなければ あなたは私の獲物だった」
美智子(みちこ) 「あなたを食いそびれて しかもあなたは吸血鬼に・・・」
美智子(みちこ) 「ドラキュラは 我が一族の宿敵」
美智子(みちこ) 「70年前の禍根 ケリをつける」
  月が輝きを増した
  狼獣人だったのだ

〇会議室のドア
心陽(こはる)「どうしたの!?」

〇施設の休憩スペース
  爺ちゃんは襲われていた
  心陽も襲われそうに
  兄が駆けつけた!!
影虎(えいと)「俺の家族に手を出すな!」
狼獣人「ウガッ」
  狼になり 逃亡
影虎(えいと)「狼一族と吸血鬼一族は宿敵だ 執念深く狙っていたのだな」
正蔵(しょうぞう)「ここはどこだ? ワシは何を?」
影虎(えいと)「本当にボケちまいやがった」
心陽(こはる)「兄貴強いね」
影虎(えいと)「フン」
心陽(こはる)「でも その強さ・・・ 血を飲んでない?」
心陽(こはる)「輸血パックどこで手に入れたの? 自分で作った?」
心陽(こはる)「夜な夜な出かけて まさか人を・・・?」
影虎(えいと)「お前は 爺さんの看病でもしてろ」
  兄は逃げるように 出て行った

〇中庭
  爺ちゃんは きっとボケたふりを
  だって あの人のこと本当に・・・
心陽(こはる)「手紙読んで 泣いてるの?」
正蔵(しょうぞう)「え? ここはどこかな・・・」
正蔵(しょうぞう)「ワシは何を・・・」
  そう誤魔化して 涙をふいた
心陽(こはる)「お爺ちゃん」
心陽(こはる)「私が守ってあげる!!」

〇おしゃれな居間
  数日後──
心陽(こはる)「最近 日焼けの跡がただれて」
心陽(こはる)「物も食べづらい 歯が・・・」
影虎(えいと)「牙だな」
心陽(こはる)「え?」
影虎(えいと)「隔世遺伝 俺だけじゃなかったな」
心陽(こはる)「ええええ!!」
  これからも この家族から目が離せない!!

コメント

  • 最後は告白されて感動シーンになるかと思ったら、もう一展開ありましたね!その後の爺ちゃんを抱きしめる挿絵は感動しましたし、尾長さんの凄みが出ている場面でしたね!高杉君…もしや、狼一族か?などと、読みながら妄想してました
    暖かさと感動がある素晴らしい作品です!😆

  • 兄の真意はいかに…。
    この老人ホームには他にも怪物がいっぱいいそうですね。
    高すぎる君は果たして人間なのか…?

  • 吸血鬼がボケて老人ホームって設定がまず面白かったです😆
    頑張る妹、やる気のない兄等キャラもそれぞれ活きていて、さらに美智子の正体も驚きでした!
    とっても楽しく読ませていただきました。ありがとうございました!

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